東京・銀座のギャラリースペース、ポーラ ミュージアム アネックスにて、現代美術作家の野口哲哉氏の個展「this is not a samurai」が開催されています(9月11日まで)。
野口氏がつくり出す、鎧兜(よろいかぶと)に身を包んだ人物は、そのどれもが不思議な親近感を抱かせる表情をもっています。
ふと気づくと、彼らは、戦国時代にはないメガネをかけ、ジーパンを履いてしゃがんでいたり、原宿あたりで売っていそうなショルダーバッグを袈裟がけにして椅子に座っていたり、鎧の胸当てなどに世界的なメゾンのロゴがあしらわれていたりと、現代の要素がなにかしら付加されています。
作品を構成するパーツも、鉄や漆を使っているように見えて、実は樹脂や化学繊維でつくられているというのも、野口作品を鑑賞する際に必然となる驚きの1つです。
この独特のコンセプトは、平面作品でも展開され、例えば、本展の会場では、暗がりでスマートホンを操作する武者の姿を描いた絵画に出会えます。
本展・野口哲哉「this is not a samurai」は、愛知・刈谷市美術館を皮切りに、群馬県立館林美術館、山口県立美術館、香川・高松市美術館を巡ってきた展覧会の東京巡回です。タイトルの和訳「これはサムライではない」とは、ルネ・マグリッドの作品の中に登場する文言「This is not a pipe」に由来するとのこと。
代表的な立体・平面作品約40点が展示されるほか、本展のために制作された新作も披露されます。そのうちの立体の武者4体は、野口氏が造作したアルネ・ヤコブセンの名作椅子〈エッグチェア〉に座っています。こちらもお見逃しなく!
ポーラ ミュージアム アネックスでの野口氏の個展開催は、2018年の「中世より愛をこめて」以来、4年ぶり。このとき、新作として披露された、ルージュのリップスティクで壁にハートマークを描く武者の立体作品も”里帰り”します。入場は無料。
作家プロフィール
野口哲哉
1980年香川県高松市生まれ。
2003年広島市立大学芸術学部油絵科卒業、2005年同大大学院修了。
「鎧と人間」をモチーフに、 樹脂やアクリル絵具を使って彫刻や絵画作品などを制作する。2016年香川県文化芸術新人賞受賞。
主な個展に、「野口哲哉展-野口哲哉の武者分類図鑑-」(練馬区立美術館、アサヒビール大山崎山荘美術館)、「中世より愛をこめて」(ポーラ ミュージアム アネックス)、「鎧ノ中デ-富山編-」(秋水美術館)
2021年巡回展「THIS IS NOT A SAMURAI」(高松市美術館、山口県立美術館、群馬県立館林美術館、刈谷市美術館)など。
会期:2022年7月29日(金)〜9月11日(日)※会期中無休
開館時間:11:00-19:00(入場は18:30まで)
入場料:無料
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
所在地:東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階(Google Map)
※諸事情により、予定された内容が変更される場合あり(最新情報は会場ウェブサイトを参照)
主催:ポーラ・オルビスホールディングス
協力:ギャラリー玉英
ポーラ ミュージアム アネックス Website
http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/
野口哲哉「this is not a samurai」特設サイト
https://noguchitetsuya2021.exhibit.jp/
本稿の作品画像を除く会場風景写真の撮影:Naoko Endo / TEAMTECTURE MAG