COMPETITION & EVENT

「リアテック」を採用した空間デザインコンテスト 受賞作品決定

松浦竜太郎氏、山田紗子氏らが審査を担当

本物(リアル)素材の質感(テクスチャー)を再現し、高いデザイン性と機能性をもつサンゲツの粘着剤付化粧フィルム「リアテック」は1995年に誕生し、今年発売30年を迎えました。

現在では海外20カ国以上で販売され、さまざまな空間の内外装仕上げ材として、国内外のデザイナーに使われている「リアテック」。30周年を記念して開催された「空間デザインコンテスト CREATOR’S AWARD」には178点の応募が集まり、サンゲツの東京・日比谷にあるオフィス「PARCs」において審査が行われました。

それぞれの審査ポイントをプレゼンテーション

審査会では、事前に実施された一次・二次審査を通過した35点について、審査員3名による対面での協議審査が行われました。

採用された品番を見本帳でチェックしたり、リアテック商品開発担当者から製品情報を聞いたりしながら、各審査員が自身の推薦作品について評価ポイントをプレゼンテーション。上位入賞に匹敵する作品が多く、議論が白熱しました。

これまでの「何かの代わりに採用する」という化粧シートとしての使われ方ではなく、積極的、効果的に素材として「リアテック」が採用された事例に注目が集まり、大胆なリアテックの使い方に驚きの声が上がる場面も。

厳正な審査を経て、最優秀賞をはじめとする各賞が決定しました。最優秀賞には「実際に見に行ってみたい」と審査員が口をそろえた〈田中貴金属ビルディング〉が選出されました。


審査員総評

松浦竜太郎氏(乃村工藝社 RENS クリエイティブディレクター)

山田さん、吉田さんの選定理由は自分とは違う角度で見ていらして、いろいろ気付きもありましたし、3人で多角的にバランスよく考察し、選定が行われたと思います。入賞した作品には何かしら1つ特徴があって選ばれています。最優秀作品〈田中貴金属ビルディング〉は象徴的な空間でリアテックが非常に効果的に使われていて、最優秀や優秀賞の事例は完成度も高く、実際にその空間を体験してみたいと思いました。

また、ラグジュアリーなレジデンスやホテルにも多用された案件が多く、リアテックの品質が上がっていると実感しました。リアテックパネルの目地の入れ方など、私の発想になかった使い方も知ることができ、機会があれば私も積極的にさまざまな方法を試みたいと感じました。


山田紗子氏(山田紗子建築設計事務所 代表)

私の中ではサンゲツさんの製品やリアテックは内装というイメージが強く、木や石のリアルな質感を生かした内装的なアイデアが多いのかなと思っていました。ところが最優秀賞〈田中貴金属ビルディング〉や優秀賞〈大真空本社工場棟〉では、建築の空間構成を決定的なものとするエレメントに大胆に使われていたり、建築全体の物質感を定義するものとして採用されている事例があり、こんな使い方があるのか、と驚きました。建築構成に従属するばかりが内装材ではなく、内装材が建築の構えを決めていくというような可能性もあるのかもしれません。

リアテックは内外を横断して使うこともできるので内装が内装的にならないこともありえます。住宅や小さな空間だと、建築の構成がそのままインテリアに直結することもあるのですが、より大きく公共的な建築になっていくとき、その大きな器をつくる建築と、人の居場所や体験をつくっていく視点、2つのスケールを横断して、リアテックのもつマテリアリティが活躍することがあるのかなと思いました。

リアテックには本物に限りなく近いテクスチャーを表現できる品番も多くありますが、プレーンな素材感を生かした方向性や抽象性を獲得するための使い方も知ることができ、覚えておきたいと思います。


吉田直弘氏(株式会社サンゲツ スペースプランニング部門 スペースデザインユニット ユニットマネージャー)

リアテックはバリエーションが多く、いろんな場面で活用できる可能性が応募作品を通して見えてきましたし、インハウスデザイナーとしてみなさんと共有する機会になったことがよかったと感じています。

「石や木が使えないから仕方なく使う」というのが化粧シートの使われ方の主流でしたが、今回の審査では積極的にそのリアテックならではのよさを発揮しているものを選びました。メーカーとしては使われ方も知っていなければなりませんが、自社の商品だけを見ていてもこういった発想は出てこないので、実際にリアテックを採用された方から応募をいただいて、さまざまな作品から学びを得る貴重な機会になりました。

次回このようなコンテストがまたあれば、応募作品を実際に見てみたいですし、設計者の方に立ち会ってもらって「ここを見て欲しい」というポイントや使い方の工夫も聞いてみたいと思います。

審査会終了後、受賞作品を前にコンテストを振り返る/撮影:Shun Fukuda(トップ写真、審査風景とも)

