中村竜治、DOMINO ARCHITECTS、熊谷彰博、Siin Siin、unpis の5組が出展、光伸プランニングによる⼤型3Dプリンタ実験プロジェクト「SOKEI」展 会場レポート - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
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中村竜治、DOMINO ARCHITECTS、熊谷彰博、Siin Siin、unpis の5組が出展、光伸プランニングによる⼤型3Dプリンタ実験プロジェクト「SOKEI」展 会場レポート

光伸プランニングによる⼤型3Dプリンター実験プロジェクト「SOKEI」展 レポート

[Report] DOMINO ARCHITECTS、中村竜治、Siin Siin、熊谷彰博、unpis の5組が PHASE 1に続いて作品を展示

東京・青葉台にあるギャラリー・LICHT Galleryにて、3Dプリンターの新たな造形表現の可能性を探るプロジェクト「SOKEI」の企画展示が5月14日より開催されています。2024年に東京・南青山のギャラリー(Gallery 5610)で開催された「SOKEI PHASE 1」(下の写真)に続く、作品披露のPHASE 2という位置付けです。

『TECTURE MAG』では、今回の「SOKEI」展会場にて15日に行われた出展作家5組によるギャラリーツアーを取材しました。本展をレポートします(以下、一部で敬称略。ギャラリーツアー風景の写真はTEAM TECTURE MAG撮影)

光伸プランニング 2024年「SOKEI PHASE 1」会場写真

2024年「SOKEI PHASE 1」会場写真(撮影:小川真輝)
同展では、ノズルから樹脂(酢酸セルロース)を「垂らす」「落とす」「吐出量を変動させる」といったさまざまな出力実験の成果182点の中から60点強を披露

 

本プロジェクトの主催は光伸プランニング。出展作家は、熊谷彰博、中村竜治、DOMINO ARCHITECTS(大野友資)、Siin Siin、unpis の5組。このうち、2023年のプロジェクト立ち上げ時から熊谷彰博と大野友資の両氏がディレクターを務めています。

約3年におよぶ本プロジェクトについてまとめた書籍『SOKEI』の序文によれば、大手印刷会社勤務を経て、光伸プランニングの2代目として2001年に代表に就任した原 壯氏が、1mを越える造形スペースを有する超大型3Dプリンターを導入。美しい積層の出力に飽き足らず、造形の新たな可能性を求めて、熊谷と大野の両氏に相談。そこで「きれいに積むことができる」という3Dプリンターならではの特性を取り外してみることを提案され、さまざまなアプローチと実験を重ね、本展で見られるような作品群が誕生したとのこと[*]

*.本プロジェクトで使用した3Dプリンターは、エス.ラボ社の〈茶室GEM〉シリーズ、熱溶解積層方式。積層素材は植物性由来の酢酸セルロースで、原料となる木材の色味が出ている黄色系と、着色によるグレー系とブルー系、無色で原則展開された

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」会場写真

「SOKEI PHASE 2」会場写真 Photo: TEAM TECTURE MAG

 

「SOKEI」プロジェクトとは?

プロジェクトの背景

3Dプリンターの新たな造形表現の可能性を探るプロジェクト「SOKEI」は、東京を拠点にサイン・ディスプレイなどを制作する都市型工房・光伸プランニングが、2023年にスタートした大型3Dプリンター実験プロジェクトです(2023年9月10日プレスリリース)。
2024年には、約1年にわたる基礎研究の成果を「PHASE 1」として、5組の作家による、60点以上の出力スタディを、Gallery5610にて発表しました。
続く、今回の「PHASE 2」では、前回と同じ5組の作家が参加し、約2年にわたる実験と制作を経て、造形表現をさらに深化させた成果を、LICHT Galleryにて発表します。
「SOKEI」への取り組みを通じて生まれた多様な表現や知見をもとに、光伸プランニングでは、街や空間に長く残り、その場所に定着するようなプロジェクトの可能性を模索していきます。

