一般社団法人日本建築学会は、2026年の日本建築学会賞の各賞(大賞・教育賞・著作賞・作品選奨・奨励賞・作品選集新人賞・文化賞など)を4月15日に発表しました。
“近年中、主として国内に竣工した建築の設計(庭園・インテリア,その他を含む)であって、技術・芸術の進歩に寄与する優れた作品”に贈られる作品部門では、学会賞選考委員会による現地調査を経て、以下の3作品が受賞しています(列記の順は日本建築学会ウェブサイト「2026年各賞受賞者」発表ページに準じる。カッコ内は受賞者の所属組織名)。
日本建築学会賞(作品)受賞3作品
・屋島山上プロジェクト(SUO)▶︎▶︎▶︎見る
・霞ケ浦どうぶつとみんなのいえ(髙橋一平建築事務所)▶︎▶︎▶︎見る
・金沢美術工芸大学(SALHAUS、カワグチテイ建築計画、仲建築設計スタジオ)▶︎▶︎▶︎見る
『TECTURE MAG』では、受賞者から提供された設計コンセプトなどのテキストと内外観の竣工画像をもとに、受賞作品をそれぞれ詳しく紹介します。
受賞者
周防貴之(SUO代表取締役)

©︎ Laurian Ghinitoiu

©︎ SUO
プロジェクト概要
香川県高松市屋島(やしま)の展望台に建つ高松市屋島山上交流拠点施設〈やしまーる〉[*]と、隣接して建つ〈れいがん茶屋〉からなるプロジェクトである。
〈やしまーる〉は、屋島のこれからのあり方を模索する高松市による交流拠点施設として新築を計画されたものであり、2015年に行われた国際プロポーザルにて私たちが選出された。〈れいがん茶屋〉は大正時代の木造建築で、山上で観光客向けの休憩所・土産店として親しまれてきたが、時代に見合ったこれからのあり方を模索する中で、〈やしまーる〉の設計者であった私たちに改修設計が託された。屋島はかつて観光地として栄えたが、近年では客が遠のき、廃墟や空き地が目立つようになっていた。そうした状況の中、〈やしまーる〉、〈れいがん茶屋〉の双方において、時代の流行に左右されない屋島固有の魅力を最大限活かしたあり方を模索したい、というのが、本プロジェクトにおける主旨であった。私たちは、異なる敷地、異なる施主による個別の建築であることを越えて、建築を通して場所そのものに関わることで、その土地が持つ潜在的な可能性を浮かび上がらせたいと考えた。建築を独立した建物として捉えるのではなく、地形的な広がりの中に存在する地形の一部であると捉え、さらに建築が場所と直接的に関わることで、異なる2つの場所が統合され、その場の価値が創造される建築のあり方を模索した。
周防貴之
*.2021年12月から翌年1月にかけて高松市が実施した公募により決定した愛称(高松市2022年3月29日発表)

