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〈奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート〉が開館、3つのエリアの展示で”自由とはなにか”を問いかける

〈奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート〉4/27開館

明治五大監獄で唯一全貌が残る歴史的建造物をコンバージョン

“明治五大監獄”[*1]の1つで、1908年の竣工。国の重要文化財にも指定[*2]されている旧奈良監獄の現存する建物の一部が改修され、〈奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート〉として2026年4月27日に開館しました。

〈奈良監獄ミュージアム〉開業日決まる。2026年開業予定の〈星のや奈良監獄〉併設施設として来春4/27先行オープン

〈奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート〉の概要は、『TECTURE MAG』にて、2025年9月の速報と、今年3月の続報の通りです。
本施設は、星野リゾートとしては初のミュージアム事業となります。コンセプトは「美しき監獄からの問いかけ」。監獄という特異な空間を通じて、日本の行刑の歴史と監獄という社会をひもとき、佐藤 卓氏やアドリアン・ガルデール氏ら国内外のクリエイターの協力のもと、刑務所時代にそこで生活を送っていた受刑者の暮らしがわかる展示や、刑務所の現実から着想を得たアートなどを展示。「自由ってなんだろう」という本質的なテーマのもと、来館者1人ひとりの日常や人生観を揺さぶるような「問い」を投げかけ、新たな視点を提供する展示を行なっていくとのこと。

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

ミュージアムゲート

*1.明治五大監獄:1901年に建設を開始した旧奈良監獄のほか、長崎監獄、金沢監獄、千葉監獄、鹿児島監獄を指す(奈良監獄以外は現存せず)
*2.国指定重要文化財:明治期の希少な遺構である中央看守所および事務所などに対して2017年指定(詳細は文化遺産データーベースを参照)

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

監視所から複数の収容棟が放射状に伸びる、監獄建築特有の配置(ハビランド・システムと称される)

展示構成とテーマ

A棟「歴史と建築」:赤レンガが紡ぐ行刑の歩みを知る
B棟「規律と暮らし」:受刑者の日常から「自由」を問う
C棟:「監獄とアート」:感性を揺さぶり、あたりまえの日常をアップデートする

A棟「歴史と建築」

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

A棟 展示風景

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

A棟 展示風景

8つの展示室からなり、当時の作業やレクリエーションの様子をイラストや写真で紹介。奈良監獄の歩み日本の行政制度と共に辿る。
明治初期、政府は欧米列強諸国とのあいだに江戸期末期より結ばれていた不平等条約の改正を見据え、諸外国に法治国家として認められるため、人権を重んじる監獄の設立と運営を目指した。展示では、その一大プロジェクトを担った、設計者の山下啓次郎(1868-1931)の足跡や、中央看守所から全容を見渡す構造(ハビランド・システム)と、当時の先進技術が集結した構造について知ることができる、縮尺1/420の再現模型を展示。また、耐火性と耐久性を重視したレンガ構造の奈良監獄は、職人の指導のもと、受刑者自らがレンガを製造・積み上げており、1906年だけで延べ15万人以上が建設に携わっている。
戦後の1946年に奈良少年刑務所に改称。少年刑務所時代には、日本初の総合訓練施設として、収容者の教育指導として高校通信制課程を導入(受刑者は「生徒」と呼ばれていた)、地域住民向けの「若草理容室」やスポーツ交流など、社会との接点が数多く設けられている。

B棟「規律と暮らし」

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

B棟 展示イメージ

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

B棟 展示イメージ

刑務所という特殊な社会での生活について、7つのテーマ(規律、食事、衛生、作業、更生、お金、自由)のに沿って紹介する。
「規律」では、起床から就寝、布団の畳み方に至るまで厳格なルールが定められていた受刑者の暮らしを紹介。「食事」では、全国各地の刑務所の個性があらわれる献立や食器を展示。「衛生」では、清潔を保つこともルール化されていた受刑者に対し、入浴だけでなくトイレの時間も定められ、かつ決められた方法で身を清めていた様子をイラストで紹介する。
管理された刑務所での生活をたどるうち、分刻みのスケジュールや固定観念に縛られている、現代の我々の生き方と自由についての問いを投げかける。

C棟:「監獄とアート」

旧医務所を改装したC棟では、「罪と罰」「時間と命」といった普遍的なテーマのもと、5組のアーティスト作品と、受刑者による刑務所アート[*3]を展示。アートが投げかける問いに触れることで、鑑賞者の感性を揺さぶり、日常を捉える視点をアップデートするきっかけを提供する。

*3.2023年より続く「刑務所アート展」の応募作から、受刑者が自主的に制作した絵画や書、文芸作品を展示。画材や道具に厳しい制限がある刑務所で、ボールペンのみで描かれた緻密な表現や、限られた水彩絵具で油彩のような質感を追求した技法など、創意工夫が凝らされた作品群となっている

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

C棟 アート展示:西尾美也〈声を縫う〉

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

C棟 アート展示:キュンチョメ〈海の中に祈りを溶かす〉

現代作家による作品

花輪和一(はなわ かずいち)〈刑務所の中〉
モデルガンの修復を機に服役した実体験に基づく代表作『刑務所の中』。獄中の生活を克明かつユーモラスに描き、規律に縛られた日々の中で暮らす受刑者たちの姿を描写した作品

西尾美也(にしお よしなり)〈声を縫う〉
奈良県出身のアーティスト。受刑者が残した「詩」を200人超の市民の手で刺繍へと紡ぎ出した参加型作品を展示

三田村光土里(みたむら みどり)〈過ぎてゆく部屋〉
自身の作品を「人が足を踏み入れることのできるドラマ」と定義するアーティスト。本作は「役者不在のセット」のような空間で、鑑賞者が主人公となり私小説的なストーリーを追体験。かつて奈良監獄で暮らした人々の記憶と作者自身の情景が重なり合う

風間(かざま)サチコ〈秩序とNEW僕等と〉
巨大な木版画で近代文明の不条理を描く現代美術家。旧奈良監獄の歴史を「日本の近代化」と「少年の更生」という2つの物語に重ね合わせ、作者自身の過去の経験を投影。いかなる境遇でも生き抜くことへの救いを「スクール・ウォーズマン」という無敵のヒーロー像に託して表現。

キュンチョメ〈海の中に祈りを溶かす〉
ホンマエリとナブチによるアートユニット。来館者が抱く「人間の業(ごう)」や「罪と罰」への思索を深め、心を遠くへといざなう時空を創造

 

展示の締めくくりとなる「むすびの部屋」では、アーティストや身近な人へ言葉を届ける「プリズン ポストカード プロジェクト」も実施しているとのこと。

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

ミュージアムショップ

なお、放射状に伸びる旧奈良監獄収容棟は、ミュージアムとしてのコンバージョン以外にもラグジュアリーホテルなどへの改修が進められており、〈星のや奈良監獄〉が6月25日に開業予定です。

奈良監獄ミュージアム 施設概要

アートディレクター:佐藤 卓
ミュゼオグラフィー・スーパーバイザー:アドリアン・ガルデール(Adrien Gardère)
所在地:奈良県奈良市般若寺町(はんにゃじちょう)18(Google Map
開館時間:9:00-17:00(最終入館 16:00)
休館日:なし(ただし、メンテナンス休館を除く)
料金:大人 2,500円~ ※公式ウェブサイト予約ページからの事前予約を推奨
付帯施設:カフェ&ショップ
開業日:2026年4月27日(月)

奈良監獄ミュージアム ウェブサイト
https://hoshinoresorts.com/nara-prison-museum/ja/

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