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"アール・デコの館"の"素顔"が見えてくる。東京都庭園美術館「旧朝香宮邸を読み解く A to Z」展

[Report]伊藤公象と須田悦弘のインスタレーションも必見![読者プレゼントあり]

東京都庭園美術館の開館40周年を記念した企画展の第二弾、「旧朝香宮邸を読み解く A to Z」展が2月17日より開催されています(会期は5月12日まで)。

東京都庭園美術館

東京都庭園美術館 本館 正面玄関

同館の本館は、1933年(昭和8)に竣工した旧朝香宮邸を改装したもの。時代とともにその役割を変え、戦後は外務大臣・首相の公邸や迎賓館としても使用されました。建設当初の姿を留めている”アール・デコの館”は、その歴史性価値の高さから、2015年に国の重要文化財に指定されています。

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東京都庭園美術館 本館1階 大客室と香水塔(画面奥)

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東京都庭園美術館 本館1階 大広間

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東京都庭園美術館 本館2階 姫宮居間

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東京都庭園美術館 本館2階 若宮寝室

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東京都庭園美術館 本館2階 ベランダ

本展は、国内でも有数の歴史的建造物の1つである旧朝香宮邸が主役となります。これまでに行われてきた調査や研究をもとに、建築技法、建設に携わった人々、室内意匠や素材などのインテリア、各時代ごとのエピソードなどを、アルファベットのAからZを頭文字に持つキーワードごとにまとめ、本館の各所に配置されています。館内を巡り、これらを読み進めていけば、旧朝香宮邸の知られざるストーリーを知り、建物への理解がより深まっていくという趣向です。

例えば、アルファベット=AはAida and Carmen(アイーダとカルメン)で、2階広間に関するエピソード。2階広間はかつて宮家の団欒の場だった空間で、「アイーダとカルメン」とは、朝香宮家次女の湛子(きよこ)女王が、ここに置かれていたピアノの演奏曲のうち特に好んだという曲名にちなんだものです。

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本館1階 次室のキーワードは「P: Perfumed Fountain(香る噴水)」Photo: TEAM TECTURE MAG
本展ゲストアーティストの1人、須田克弘氏の作品〈雑草〉も展示中

また、本展のために整備された寄木床(よせぎゆか)のうち、通常はカーペットが敷かれているため見ることができない部分(大広間、大客室、大食堂の一部)が本展にて初めて公開されています。

東京都庭園美術館「A to Z」展

本展で初公開された大客室の寄木床(画面奥は香水塔がある次室) Photo: TEAM TECTURE MAG

東京都庭園美術館「A to Z」展

東京都庭園美術館 本館1階 大広間で公開中の寄木床 Photo: TEAM TECTURE MAG

東京都庭園美術館「A to Z」展

東京都庭園美術館 本館1階 大食堂での展示は「E: Eat with your Eyes(食べられそうな)」

東京都庭園美術館「A to Z」展

大食堂のラジエーターレジスターやシャンデリアの意匠に用いられた「食」のモチーフを解説した展示 Photo: TEAM TECTURE MAG

東京都庭園美術館「A to Z」展

大食堂にて特別公開中の寄木床 Photo: TEAM TECTURE MAG

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東京都庭園美術館 本館1階 大食堂壁画(部分) 画:アンリ・ラパン

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東京都庭園美術館 本館2階 殿下居間 ラジエーターレジスター

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東京都庭園美術館 本館2階 妃殿下寝室 ラジエーターレジスター

東京都庭園美術館「A to Z」展

東京都庭園美術館 本館2階 合の間での展示「J: Japanese Lumber, Exotic Lumber(日本の木、異国の木」の展示 / 台に用意された展示解説シートは持ち帰ることができる Photo: TEAM TECTURE MAG

東京都庭園美術館「A to Z」展

本館2階 若宮居間「M:Mantelpiece(マントルピース)」の展示 Photo: TEAM TECTURE MAG

26のキーワードは、C: Chilled Floor(冷たい床)、R: Rotating Desk(回転する机)、S: Satine(サチネ)など、それだけではどこ部屋のどの部分を指しているのかが曖昧で、内容も付帯のテキストを読んでやっと理解できるものも多数あります。部屋から部屋に移動し、アルファベットでは最後のワード・Z: Zeal for Dressing Up(美学を纏う)は、2階の妃殿下居間にあります。通常非公開の本館3館ウィンターガーデンや、庭園にもキーワードや展示作品があるのでお見逃しのなきよう。

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東京都庭園美術館 本館3階 ウインターガーデン

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東京都庭園美術館 日本庭園と茶室(春から夏頃の撮影)

