FEATURE
CNC-based Digital Fabrication Architecture
5 projects with 'CNC machines' that generate components based on digital data
FEATURE2023.08.30

CNCによるデジファブ建築特集

樹木のような構造体や完璧な音響など デジタルデータを元に部材を生成する「CNCマシン」による 5つのプロジェクト

デジタルデータを使用して部材を加工する「デジタルファブリケーション」は『建築を変える』と言われるほどの可能性を有しており、多くの大学や研究機関、建築家が「建築×デジタルファブリケーション」についてのさまざまな研究や取り組みを日々進めています。

その中でも特に建築領域で研究が進んでいるテクノロジーとして、デジタルデータを元に素材を積層するように出力する「 3Dプリント」と、先端に取り付けた刃物を回転させることで木材等の素材を切削する「CNCフライス加工」が挙げられます。

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〈ザイトプレイン劇場(Theater Zuidplein)〉

ロッテルダムの〈ザイトプレイン劇場〉にStudio RAPが設計した 三角形が音を適切に反射する音響壁 ©︎ Pim Top

CNC加工とは

CNCとはComputer Numerical Control(コンピュータ数値制御)の略称であり、その言葉が示す通り「コンピュータを使って工作機械を数値で制御すること」を指します。

このCNCにより切削加工を行う工作機械であるフライス盤を制御することで、データを使用して部材を切削加工することを「CNCフライス加工」といい、CNCを組み込んだ工作機械は「CNCマシン」や「CNCルータ」などと呼ばれています。

〈Tortuca〉

ペンシルバニア大学の多面体構造研究所による〈Tortuca〉における、5軸CNCルータによるアクリル部材のフライス加工風景 ©︎ Yao Lu

CNCが建築に与えるインパクト

CNCマシンを活用した工期短縮の大きなニュースとして、スペイン・バルセロナに巨匠アントニ・ガウディが設計した未完の教会〈サグラダ・ファミリア〉が挙げられます。

1882年に着工した〈サグラダ・ファミリア〉は、竣工には当初300年かかると見込まれていましたが、3D解析ソフトやCNCマシンの実用化により竣工予定が2026年に前倒しされました。

新型コロナウィルスの影響により工事が中止されていた期間もあるため実際の竣工は遅れる可能性がありますが、300年という施工期間を約144年に短縮するほどのインパクトを与えたわけです。

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CNCとプレファブリケーション

CNCマシンと相性の良い仕組みとして「プレファブリケーション」が挙げられます。一部例外はあるもののCNCを活用した基本的な建設プロセスは、CNCマシンのある工場に材料を持ち込み精密な加工を施した上で現場に搬入、実際の現場では組み立てるだけというものです。

このように事前に材料を加工する「プレファブリケーション」を採用することにより、加工を工場という「変化の少ない環境」で行えるため作業の効率化や、切削した端材に他の素材が混じる可能性が減少することによるリサイクル性も向上します。

〈ウーアバッハ・タワー〉

シュトゥットガルト大学の計算デザイン・建設研究所(ICD)と建築構造デザイン研究所(ITKE)による〈ウーアバッハ・タワー(Urbach Tower)〉© ICD/ITKE University of Stuttgart

CNCを用いた海外プロジェクトにみる革新性

これまでみてきた通りCNCを建設に用いることのメリットとして、施工期間の短縮のような建設の効率化や、デジタルデータと加工機による精密な加工、デジタルファブリケーションだからこそ設計から施工までのデジタルワークフローなどが挙げられます。

建設システムとして

日本においても、建築テック系スタートアップのVUILDが提供する、3D木材加工機 ShopBotを活用したデジタル家づくりプラットフォーム「Nesting(ネスティング)」や、木材のクラウドプレカットサービス「EMARF(エマーフ)」など、CNCを活用し住宅や家具づくりを行うサービスがあります。

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De Stripmaker, Netherlands ©︎ WikiHouse NL

