FEATURE
[Special Report] Regenerative Urbanism: Living With Disaster: Stories from Seven Regenerative Cities
【会場Report】リジェネラティブ・アーバニズム展 —災害から生まれる都市の物語:自然と人間の新たな関係性を"再生"するための7つのストーリーを提示する企画展
FEATURE2022.04.16

【会場Report】リジェネラティブ・アーバニズム展 —災害から生まれる都市の物語

自然と人間の新たな関係性を"再生"するための7つのストーリーを提示する企画展

「リジェネラティブ・アーバニズム展」開催概要

COMPETITION & EVENT2022.04.08

リジェネラティブ・アーバニズム展 —災害から生まれる都市の物語

統括プロデューサーは阿部仁史氏、日本橋室町にて4/9より開催

東日本大震災の教訓から得た知を世界と未来へ

2011年に発生した東日本大震災から得た貴重な教訓を、地球規模のフレームで共有し、災害に強い環境づくりなどに活かす試みが、世界各地で行われている。
東京・日本橋室町の三井ビジネスタワーにて、4月24日まで開催される「リジェネラティブ・アーバニズム展 —災害から生まれる都市の物語」もその1つ。震災から4年後の2015年に宮城県仙台市で開催された、第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」に端を発し、2019年に立ち上げられた、環太平洋地域にある11の大学が参加する国際プロジェクト「ArcDR3(Architecture and Urban Design for Disaster Risk Reduction and Resilience)」における活動成果の発表である。

「リジェネラティブ・アーバニズム展 —災害から生まれる都市の物語」

会期:2022年4月9日(土)〜24日(日)
開催時間:12:00-19:00
入場料:無料
※COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大防止のため、入場制限を行う場合あり
会場:日本橋室町三井タワー「室町三井ホール&カンファレンス」
所在地:東京都中央区日本橋室町3丁目2番1号 COREDO室町テラス3階(Google Map

展覧会特設サイト
https://www.regenerativeurbanism.org

「リジェネラティブ・アーバニズム展 —災害から生まれる都市の物語」会場 入口の展示パネル

「ArcDR3プロジェクト」3年間の集大成

ArcDR3では、地震などの自然災害に対して、都市を構成する建築やデザインが、どのようなかたちで対応できるのか、テーマごとにさまざまな可能性を議論してきた。その内容が、展覧会というかたちで広く一般へ向けて公開されるのは、今回が初めて。

ArcDR3活動履歴
https://xlab.aud.ucla.edu/irides-tohoku-arcdr3/

プロジェクトを推進してきたのは、東北大学災害科学国際研究所[IRIDeS]と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校[UCLA] xLAB[*1,2,3]
UCLA(University of California, Los Angeles)の教授で、xLABのディレクターを務める建築家の阿部仁史氏が、本展の統括プロデューサーを務め、展覧会コンセプト策定と会場デザインも担当している。

*1.IRIDeS: International Research Institute of Disaster Science
*2.[UCLA]xLAB:2007年から2017年まで、UCLAの都市・建築学科長を務めた阿部仁史氏が、学際的なコラボレーションを通じて、建築の弾力性のある境界を調査することを目的に、2017年に設立した、国際シンクタンク / URL:https://xlab.aud.ucla.edu/
*3.ArcDR3イニシアティブ(災害リスク軽減とレジリエンスのための建築と都市デザインイニシアティブ)は、[UCLA]xLAB、[IRIDeS]、日本科学未来館の3団体が、環太平洋大学協会マルチハザードプログラムの一環として共同設立した

『TECTURE MAG』では、開催前日に行われたプレス内覧会を取材。阿部氏による展覧会の説明と、会場の解説パネルのテキストからも引用し、本展および「ArcDR3」プロジェクトの概要をお伝えする。

Text & Photo by Naoko Endo(特記ありの会場写真2点とイラストを除く)

プロジェクトの経緯について説明する阿部仁史氏

リジェネラティブ=都市の"再生"へ

本展のタイトルに掲げられた「リジェネラティブ・アーバニズム(Regenerative Urbanism」とは何か?

阿部氏の説明によれば、それは「気候変動に伴い急増する災害の脅威によって生み出された、都市デザインの新しいパラダイム」であり、多様な思考の集合体を指す。

時に厄災をもたらす自然と人との新たな関係性を再生・再構築することを目指し、11の大学が、2020年から2021年にかけて、それぞれ独自にスタジオプログラムを開発、進行。最終的に7つの都市のストーリーにまとめられ、今回の展覧会で人々に共有される。

プロジェクト参加11校
カリフォルニア大学バークレー校[UCバークレー](米国)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校[UCLA](米国)
ワシントン大学(米国)
チリ・カトリック大学(チリ)
メルボルン大学(オーストラリア)
シンガポール国立大学(シンガポール)
国立成功大学(台湾)
香港大学(香港)
清華大学(中国)
東京大学(日本)
東北大学(日本)

プロジェクトでは、世界各地で行った、都市と災害に関するリサーチ結果をもとに、参加大学が提案するさまざまな都市デザインを組み合わせ、7つの架空の都市を創出。この7つの都市から生まれた物語(ストーリー)が、都市デザインの新しいパラダイムとして提示されている。
なお、本展のバナーと、会場入口の展示パネルにもレイアウトされているイラストは、この7つのストーリーをイメージしたもの。

人と自然の新たな関係性を築く

ArcDR3プロジェクトでは、災害の脅威に対し、防衛的に対処するのではなく、生物学や社会倫理学の側面から自然と共生する、新たな都市の可能性を、建築・デザインを行う側から提案している。
おりしも、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的な流行期と活動時期が重なり、「ウィズ・コロナ」と呼ばれるような、新たなウイルスへの対処とともに、自然との新たな関係性を築くことは時代の必然となった。

