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横浜美術館にて「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」6/28より開催

横浜美術館リニューアルオープン記念展「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」

独創的なコミュニケーションデザインの方法論を紐解く展覧会

今年2月8日に全館オープンした横浜美術館(神奈川県横浜市)にて、「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」(読み:さとうまさひこてん あたらしいつくりかたとあたらしいわかりかた)が6月28日から111日間にわたり開催されます。

6月2日まで開催された横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」に続くもので、リニューアル後の横浜美術館が標榜する「テーマとジャンルの多様性」を象徴する展覧会として企画されたとのこと。

佐藤雅彦氏がこれまでに手掛けた、記憶に残るテレビ番組やCM、キャラクターから、物理学や認知科学の研究から生まれた知的好奇心を刺激する映像作品やメディアアートなどが一堂に会する、初の大規模個展です。表現者・教育者として、約40年におよぶ創作活動の軌跡を辿り、概観します。

 

佐藤雅彦 プロフィール

1954年静岡県・現在の沼津市で生まれる。1977年東京大学教育学部を卒業後、電通に入社。1987年電通クリエイティブ局に移籍、CMプランナーとして活躍。湖池屋「スコーン」(1988)「ポリンキー」(1990)、NEC「バザールでござーる」(1991)、サントリー「モルツ」(1992)などを手がける
1994年に電通を退社、企画事務所「TOPICS」を設立。売上本数総計101万本を記録したプレイステーションソフト「I.Q」(1997)や、CD売上枚数380万枚の大ヒットとなった「だんご3兄弟」(1999)など、ジャンルを横断したコンテンツを次々とヒットさせる。

佐藤雅彦(さとうまさひこ)近影

Photo: STUDIO DUNK

1999年慶應義塾大学環境情報学部教授。2002年にNHK教育(現在のEテレ)にて放映を開始した幼児教育番組「ピタゴラスイッチ」は、同大学佐藤雅彦研究室での研究と実践をベースにしたもの。2005年佐藤雅彦研究室OBによるクリエイティヴグループ「ユーフラテス」設立。2006年東京藝術大学大学院映像研究科教授(2021年より名誉教授)。
主な受賞・受勲に、芸術選奨文部科学大臣賞(2011)、紫綬褒章受章(2013)などがある。2014年と2018年にはカンヌ国際映画祭短編部門に正式招待されている。

 

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)

上:ポリンキーの秘密(湖池屋)/ 下: バザールでござーる(NEC)/ 2点ともアドミュージアム東京所蔵

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)

I.Q Intelligent Qube(SIE・プレイステーション用ソフト)

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)

左:だんご3兄弟(NHK「おかあさんといっしょ」より)
右上:フレーミー
右下:ぼてじん(右の上下ともにNHK「ピタゴラスイッチ」より)
画像提供:横浜美術館

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)

ピタゴラ装置(NHK「ピタゴラスイッチ」より)  画像提供:横浜美術館

 

「作り方を作る」という佐藤の思考を解読する

松永真太郎 / 横浜美術館学芸グループ長、主席学芸員、佐藤雅彦展企画担当

「佐藤雅彦」という名を知る人は、そう多くはないでしょう。
しかしどの世代の人でも、佐藤の手がけた作品のどれかに、なじみ深いもの、記憶に残っているものが必ずあるはずです。

時代を超えて話題作、ヒット作を送り出し続けていることもさることながら、その表現ジャンルの振り幅の広さに驚かされます。よく知られた教育番組やCMはもちろん、ヴィジュアルデザインやコピーライティング、漫画、ゲーム、楽曲、映画、教科書、膨大な著書まで。この展覧会の来場者は、「これ懐かしい」からはじまり、「あ、これも知ってる」を経て、「これも同じ人が作ったものだったのか」、さらに「え、こんなものも作っているの?」と、会場で発見と驚きを繰り返すことになります。

とはいえ、佐藤作品の多様さを知ることは、あくまでこの展覧会鑑賞のファーストステップ。それらの創作物を通じて、ひとりの表現者としての際立った独自性を目の当たりにするという、次のステップが控えています。

