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【内覧会レポート】トラフ建築設計事務所がリノベーションしたトーキョーバイクの旗艦店〈TOKYOBIKE TOKYO〉

FEATURE2021.07.08

【内覧会レポート】トラフ建築設計事務所がリノベーションしたトーキョーバイクの旗艦店〈TOKYOBIKE TOKYO〉

築58年の旧倉庫をトラフ建築設計事務所がリノベーション

2021年7月8日速報初掲、8月13日画像追加、8月19日テキスト追補

”東京を走るために作られた自転車”の開発と販売を手掛けるトーキョーバイク(tokyobike)の新たなフラッグシップショップ〈TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)〉が、東京・清澄白河に2021年7月10日オープンしました。

建物は、築58年の旧倉庫をリノベーション。外観を見る限り、窓などの配置から2階建てのようですが、3層の空間がしつらえられています。

街や暮らしの楽しみ方を発信する新たな旗艦店

tokyobike(トーキョーバイク)は、自社開発した自転車の販売だけでなく、貸し出し(レンタル)、さらにはブランドのコンセプトに共感したブランドとの共同で企画開発したプロダクトも販売しているのが特徴です。このほどオープンする旗艦店でも、新たに2つのパートナーショップを迎えています。

店舗の1階には、地元・清澄白河で人気のコーヒーショップ[ARiSE COFFEE PATTANA(アライズコーヒー パッタナー)]のコーヒースタンド[ARiSE COFFEE PATTANA]がオープン。また、2階には、オーストラリア・メルボルン発のプランツショップ、The Plant Society(プラントソサエティ)の日本第1号店となる、[The Plant Society Tokyo Flagship(プラントソサエティ トーキョーフラッフシップ)]がオープンしています。

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植物を前籠に、コーヒー豆を荷台に載せた、〈TOKYOBIKE TOKYO〉を象徴するディスプレイ。
画面奥の路面店[ARiSE COFFEE PATTANA]、2階[The Plant Society Tokyo Flagship]
Photo: team TECTURE MAG

『TECTURE MAG』では、オープンに先駆けて7月6日に行われたプレス内覧会で店舗を取材。リノベーションを手掛けたトラフ建築設計事務所を禿 真哉氏と共同主宰する、建築家の鈴野浩一氏と、トーキョーバイクの代表取締役 金井一郎氏関係者に話を聞きました。関係者への取材インタビューは後日掲載予定です。
その前に、写真とテキストでレポートをお届けします(2021年7月8日速報初掲、8月13日画像を追加、、8月19日テキスト追補)

東京を走るための自転車

「トーキョーバイク」は、1997年の創業。2002年より、自転車の製造販売をスタート。”東京を走るためにつくられた「tokyobike」の開発と販売、修理も行なっています。海外でも事業を展開中です。

今回の旗艦店オープンのきっかけは、東京・谷中4丁目の旧酒屋だった木造家屋で2013年から営んできた〈tokyobike 谷中〉の建物が、返却の契約期限を迎えたため[*1]。新しい拠点となる場所を各所で探していたところ、かつて倉庫として使われていた、この物件にめぐりあいました。
[*1]トーキョーバイク 代表取締役 金井一郎氏談。なお、〈tokyobike 谷中〉は谷中2丁目に移転し、2021年9月に再オープンの予定

トラフ建築設計事務所が改修工事を担当

建物のリノベーションを担当したのは、建築家の鈴野氏と禿 真哉氏が率いるトラフ建築設計事務所(以下、トラフと略)。同事務所は、建物を本格改装する前の2020年3月、同地で開催される予定だったアートイベント「KUMA EXHIBITION 2020」の会場構成を手がけています(COVID-19拡大の影響で開催中止、今春にオンライン展「KUMA EXHIBITION 2021」として配信 / 本稿の下部にも関連リンクあり)

〈TOKYOBIKE TOKYO〉
改修設計:トラフ建築設計事務所
構造設計:オーノJAPAN
施工:イシマル
家具:ふくい工房
照明計画:BRANCH LIGHTING DESIGN
グラフィック:TAKAIYAMA.inc(山野英之)
主要用途: 物販店舗・オフィス
工事種別:リノベーション
規模:地上3階建て
構造:鉄骨造
延床面積:389m²
設計期間:2020年9月-2021年3月
施工期間:2021年2月-2021年6月