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」

2024年「SOKEI PHASE 1」イメージビジュアル

Director’s Statement

2023年、私たちは光伸プランニングとともに、彼らが導入した大型3Dプリンターの可能性を探るプロジェクト「SOKEI」を立ち上げました。2000年代以降のメーカーズ・ムーブメントを経て、3Dプリンターは「理想の形を正確に再現する魔法の箱」として社会に普及してきました。しかし、SOKEIではそうした一般的なイメージに回収されるのではなく、3Dプリンターを単なる「樹脂を任意に吐出する道具」として捉え直すことを試みています。
本展では、熊谷彰博、中村竜治、DOMINO ARCHITECTS、Siin Siin、unpisという、分野の異なる5組の作家が参加。それぞれが作品制作までの実験を通じてこの機械の可能性を探っていきました。
プロジェクトで使用される大型3Dプリンターは、想像以上に簡易的な仕組みで動いていました。そのシンプルさゆえにエンジニアが介入できる余白があり、機械を使いこなし、時にはハックして、さまざまな実験を行うことが可能でした。
作家と光伸プランニングのエンジニアによる制作の場では、あらかじめ描いた形を再現することよりも「こう出力したら、何が起こるのか」を観察する時間が圧倒的に長く、出力物とその出力条件との連関を身体感覚として積み上げていきました。その過程で、機械は操作対象というよりも、手を動かす延長にある道具へと変化し、やがて5組が独自の造形方法を見出していきました。
SOKEIという名称は、熱や力を加えられ形を与えられた部材を指す「素形材」に由来します。
今回の研究開発は、正解を最短距離で目指すのではなく、さまざまな驚きや発見を伴う回り道を歓迎するものでした。ここから生まれた表現の種が、今後さらに独自の文脈へと枝分かれし、拡がっていくことを期待しています。

SOKEI ディレクター 熊谷彰博 / 大野友資

 

出展作家と作品

以下、2026年5月15日に行われたギャラリーツアーの順番による

中村竜治〈Countless One-Offs〉

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」出展作品:中村竜治〈Countless One-Offs〉

中村竜治〈Countless One-Offs〉部分

 

プロフィール
建築家、中村竜治建築設計事務所代表
東京藝術大学大学院修士課程修了後、青木淳建築計画事務所(現AS)を経て、中村竜治建築設計事務所を設立。 これまでの主な仕事に、神戸市役所1号館1階市民ロビー改装、MA nature, JINS佐久平店、21_21 DESIGN SIGHT企画展「Material, or」会場構成、住宅地に立つ倉庫など。主な展示に、「建築はどこにあるの? 7つのインスタレーション」(東京国立近代美術館、2010)、「反重力展」(豊田市美術館、2013)、「第八次椿会 ツバキカイ8 この新しい世界」(資生堂ギャラリー、2021-2023)など。主な著書に『現代建築家コンセプト・シリーズ 16 中村竜治 | コントロールされた線とされない線』(LIXIL出版[現取り扱い:トゥーヴァージンズ]、2013)。主な受賞に京都建築賞優秀賞(2018)、JIA新人賞(2020)などがある。

中村竜治建築設計事務所
https://www.ryujinakamura.com/

 

DOMINO ARCHITECTS〈Slurring〉

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」出展作品:

DOMINO ARCHITECTS〈Slurring〉部分

 

プロフィール
DOMINO ARCHITECTS
デザインの実践と理論の両面から歴史や文脈への接続を試み、情報と物質、デジタルとアナログ、ハイテクとローテクを相対化するような設計を手がける。その活動はさまざまなチームとの協働によって形作られ、建築、インテリア、プロダクトデザイン、リサーチや執筆、教育まで多岐にわたる。

大野友資
DOMINO ARCHITECTS代表、一級建築士、FICCIONES所属
1983年ドイツ生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院修士課程修了。カヒーリョ・ダ・グラサ・アルキテットス(リスボン)ノイズ(東京 / 台北)を経て、2016年独立。2011年より東京藝術大学非常勤講師、2023-2024年東京理科大学非常勤講師

DOMINO ARCHITECTS
https://dominoarchitects.com/

 

熊谷彰博〈Score〉

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」出展作品:

熊谷彰博〈Score〉部分

 

プロフィール
デザイナー、ディレクター。AK_DD代表。
物の見方を探究し、独自の視点と文脈の再構築からデザインとディレクションを手がける。物の構成と性質を通じて、表象を媒介するオブジェクトの習作を重ね、個展「OBJECTS」にて発表(2021〜)。近年はその手法をプロダクトや家具に応用し、作品としてSEKISAKA「PARK」DOCU「ACU」、FIEL「OPEN」がある。
これまでの主な仕事に、GOOD GOODS ISSEY MIYAKE「工夫 KUFU」ディレクション、無印良品「STOCK展」 企画・監修 会場構成、T-HOUSE New Balance『NOT FAR』アートディレク ション、21_21 DESIGN SIGHT「雑貨展」コンセプトリサーチ、「柳本浩市展」キュレーターなどがある。書籍『STOCK』(MUJI BOOKS、2017)にて編書

