FEATURE
Lighting design by SUPPOSE DESIGN OFFICE
Enhancing the "purity of space" through light design
FEATURE2023.07.03

[Movie]谷尻 誠・吉田 愛が語る SUPPOSE DESIGN OFFICEの照明計画

光のデザインで“空間の純度”を高める

リネストラランプが新たな光源として復活! ウシオライティングが「LINEA LAMP(リネアランプ)」シリーズを新発売

PRODUCT2023.04.18

リネストラランプが新たな光源として復活!

ウシオライティングが「LINEA LAMP(リネアランプ)」シリーズを新発売

ウシオライティングが先ごろ復刻した「LINEA LAMP(リネアランプ)」シリーズ。同社オリジナルランプとして新たにリリースされた「LINEA LAMP」は、これまで多くのファンを魅了した温かみを感じる色温度と直線の美しさを、未来へ向けた新たな光源としてLEDで再提案しています。

この「LINEA LAMP」は、建築家やインテリアデザイナーにどのようなインスピレーションを与えていくのでしょうか。建築あるいはインテリアにおける照明計画をテーマに、SUPPOSE DESIGN OFFICEを主宰する谷尻 誠氏と吉田 愛氏に「LINEA LAMP」の現物を見ながら、光のデザインについて考えていることを語っていただきました。

谷尻 誠・吉田 愛 / SUPPOSE DESIGN OFFICE(サポーズデザインオフィス)

SUPPOSE DESIGN OFFICE 近影

SUPPOSE DESIGN OFFICE / 谷尻 誠(左)、吉田 愛

谷尻 誠
建築家 / SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 代表取締役
1974年 広島生まれ。2000年建築設計事務所SUPPOSE DESIGN OFFICE設立。2014年より吉田愛と共同主宰。
広島・東京の2カ所を拠点とし、インテリアから住宅、複合施設まで国内外合わせ多数のプロジェクトを手がける傍ら、穴吹デザイン専門学校特任講師、広島女学院大学客員教授、大阪芸術大学准教授なども勤める。近年「絶景不動産」「tecture」「社外取締役」「toha」「DAICHI」「yado」をはじめとする多分野で開業、事業と設計をブリッジさせて活動している。また、2023年 SUPPOSE DESIGN OFFICE 広島本社の移転を機に商業施設の運営もスタートするなど事業の幅を広げている。

吉田 愛
建築家 / SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 代表取締役
1974年広島生まれ。SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 共同主宰。
広島・東京の2カ所を拠点とし、インテリアから住宅、複合施設など国内外で多数のプロジェクトを手がける。JCDデザインアワードなど多数受賞。主な作品に〈NOT A HOTEL NASU〉〈ONOMICHI U2〉〈千駄ヶ谷駅前公衆トイレ〉〈松本本箱〉など。近年では絶景不動産や社食堂などの新規事業のプロデュース・経営総括を担う。2021年、新たに空間プロデュースやインテリアスタイリングを事業の核とする「etc inc.」を設立。建築を軸に分野を横断しながら活動し、2023年 広島本社の移転を機に商業施設の運営もスタートするなど事業の幅を広げている。

SUPPOSE DESIGN OFFICE Website
https://suppose.jp/

 

Contents

■ 光を抑えることで想像を沸き立たせる
■ “空間の純度”を高める照明計画
■ 「純粋な光そのもの」がかたちになった製品
インタビュー動画はページ末尾のリンクから!

光を抑えることで想像を沸き立たせる

—— SUPPOSE DESIGN OFFICEが手掛ける建築や室内空間は、自然光を含めた照明計画が常に印象的です。照明についておふたりはどのように考えていますか?

谷尻 極力、たくさん付けないようにしていますね。その空間の明るさと、その場所が持つ空気感って、僕はすごくつながってるような気がしているんです。落ち着いた場所をつくる時には、少し暗くしたほうが静かな空気感をつくれるし、結果的に外の風景もよりきれいに見える気がします。

実際に、ある事例では暗い室内から明るい中庭が眺められるようにしたのですが、夏でも冷房をつけていないのに涼しく感じるんです。空間の照明は体感温度とも深く関わっていると思うし、人の感情ともかなりつながってる気がします。

商業施設の場合には、その場所を決定づけるような要素として照明を扱うこともあります。でも、住宅の場合にはそもそも全体をコンビニのように照らす必要もないわけですし、全て明るくしてしまうと、想像力が必要なくなるじゃないですか。もちろん、見えるように表現する部分はありますが、暗くして見えない部分をつくることのほうが、その空間に対する想像力というか、見えない部分への想像が及び始めるので、そういう意味で全体を明るくしすぎないようにすることが大事だと僕は思います。

makoto tanijiri

昔から照明はけっこう絞ってるよね?