旧倉庫ならではの空間を生かした再生

改修前の状態は、内見した誰もが「かなり荒々しかった、悪くいえばボロボロ」と口を揃えます。2階の床には、搬出入用のリフトと思われる大きな開口が開けられたまま(下の画像)。1階の床は、トラフの鈴野氏曰く「自転車を乗り入れたらパンクしそうなくらい、ガッタガタの状態」でした。

旗艦店〈TOKYO BIKE(トーキョーバイク)〉開業前

©公益財団法人クマ財団 / Toshiyuki Udagawa

とはいえ、ひと昔前の駅のホームの支柱にも見られる丸いリベット(鋲)がある鋼板の梁と柱、それらに支えられた大空間は、他にはない魅力がありました。スタッフの一人もいくつか内見した中でも「ここしかない」とピンときたとのこと。

今回のリノベーションでは、3層とれる大空間を生かすかたちで、1階フロアの半分以上を占めるボリュームで、大きな階段が新たに設置されたのが最大の特徴です。鈴野氏曰く、「コーヒーを片手に一息つける、清澄の”縁側”のような存在として、解放された大階段とした
」とのこと。
上と下のフロアと、建物の内と外をシームレスにつなぐとともに、段差に人々が腰掛け、居場所にも客席にもなる、さまざまなシーンで使える階段となっています。

〈TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)〉清澄白河旗艦店

エントランス / 1階の開口面積を広げたほかは外装はほぼそのまま Photo: team TECTURE MAG

自転車屋らしくない空間デザイン

店内に足を踏み入れると、先ず大階段が目に入り、圧倒されるのですが、通り側と壁にディスプレイされた3台を除き、肝心の自転車が見当たりません。入り口を入ってすぐ右手にコーヒースタンドがあるため、知らずに入店すると、カフェと見まごう内観です。
これは意図的な配置で、「自転車屋っぽくしたくない」という店側の希望を反映したもの。自転車は1階の右奥と、大階段の後ろにずらりと並んでいます。店内でサドルに跨がれば、そのまま街へと軽快に走り出すことができます。

清澄白河〈TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)〉旗艦店

店舗の大半を占める大階段 Photo: toha

大胆にしつらえた大階段の裏側は、在庫品のバックヤードやガレージとして有効に使用されています。店舗として必要なこれのスペースをできるだけ大きくとるために、トラフは、階段の構成材を極力薄く、厚さ4.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板と最小限の部材で設計しています。店内には、そうとはわからない構造上の工夫があちらこちらで施されています。

バックヤードらしくないバックヤード

バックヤードについて、トラフでは「階段の裏側であることを感じさせないデザイン」を心がけたとのこと。ガレージの引き戸には、軽くてスライドしやすいだけでなく、どことなく外部を意識させる波板を採用。ガレージの中がうっすらと見える半透明の波板には、特色の黄色を出力したシートを全面に貼って、通路の片側で大きく面で使い、空間全体を明るく見せています。

メカニックカウンターの一角にも、階段の途中に開口を設けて、店舗の奥が閉鎖的な空間になることを回避しています。

大階段に腰掛け、「このような感じでこの階段と空間を使って過ごしてほしい」と語るトラフの鈴野氏 Photo: team TECTURE MAG

トラフ建築設計事務所による設計コンセプト

自転車ブランド「tokyobike」のフラッグシップストアとして清澄白河にオープンする、〈TOKYOBIKE TOKYO〉の内装計画。
築58年の鉄骨造の倉庫を改修した地上3階建てには、tokyobike以外にも、「The Plant Society」の海外1号店や自家焙煎コーヒーショップ「ARiSE COFFEEROASTERS」のスタンドがテナントとして入るため、自転車ファンだけでなく様々な目的を持った人々を受けいれる、大らかな空間が求められた。

ファサードは既存のシャッター開口の間口いっぱいに透明度の高いポリカーボネートの建具を設け、外部空間からの連続性を意識した。
1階は既存のモルタル床のままとしたことで、エントランスから自転車をひいて店内に入っていくことができる。

売り場となる1階と2階をつなぐ階段は、清澄のまちの「縁側」のような存在として解放された大階段とした。天井高を活かした大空間は、売り場としてだけでなく、コーヒーを片手に座ったり、イベントも行えるなど、多目的に活用できる。

階段裏のスペースには、製品の修理を受け付けるメカニックカウンターや、自転車をストックするガレージを大きく確保するため、厚さ4.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板と最小限の部材による階段構造とした。階段の半分はラワン合板で仕上げ、その上には箱型の什器を載せている。モジュール化された什器は積み重ねることができ、商品のディスプレイに可変性をもたせている。