敷地全体図 提供:SUO

©︎ SUO

©︎ Laurian Ghinitoiu

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©︎ Laurian Ghinitoiu

れいがん茶屋 平面図 提供:SUO

れいがん茶屋 工事風景 ©︎ SUO

れいがん茶屋 工事風景 ©︎ SUO

©︎ Laurian Ghinitoiu

©︎ Laurian Ghinitoiu

©︎ SUO

©︎ Laurian Ghinitoiu
DATE
屋島山上交流拠点施設(公募愛称:やしまーる)
建築設計:SUO+Style-A 設計共同企業体
構造設計:佐々木睦朗構造計画研究所
設備設計:森村設計
防災設計:安宅防災設計
積算:二葉積算
高松市建築アドバイザー:門内輝行
施工:谷口・籔内特定建設工事共同企業体
施工アドバイス:豊田郁美(ARTISAN)
敷地条件:地域地区 史跡・天然記念物「屋島」,瀬戸内海国立公園、法22条指定区域、特定用途制限地域
⽤途:交流拠点
階数:地上2階
構造:鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造および壁式鉄筋)
敷地面積:3,416.62m²
建築面積:1,178.58m²
延床面積:983.72m²
設計期間:2016年4月~2019年12月
工期:2020年03月~2022年07月
オープン:2022年8月
れいがん茶屋
建築設計:SUO
構造設計:平岩構造計画
施工:白崎工業
施工アドバイス:豊田郁美(ARTISAN)
階数:地上2階
構造:木造(一部鉄骨造)
敷地面積:2,713.44m²
建築面積:213.22m²
延床面積:253.72m²
設計期間:2017年10月~2020年12月
工期:2020年12月~2021年08月
オープン:2021年10月
高松市屋島山上交流拠点施設[やしまーる]案内ページ
https://www.yashima-navi.jp/jp/yashimaru/
受賞者
髙橋一平(髙橋一平建築事務所)

撮影:髙橋一平建築事務所

概念図1「外側から建築をつくる」 提供:髙橋一平建築事務所

概念図2「環境としての建築をつくる」 提供:髙橋一平建築事務所

ダイアログ 提供:髙橋一平建築事務所

鳥瞰イメージ 提供:髙橋一平建築事務所

1階配置図兼平面図 提供:髙橋一平建築事務所

断面図 提供:髙橋一平建築事務所
プロジェクト概要とコンセプト
環境としての建築
〈霞ケ浦どうぶつとみんなのいえ〉は、東京から2時間ほどの平野に広がる霞ケ浦の畔に新たな公共の場として建つ。茨城県行方市とのPFI(Private Finance Initiative)事業[*]で、旧科学館と湖畔エリアの再生整備プロポーザルを経て始まった。協働の事業者は地元で畜産と観光牧場を元々営んでいた。私たちは企画から携わりこの場所を動物とふれあう場所へ変えることとなった。
地球は今や人新世と言われるほど人工物で溢れた。ここでの試みは、かつて人間が築いた世界(旧科学館)を解体し、光、風、雨、緑といった自然を進入させ、そこへ動物たちが乗り込み、人工物が自然へ還元されていく事実を人間が目の当たりにする場所をつくることである。また人間と自然との関係において、近代はその理知的な所作により両者をかえって遠ざけたが、ここでは限りなく近づけようとしている。新築や解体、改修、事業者によるセルフビルドといったあらゆる建築行為を組み合わせ、近代まで続いた人間中心による「空間」の構築ではなく、両者が主体となる「環境」を構築していく。それは新たな建築概念となるだろう。外周側から巻きつく新築のコンクリート製周遊テラスは、人間が統制できない自然と同じように、人間社会に対し外的に存在する「四人称」の視点を携え、既成の秩序や対立概念を交ぜていく。その視点を歩くことによって、旧建物や霞ケ浦、空や大地や緑などの自然が、ひとつの新しい環境として結びつく。ここでの経験を通し、人間が自然の尊厳、すなわち自然や動物は人間の外的存在なのであって私たちはそれらと同じ時空を生きているという事実を肌で感じ、人間に本来備わる持ち前の感性と思考を取り戻せるよう願う。この場所は、その思考を未来へ届けるための遺跡となる。(髙橋一平)*.本事業はRO(Rehabilitate-Operate)方式を採用。所有権は行方市が有し、整備と運営を事業者(霞ケ浦ふれあいランド / MOFF+髙橋一平建築事務所+オカベ+常南グリーンシステム)が行っている

