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JOB2023.03.24

【JOB 特別インタビュー】STUDIOMONAKAが目指す職場環境とは!?

京都と沖縄に事務所を構え、2拠点で活動する建築設計事務所、STUDIOMONAKA(スタジオモナカ)。以前にTECTURE MAGでは「JOB 特別インタビュー」として、STUDIOMONAKAの幅広い活動と、それを生み出す事務所の様子を取り上げた。

【JOB 特別インタビュー】STUDIOMONAKAが求める人材とは!?

STUDIOMONAKAはトップダウン型ではなくチームでプロジェクトを進め、クライアントや職人との対話から発想し、一緒につくることを大切にする姿勢は、事務所独自のカルチャーとなっている。

事業をさらに広げて数多くのプロジェクトを進めている京都事務所を再び訪ね、個々人のスタッフの働き方や成長をどのようにサポートすることで、活気ある事務所を運営しているのかを探った。

岡山泰士・森田修平・仲本兼一郎の3名が共同主宰する同社では、スタッフの働き方や職場環境を常に柔軟に変化させてきた。そうした環境がスタッフに新たなインスピレーションを与え、それぞれのスキルアップとキャリア形成につながっている。そしてスタッフが事務所の運営にも自分ごととして関わることで、一体感と事務所の成長を生み出すという循環を生み出しているようだ。

実際のスタッフの働き方、また働き方を支える事務所の体制はどのようなものか。そして、設計事務所の運営は規模や時代に応じてどのようにアップデートさせてきたのか。

フリーランスや育児休暇の時期を挟んでSTUDIOMONAKAで働き続ける三上咲良氏、また同社での経験を次のステップに生かそうとしている水田栞菜氏に、共同代表の2人と座談会を行ってもらった。

STUDIOMONAKA

Photo: Kana Okayama

■ みんなが働きやすい職場環境を目指す

—— STUDIOMONAKA(以下、MONAKA)のみなさんの働き方は、柔軟性があるように感じられます。

STUDIOMONAKA

三上咲良(以下、三上):私は初めアルバイトで3年ほど、他の仕事と掛け持ちしながらMONAKAの仕事をしていました。結婚後に岡山県に移住したこともあって、コロナ禍になる前からテレワークで非常勤スタッフとして仕事をさせてもらってきました。

水田さんと同じタイミングで約2年前に正社員になり、出産した後に育休を取得し、数カ月前に家族の転勤で京都に戻ってきてMONAKAに復職したという感じです。いま子供を預けている保育園も、MONAKAが提携している保育園を活用させてもらっています。

岡山泰士(以下、岡山):僕は独立してすぐに結婚して子供ができて、保育園にかかる費用も大変だったという経験があったので、地域の企業と連携してメンバーが働きやすい仕組みができたらと思っていました。メンバーにも、ライフチェンジに合わせて一緒に働いていける環境を整えられればと考えています。

—— 水田さんは、MONAKAのスタッフとして勤務され、今回海外への挑戦のためにいったん卒業されることになったそうですね?

STUDIOMONAKA

水田栞菜(以下、水田):はい、そうなんです。MONAKAに入社する以前はハウスメーカーなどで働いていたのですが、入社してから本当に多くのことを教えていただきました。

MONAKAにはフランス人のメンバーがいて、英会話の機会がよくあったことも刺激になりましたね。英語を使って仕事をしたいとの思いが強くなり、今回ワーキングホリデーでアイルランドに1年間行くことにしました。

岡山:振り返ってみると、水田さんや三上さんは内部のコミュニケーションを円滑にしてくれて、数値では測ることのできない大きな存在です。3人で始めた事務所でしたが、この2〜3年でプロジェクトが増えて社員も増えてきて、会社内部の仕組みづくりが必要なことに思い至り、ようやくさまざまな面で整えることができてきたように思います。

■「代表が参加してはいけない」ミーティング!?

—— 具体的にはどのようなコミュニケーションの仕組みが設けられたのですか?

三上:代表がいない場で、事務所の良いことも悪いこともなんでも話していいという機会をつくりました。みんなには家からオンラインで参加してもらって、絶対に代表には聞こえない状態にしたうえで、沖縄ともつないで、それぞれが忌憚ない話ができる場を定期的に開いていました。

でも、決して悪口大会にしているわけではないんですよ(笑)。長く職場にいるスタッフが「代表のトリセツ」として「その場合はダイレクトに電話したほうがいいよね」とか、うまくコミュニケーションするためのアドバイスをしたり、そこで出てきた話を提案として代表に伝えたりしていました。

STUDIOMONAKA

岡山:設立当初は規模が小さかったので、みんなで集まるという場をわざわざ設ける必要もなかったし、全社会議のような場を意図的につくろうとはしていませんでした。けれどもスタッフが増えるにつれて、お互い会社を良くしたいと思いはありながらも齟齬(そご)が生まれたりもしてきていたので、そうしたことをチューニングする場を持つようにしました。三上さんが設けてくれていた会も、そうしたチューニングのために有効なものだったと思います。