2階のキッズ向けの商品をあつかうエリアでは、商品を陳列する壁を配し、“テンプレート”をモチーフに、それぞれの商品の形にくり抜いたニッチ型のディスプレイとした。
tokyobike(トーキョーバイク)のオフィスが入る3階では、既存のグリーンの鉄骨構造を活かし、トラス梁に仕込んだ間接照明で落ち着いた執務空間を演出している。

全体的に既存の鉄骨造を活かしながら、必要なところに新たな鉄骨ブレースや木梁で補強を行った。新しい白い壁にテクスチャ感のある木毛セメント板を用い、什器はラワン合板やコンパネといったラフな素材で仕上げることによって、既存の建物のテクスチャと融合させている。

緑豊かな公園や美術館、個性的なショップの点在する清澄白河で、街や暮らしの楽しみ方を発信する店舗となるよう、周辺環境とシームレスにつながる自由度と余白のある空間を目指した。(トラフ建築設計事務所)

店舗の中心となる大階段

清澄という街の縁側をイメージしたという大階段は、スタンドで購入したドリンクやパンの飲食スペースとして利用する前提でデザインされています。

TECTURE MAG YouTUbe 公式チャンネルに後日掲載予定の鈴野氏へのインタビューは、この階段に腰掛けてもらって収録しました(下の写真)

清澄白河〈TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)〉旗艦店

TEAM TECTURE MAG による取材の様子(インタビュー収録中) Photo: team TECTURE MAG

トラフによる珍しいセルフオマージュ

2階に用意されたキッズコーナーには、鈴野氏と禿氏が独立したばかりの2004年、トラフとして初の仕事となった、目黒のデザインホテル〈クラスカ(Hotel CLASKA)〉の客室に採用された壁面のデザイン「テンプレート インクラスカ」がセルフコピーされています。
クラスカは2020年12月に惜しまれつつその役目を終えて閉館したため、トラフによる珍しいセルフオマージュです。

オーストラリア・メルボルン発のプランツショップ[The Plant Society Tokyo Flagship(プラントソサエティ トーキョーフラッグシップ)]は、階段を上がり、右手に折れて進んだ先にあります。

パートナーショップ・The Plant Society Tokyo Flagship(プラントソサエティ トーキョーフラッグシップ)について

建築、デザインのバックグラウンドを持つジェイソンとビジネスパートナーのネイソンの二人が、植物のある暮らしの素晴らしさを伝えようと2016年にメルボルンで設立したプランツクリエーターチーム。
メルボルンとシドニーのスタジオ兼ショップの他、百貨店David Jones内でも展開。“植物のある社会”という名前に掲げた設立理念の通り、植物を通じてつながる人々との温かな関係とコミュニティづくりを目指し、商業施設、個人邸のスタイリングから、植物のメンテナンス、ワークショップなど活動の範囲を広げています。

メルボルン発、ローカルに親しまれてきたプランツショップ The Plant Societyの海外1号店「The Plant Society Tokyo Flagship」では、植物のほか、オーストラリアからの鉢や園芸用品、ホームウェアなど、植物のある暮らしを楽しむために、オーナーのジェイソンがセレクトしたアイテムが揃います。
https://www.theplantsociety.jp/

The Plant Society Tokyo Flagship
営業時間(2021年8月開業時):平日 12:00-19:00 / 土日曜・祝日 10:00-18:00[*2]
定休日:水・木曜[*2]

[*2]2021年8月30日(月)以降の営業時間・定休日
営業時間:平日 12:00-18:00 / 土日曜・祝日 10:00-18:00

定休日:月曜

3階は既存建物の雰囲気が色濃く残るオフィスフロア

[The Plant Society Tokyo Flagship]の奥にある階段から、3階にあるトーキョーバイクのオフィスへ。プレス内覧会では、特別に立ち入りと撮影が許可されました。

清澄白河〈TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)〉旗艦店

2-3階をつなぐ階段 Photo: toha

3階のオフィスは、ミーティングルームとトイレ・洗面室を除き、ほぼワンフロア。テーブル・デスクを3カ所に配置し、スタッフはその日の仕事量と気分に応じて、場所を変えて作業を行なっているとのこと。

清澄白河〈TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)〉オフィス

3階オフィスフロア Photo: team TECTURE MAG

壁面は1-2階と同じ木毛セメント板仕上げ。鉄骨との接続部分は、教わらないとわからない精度で切り欠きが施され、美しく施行されています。

2021年4月にカリモクと開始した共同プロジェクト「tokyobike + karimoku project」で誕生した特別仕様車(コンセプトモデル)は、こちらの3階オフィスに置かれていました。

