FEATURE

Special dialogue #02
Kashiwa Sato × Masahiro Nakajima

佐藤可士和(クリエイティブディレクター / アートディレクター)×
中島正弘(UR都市機構 理事長)

FEATURE2021.04.30

Special Dialogue Series #02

【特別対談】佐藤可士和×中島正弘「団地を俯瞰してデザインする」
#02 全体のイメージを大切にデザインする

【特別対談】佐藤可士和×中島正弘「団地を俯瞰してデザインする」

FEATURE2021.04.27

Special Dialogue Series #01

【特別対談】佐藤可士和×中島正弘「団地を俯瞰してデザインする」 #01 改善できるスペースを見出す
FEATURE2021.04.30

Special Dialogue Series #02

【特別対談】佐藤可士和×中島正弘「団地を俯瞰してデザインする」 #02 全体のイメージを大切にデザインする

#02 全体のイメージを大切にデザインする コンテンツ

■もとのポテンシャルに引き戻す

■全体に効くポイントを探し当てる

■個々の間と全体を見てデザインする


Photographs: toha(特記をのぞく)

■もとのポテンシャルに引き戻す

── 団地はスペース的にゆとりがあり、さまざまなことができる可能性を感じます。

佐藤:〈洋光台団地〉で最初に隈さんと敷地内を巡ったときの第一印象は、「なんてゆったりとした贅沢な空間なんだろう」というものでした。でも時間が経って、なかなかいい感じで活用できていないな、という空間がありました。

柵がつくられていても、「何から何を守っているんだろう?」というものとか、いっぱいあるんですよ。住棟と広場の間にあったプールがもうとっくになくなっているのに、ヨットの絵が描いてある壁だけは残っていたりして(笑)。

だから、もともとポテンシャルがある状態に引き戻してあげることをしました。僕らがやっていることは、つくるというより、やめてばっかりですよ。柵をやめましょう、段差をやめましょう、道路と広場の間の壁をやめましょう。

本当に引き算というか、削ぎ落としていきました。やったのは、広場に芝生を張って、段差をなくしてつなげたということ。しかしそれで、印象が劇的に変わったと思います。

〈洋光台団地〉の広場と住棟を上空から見る Photo provided by UR

中島:本当に変わりましたね。コストパフォーマンスはすごくいいですよ。

佐藤:明治学院大学のブランディングを手掛けたときも、横浜校舎はすごく大きくて、だいぶ老朽化しているので、何とかなりませんかと学長に言われました。学長と一緒に校内を回ったんですけど、確かに大きすぎてやることが山のようにあって。

そこで、僕が提案したのは、「ゴミ箱のデザインをしましょう」ということでした。ゴミ箱も錆びた鉄のもので、弁当の残飯がかかってしまったりして、すごく汚かったんですよ。それを全部撤去して、スクールカラーの黄色のゴミ箱をデザインしました。

黄色のきれいなゴミ箱を置いたら、一気にゴミが減って、誰も弁当のゴミをバンッと投げ込まなくなったんです。結局ゴミ箱とベンチだけをやったんですけど、キャンパスの雰囲気がまるっきり違う感じになりました。

何をデザインしたのか、というとゴミ箱というプロダクトになってしまうんですけど、もちろんプロダクトをつくりたかったわけではなくて。行動変革のポイントというのはいろいろあると思っていて。「ここをやるといいんじゃないか」ということがたくさんあるんです。

今回の〈洋光台団地〉でも、住棟のデザインといっても形は変えられないので、最も目につく手すりをデザインしたのです。

きれいに塗り替えるだけでもよかったのですが、小枝のようなルーバーにしました。その手すりと公園に置くベンチのトーンががきちんと合うようにする、といった全体的な雰囲気を考えています。

〈洋光台団地〉の広場と住棟。住戸の手すりをデザイン Photo provided by UR

■全体に効くポイントを探し当てる

中島:「ここで効くのは手すりだ」ということにたどり着くのがすごいし、確かに大きなポイントですよね。

佐藤:そうですね。そして今回は、道路と芝生、ファニチャー、団地の住棟の外壁と手すりの全部を合わせて、最初にカラーリングの計画をしました。白と薄いグレー、グリーンと木の色しか使わないと決めてやっています。

最終的にはもちろん、手すり子の間隔をどうするかとか、納まりをどうするかということもやっています。それは確かに重要なことなのですが、実際に見る距離感では細かい納まりよりも、色のほうが大事なんです。色彩で、ほとんど雰囲気は決まってしまう。

だから何をデザインしたのか、といわれると難しいなと。自分の中では、モノをつくっているというよりは、イメージをつくっている感覚です。

── 〈洋光台団地〉で、これからやってみたいことはありますか?

佐藤:公園の一部ではできたのですが、もっと光を変えたいですね。廊下や共用部の色温度を暖かくすると、街の景色が一変するくらい変わるはずです。なんだか寂しく感じる青白い光をなくして温かみのある色にすると、夜も怖くなくなるでしょう。

あとは、植栽も長年の間に、合わない木が植えられたりしているので、きちんと計画できればいいなと思います。ゴミ置き場や駐輪場、掲示板といったものも意外と風景をつくっている要素なので、デザインしたいですね。

中島:いいですね、楽しみです。

■個々の間と全体を見てデザインする

── 建築やインテリアのデザイナーに向けたメッセージをお願いできますか?

佐藤:やっぱり、全体感を考えることだと思うんですよね。モノをつくるときに俯瞰して、周りがどうなっているのか、間を見ることができるかが重要ではないかと。

例えばグラフィックでも、ポスターに文字を置くときに、僕はその文字ではなくて余白を見ているんです。余白がどう見えるか、ということで判断したりするのですが、そういうのに似ているのではないでしょうか。

街でも、1つひとつの建物は良くても、合わさったら良くないな、ということはありますよね。まさにURには、全体的に見てデザインすることをしていただければと思いますが、これまではどうされてきたのでしょうか?

中島:再開発では、街区全体を計画するマスターアーキテクトを立ててガイドラインを設けることがあります。例えば、丸の内地区では以前のスカイラインに合わせて、地上31メートルのところに目線のアクセントとなるものを付けることが決められました。

佐藤:ブランディングプロジェクトでは、そうしたことをクリエイティブディレクターがしているんですよね。例えば、ホンダという同じ会社から出すクルマでも、車種ごとにプロモーションをしていると、統一感がなくホンダ全体で見たときのブランドが弱くなってしまいます。

そこでクリエイティブディレクターがコミュニケーションの設計を全体としてうまく計画すると、企業ブランドがクリアになっていきます。そういうのと一緒だと思いますし、都市の規模では当然やるべきでしょうね。

中島:ガイドラインをつくることはしてきたつもりなのですが、もっと伝わりやすくする必要があると考えています。専門の訓練を受けた人に響くキーワードを使って、設計者が応えやすく、より良い街づくりに繋げられたら、と思います。

(2021.03.02 国立新美術館にて)

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Study Series Movie

【対談動画】佐藤可士和(クリエイティブディレクター / アートディレクター)×中島正弘(UR都市機構 理事長)

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