STUDIOMONAKA

森田修平(以下、森田):クリエイティブな面においては、プロジェクトボードを事務所に設置しました。事務所で進めている全物件の内容やデータを可視化しています。チーム全体でプロジェクトを共有し、コミュニケーションできる仕組みを日々模索しています。

代表が全体を把握することはもちろんですが、それ以外のメンバーにとっても、自分の担当プロジェクトでいっぱいいっぱいになってしまうと他の情報にアクセスしにくくなってしまいますし、「面白そうだな」と思っても関わりにくくなってしまうことがあると思うんです。担当者が持つ情報を他のスタッフと広く共有する仕組みを組織内に持っておくことで、ちょっとした雑談からもしかしたらもっといいアイディアが生まれるかもしれないですし。

岡山:やり方はずっと模索し続けている感じですね。まだ「できあがった組織」というわけではありませんし、すごく非効率な部分もまだまだあると思います。自分たちに合ったやり方を探しながら仕組み化している感じです。

■ スタッフの成長をサポートする組織に

STUDIOMONAKA

—— 経営側としては、スタッフにどのように育ってもらいたいと思いますか?

森田:たとえば水田さんが離れてしまうことについては、さみしい気持ちもありますし、あと1年でも続けてもらって3年という区切りを経験したら、また別の感じ方・見え方ができるんじゃないかと思っている部分は正直あります。

だけど彼女と話すなかで、「MONAKAのメンバーがいたからこそ、新たな場所で挑戦してみようという思いが湧いた」ということを聞かせてもらったんです。彼女がその思いを海外にチャレンジするという形で行動に移したことを率直に嬉しく感じたし、そこで「人手不足だから」などを理由に引き止めたりせずに、「水田さん、がんばっておいで」と伝えられた。そうして彼女の旅立ちを受け入れられる組織でいられたことも、嬉しかった。それが、僕たちが目指していた組織のカタチでもありましたから。

岡山:僕も独立した当初は海外留学に行くつもりだったので、彼女の心境はよく分かります。僕の場合はコンペに通ったり仕事が入ったりして、留学の話は流れてしまったのですが。水田さんが「今後のキャリアを築いていきたい、そのために今具体的な行動に移したい」という話をしてくれたのは、2年間彼女の姿を見てきた者として、すごく嬉しいことでした。そして、そういったカルチャーというのか、環境をつくることが事務所として大切なことなんだと、改めて気付かされたように思います。

STUDIOMONAKA

—— 事務所としては、長く勤めてもらいたい気持ちは当然あるでしょうね。

岡山:そうですね。MONAKAでは採用面談のときに、早く独立したいと考えているのか、じっくり学ぶつもりなのかをあらかじめ尋ねるようにしています。早く独立したい人はそれだけ早く学ぶ必要がありますし、そのぶんこちらもスピード感のある仕事を経験させなければならないと思います。もちろん、個人の特性を勘案しながらですが。

水田:私もいずれは独立をと考えてはいましたが、以前がアトリエ系ではなくハウスメーカーからの転職だったこともあり、じっくりと学ばせてもらうつもりでいました。そして、2年の間に新築2棟、カフェのリノベーション案件などを複数担当させてもらいました。

水田氏が担当した物件〈木戸の家〉Photo: 八杉和興

森田:学び方って、わりとその人の特色によるとは思うんですけど、一気にジャンプアップする人は案外 後戻りすることも多いような気がします。その点でいえば水田さんは、ジャンプアップはしないけれど後戻りもせず、着実に進んでステップアップしてきたように感じています。これからもステップアップを続けてほしいし、胸を張って送り出したいと思います。

■ 国際文化都市・京都で働くことで受ける影響

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岡山:京都はもともと海外からの観光客だけではなく、海外から移住している人も多いですし、国際的な街だと思うんですよね。僕たちのお客様も海外の方が少なくありません。コロナ禍で一時的にストップはしましたが、また京都の国際性は戻ってきています。スタッフから海外マインドを持つ人が出てくるのも、この地域の特性からすれば自然なことだと感じます。

森田:MONAKAにも4年前から働いているフランス人のスタッフがいるのですが、フランスや台湾などからの応募もちょくちょくいただきますね。

三上:MONAKAはだんだんと組織が整ってきたように思います。物理的な事務所の環境についても、大通り沿いから公園の中に移転したことで、環境が良くなり、事務所自体も広くなり、内部のコミュニケーションもとりやすくなりました。

森田:もう前の環境には戻れないよね(笑)。

水田:私はMONAKAを離れる立場ではありますが、この事務所には単純に図面を描くだけではない、それ以外のコミュニケーションも含めたことをトータルで学べる環境があると思います。私も代表がいろいろな人と話している場所にも付いていって、まさに「仕事が生まれる」瞬間に立ち会ったりもしました。

以前の職場と比べてみても、所長が前面に立っていたり、営業スタッフが動いていたりすると見ることができない領域のものごとを、MONAKAではダイレクトに感じます。だからこそ、「とにかく学びたい」と考えている人には、最高の職場だと思います。

STUDIOMONAKA
(2022.11.22 STUDIOMONAKAにて)

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