COMPETITION & EVENT

練馬区立美術館「平田晃久 — 人間の波打ちぎわ」

プロポーザルで勝利した練馬区立美術館・貫井図書館の基本計画やこれまでの代表作の模型などを展示

2024年5月30日初掲、8月5日関連イベントと読者向け観覧券応募要項を追記

東京・練馬区立美術館にて、建築家の平田晃久(ひらた・あきひさ)の仕事を紹介する企画展「平田晃久 — 人間の波打ちぎわ」が7月28日より開催されています。
同氏が率いる平田晃久建築設計事務所は、2027年度の開館を目指して新たに建設される「練馬区立美術館・貫井図書館」の設計者でもあります。

2023年2月 練馬区によるプロポーザル審査結果発表

【審査結果】平田晃久建築設計事務所が「練馬区立美術館・貫井図書館改築等基本設計候補者選定プロポーザル」に勝利

練馬区立美術館「平田晃久―人間の波打ちぎわ」

練馬区立美術館・貫井図書館 模型 ©︎ 平田晃久建築設計事務所

 

本展開催にあたり、主催者メッセージ

平田はこれまで、自身の建築に対する思想を説明する際に「からまりしろ」という言葉を使ってきました。「からまりしろ」とは平田自身によってつくられた言葉です。この「からまりしろ」については、彼の言葉を借りつつ次のように説明することができます。

「はっきりと形作られる空間領域とは異なり、『ふわふわとした隙間の錯綜』、つまりはあらゆる物質の傍らとも言える領域の重なりを指します。それは人間世界に限ったことではなく、植物、動物、異なる時空の文化なども含んだ広義での生命体との共有可能性を探る試みでもあり、人間が狭い意味での「人間」から自由になる未来に向けた試みでもあります。」

ここで、「からまりしろ」の具体的なイメージについて考えてみましょう。
平田の意識が向いているのは、人間の世界だけではありません。自然界から連想できる情景は、樹木の枝にとまる小鳥の群れやアルプスに雲がかかる様子、海藻に魚の卵が無数にくっついている状態や絡み合う植物などの一場面です。これらには、偶然によって生み出された無数の表面積、思いもよらない空間が作られています。このような自然の情景が、平田の建築的思想の手助けとなっているのです。

練馬区立美術館「平田晃久―人間の波打ちぎわ」

Bloomberg Pavilion (2011) ©︎ Takumi Ota

かっちりと人間によって作り上げられた建築空間ではなく、自然の偶然性に建築的空間を見出すという考え方は、平田建築の大切な要素のひとつと言えます。
本展覧会では「波打ちぎわ」という新しい言葉を軸にした3章立てとなっています。1章目は「からまりしろ」であり、冒頭でも説明した通り、これはこれまでの平田建築の核をなす言葉です。「からまりしろ」の建築は、人間と動物の波打ちぎわ(境界やあいだ)に現れるものといえます。2つ目と3つ目は、「響き」がテーマになっています。これは共鳴というような感覚に近いかもしれません。無数の人々の思いの共鳴、はたまた過ぎ去った時間と現在との共鳴、あるいは今こことどこか遠くの場所との共鳴・・・。そういった「響き」をもった建築は、私たちがかつて知っていた「人間」の意識を広げていくような、からまりしろとも違う「人間の波打ちぎわ」を予感させます。

練馬区立美術館「平田晃久―人間の波打ちぎわ」

Tree-ness House(2017) ©︎ Vincent Hecht

本展では、スケッチ、模型やインスタレーションを中心に、この「波打ちぎわ」を体験的に理解できる空間をつくり上げます。哲学する建築家、平田晃久の脳内イメージにアプローチする展覧会です。

また、このような平田のコンセプトが形となった公共建築としては、2022年に日本建築学会賞(作品)を受賞した〈太田市美術館・図書館〉(2017)が代表されます。さまざまに区切られた空間や内外が絡まりあう「からまりしろ」を実現した地域のランドマークとして市民に愛されている公共建築です。また、平田は複数の住居や商業施設なども手掛け、彼の哲学的理論と自然や生命への憧憬が反映された独創性あふれる空間を現出しています。

このたび、これらの代表的な建築作品群に、練馬区立美術館も新しく加わることとなりました。図書館と融合する文化複合施設として、新しく生まれ変わる美術館は、2027年度の開館を目指し、再スタートを切ります。
平田による建築コンセプトは「21世紀の富士塚 / アートの雲 / 本の山」。練馬に古くから存在する「富士塚」をテーマに、「美術と本」を街や人々とつなぐ場として構想されました。