佐藤の創作物に通底する独自性。まず、世の中のさまざまな事象(お菓子などの商品であっても、数学の問題であっても)をいかに「分かるように伝える」かを表現の目標としている点が挙げられます。そして、その伝え方のメソッド、つまり「作り方」の研究と言語化に、活動時間とコンセプトの両面で重きを置いている点でも一貫しています。

数ある「佐藤語録」の筆頭にあるのが、「私は作り方を作っているんです。作り方が新しければ、出来たものはおのずと新しいものになります」という言葉です。佐藤の創作のバックボーンには、長年かけて蓄積した「作り方」「分かり方」についての独自の理論やアイデアが横たわっています。
CMの企画、教育的コンテンツの製作、書籍の執筆・・・発信するメディアやターゲット、そして発信すべき内容に応じて都度、それらのストックの中からいずれかを当てはめ、あるいは複数を組み合わせ、「表現」へと転化させていきます。親しみやすく特徴のある文字の書体やキャラクターに目をうばわれがちな佐藤の創作ですが、その世界観の一貫性と独創性の核は、そうした「作り方」にあるのです。

その「作り方」に焦点を当てて佐藤の創作活動を紹介するのが、この展覧会です。「作り方」とは、世界の観察の仕方、ものごとの解釈の仕方、考えの整頓の仕方など、ものを「作る」以前にある、あらゆる思考をめぐる佐藤雅彦流のメソッド、とも言えるでしょう。ものごとを自分なりに捉え、それをいかに伝えるかを考え、そして分かるように/もっと分かりたくなるように表現する──佐藤の活動は、表現者である以前に教育者である佐藤の資質と志向をよく映し出しています。
そして、表現されたものを通じて、「分かる」にとどまらず、新しい行動や思考へとうながすことも、佐藤の目指すところです。佐藤が自身の創作を「コミュニケーションデザイン」と総称するゆえんも、ここにあります。

そもそも「展覧会」という形式自体が、大がかりなメディアコミュニケーション・ツールと言えます。多様な作品とその「作り方」の実例を通して、創作の根底にある佐藤ならではの「考え方」を垣間見る──来場した方々がそのステップをクリアしたら、次はひとりひとりが、自分ならではの考え方を考える番です。(2025年5月13日 プレスリリースより)

 

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)

イデアの工場(DNP大日本印刷)

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)

ballet rotoscope

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)

計算の庭(桐山孝司との共作)森美術館「六本木クロッシング2007」展示風景

佐藤雅彦 著作

左:『解きたくなる数学』(岩波書店)/ 右:『経済ってそういうことだったのか会議』(竹中平蔵との共著、日本経済新聞社)

横浜美術館リニューアルオープン記念展
佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)開催概要

会期:2025年6月28日(土)〜11月3日(月・祝) (開館日数:111日)
開館時間:10:00-18:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:木曜
会場:横浜美術館
所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4-1(Google Map
観覧料:一般2,000円、大学生1,600円、中学・高校生1,000円、小学生以下無料
※ 障がい者手帳の提示で本人と付き添い1名まで無料
※ 同時開催の「コレクション展」、「アーティストとひらく」も本展入場当日に限り観覧可能

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)ポスター

主催:横浜美術館、TOPICS
特別協賛:電通、サイバーエージェント、DNP大日本印刷
協賛:湖池屋、ビームス
協力:NHKエデュケーショナル、アドミュージアム東京、NEC、東京藝術大学大学院映像研究科、佐藤雅彦教育文化財団、みなとみらい線
問合せ先:横浜美術館(TEL:045-221-0300 / 10:00-18:00 ※木曜を除く)

展覧会ページ
https://yokohama.art.museum/exhibition/202506_satomasahiko/


リニューアル後の横浜美術館

横浜美術館 まるまるラウンジ

まるまるラウンジ ©morinakayasuaki

横浜美術館 グランドギャラリー

グランドギャラリー ©morinakayasuaki

横浜美術館 グランドギャラリー

グランドギャラリー(撮影:新津保建秀)

横浜美術館 外観

横浜美術館 外観(撮影:新津保建秀)

横浜美術館 ウェブサイト
https://yokohama.art.museum/

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