COMPETITION & EVENT

文化庁国立近現代建築資料館「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展

分離派建築会を代表する堀口を本格的に紹介する初の回顧展、9/28にギャラリートークあり

東京・湯島にある文化庁国立近現代建築資料館にて、前世紀に活躍した建築家の堀口捨己(ほりぐち すてみ|1895-1984)について紹介する展覧会が開催されています。

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展

分離派建築会 『分離派建築会宣言と作品』 表紙画(堀口捨己著、岩波書店刊、1920年)

堀口捨己とその活動

堀口捨己は、東京帝国大学(現・東京大学)建築学科を卒業、大学院に進んだ1920年に、山田 守(1894-1966)らとともに「分離派建築会」を立ち上げ、日本における本格的な近代建築運動を始めた建築家の1人です。

「分離派」とは、明治改暦以降、時の政府が推し進めた国策の一環として、首都・東京および日本各地に建設された、西洋の古典様式が色濃い建築とは一線を画し(分離し)、新しい建築を目指すという宣言を行なった建築家の集団(および彼らの設計思想)を指します。

同じ頃、1920年代の欧州では、1910年代頃より始まったアールデコ様式が隆盛し、1925年にフランスで開催されたパリ万国博覧会はアールデコ万博の様相を呈していましたが、次の潮流となるモダニズムの旗手の1人であり20世紀を代表する建築家となるル・コルビュジエ(1887-1995)が、それまでの論考をまとめた『建築をめざして』を1923年に著すなど、新たな建築・デザイン思想が勃興しつつありました。この時期(1923-1924)に欧州に留学していた堀口は、この動き肌で感じ、その思想をいち早く日本国内に取り入れようしたのです。この時代の日本における堀口の活動は、近代建築の世界同時多発性を裏付けるものとして注目されます。

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展

〈紫烟荘〉平面図及立面図(作成年未詳)

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展

吉川邸案 透視図(1925年)

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展

若狭邸 立面図(作成年未詳)

分離派を代表する建築家として活動する一方で、堀口は国内の茶室や数寄屋建築に関する卓越した研究なども残しています。茶の湯や和歌にも通じ、現代的な数寄屋の設計や庭園のデザインも手がけるなど、広いジャンルで創造力を発揮。西洋の近代建築と日本の伝統建築の双方をつなぎ、建築家として深い洞察を巡らせ、実践しました。堀口が残した多彩な仕事と資料からは、彼の稀有な探求心と創造力の結実を見出すことができます。

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展

妙喜庵待庵庭園図 実測図(1936年)

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展

八勝館さくらの間 立面図(1956年)

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展

サンパウロ日本館 透視図(1953年)

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展

常滑市立陶芸研究所 模型写真(撮影年未詳)

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」と題して開催される本展は、堀口捨己没後40年にあたる今年、これまでは各所に分散して保管されていた堀口の資料が、国立近現代建築資料館に一括収蔵されたことで初めて可能となった堀口捨己の本格的な回顧展です。
堀口の学生時代から晩年に至るまでの代表作品のオリジナル図面に始まり、1920年代の欧州視察時に堀口が撮影した写真、分離派建築会展資料、茶室や庭園の実測研究資料など、約200点を展示(会期中、一部展示入れ替えあり)。堀口捨己監修『茶室おこし絵図集(全12巻)』(墨水書房、1963-1967年)に綴じられた「後藤勘兵衛茶室 (現・太閤山荘擁翠亭)」を原寸に拡大した模型も展示され、その内部に入ることもできるなど、さまざまな展示資料を通じて、堀口の建築、思想、創造世界を総合的に紹介しています。

展示構成
1.分離派建築会と表現主義の影響 1920-1929
建築作品:分離派建築会、平和記念東京博覧会、小出邸、紫烟荘、双鐘居 ほか
2.国際様式への傾倒 1930-1939
建築作品:吉川邸、岡田邸、大島測候所、若狭邸、忠霊塔設計競技案 ほか
3.「日本」の探求 1936-1958
建築作品:茶室の実測調査、八勝館八事店 ほかと研究実績
4.伝統と近代の境界を超えて 1954-1984
建築作品:サンパウロ日本館、万葉公園・万葉館・万葉亭、静岡雙葉学園、常滑市立陶芸研究所、清恵庵

 

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」

会場:文化庁国立近現代建築資料館(National Archives of Modern Architecture [略称 NAMA])
所在地:東京都文京区湯島4-6-15 湯島地方合同庁舎内(Google Map
会期:2024年8月9日(金)~10月27日(日)
開館時間:10:00-16:30(入館は16:15まで)
休館日:月曜(祝日の月曜は開館、翌日火曜休館 / 10月14日開館、10月15日休館)
入館方法:以下の通り
・展覧会のみ観覧の場合(平日のみ):湯島地方合同庁舎正門より入館、無料(隣接する都立旧岩崎邸庭園への入場は不可、別途入場料と受付が必要)、
・都立旧岩崎邸庭園と同時観覧の場合(土日曜・祝日および平日):都立旧岩崎邸庭園より入館、同受付にて都立旧岩崎邸庭園の入園料有料を支払い / 一般:400円)

主催:文化庁
企画:文化庁国立近現代建築資料館
協力:公益財団法人東京都公園協会、一般社団法人日本建築学会関東支部、公益財団法人窓研究所、ヘットシップミュージアム(オランダ・アムステルダム)

「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展 フライヤー

関連企画

1.ギャラリートーク
講師:藤岡洋保(東京工業大学名誉教授・工学博士、近代建築史研究者)
開催日時:9月28日(土)13:00-14:00 / 14:30-15:30
定員:30名
参加方法:整理券要・各回開始30分前より同館1F事務所受付にて配布(1人につき1枚)
※電話およびメールでの受付対応なし
※参加者は開始までに貴重品以外の手荷物をロッカーまたは同受付に預けること

2.ガイドツアー
講師:本展企画担当職員
開催日時:会期中(8月23日~10月17日)の木曜 14:00-15:00(10月3日・10日・17日)
定員:15名(参加者が多い場合は複数班に分かれて開催予定)
参加方法:当日先着順に受付(予約不要、整理券の配布なし)

※関連企画の詳細は同館ウェブサイト・インスタグラムを参照

文化庁国立近現代建築資料館ウェブサイト
https://nama.bunka.go.jp/

同館公式インスタグラム
https://www.instagram.com/nama.japan/

【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン TECTURE NEWS LETTER

【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン

文化庁国立近現代建築資料館 過去の展覧会

COMPETITION & EVENT2022.12.07

文化庁国立近現代建築資料館にて原広司展開催

「令和4年度展覧会 原広司 建築に何が可能か-有孔体と浮遊の思想の55年-」
COMPETITION & EVENT2023.08.05

開館から10年を迎えた文化庁国立近現代建築資料館

10周年記念アーカイブズ特別展「日本の近現代建築家たち」開催中

RECOMMENDED ARTICLE

  • TOP
  • COMPETITION & EVENT
  • EXHIBITION
  • 「建築家・堀口捨己の探求 モダニズム・利休・庭園・和歌」展 文化庁国立近現代建築資料館にて10/27まで
【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン
お問い合わせ