全49作品のうち11作品が揃う森美術館「ロン・ミュエク」展をレポート - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
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全49作品のうち11作品が揃う森美術館「ロン・ミュエク」展をレポート

森美術館「ロン・ミュエク」展 会場レポート

[Report] 寡作の作家、全49作品のうち11作品が集結、18年ぶりの日本個展の見どころ

東京・六本木の森美術館にて、オーストラリア出身の現代美術作家、ロン・ミュエク(Ron Mueck|1958年-)の展覧会が開催されています。
本展は、パリ、ミラノ、ソウルに続く巡回展であり、森美術館とフランスのカルティエ現代美術財団の共催によって日本開催が実現したものです。日本では2008年に金沢21世紀美術館で開催されて以来、2度目の個展になります。

森美術館「ロン・ミュエク」展

展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

 

実際の人物よりもはるかに大きく、あるいは小さく造られるその彫刻は、私たちの知覚に対する先入観への挑戦でもあります。同時に、実際に存在していそうであるというリアリティに肉迫する一方で、鑑賞者一人ひとりの解釈や思索を促す曖昧さも残しています。神秘的でありながら圧倒的な存在感を放ち、私たちと身体との関係、そして存在そのものとの関係を問いかけます。(本展プレスリリースより)

 

『TECTURE MAG』では開幕前日のメディア内覧会を取材、本展担当キュレーターの解説付きで会場を見学するプレスツアーにも参加しました。本展についてレポートします。

ロン・ミュエクとは?

ロン・ミュエクは1958年生まれ、オーストラリア・メルボルン出身、現在は英国のワイト島にスタジオを構えて作品を制作しています(その様子は本展で特別に展示されている記録写真と映像作品で垣間見ることができます)。

森美術館「ロン・ミュエク展」

ゴーティエ・ドゥブロンド〈チキン/マン〉(2019-2025年)ハイビジョン・ビデオ

作家としては遅咲きで、映画・広告業界で20年以上働いた後、1990年代半ばに彫刻の制作を開始。1996年にロンドンのヘイワード・ギャラリーで開催された展覧会で、ポルトガル人画家のパウラ・レゴの絵画と共に彼の彫刻〈ピノキオ〉を展示し、現代美術界にデビューします。その翌年、他界した父親を小さく表現した作品〈死んだ父〉(1996-1997年)が、同地のロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催された「センセーション:サーチ・コレクションのヤング・ブリティッシュ・アーティスト」展に出品され、注目を浴びました。以来、ミュエクは、オーフス現代美術館(デンマーク)、オーストラリア・ナショナル・ギャラリー(NGA)、ブルックリン美術館など世界各地の美術館で作品を発表。日本国内では、西沢立衛建築設計事務所が設計した十和田市現代美術館が2008年に開館する際、ミュエクのための常設展示室が設けられ、高さ4mの作品〈スタンディング・ウーマン〉(2007)が展示されています。

寡作のミュエクの11作品を見られる展覧会

ミュエクは、1つの作品を制作するために数カ月、時には数年を要するため、過去30年間に制作された作品総数は49点しかない作家です。本展には、そのミュエクの初期の作品を含む11点が出展されている貴重な機会であり、そのうち6点が日本初公開の作品です。
中でも注目は、それぞれ微妙に異なる巨大な頭蓋骨作品によるインスタレーション〈マス〉です(本展のポスターにも採用されている作品)。パリ、ミラノ、ソウルの各会場にも展示されていますが、ミュエクは展示空間にあわせて展示構成を変えており、今回も森美術館の展示室にあわせたインスタレーションとなっているとのこと。

会場風景

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈枝を持つ女〉(2009年)所蔵:カルティエ現代美術財団 ※日本初公開
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈イン・ベッド〉(2005年)所蔵:カルティエ現代美術財団
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

〈イン・ベッド〉は、2006年に東京都現代美術館で「カルティエ現代美術財団コレクション展」が開催された際に出展され、同展のメインビジュアルにも使用された作品です。長辺幅6m50cmもある巨大な作品ですが、そうとわからない箇所で分割されており、会場に搬入、設置されています。

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 撮影:吉村昌也 画像提供:カルティエ現代美術財団

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈ゴースト〉(1998年 / 2014年)所蔵:ヤゲオ財団コレクション(台湾)
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG
どこにでも居そうな10代の女性像の彫刻だが、身長は約2mあり、足も平均的なサイズより大きくデザインされている

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈若いカップル〉(2013年) 所蔵:ヤゲオ財団コレクション(台湾)
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