撮影:髙橋一平建築事務所

撮影:髙橋一平建築事務所

撮影:髙橋一平建築事務所

撮影:髙橋一平建築事務所

撮影:髙橋一平建築事務所

撮影:髙橋一平建築事務所

撮影:髙橋一平建築事務所

撮影:髙橋一平建築事務所

撮影:髙橋一平建築事務所
DATE
設計・監理:髙橋一平建築事務所
構造設計:小西建築構造設計
設備設計:環境エンジニアリング
造園設計:髙橋一平建築事務所
動物導入:MOFF
壁画:長井朋子(協力:小山登美夫ギャラリー)
ロゴ:吉野敏充デザイン事務所
広報物制作協力:いろいろ
施工:オカベ、常南グリーンシステム
所在地:茨城県行方市
建主:行方市
PFI事業者:霞ケ浦ふれあいランド
⽤途:博物館・動物園・地域交流施設
規模:地上2階
構造:鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
敷地面積:21756.86m²
延床面積:4968.29m²
竣工:2024年7月
霞ケ浦どうぶつとみんなのいえ ウェブサイト
https://doubutsutominna.jp/
受賞者
日野雅司(SALHAUS共同代表、東京電機大学教授)
川口有子(カワグチテイ建築計画共同代表)
仲 俊治(仲建築設計スタジオ共同代表、東京都立大学准教授)

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ
「地域に開き、正しく閉じる」
本プロジェクトは2023年に移転した、金沢美術工芸大学の新キャンパスです。分棟形式とすることで、中心を貫く『アートプロムナード』と、5つの『庭』という特徴づけられた外部空間を設けています。
アートプロムナードは学生の交流・生活の場であると同時に、地域住民が散歩しながら大学の活動や作品を目にする開かれた場所です。一方で、校舎に囲まれた『創作の庭』は、制作に没入し、自己と向き合いながら新しい芸術の創作に集中できる環境です。地域に開きつつ、正しく閉じられた空間が両立する、街のようなキャンパスです。
加えて、キャンパス各所に設けた『アートコモンズ』は、学生の展示や課題の講評会が行われるギャラリー空間です。学生は通りがかりにアートコモンズで行なわれている他専攻の展示や講評会に偶然に出会うことができます。また、創作の庭を囲むように配置された『共通工房』は、領域を横断する現代のアート制作を支えるために新設された制作の場です。木や金属、石など素材別に用意された専門性の高い各共通工房に、どの学生も自由にアクセスすることができます。
またデジタル機器やシアタールームなど、新しい芸術の表現を支える共通工房も用意されています。こういった環境はすべて、学科・専攻の枠を越えて互いの創作に触れ、刺激し合うための場づくりであり、キャンパス全体が2階ブリッジでつながる回遊性の高い計画となっていることも、学生・教員たちの交流を誘発しています。
本計画では3つの設計事務所が協働することで、ひとつの主体によるデザインでは起こりえないような、多様性を内包した景観・空間を生み出す試みを行っています。金沢美術工芸大学の学科・専攻の多様さを建築が受け止めること、それだけの包容力をもつことが重要と考え、設計においても多様性を担保しつつ全体がバラバラにならないような協働のあり方を模索しました。それぞれの守備範囲が複雑に相互乗り入れするように分担をすることで、さまざまな材料やディテールが混ざり合い、街並みのような風景ができたと考えています。日野雅司、川口有子、仲 俊治

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

断面図 提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

キャンパスおよび周辺配置図 提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ
DATE
設計:
建築:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ
構造:構造計画プラス・ワン
設備:総合設備計画
外構:スタジオテラ
積算:日積サーベイ
照明:岡安泉照明設計事務所
サイン:廣村デザイン事務所
家具:藤森泰司アトリエ
音響:永田音響設計
監理:
建築:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ
構造:構造計画プラス・ワン
設備:総合設備計画・ムラシマ事務所
施工(建築):
真柄トーケン、兼六、北川、鈴木特定建設工事共同企業体
城東、ウェルビー、本田特定建設工事共同企業体
所在地:石川県金沢市
建主:金沢市
⽤途:大学
規模:地下1階、地上3階
構造:PCa造、RC造、鉄骨造、木造
敷地面積:47,275.44m²
延床面積:37,357.65m²
竣工:2023年7月
金沢美術工芸大学 ウェブサイト
https://www.kanazawa-bidai.ac.jp/
作品部会での選考経過、選出および贈賞理由は、日本建築学会ウェブサイトの各賞発表ページを参照してください。
日本建築学会「2026年各賞受賞者」発表ページ
https://www.aij.or.jp/2026/2026prize.html