さらに今回の企画展では、これらの「A to Z」だけでなく、現代の美術作家の視点を通して建物を読み解く趣向も重ねられているのも見どころです。
ゲストアーティストとして、伊藤公象(1932-)と須田悦弘(1969-)を迎え、本館内や庭園のそうと知らないと見逃してしまうような所に、旧朝香宮邸をさらに深く読み解く手がかりとなるようなインスタレーションがそれぞれに展開されています。

東京都庭園美術館「A to Z」展

本館2階 北の間 / 伊藤公象(いとう こうしょう)〈「土の襞」ー白い光景ー〉 陶土、2006年、作家蔵 Photo: TEAM TECTURE MAG
※このほか、日本庭園と新館前庭園にてそれぞれ作品展示あり

ゲストアーティスト / 伊藤公象氏プロフィール
1932年生まれ、石川県金沢市出身。1972年に茨城県笠間市に伊藤知香と共に伊藤アトリエを設立。現在も笠間の伊藤アトリエで制作活動を行う。土を素材とした陶作品で独自の造形世界を追求し、空間や環境によって有機的な変容を見せるインスタレーションで知られる。

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東京都庭園美術館 本館2階 北の間 腰壁 スクラッチタイル(製造:泰山製陶所)

東京都庭園美術館「A to Z」展

東京都庭園美術館 本館2階 姫宮居間 Photo: TEAM TECTURE MAG

東京都庭園美術館「A to Z」展

須田悦弘〈ユリ〉 木に彩色、2024年、作家蔵 Photo: TEAM TECTURE MAG

東京都庭園美術館「A to Z」展

通常は閉められている金庫室(本館2階)の扉の隙間から、須田悦弘氏の木彫〈葉〉を見ることができるのでお見逃しなく! Photo: TEAM TECTURE MAG

東京都庭園美術館「A to Z」展

須田悦弘〈椿〉 木に彩色、2024年、作家蔵 Photo: TEAM TECTURE MAG

東京都庭園美術館「A to Z」展

須田悦弘〈野菊〉 木に彩色、2024年、作家蔵 Photo: TEAM TECTURE MAG

ゲストアーティスト / 須田悦弘氏プロフィール
1969年山梨県生まれ。1992年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。現在は拠点を東京に置き、国内外で作品を発表。木彫による精巧で緻密な花や草木を思いがけない場所に配し、空間全体に静かな驚きをもたらすインスタレーションを展開している。本展では本館2階姫宮居間など館内6カ所に作品を展示。

旧朝香宮邸を読み解くために用意された26のキーワードとテキスト、撮り下ろしを含む新旧の写真、館内マップやゲストアーティストの出展作品などの詳細は、ハンディサイズにまとめられた本展図録に収録されています。

朝香宮邸 書斎

朝香宮邸 書斎 1933年頃 撮影:松井写真館

朝香宮邸 正面玄関

朝香宮邸 正面玄関 1933年頃 撮影:松井写真館

東京都庭園美術館 本館 夜間外観

東京都庭園美術館 本館 正面玄関側外観(夜間 4-5月頃の撮影) ※本展では20:00までの夜間特別開館あり

東京都庭園美術館 本館 夜間外観

東京都庭園美術館 本館 南面(庭園側)外観

 

※特記なき画像は全て東京都庭園美術館提供

 

開館 40周年記念「旧朝香宮邸を読み解く A to Z」展 開催概要

会期:2024年2月17日(土)〜5月12日(日)
開館時間:10:00-18:00(入館は閉館の30分前まで)
※3月22日(金)、23日(土)、29日(金)、30日(土)は夜間開館のため、20:00まで開館(入館は19:30まで)
休館日:月曜(4月29日、5月6日を除く)、4月30日(火)、5月7日(火)
会場:東京都庭園美術館 本館+新館
所在地:東京都港区白金台5丁目21-9(Google Map
入館料:一般 1,400円、大学生(専修・各種専門学校を含む)1,120円、中・高校生 700円、65歳以上 700円、小学生以下および都内在住在学の中学生は無料
※2024年3月1日(金)~4月7日(日)の期間中(Welcome Youth)に限り、18歳以下(2005年4月2日以降生まれ)の方は無料(注.受付時に年齢証明が必要)
※そのほかの各種割引設定は東京都庭園美術館ウェブサイトを参照
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館
協力:ギャラリー小柳

東京都庭園美術館「A to Z」展

本展詳細
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/240217-0512_a-to-z/

40周年特設サイト
https://teien40th.jp/

東京都庭園美術館ウェブサイト
https://www.teien-art-museum.ne.jp/


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※応募者多数の場合は抽選
※結果発表:チケットの発送をもって了(個々の問合せには対応しません)
※発送完了後、都道府県を除く住所情報は削除し、データとして保有しません

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