レゴのように建てる建築システム〈WikiHouse〉

〈WikiHouse〉は、建築技術をもたない人でも美しく高性能な住宅や建物を簡単に設計、製造、組み立てられるよう開発された、モジュール式のゼロカーボン建築システムです。

CNCマシンによる「デジタルマニュファクチャリング」と、木材という「バイオベースな材料」を使用したサステナブルな建築手法となっていて、システムをオープンソース化したことにより、誰もが自由にファイルを入手・使用・改良することができるというのも特徴の1つとなっています。


CNCを活かした意匠性

デジタルファブリケーションであるからこそ、複雑な部材を製作したり木材以外の素材への活用という点もCNCと特徴の1つです。

〈パビリオン・オブ・フローティング・ライト(Pavilion of Floating Lights)〉

©︎ Rohspace

CNCとARで生み出す樹木のような構造体

【パビリオン・オブ・フローティング・ライト】
設計:JK-AR(Jae Kim Architects & Researchers)

韓国の晋州(チンジュ)市に建つ〈パビリオン・オブ・フローティング・ライト(Pavilion of Floating Lights)〉は、アルゴリズム設計された複雑な合板部材をCNCルータで削り出し、拡張現実(AR)を用いて組み立てた樹木状の構造体が特徴的な空間です。

歴史ある建築をオマージュしつつ、釘や接着剤を使用しない伝統的な大工仕事を現代の先進テクノロジーにより生まれ変わらるという、「過去と現在のハイブリッド建築」です。


〈ザ・フロート(The Float)〉

©︎ Riccardo De Vecchi

CNCで削り出す CLT × コルクの水上住宅

【ザ・フロート】
設計:Studio RAP

オランダの歴史的な都市ライデンの運河に浮かぶ〈ザ・フロート(The Float)〉は、CLTとコルクを使用した水上住宅です。

折り紙から着想したCLTの折り畳まれた構造と、デジタルマニュファクチャリングに適した自然由来の素材であるコルクをCNCマシンにより切削することで、継ぎ目などのディテールを美しく仕上げた、デザインから完成まで一貫したデジタルワークフローを採用した建築です。


デジタルデータの反映

設計から施工までのプロセスがデジタル化できるからこそ、三次元的に音響を最適化した音響壁や、木材の乾燥収縮による変形を予測して反映する「マテリアル・プログラミング」など、デジタルデータを建築に反映するという点に着目した建築も生まれています。

〈ウーアバッハ・タワー〉

© ICD/ITKE University of Stuttgart

乾燥収縮を予測し活用するねじれたタワー

【ウーアバッハ・タワー】
設計:シュトゥットガルト大学 計算デザイン・建設研究所(ICD)、建築構造デザイン研究所(ITKE)


〈ザイトプレイン劇場(Theater Zuidplein)〉

©︎ Pim Top

多面体の防音壁が生み出す完璧な音響

【ザイトプレイン劇場】
設計:Studio RAP

CNCを用いてつくられた何千枚もの三角形のアルミパネルを組み合わせた、波打つような多面体の音響壁です。

デジタル上で全体的な音響を曲面状の壁面にてつくり出し、各部分ごとに純粋な反射が必要な場合は三角形の部材を平らに、拡散・反射が必要な場合は折り畳まれた凹凸のある表面とすることで音響を最適化しています。


〈Tortuca〉

©︎ Yao Lu

ガラスが構造材の透明な橋!?

【Tortuca】
設計:ペンシルバニア大学 多面体構造研究所(Polyhedral Structures Laboratory)、ビラノバ大学、ニューヨーク市立大学、ダルムシュタット工科大学、イベントスケープ(Eventscape)

超薄型中空ガラス橋〈Tortuca〉は、ガラスを構造部材として活用した乾式の構造とすることで、複雑な素材の掛け合わせを行うことなく実現した透明な橋です。

コンピュテーショナルデザインとデジタルファブリケーションを活用した13の中空ガラスユニットで構成され、各ユニットは軽量なため1人でも施工・解体が容易となっています。また少ない素材と乾式の採用により、リサイクルプロセスも簡略化できるサステナブルな研究プロジェクトです。

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