11の大学ごとの11のストーリーとしなかったことについて、阿部氏は、同じアプローチの考え方をまとめた結果、7つに集約されたと説明。加えて、地域ごとに「場所」で分類した場合に、自分たちの住まうエリアの外に対して人々の関心が向けられにくく、共感が薄れてしまうことを危惧して回避したとのこと。
より抽象的に、水成、共生、遊牧、群島、火成、時制、対話という7つのワード(ストーリー)が設定された。

阿部氏がデザインした「都市デザインの体験装置」

本展の会場は、プロジェクトの経緯を辿る導入部(イントロダクション)と、7つ都市の物語をプレゼンテーションする空間と大きく分けられる。

2つの空間の境に置かれた、大きな花のような白い展示台は、阿部氏がデザインしたもので、いわば「都市デザインの体験装置」。これと同じものが、奥の展示空間には7つ配置されている。

覗き込むと、プロジェクトの起点となった、東日本大震災での体験とそこから得た教訓などが映し出されたモニターが真ん中に設置されている。

映像が流れているモニターが設置された"井戸の底"

物語を「覗き込んで」体験

阿部氏によるこの展示手法は、井戸の底を「覗き込む」という行為に着想を得たもので、訪れた人の能動性を促すとともに、体験への没入感を演出している。

車椅子で来場した人や、小さな子どもでも中を覗き込めるよう、縁(へり)が低い箇所を2つ設け、細やかなユニバーサルデザインに。
素材は内部を空気で満たした柔らかい膜とし、仮に体がぶつかっても怪我をしないようにした。コロナ対策の消毒・清掃もしやすい。

「リジェネラティブ・アーバニズム」のコンセプトや「7つの都市のストーリー」を共有するための大型モニター

リジェネラティブ・アーバニズムの実践方法を伝える"7つの井戸"

大型モニターの背面、奥の展示室には、”7つのストーリー・7つの井戸”が配置されている。

井戸の”底”には、沿岸部の低地、乾燥した砂漠、強風が吹く森林地帯など、それぞれ異なる気候や地理的条件下に置かれた架空の都市群に、さまざまな災害の”シナリオ”が投影されている。

このシナリオは、世界各地で猛威を振るう山火事や高潮による被害の実態と相関関係にあり、7つの井戸が、恐るべき災害に柔軟に対応し、厳しい自然環境に適応した都市の諸相を物語ることで、リジェネラティブ・アーバニズムの実践方法を見る者に伝えてくれる。

“7つの都市のストーリー”の展示空間を出て正面に配置された、イントロダクション展示の多面体の囲いの中には、「この世界を生き延びるために」と題した展示空間が用意されている。

ここでは、各都市でのリサーチにより抽出された、社会を取り巻くさまざまなリスクが示されている。誰にでも起こりうる”リスク”だ。
例えば、COVID-19、アルコール・薬物使用、オゾン層破壊、保健衛生、人口増加、高齢化、テロ、飢餓、貧困、いじめなど。

なお、本展は、三井不動産の創立80周年記念事業の一環として開催される。
2022年10月より、米国・ロサンゼルス市内にあるジャパンハウスにて巡回展示を予定。

プロジェクトで創出されたアイデアは、今回の展覧会として披露されて”終わり”ではない。このあと、経済産業省と情報を共有し、都市環境のリスクを軽減するための国際的な指針となる、ISO認証の基準確立に貢献することを目指している。

「リジェネラティブ・アーバニズム展—災害から生まれる都市の物語」バナー

展覧会クレジット

統括プロデューサー・展覧会コンセプトおよび会場デザイン:阿部仁史(UCLA教授、xLABディレクター)
プロデューサー:中西 忍(IDEAL COOP Inc.)

キュレーターチーム
モハメド・シャリフ(UCLA准教授)
カルロ・スターケン(UCLA xLABキュレーター)
ヤレナ・ポンヤコバ(アシスタント・シナリオ・ディレクター)
堀口 徹(近畿大学建築学部准教授)
柴山明寛(東北大学災害科学国際研究所准教授)
本江正茂(東北大学大学院工学研究科准教授)
エリザベス・マリ(東北大学災害科学国際研究所准教授)
今泉真緒(ダズ)
朴 鈴子(Office PARK)

プロジェクト監修/アーカイブ資料:今村文彦(東北大学災害科学国際研究所 所長、教授)
プロジェクト協力:石田壽一(東北大学大学院工学研究科教授)、小野田泰明(東北大学大学院工学研究科 教授)、村尾 修(東北大学災害科学国際研究所 教授)
シナリオ・ディレクター:宮本 武典(キュレーター)
制作ディレクター:乾 義和(ボストーク)、高橋 仁(クロスコ)
アート・ディレクター:氏デザイン
映像ディレクター(Wall):比嘉 了(バックスペースプロダクション)
映像ディレクター(Cloud+Well):岡本彰生(ネーアントン合同会社)
テクニカル・ディレクター:金築浩史
制作施工:HIGURE 17-15 cas
ナレーション:かとう有花
楽曲提供:Hakobune
リサーチ協力:柳井良文(東北大学大学院工学研究科助教)
地球データ協力:日本科学未来館

特別協賛:三井不動産

主催
カリフォルニア大学ロサンゼルス校[UCLA]xLAB
東北大学災害科学国際研究所[IRIDeS]
ArcDR3展覧会製作実行委員会

展覧会特設サイト
https://www.regenerativeurbanism.org

「リジェネラティブ・アーバニズム展」開催概要

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リジェネラティブ・アーバニズム展 —災害から生まれる都市の物語

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