吉田 うん。印象的な場面を演出したり、雰囲気を出したりしたい時に、光の使い方は空間に対して非常に大きな影響力があるので、建築のハードと同じくらい、常に大切に考えて設計に落とし込んでいます。

ただ、光は存在感が大きいだけに、光を出すための「機能」の部分、電球でいえばソケット部などはなるべく目立たせたくないんですね。特に住宅設計の場合には、「機能としての照明」が目立たないように、自然光に極力視線が行くように計画したいと思っています。

住空間においては、どこからともなく入ってくるような光があると私は豊かな空間だと感じるので、照明器具の存在をなるべく消して、光が壁面をなでるように入ってくるといった、自然に近い状況、シーンをつくる操作はよくしていますね。

最近はいかに自然を感じられるかということを設計の中に取り入れているので、より心地よく感じられるように、空間のスケール感を踏まえつつ色温度を変えたり、光量を変えられるような提案をすることもよくあります。

ai yoshida

—— 住宅以外の施設の場合はどうでしょうか?

吉田 例えばオフィスでも、利便性の観点から明るいことが正義になっている部分があると思うんですが、朝から夕方、夜までずっと人工的な白い光の中で働くことと、リラックスできずに疲労を感じることは無関係ではないと思うんですね。

SUPPOSEのオフィス(社食堂)のように、夕方になるにつれて少し光量を落とせたり、色温度を変えられる照明計画にするだけでも、居心地の良さはかなり異なってくると思いますし、空間の使われ方自体も変わってくるはずです。それは人間が本来持っている自然の原理に則して考えれば当然ですよね。

そうした意味で、照明はその空間の目的や居心地を決めるうえで大きな役割を果たしていると思うので、どう過ごしてほしいか、どういうふうに滞在するのかといったことに合わせて、照明は計画しています。

 

SUPPOSE DESIGN OFFICEにて「LINEA LAMP」担当者を前に語る谷尻氏と吉田氏

“空間の純度”を高める照明計画

—— 照明については、空間設計のどの段階で検討されるのですか?

吉田 基本計画の段階でおおよそプロットしていますが、初めのうちは最大限まで盛り込んでおいて、そこからどんどん削ぎ落としていく作業になることがほとんどです。

考えてみると、かつては部屋の中の照明として中心的な存在に位置づけられていた蛍光灯が、時代とともにダウンライトに置き換わって、今はさらにそこから進んで、光を均一に分散させる空間から、光に「ムラ」がある空間へと変わってきている気がします。ある空間での過ごし方をより豊かに表現するという視点から、照明の使い方も「均一ではない」ことがこれから重要になってくるんじゃないかなと思っていて。

谷尻 確かに、できるだけ照明を天井に付けない、ということを考えようよとは話しますね。ゼロというわけにはいかないんですけど、そもそも空間って情報が多いじゃないですか。床、壁、天井のそれぞれの素材があって、スイッチ、コンセント、エアコン……。そうした情報量が増えれば増えるほど「空間の純度」は落ちていくんですよね。だから一つの空間にある情報をできるだけ制御して、「あるんだけれども無いように感じられるような照明のやり方ってどうやったらできるんだろうね」という話をよくします。

吉田 そうですね。でも、もちろん見にくいことってストレスでもあるので、ダイニングテーブルは明るいけれども、その周辺は暗くていいとか。

谷尻 確かに、照明の少なさは生活のしやすさとせめぎ合う部分でもあるので、難しいところではありますね。実際に「明るくもできるようにしてください」という注文はけっこういただくので、そこは置き照明などを補助照明として使ってもらえれば、とお話しすることはあります。

それでも以前よりは「暗さ」が受け入れてもらえるようになってきた感じはしますね。事例が増えていくにつれて「暗くてもいいんだ」と考えてくれる人が増えてきたというか。

吉田 照明の効果を一番体感できるのって、レストランだと思うんですよね。全体を明るくすれば居酒屋っぽい雰囲気が出るし、逆にしっとりとした良い空間でちゃんと料理に向き合える場所は、自分たちのテーブルだけに照明が当たって、周りは少し暗くして情報を消してくれている。そういうニュアンスを住空間や日常の生活の中にも取り入れていけたら、より豊かにできるんじゃないかなと思っていて。

谷尻 そういう意味での「光のムラ」を意識的につくるようにしています。明るくするということよりも、「暗さをどうつくるか」という視点で照明計画をするというか。「照明器具を付けない」ということも、照明計画の一部じゃないですか。

スタッフにも、先ほど言ったように天井に向けてどんどん暗くなるような、空間の「懐」をつくりなさいって伝えるんですよね。天井との距離感がわからないほうが天井への認識が薄れて、ある種の開放性が感じられるけれども、明るくして距離がわかってしまうと空間に伸びやかさが出ない。高さだけじゃなくて、水平方向も奥行きも同じですよね。光でムラをつくる、グラデーションをつくることで、そうした「懐」がつくれると思います。

 

「純粋な光そのもの」がかたちになった製品

—— おふたりの考えに基づいて、SUPPOSE DESIGN OFFICEでもリネストラランプを採用した事例がありましたね。復刻した「LINEA LAMP(リネアランプ)」シリーズについて、どう思われますか?

