FEATURE2021.09.30

The 100-year history of Japanese tiles, traced through time.

時代で追う、日本のタイル100年の歴史。

100年の間に、
建築とタイルは
どう変遷してきたのか。
How have architecture and tiles
changed over the past 100 years?

社会の変化とともに思想や表現が移り変わってきた、日本の建築。時代を彩る建築を見ると、
実はタイルが大きな役割を担っています。100年間の建築とタイルの歴史を、一気におさらいしてみましょう。

Illustration: Dai Furuwatari
  • 1920年~

    レンガから発展した
    表情豊かなタイル
    Expressive tiles that
    evolved from bricks

    ▶建築潮流
    明治維新後に国家の威信をかけた建築物は、国内外の建築家が設計。重厚さを伴う、西洋の歴史的な様式による表現が志向された建築が生まれていった。

    フランク・ロイド・ライト
    Frank Lloyd Wright

    東京駅丸の内駅舎 Tokyo Station
    Marunouchi Station Building

    • 竣工:1914年
    • 設計:辰野金吾
    • 所在地:東京都千代田区丸の内1-9

    近代国家の鉄道網の中核を担う中央駅で、国の威信をかけてつくられた駅舎。「赤煉瓦駅舎」として知られる駅舎だが、外壁のつくりは実はタイル張り。鉄骨と煉瓦からなる構造躯体の外壁側に化粧煉瓦が張られ、タイル張り工法の原点が見られる。2007年に復原。

    TILE Point!
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    ■化粧煉瓦
    化粧煉瓦の製作機械がドイツから輸入され、当時の最新技術である乾式プレス製法で日本国内でつくられた。約94万個の化粧煉瓦は小口積みで張られ、緊密な表情が生まれた。

    帝国ホテル旧本館 Imperial Hotel Main Building

    • 竣工:1923年
    • 設計:フランク・ロイド・ライト
    • 所在地:東京都千代田区内幸町
    • 玄関部のみ〈明治村〉(愛知県犬山市字内山1)に移築保存

    外国人訪日客の増加に伴って外交の拠点の1つとしてつくられ、「日本の迎賓館」という役割を担ったホテル。ライトが実現したのは、日本の近代化と、西洋と東洋の異文化の交流を象徴するデザイン。大谷石や黄色い煉瓦、装飾テラコッタなど温かみのある素材を多用し、近代日本を象徴する建築物となった。

    TILE Point!
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    ■スクラッチタイル
    表面に引っ掻いたような細い溝を付けた、無釉のタイル。「スダレ煉瓦」とも呼ばれたスクラッチタイルは、日本の風土に合う外装建材として人気を博し、製品の工業化の発端となった。

  • 1940年~

    大戦前後のビルブーム、
    モダニズム建築と
    ともに発展したタイル
    Tiles developed with
    the building boom and
    modernism before and
    after World War II.

    ▶建築潮流
    主に耐震化の理由で、組積造に取って代わり、鉄筋コンクリート造が多くの建築に導入された。世界的なモダニズムの潮流の影響を受けた建築が、国内に次々と登場する。

    村野 藤吾
    Togo Murano

    東京中央郵便局 Tokyo Central Post Office

    • 竣工:1933年
    • 設計:吉田鉄郎(逓信省営繕課)
    • 所在地:東京都千代田区丸の内2-7-2(部分的に保存再生)

    鉄筋コンクリート造で水平と垂直が強調された構造体に、大きなガラス窓が並び、装飾が排除された建築。必然的な要素による構成美は、ブルーノ・タウトにより「モダニズムの傑作」と称された。白いタイルで覆われた姿は鮮烈な印象を与え、それまで主流であった古典的な歴史様式を覆していった。

    TILE Point!
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    ■二丁掛施釉タイル
    レンガのサイズを元にした二丁掛のタイルが使われた。プレスによる乾式製法によるもので、ボディには細かな黒い斑点があり、しっとりと落ち着いた白を実現。エッジは角張った形状をしており、多種多様な役物と一体となった表現にこだわり、建物全体はソリッドな印象に。

    丸栄百貨店本館 Maruei Department Store
    Main Building

    • 竣工:1953年
    • 設計:村野藤吾
    • 所在地:愛知県名古屋市中区栄
      (現存せず、INAXライブミュージアムに一部保存)

    愛知県名古屋市にあった百貨店で、百貨店建築として初めて日本建築学会賞(作品)を受賞。縦格子を主体とした外壁には薄紫のタイルが張られたほか、西側の外壁には緑色を中心に色彩豊かなタイルを乱張りした、抽象的なモザイク画が施された。

    TILE Point!
    TILE Point!
    撮影  梶原敏英 /
    Toshihide Kajihara

    ■モザイクタイル(カラコンモザイク)
    顔料を用いて発色させ、微妙な色合いをコントロールできるモザイクタイル。〈丸栄百貨店〉で採用されたのは、磁器無釉40mm角のタイル。以降、数多くの建物の外壁に採用されて普及した。

    撮影  梶原敏英 / Toshihide Kajihara
  • 1960年~

    高度成長期とともに
    合理化と深化が
    進んだタイル
    Tiles that have been rationalized
    and
    deepened with
    the period of
    high economic growth

    ▶建築潮流
    高度経済成長や建設機械の進歩とともに、公共・民間を問わず建築の大型化や高層化が加速。モダニズムを超えるような、さまざまな建築の可能性が試された。