 

結果は以下の通りです。

最優秀賞|〈田中貴金属ビルディング〉

株式会社久米設計/藤平真一

リアテック使用個所:クルーシブルスペース(コミュニケーションボイド) コミュニケーション階段/使用品番:RD-5538/撮影:川澄・小林研二写真事務所

優秀賞|〈大真空本社工場棟〉

株式会社奥村組・エムアールスタジオ株式会社/日野晃太朗・ 宮下信顕

リアテック使用個所:エントランスホール 大階段 壁(正面)/使用品番:TA-4743/撮影:エムアールスタジオ株式会社 宮下信顕

優秀賞|〈パークホームズ堺町松原〉

株式会社IAO竹田設計/築田 良

リアテック使用個所:エントランス 左壁、正面壁、右壁、天井/使用品番:TD-4549、RW-4015/撮影:株式会社エスエス 津田裕之

審査員賞(松浦竜太郎選)|〈明治大学 和泉ラーニングスクエア〉

株式会社松田平田設計

リアテック使用個所:ラーニングコモンズ 木のボックス/使用品番:TC-4225/撮影:吉田写真事務所

審査員賞(山田紗子選)|〈東武鉄道 特急車両 SPACIA X(スペーシアX)〉

東武鉄道株式会社+株式会社日立製作所/株式会社日立製作所 研究開発グループ デザインセンタ

リアテック使用個所:コックピットラウンジ 壁面/使用品番:TA-4770

審査員賞(吉田直弘選)|〈パークウェルステイト西麻布〉

株式会社大林組一級建築士事務所/平賀恵子・西尾薫子・三輪丈尊

建築主:三井不動産レジデンシャル株式会社 シニアレジデンス事業部/リアテック使用個所:廊下 壁、天井、玄関扉/使用品番:特注リアテック木目 ZC-2867(壁・天井・玄関扉)、特注リアテック織物 ZC-2868(壁)、 特注リアテックレザー ZC-2869(玄関扉 戸先部)/撮影:株式会社エスエス 中尾孝佑

ハイグラフィカ賞 |〈社会医療法人畿内会 岡波総合病院〉

株式会社内藤建築事務所/加藤洋光

リアテック使用個所:外来ストリート 外来受付の門構えの壁/使用品番:「波」をイメージしたオリジナルデザインのハイグラフィカ

リアテックパネル賞 |〈ザ・パークハビオ 上北沢〉

株式会社 陣設計/由田 力

リアテック使用個所:エントランス 壁面、天井面/使用品番:TR-4419、TX-4465*、TX-5196(* 廃番商品)

入賞|〈T-LINKS〉

大成建設株式会社/川野久雄

リアテック使用個所:アリーナ 壁/使用品番:RW-5368、TD-4545

入賞|〈プロロジスパーク草加〉

株式会社フィールドフォー・デザインオフィス/赤澤知也

リアテック使用個所:エントランス 壁/使用品番:TR-4376*、TR-4378、TR-5153*、TR-4393*、TR-4394*(* 廃番商品)/撮影:後藤晃人

入賞|〈デュシタニ京都・植柳コミュニティセンター〉

戸田建設株式会社/荻田真士

リアテック使用個所:ロビー 壁、壁の格子、天井ルーバー、金物見切り/使用品番:TC-4322、TR-4390

入賞|〈パークウェルステイト湘南藤沢SST〉

UDS株式会社/高宮大輔・鈴木沙祐里・清野孝子・堀内万佑子・小泉智史・王 書洪・ジョンシリ ラハット

建築主:三井不動産レジデンシャル株式会社 シニアレジデンス事業部/リアテック使用個所:カフェ 折り上げ天井/使用品番:TC-4240/撮影:Nacasa & Partners Inc.

サンゲツ社員賞|〈三万石郡山八山田店〉

OYAMATSU DESIGN STUDIO + スーパーシュワッチ/親松 実 ・矢間将司

リアテック使用個所:店舗エリア 各カウンター 什器、設備機器、造作、建具/使用品番:TR-4418、TR-4416、TR-4372

 

 

「サンゲツ空間デザインコンテスト」概要

サンゲツが「リアテック」30周年を記念したクリエイターズアワード
募集期間:2024年9月2日(月)~12月13日(金)17:59まで
応募資格:応募作品の設計者・デザイナー・インテリアコーディネーター
募集対象:内装もしくは外装に「リアテック」を採用した施工例写真
審査員:
松浦竜太郎(乃村工藝社 RENS クリエイティブディレクター)
山田紗子(山田紗子建築設計事務所 代表)
吉田直弘(株式会社サンゲツ スペースプランニング部門 スペースデザインユニット ユニットマネージャー)

主催:株式会社サンゲツ

 

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