谷尻 リネストラランプは器具自体——光そのものがプロダクトになっているという感じがしたんです。普通はまずソケットなどの器具があって、その先に光源があるので、それだけでもさっき話したような空間における「情報量」が増えてしまうように感じるんです。

極端に言えば、僕は純粋な「光」そのものがほしいのであって、器具はほしくないというか、「この光はほしいんだけど、この器具の部分は使いたくない」と感じることって、実際によくあるんですよね。

もちろん厳密には器具を使わないことは不可能なのですが、それでも「LINEA LAMP」は照明としての純度が高いというか、光そのものがプロダクトになっている感じなので、モノとしても空間を邪魔する要素が少ないんです。そういう点で、リネストラランプはけっこう使っていました。

吉田 でも、器具としての部分を意匠として使うこともあるんです。どちらかというと空間に光沢がない仕上げのものをつくることが多いので、ツヤのあるガラスの質感がほしくて、あえてガラス素材の照明を選定することもあります。

だから全部が全部というわけではないのですが、「LINEA LAMP」のように「純粋な光の筒」のような調光の器具は、意匠照明と機能照明の両方を兼ねた使い方ができるので、設計の側からは助かるなと感じますし、もっとあるといいのになと思っていました。リネストラランプは廃番になってしまって、困ってしまっていたんですよ。

「LINEA LAMP」では2100K~2500Kの調光調色をラインナップする

谷尻 「LINEA LAMP」の「Ita」はベットサイドでもダイニングでも使えそうですね。照明って、付けていない時も重要なんです。明かりを灯していないときも空間をつくっている要素として、僕は照明を選びたいんです。以前のランプはガラスでしたけど、復刻したものも、エッジが立っていていいですね。

左から順に「Ori」「Ita」「Haco」。設置器具には金属プレートを「曲げる・カットする・組み合わせる」加工を施した3種類をラインナップ

吉田 私はシンプルな形なのに洗練されていたり、少し違和感があったりするかたちが好きなんです。建築家って照明はあまり見せたがらないけれど、リネストラランプは唯一と言ってもいいくらい、意匠的な意味で見せる照明として使われていましたよね。

照明器具を自分たちで製作することもあるのですが、私たちは照明器具に白はほとんど使わないんです。「LINEA LAMP」ではブラケットに真鍮の雰囲気が用意されているのも、素材感としていいなと感じます。

既製品ではクロームばかりだった色合いに最近は黒が出てきたりもしていますが、真鍮の雰囲気は空間のテイストが少し変わって見えるというか、少しスタイリッシュで重厚感が出ますね。空間の使い方や過ごし方によって、照明器具を選択する幅が広がっているのは嬉しいです。

「LINEA LAMP」ではブラケットにレッドゴールドなどニュアンスのあるカラーを用意


(2023.05.15 SUPPOSE DESIGN OFFICEにて)

Photographs & movie: Atsutomo Hino
Text: Tomoro Ando
Interview: Jun Kato

谷尻誠氏と吉田愛氏も評価するリネストラランプとは

ウシオライティングが「LINEA LAMP(リネアランプ)」シリーズを新発売

SUPPOSE DESIGN OFFICEの谷尻誠氏と吉田愛氏も高く評価する「LINEA LAMP(リネアランプ)」シリーズ」。惜しまれつつ廃番となったリネストラランプを、建築、舞台、海洋まで幅広い照明機器を手がけるウシオライティング(本社:東京都中央区)が復刻した新シリーズです。

独特の赤味ある色温度と直線の美しさで、未だに多くのファンを魅了するリネストラランプへの回帰とともに、未来へ向けた新たな光源を提案。LEDだからこそ実現できるデザイン・フォルムを訴求した3シリーズをラインナップしています。

「LINEA LAMP」専用ページ

リネストラランプが新たな光源として復活! ウシオライティングが「LINEA LAMP(リネアランプ)」シリーズを新発売

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ウシオライティングが「LINEA LAMP(リネアランプ)」シリーズを新発売

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