AKIHIRO KUMAGAYA
https://alekole.jp/

 

Siin Siin〈Lop Lop〉

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」出展作品:

Siin Siin〈Lop Lop〉部分

 

プロフィール
デザイナー。東京を拠点に活動し、家具をはじめとする少量生産のオブジェクトの制作、オブジェクトのコンポジションとしての空間設計、多様な分野とのコミッションワークを手がけている。
常に観察から始まるその実践では、素材や技術、場、他者 との関係のなかに身を置きながら制作を進めることで、ずれや揺らぎ、痕跡といった要素を見出し、それらをかたちとして編み直していく。制作では工業的な素材や工程を参照しながらも結果を完全には制御せず、切断や溶接の跡、機械のエラーなど通常は消去される要素を作品の構造として受け入れている。

SIIN SIIN インスタグラム
https://www.instagram.com/siin_____siin/

 

unpis〈SHAPES / WALK〉

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」出展作品:

unpis〈SHAPES / WALK〉部分

 

プロフィール
福島県いわき市生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。 広告、書籍、パッケージなどのイラストを中心にさまざまな分野で活動中。ニュートラルな線とかたち、少しウフフとなる表現を心がけている。
主な著作に作品集『DISCOVER』(グラフィック社、2021)がある。

unpis
https://unpis.net/

 

展示風景

中村竜治〈Countless One-Offs〉

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

DOMINO ARCHITECTS〈Slurring〉

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)
Slurring(スラリン)のネーミングは、『ドラゴンクエスト』シリーズに登場するキャラクターのスライムから

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

熊谷彰博〈Score-〉

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

Siin Siin〈Lop Lop〉

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)
作品はすべてエディションナンバー入り

unpis〈SHAPES / WALK〉

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

5組の作家によるギャラリーツアー レポート

中村竜治〈Countless One-Offs〉作品解説

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」会場写真 / 中村竜治氏による〈Countless One-Offs〉解説

中村竜治氏による作品解説の様子 Photo: TEAM TECTURE MAG ※写っていない右側に柱がある。
「壁と柱のあいだにおさめるための施工図面は引いていますが、実際に積んでいくと、モノ同士が滑ったり、図面ではわからない重力もかかってきて、いちばん上だけ現場対応で調整しました」(中村氏談)

「プリンターの特性として、1つデータがあれば同じものがたくさん出力できる。でも今回のプロジェクトで使っている3Dプリンターは、大量生産ではなくて1点物に適していると思いました。そこで、出力したモノはたくさんなんだけど形は全て違う、無限につくれるんだけど1つとして同じものはない、というコンセプトを設定し、つくりました。機械で出力する量産品で1点物、その中間を狙ったプロダクトです。手順としては、僕が描いたスケッチをAIに読み込ませ、特徴を抽出して、毎回形や大きさが異なる平面図形を自動生成するプログラムを光伸プランニングさんと作成しました。その図形を3Dプリンターで出力し、筒状の立体を30個つくっています。サイズは、購入できることが前提にあったので30cmから60cmでおさめています。使い方は自由です。似たような存在として、石があります。石はそれこそ無限にあり、1つ1つかたちが異なる。価値があるのかないのかよくわからない。それを庭に敷き詰めたり、気に入った石を1つだけ飾ったりする。この作品も、これという用途は決めていません。単体から購入できるので、椅子とかテーブルの台座にしてもいいし、今回のように複数をつなげて空間に拡張できるオブジェとして組み合わせてもいい。今回の展示では、壁と柱の間で積み上げて、空間をゆるやかに仕切る壁のようなインスタレーションとしました」(中村竜治氏談を要約)

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」会場写真 / 中村竜治氏による〈Countless One-Offs〉解説

中村竜治氏による〈Countless One-Offs〉解説の様子 Photo: TEAM TECTURE MAG
「交差する図形からなる細い筒形状などは3Dプリンターならでは。鉄板の溶接ではできない」(中村氏談)

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」会場写真 / 中村竜治氏による〈Countless One-Offs〉

〈Countless One-Offs〉における、中村氏の手描きスケッチ(左)とAIによる生成実験のフェーズ(提供:光伸プランニング)
中村氏が作品にAIを取り入れたのは今回が初めて(中村氏への取材より)

 