「具象化する対象の選び方、シーンの切り取り方、ミクストメディアと技術を駆使した精緻なつくりなどがミュエクの魅力の1つですが、例えば、この〈若いカップル〉は、ごくありふれた若い男女のカップル像にも見えるものの、背面に回ってよく見てみると、男性が女性の手首付近を掴んでおり、いったいどういう関係なのかと鑑賞者の想像力を掻き立てる仕掛けが施されています。しかし作家による説明は一切ありません。そういったところもミュエクの魅力となっています」(本展の企画者に名を連ねる、森美術館アジャンクト・キュレーターの近藤健一氏によるプレスツアー時の解説の一部を要約)。

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈エンジェル〉(1997年)個人蔵 ※日本初公開
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

個人蔵のため展覧会への出展はとても珍しいという、ミュエクの活動初期、1997年の作品〈エンジェル〉は、作品保護のため日中は外光スクリーンを下ろしている部屋での展示。夜間はスクリーンを上げ、東京の夜景を天使が眺めるような配置となっています。

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈ダーク・プレイス〉(2018年)所蔵:ZAMU(アムステルダム) ※日本初公開
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈舟の中の男〉(2002年)個人蔵
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年  Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈チキン/マン〉(2019年)所蔵:クライストチャーチ・アートギャラリー/テ・プナ・オ・ワイウェトゥ(ニュージーランド) ※日本初公開
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈買い物中の女〉(2013年)所蔵:タデウス・ロパック(ロンドン・パリ・ザルツブルク・ミラノ・ソウル) ※日本初公開
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈マスクⅡ〉(2002年)個人蔵
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 撮影:吉村昌也 画像提供:カルティエ現代美術財団

本展のメインビジュアルにもなっている作品〈マス〉は、日本初公開作品の1つで、ミュエクの最新作の1つ。1つとして同じものがない巨大な骸骨が100個、ひとつ1つ梱包されて森美術館に運び込まれ、ミュエク自身が本会場の空間にあわせて構成。パリ、ミラノ、ソウル会場と同様に、サイト・スペシフィックな展示となっています。

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ロン・ミュエク〈マス〉(2016-2017年)所蔵:ビクトリア国立美術館(メルボルン)、2018年フェルトン遺贈 ※日本初公開
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

終盤に用意された、巨大な骸骨によるランドスケープは、分断の時代と呼ばれる昨今、人類に共通する本質や尊厳、あるいはヒューマニティなどについて提起し、人々とともに解いていく場の創出を目指した森美術館の姿勢をあらわしているといえます。
会期中は、美術館スタッフによるギャラリーツアーなど、関連プログラムも開催されます。

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

フランスの写真家、ゴーティエ・ドゥブロンドによる展示
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

本展では、フランスの写真家で映画監督のゴーディエ・ドゥブロンドが撮影した、作家のスタジオと制作過程を記録した貴重な写真作品と映像作品が公開されているのも見どころです。
記録写真は2つの展示室に分かれ、前半は、かつてミュエクがロンドンに構えていたスタジオでのもの。後半は、ミュエクの今の拠点となっているイギリス南部のワイト島での制作風景です。本展出展作品のスタディやモックアップなどが映り込んでいる写真を意識してセレクトしているとのこと。

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

フランスの写真家、ゴーティエ・ドゥブロンドによる展示
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

フランスの写真家、ゴーティエ・ドゥブロンドによる展示
展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(東京)2026年 Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

ミュエクの活動の軌跡を、過去の展示風景やドローイングなどでビジュアライズに紹介した年表 Photo: TEAM TECTURE MAG

森美術館「ロン・ミュエク展」会場風景

年表は大きく3段に分かれ、上から、個展、グループ展、日本関連となっている Photo: TEAM TECTURE MAG


#Mori Art Museum 森美術館 YouTube:「ロン・ミュエク」展トレイラー|Mori Art Museum “Ron Mueck” Trailer(2026/04/09)

「ロン・ミュエク」展 開催概要

会期:2026年4月29日(水・祝)〜9月23日(水・祝)※会期中無休
会場:森美術館
所在地:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階(Google Map
開館時間:10:00-22:00 ※火曜のみ17:00まで、ただし5月5日(火・祝)、8月11日(火・祝)、9月22日(火・祝)は22:00まで
入館料:森美術館 本展案内ページを参照
※入館は閉館30分前まで
主催:カルティエ現代美術財団、森美術館
特別後援:オーストラリア大使館
助成:ブリティッシュ・カウンシル
協賛:大林組、鹿島建設
企画:近藤健一(森美術館アジャンクト・キュレーター)、チャーリー・クラーク(本展アソシエイト・キュレーター)、キアラ・アグラディ(カルティエ現代美術財団キュレーター)

森美術館 ウェブサイト
https://www.mori.art.museum/jp/



Texed & Photo of the day by Naoko Endo / TEAM TECTURE MAG

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