本展を通して、平田の建築思想への概念的アプローチを明らかにするとともに、建築模型や写真など具体的な作品展示を通して、平田建築が内包する未来への展望を提示します。(以上、主催者発表プレスリリースをもとに、『TECTURE MAG』編集部にて一部を追補)

 

Overlap House 模型

Overlap House 模型(2017) ©︎ SOBAJIMA, Toshihiro / punctum

練馬区立美術館「平田晃久―人間の波打ちぎわ」

太田市美術館・図書館(2017) ©︎ Daici Ano

練馬区立美術館「平田晃久―人間の波打ちぎわ」

太田市美術館・図書館(2017) ©︎ Daici Ano

練馬区立美術館「平田晃久―人間の波打ちぎわ」

Taipei Roofs (2017) ©︎ Dean Cheng

練馬区立美術館「平田晃久―人間の波打ちぎわ」

八代市民俗伝統芸能伝承館(お祭りでんでん館)(2021) ©︎ Daici Ano

練馬区立美術館「平田晃久―人間の波打ちぎわ」

Global Bowl(2021)©︎ ToLoLo studio

練馬区立美術館「平田晃久―人間の波打ちぎわ」

シャイニング・クラウズ(2022) ©︎ Yasushi Ichikawa

練馬区立美術館「平田晃久 — 人間の波打ちぎわ」開催概要

会期:2024年7月28日(日)~9月23日(月・休)
会場:練馬区立美術館
所在地:東京都練馬区貫井1丁目36-16(Google Map
休館日:月曜(但し、8月12日[月・休]・9月16日[月・祝]を除く)、8月13日(火)、9月17日(火)
開館時間:10:00-18:00 ※入館は17:30まで
観覧料:一般 1,000円、高校・大学生および65歳~74歳 800円、中学生以下および75歳以上は無料(※そのほか各種割引制度あり)
※観覧無料および割引対象者は年齢などを確認・証明できるものを入館時に提示すること
主催:練馬区立美術館(公益財団法人練馬区文化振興協会)
後援:一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会
助成:公益財団法人野村財団
協賛:シェルター、オカムラ、ケイミュー、大光電機、鹿島建設、竹中工務店、清水建設

練馬区立美術館ウェブサイト
https://www.neribun.or.jp/access/museum.html

練馬区立美術館「平田晃久―人間の波打ちぎわ」

関連イベント

ギャラリートーク

日時(右記の各回15:00より、30分程度予定):2024年8月15日(木)/ 8月29日(木)/ 9月5日(木)
会場:本展会場にて
講師:平田晃久建築設計事務所のスタッフおよび練馬区立美術館学芸員
聴講費:無料(ただし、当日有効の本展観覧券が必要)
参加方法:申込不要、参加希望者は上記実施日の開催時間に2階ロビーに集合

平田晃久 講演会「人間の波打ちぎわ」

日時:2024年8月24日(土)14:30-16:00
会場:サンライフ練馬研修室(美術館 北側に隣接 Google Map
講師:平田晃久
定員:70名(要事前申込、応募多数の場合は抽選)
参加資格:中学生以上
聴講費:無料(ただし、当日有効の本展観覧券または使用済みの半券が必要)
申込締切:8月9日(金)必着
申込方法:下記・練馬区立美術館ウェブサイト内の専用申込フォームまたは往復ハガキにて
※Eメールでの申し込みは不可
[往復ハガキの場合]
下記1〜5を明記のうえ、練馬区立美術館(176-0021 東京都練馬区貫井1-36-16)宛に郵送
1.イベント名(例:平田晃久展講演会)
2.住所
3.氏名(ふりがな要、2名の場合は両名とも)
4.年齢(2名の場合は両名とも)
5.電話番号
※1通につき2名まで応募可(連名での記入可)、応募1組につきハガキは1通とする
※当落にかかわらず、抽選結果を締切日から1週間以内に応募者に通知

講演会申し込み・イベント詳細ページ
https://www.neribun.or.jp/museum.html


読者プレゼント(8月5日より追加で実施!)

『TECTURE MAG』への感想など、簡単なアンケートにお答えいただいた方の中から、本展の観覧券を5組10名さまにプレゼント!

読者プレゼント バナー

受付期間:2024年8月12日(月)23:59 締切
※応募者多数の場合は抽選
※結果発表:チケットの発送をもって了(個々の問合せには対応しません)
※発送完了後、都道府県を除く住所情報は削除し、データとして保有しません
※チケットの使用方法で不明な点は主催者に問合せてください

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