DOMINO ARCHITECTS〈Slurring〉作品概要

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」会場写真

DOMINO ARCHITECTSを率いる大野友資氏による作品解説の様子 Photo: TEAM TECTURE MAG

「第一段階(PHASE 1)でのさまざまな実験を経て、大きく2つのことがありました。1つは、上から樹脂を垂らしてみたときに、そのどろっとしたものがとてもおいしそうに見えたこと。そして、3Dプリンターはノズルを縦横無尽に動かして造形していくのが特徴であり通常の工程ですが、そうではなく、受ける側の動きを制御することで、積層とは違うかたちにできないかということ。最終的に、ポリアミド樹脂を水平にピンと張り、円筒状のドラムにして、それを回転させた上から、樹脂を垂らしていく。ノズルは平行移動させ、ポリアミド樹脂の縦糸に樹脂が螺旋状に絡まり、この模様が等間隔でできていきます。上と下の空いたところは手作業で縫い、クッションのようにしてみました。硬いけども、柔らかい。中村さんの作品が、入力した線と形を3Dプリンターで再現していったのに対して、僕の場合は、目指すかたちは決めずに、さまざまな試行と発見を経てできたものをどうおもしろくしていくかというアプローチでした。かたちは最後に発見された。自然と制御の均衡がとれた造形になったと思います。出力の様子はループ上映している映像資料に映っているので、そちらをご覧ください」(大野友資氏談)

 

熊谷彰博〈Score-〉作品概要

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」会場写真

熊谷彰博氏による作品解説の様子 Photo: TEAM TECTURE MAG
「素材のふるまいからどのような造形や構造が立ち上がるのか、その生成の過程に関心があった」(書籍『SOKEI』P124 熊谷氏寄稿文より)

「1つの生成原理から複数の造形、構造体へと派生したいった作品です。3Dプリンターの出力面は通常、1つの平面に対して、樹脂がいわば沿うようにして造形されていくのですが、その面にもし穴が空いていたら?という仮説が発想の起点になっています。会場内の映像資料を見てもらえるとわかりますが、3Dプリンターのノズルはけっこうゆっくりと動いていく。その下に穴をあけると、理論上は樹脂が垂れ下がり、カテナリー曲線になるのですが、出力する樹脂は熱を帯びかつ粘性があるので、均等な美しさにはなりません。例えば、ノズルを左右に動かして出力しているので、樹脂が冷えて硬化する前にその動きに引っ張られ、箇所によっては異なる太さになります。機械で出力しているのに、どこか自然なかたちにも見える。テストしながらいろいろなかたちを発見していきました。そうしてできた円形フレームの単体を壁と床に、3層にしたものを天井から吊るして展示しています。3Dプリンターでの造形は、中途で出力を止めることが難しいため、一筆書きのように造形していくのですが、よく見れば起点と終点がわかる。SOKEIプロジェクトは、それぞれの進捗をレポートで共有しながら進行したのですが、中村竜治さんに『これは時間と手順の造形だね』と言われたのが心に残っていて、造形の手順がわかることも、3Dプリンター造形のおもしろさの1つだと思いました」(熊谷彰博氏談)

 

Siin Siin〈Lop Lop〉作品概要

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」会場写真

Siin Siin氏による作品解説の様子 Photo: TEAM TECTURE MAG
大野氏曰く「時間軸に介入した造形がとてもおもしろい」

「これまで僕は、3Dプリンターを無意識のうちに避けていたところがありました。デザイナーが考えた形を高い精度でそのまま再現してくれる機械である、という印象があり、とっつきにくかったのですが、今回のプロジェクトでは、その高精度の3Dプリンターをアナログに捉え直すことを試みています。展示した4つとも、基本は円形に樹脂を出力した積層形状ですが、いずれも出力の途中で円筒の座標を意図的にずらしています。支えがなくなった樹脂は重みで垂れ、重なりながら積層していく。そして徐々に元の座標へと戻っていく。実は細かいところで光伸プランニングさんに調整してもらっているのですが、通常はエラーとして扱われる過程がかたちとなって立ちあらわれています。例えばこの中にコップを入れれば一輪挿しにもなり、光源を入れれば照明にもなります。購入者に自由に使ってもらえたら」(Siin Siin氏談)