「tokyobike + karimoku project」詳細
https://tokyobike.com/journal/collaboration_karimoku/

「毎日、足を運んでもらっても新しい発見がある店舗に」

〈TOKYOBIKE TOKYO〉の立地は、清澄白河の住宅地。東京都現代美術館と清澄白河駅のちょうど中間地点です。美術館帰りにふらりと立ち寄れる店がまた1つ、界隈に増えたのは、アートファンにも嬉しいニュースです。

1階にコーヒースタンド、2階にプランツショップを誘致した理由を、トーキョーバイク代表の金井氏に尋ねたところ、「毎日、足を運んでもらっても、新しい発見がある店舗にしたかった。〈TOKYOBIKE TOKYO〉では、他店でも行なっている、自転車のレンタルも実施します。清澄白河を拠点にすると、銀座もそう遠くない距離です。東京の街を楽しむ、暮らしを豊かにすることを掲げる旗艦店のパートナーとして、植物のある暮らしを提案する「The Plant Society」と、清澄白河のカフェブームを牽引し、コーヒー屋さんでありながら、立ち飲み屋のような空気感が魅力の「ARiSE COFFEE PATTANA」と一緒に、ブランドとしてもまたイチから新しい場所をつくっていきたいと考えました。」(金井一郎氏談)

パートナーショップ・ARiSE COFFEE PATTANA(アライズコーヒー パッタナー)について

「クオリティは高く、敷居は低く」をテーマに、焙煎キャリア20年、清澄白河コーヒーシーンのオリジネーターである林 大樹氏が2013年に創業したアライズコーヒーは、世界各国からセレクトした生豆を熟練の技術で焙煎、販売しています。タイ、フィリピン、ベトナム、ラオスほか、東南アジア諸国に独自のネットワークを持ち、日本に流通の無いマイクロロットのアジア産スペシャルティコーヒーを多数ラインナップ。
2013年に最初の店舗として清澄白河に開いた[ARiSE COFFEE ROASTERS]は「1杯のコーヒーを介した国際人間交差点」とも呼ばれています。新店舗となる[ARiSECOFFEE PATTANA]の「PATTANA」とは、発展や進歩を意味するタイ語です。「アジア産スペシャルティコーヒーの旗手」というパブリックイメージを踏襲しつつ、 コーヒー生産国に対するリスペクトと、さらなる発展に関わっていくという意志が込められています。
https://arisecoffee.jp/

ARiSE COFFEE PATTANA
営業時間:8:00-15:30
定休日:月曜
※2021年8月30日(月)以降も営業時間・定休日に変更なし

「トーキョーバイクでは、街を楽しむプロフェッショナルとして、速く走ることや移動することを目的とするのではなく、日常にささやかな変化を加えるためのツールとしての自転車を提供してきました。旅行者からご近所の人まで、皆さんがそれぞれ居心地よく過ごしてもらい、時には交流も生まれるなど、新たな偶然を楽しめる空間になればと願っています」(トーキョーバイク代表取締役 金井一郎氏談)

詳細レポート&インタビュー動画は編集中!(Comming Soon!)

清澄白河〈TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)〉旗艦店

店舗外観 ブランドロゴはペンキ塗装(グラフィック:TAKAIYAMA.inc) Photo: toha

〈TOKYOBIKE TOKYO〉
所在地:東京都江東区三好3-7-2(Google Map
営業時間(開業時):平日12:00-19:00 / 土日祝 10:00-18:00[*3]
定休日:水・木曜[*3]
開業日:2021年7月10日(土)

[*3]2021年8月30日(月)以降の営業時間・定休日
営業時間:平日 11:00-18:00 / 土日曜・祝日 10:00-18:00

定休日:月・火曜

〈TOKYOBIKE TOKYO〉周辺 清澄白河エリアマップ

清澄白河 店舗周辺MAP

tokyobike 公式Webサイト
https://tokyobike.com/

〈TOKYOBIKE TOKYO〉開業ニュース

CULTURE2021.07.06
トラフ建築設計事務所がリノベーションしたトーキョーバイクの旗艦店〈TOKYOBIKE TOKYO〉が清澄白河に7/10オープン

「KUMA EXHIBITION 2021」概要(改修前の旧倉庫内観)

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トラフ建築設計事務所が会場構成を担当した展覧会場を丸ごとスキャンしたオンライン展示会「KUMA EXHIBITION 2021」5/31まで限定公開

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