    前川 國男
    Kunio Maekawa

    紀伊國屋ビルディング Kinokuniya Bookstore Building

    • 竣工:1964年
    • 設計:前川國男
    • 所在地:東京都新宿区新宿3-17-7

    書店のほか、劇場ホール、画廊、名店街など複合的な機能をまとめた、知と文化を発信する施設。打ち込みタイルの湾曲した両袖壁と、プレキャスト・コンクリートの反り上がったバルコニー庇、1階広場から裏の通りに抜ける道空間が、街行く人を誘う。

    TILE Point!
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    ■打ち込みタイル
    裏に「足」を設けたせっ器質のブリックタイルを、あらかじめコンクリート型枠の内側に張っておき、コンクリートを打ち込んで一体化する工法。この打ち込みタイルは、各地の美術館をはじめとして前川建築のトレードマーク的な存在になった。

    ヨックモック本社ビル(現 ヨックモック青山本店) YOKU MOKU Headquarters Building

    • 竣工:1978年
    • 設計:藤本昌也(現代計画研究所)
    • 所在地:東京都港区南青山5-3-3

    東京の青山・表参道に建つ、洋菓子メーカーの店舗と本社機能(当時)を持った建築。階数を抑え、コの字型の建物で中庭を取り囲みながら通りに開いた構成。ブルーと白のタイルで仕上げられた建物は、街並みにアクセントを付けるランドマークとなっている。

    TILE Point!
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    ■磁器質施釉二丁掛
    山型タイル

    ブランドのコーポレートカラーが表現された濃いブルーは、表面に釉薬を施された施釉タイル。ガラス質の皮膜により生まれる深い色合いが、通りを行き交う人々に鮮烈な印象を与えている。

  • 1980年~

    ポストモダン建築や
    インテリアデザインと
    ともに
    発展したタイル
    Tiles developed with
    postmodern and interior design

    ▶建築潮流
    脱モダニズムの潮流から、歴史主義的なモチーフの引用、装飾性や土着性、ハイテックなどを取り入れた折衷主義の建築が席捲。多種多様な建築表現が生まれていった。

    磯崎 新
    Arata Isozaki

    つくばセンタービル Tsukuba Center Building

    • 竣工:1983年
    • 設計:磯崎 新
    • 所在地:茨城県つくば市吾妻1-10-1

    筑波研究学園都市の核として計画された、ホテル、コンサートホール、商店街、広場などからなる複合施設。幾何学的なデザインに、西欧の歴史的なモチーフをアレンジしながら引用し散りばめられ、日本のポストモダンの代表的な建築と評価されている。

    TILE Point!
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    ■ラスタータイル
    金属系のラスター釉で焼成することで、金属光沢の質感を表現したタイル。日建設計が設計した〈新宿NSビル〉をはじめ、1980年代には数多くの建物の外装にラスタータイルが採用された。

    世田谷美術館 Setagaya Art Museum

    • 竣工:1985年
    • 設計:内井昭蔵
    • 所在地:東京都世田谷区砧公園1-2

    広大な公園の一角に位置し、周辺の樹々と調和した美術館。内井の提唱した「健康な建築」像を明確に体現。外壁をいかにデザインするかが建築の大きな課題とした内井は「光を砕く」陰影のある壁の表情をつくるため、凹凸のついたタイルを採用した。

    TILE Point!
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    ■せっ器質穴あきタイル
    7×2mの大版PCパネルに、せっ器質の穴あきタイルが目地を大きくとりながら打ち込まれた。パネル同士の目地を目立たなくすると同時に、タイル表面にブラスト処理をかけて柔らかな印象にしている。

  • 2000年~

    大型化、ルーバー形状、
    表現の深化が進む
    タイル
    Tiles that are getting bigger
    and louvered,
    and
    the expression is getting deeper

    ▶建築潮流
    グローバル化やデジタル化、地球規模の環境問題などを背景として、さまざまなアプローチやスタイルが模索される。素材の特性を活かした軽快で繊細な表現が、日本人建築家がつくる建物の特徴の1つ。

    隈 研吾
    Kengo Kuma

    ⾚坂インターシティ Akasaka Intercity

    • 竣工:2005年
    • 設計:日本設計
    • 所在地:東京都港区赤坂1-11-44

    赤坂一丁目地区の再開発に伴い建てられた、事務所・共同住宅・商業施設を複合した高層ビル。暖かみのあるテラコッタルーバーとテラコッタパネルを大量に使った外装は、複数の機能を保ちながら外観の統一感を出すことに貢献している。

    TILE Point!
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    ■テラコッタルーバー
    ラテン語で「焼いた土」を意味するテラコッタ。細長いルーバー形状で、外部に取り付けることで外光をコントロールできる。この事例のタイルは鮮やかな黄色で、カーテンウォールとも調和して上質感が得られている。

    日本平夢テラス Nihondaira Yume Terrace

    • 竣工:2018年
    • 設計:隈研吾建築都市設計事務所
    • 所在地:静岡市清水区草薙600-1

    富士山を望む名勝地・日本平山頂に建ち、展望施設と1周約200mの空中回廊を備える建築。奈良・法隆寺〈夢殿〉にヒントを得て八角形のジオメトリーを採用し、大自然のパノラマビューを楽しむ施設となっている。

    TILE Point!
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    ■石灰岩調タイル
    ヨーロッパの美術館や教会など、歴史的な建造物に使用されている石灰岩を再現した床面タイルを採用。やわらかい表情と自然石の流れ模様や質感が、しっとりと落ち着いた展示空間を演出している。

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100年の日本建築とタイルの歴史を
駆け足で振り返ってきた今回の記事。
次項は2000年代以降の
タイルの潮流について、
さらに深堀りして紹介します。

タイルはここまで進化しています。
[2000年代以降のタイルの潮流]

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