unpis〈SHAPES / WALK〉作品概要

光伸プランニング「SOKEI PHASE 2」会場写真

unpis〈SHAPES / WALK〉展示風景 Photo: TEAM TECTURE MAG

「イラストレーターとして2Dの世界で作品を制作していますが、3Dの領域にも以前から興味がありました。今回のプロジェクトでは、その2つの領域の関係性について考察するところから始めました。光伸プランニングさんで実際に3Dプリンターの出力の様子を見せてもらい、線状に出てくる樹脂に、ペンで絵を描く自分の仕事との類似性を見出して、1本の線を共通項として製作を進めていきました。1本の線で絵を描くことからスタートし、線を立体に積んでみる、出力の最初と最後の絵を変えてみる、その間にまた別の絵を挿入してみるなど、さまざまな実験を経てできあがったのがこの2つの造形です。向かって右側は、歩いている人物の動きをアニメーションのコマ割りのようにして時間の経過を表現したもの。左側は、5つのかたちが変形していく過程を可視化して表現しています。実は途中までは、その間に置いてある、ブロック状のかたちで製作を進めていたのですが、塊だとなんの絵なのかわかりにくかった。あるとき、温度や湿度などの関係で樹脂がうまく定着しなかったエラーサンプルを見せてもらったのですが、手で積層を引き剥がすことができた。そこで、剥離できるように調整して出力させれば、絵として見えてくることを発見し、最終的にこの2つの造形になりました。犬に始まり、鳥、蝶、木に変化して最後には人(ひと)に変形していく作品では、私が作画したのはこの5点だけで、変化の過程は光伸プランニングさんによるモーフィング技術によるものです。普段は自分ひとりで制作しているので、この他者の介入がとてもおもしろかった。協働ならではのかたちになったと思います」(unpis氏談)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

光伸プランニング 2026年「SOKEI PHASE 」会場写真

Photo: Mitsuo Suma(Licht Gallery)

「3Dプリントをほぼやったことがない作家3組を大野さんと熊谷さんに選出してもらい、始まったプロジェクトも、今回の展示でいったん終了します。5組の作家それぞれと弊社のエンジニアたちとの対話、そして3Dプリンターという機械とも対話しながら、試行錯誤を重ねていった約3年間は、私たちにはとても貴重な得難い機会となりました。通常の3Dプリンターの使い方ではないやり方による可能性を見出したことは、1つ大きな成果です。この体験と知見を本業のディスプレイのデザインなどに反映していきたい。新しい表現、新しい空間を生み出す何かにしていきたいと考えています」(光伸プランニング代表取締役 原 壯氏談)

「SOKEI PHASE 2」開催概要

会期:2026年5⽉14⽇(⽊)〜24(⽇)
開場時間:13:00–18:00
定休日:⽕・⽔曜
会場:LICHT Gallery
所在地:東京都⽬黒区⻘葉台3-18-10 カーサ⻘葉台2F(Google Map
参加作家:熊谷彰博、中村竜治、DOMINO ARCHITECTS、Siin Siin、unpis
主催・製作・施工:光伸プランニング

「SOKEI」プロジェクト インスタグラム
https://www.instagram.com/sokei_3d/

本展に関する光伸プランニング note
https://note.com/koshin_planning/n/n94d8f533d880


関連書籍『SOKEI』

2024年「SOKEI PHASE 1」および2026年「SOKEI PHASE 2」をまとめた1冊。プロジェクト立ち上げの経緯から、参加作家5組それぞれのスタディ、3Dプリンターによる出力と作品の完成までの軌跡を辿る。本展会期中に会場にて販売あり。

光伸プランニング『SOKEI』書影

光伸プランニング発行『SOKEI』書影(提供:光伸プランニング)

監修:熊谷彰博、大野友資
作家:熊谷彰博、中村竜治、DOMINO ARCHITECTS、Siin Siin、unpis
寄稿:ララ・チャップマン、砂山太一
言語:日本語∕英語
判型:B5変型(W105mm×H180mm)
総頁数:288ページ(1C 96P ∕ 4C 192P)
発行:光伸プランニング
販売価格:2,750円(本体2,500円+消費税)
刊行日:2026年5月


関連企画「SOKEI KIOSK」

光伸プランニング 2024年「SOKEI PHASE 1」会場写真

2024年「SOKEI PHASE 1」会場写真(撮影:小川真輝)

本展会期中、2024年に開催した「SOKEI-PHASE 1」にて展示された3Dプリントの造形スタディが、会場近くのギャラリースペースで販売されます。

日程:2026年5⽉16⽇(⼟)〜17(⽇)13:00–18:00
会場:HIKE近くのギャラリースペースにて / HIKE店頭にて会場を案内
HIKE(東京都目黒区東山1-10-11[Google Map] 営業時間:13:00-18:00 / 火・水曜定休)


Texed & Photos of the gallery tour on the day by Naoko Endo / TEAM TECTURE MAG
※本稿では過去のニュース・特集での表記「3Dプリンタ」ではなく、主催者表記の「3Dプリンター」とした

 

 

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