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川島織物セルコンとファッションデザイナーがコラボした〈エッグチェア〉

展示会をフリッツ・ハンセン青山本店にて開催。関連トークイベントには石上純也氏らが登壇

PRODUCT2020.11.09

2020年11月9日初掲
11月10日 公式動画追加[*]

1843年(天保14)創業の京都の織物メーカー、川島織物セルコンは、織物の未来と100年後の川島織物セルコンを考える活動のひとつとして、これからの時代を担う新進気鋭のファッションデザイナーにファブリックのデザインを依頼し、北欧を代表する家具メーカーの1つであるフリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)を代表する家具〈エッグチェア〉にそのオリジナルの生地を張り込むというプロジェクトを2019年に始動。その第2弾となる展示会がフリッツ・ハンセン青山本店にて、関連イベントがオンラインで開催されます。

キックオフとなった2019年は、日本のファッションデザイナーの3氏、青木明子氏(AKIKOAOKI)、井野将之(doublet)、堀内太郎(TARO HORIUCHI)にデザインを依頼。誕生したコラボレーションチェアが、3氏がそれぞれデザインした服とあわせて、2019年3月28日から4月7日にかけて、東京・北青山の「フリッツ・ハンセン青山本店」で開催された展示会「織物屋の試み 展 – ファッションデザイナー編 -」にて披露されています。

2019年に発表されたコラボレーションチェア(デザイナーは左から順に、青木明子氏、井野将之氏、堀内太郎氏)

第2弾となる2020年は、織物に造詣の深い三原康裕氏(Maison MIHARA YASUHIRO)、ユースカルチャーをクチュールの世界に取り入れたクリステル・コーシェ氏(KOCHÉ)、モダンで温かみがあるデザインを生みだすと評されるロク・ファン氏(rokh)の3氏をデザイナーに迎えています。それぞれが導きだしたコンセプトのもと、織物の新たな可能性を追求した、織物の未来を予見するファブリックが誕生しました。

プロジェクトムービー制作:新春
音楽(コントラバス演奏):松永誠剛

また、今回の「織物屋の試み展 ファションデザイナー編 其の二」のプロジェクトムービーが、新しい映像制作のかたちを提供するクリエイティブ集団「新春」の制作により、展示会に先駆けた11月3日より、川島織物セルコンのYouTube公式チャンネルで公開されています。


# 川島織物セルコン Corporate YouTube公式チャンネル「織物屋の試み展 川島織物セルコン」(2020/11/03)

3つのコラボレーションチェアの概要と、デザインした3氏のプロフィールは以下の通りです。

デザイン:三原康裕 / Maison MIHARA YASUHIRO
コンセプト:時の堆積
紋ビロード・引箔 使用織機:シャトル手織機

コンセプトである「時を織り込む」という、詩的で壮大なチャレンジとなった三原氏とのコラボレーションでは、川島織物セルコンのアーカイブから選びだした柄を、紋ビロード引箔の技術で表現しています。
箔には漆を使い、塗っては剥がす工程を何度も繰り返し、美しいファブリックがあたかも朽ち果てたような、自然な経年変化が感じられるような仕上がりを実現しました。紋ビロードはヨーロッパから日本に伝わり、17世紀頃から国内で制作されるようになったもので、パイル・ビロードで立体的に柄を表現できるのは、川島織物セルコンならではの技術とのこと。紋ビロードと漆芸の伝統的な技術とを掛け合わせてつくられたのが、このファブリックになります。また、経糸とパイルに、京都・西陣の絣(かすり)の技法(むら染め)を採用することで、風化したような独特の風合いも生まれています。

三原康裕氏コメント:ひとつの空間に様々な異なる時間軸が存在し、重なり合う様な世界を表現しようと思いました。マテリアルには川島織物セルコンの歴史を継承した職人の手作業によって、過去・未来・現在などの概念が表現され、それはとても重厚で分厚い時間の層を感じることができます。また、普遍的でありながらフューチャリスティックなエッグチェアだからこそ、華美ではない「優美さ」を表現するに適した存在でもあります。もし、「4次元」が私たちの目の前に現れるとしたら、このような詩的な姿をしたものであって欲しいと思います。

YouTube 限定公開 プロジェクトムービー Yasuhiro Mihara 「時の堆積 / Inheritance」(2020/11/03)
https://youtu.be/W3YTZvt2oiQ

三原康裕(みはら やすひろ)氏
1972年長崎県出身。1993年多摩美術大学デザイン学科テキスタイル専攻入学、在学中の1994年にオリジナルブランド「archi doom」を立ち上げる。1997年に自身の靴レーベル「MIHARAYASUHIRO」を開始。1999年に現在の株式会社ソスウの前身、1とその数字自身しか割り切れない数字「素数」を意味する、自身の会社・有限会社SOSUを設立。メンズウェアーラインを東京コレクションにて発表。 2000年「PUMA by MIHARAYASUHIRO」のコラボレーションスニーカーを発表。2004年にミラノメンズコレクションに初参加、2007年には発表の場をパリメンズコレクションに移し、2008年にMensstyle.comによって、パリで開催されたメンズコレクションの優れたデザイナーTOP10の1人に選ばれる。2010年自身初のレディースコレクションを東京で発表。2016-2017秋冬コレクションから、ブランド名を「MIHARAYASUHIRO」から「Maison MIHARA YASUHIRO」に変更。


デザイン:クリステル・コーシェ / KOCHÉ
コンセプト:「Paris Meets Kyoto」
引箔 使用織機:シャトル力織機

クリステル氏が得意とする “ジャージ素材をパッチワークのように嵌め合わせた作品” は、2つの異なる世界のものを繋ぎ合わせることによって、新しいクリエーションを生み出していく、という自身のキャリアを象徴する手法です。
コレクションで何度も日本を訪れ、日本の文化や京都にも愛着を持っているクリステル氏からの要望は、今回のファブリックを「日本の伝統技術でつくりたい」というものでした。そこで、日本とヨーロッパから50着近くのユーズドサッカージャージを収集、小さく切り裂き、和紙に並べて貼り、それを糸状に裁断して織り込むという引箔の技法によって、このファブリックは完成しました。デザインは、戦国武将が愛用した着物の柄を参考に、パッチワークのように仕上げられています。
引箔は手がかかる手法のため、高級な素材を用いる以外の概念が、川島織物セルコンにはこれまでなかったといいます。ユーズドサッカージャージを用いるためには、伸縮性を調整するといった、伝統技法を新しい見解で見直すことが必要であり、それこそが「伝統工芸品というのは常にモダンなものになりうる」というコーシェの意図を再現することにつながりました。また、背もたれに入った「KOCHÉ」と「川島織物」のダブルネームのロゴの表現には、引箔の上にジャガード織を施すという新しい手法が採用されています。

クリステル・コーシェ氏コメント:京都で川島織物の本拠地を訪れた時には本当に感動しました。伝統技術というものは常に私に新しいインスピレーションを与えてくれます。でも最も私が心を動かされたのは、川島織物セルコンで働く人々でした。私は、職人をはじめとする皆さんと共に同じゴールを目指し、そして情熱を分かち合い、今回のプロジェクトをつくりあげ、そしてそれはとても美しいファブリックに昇華されました。さらに、完成された椅子にはヴィンテージのサッカージャージが使われていて、リサイクルという概念にも通じながら、2つの文化や技術が見事に融合されている結果ともいえます。

YouTube 限定公開 プロジェクトムービー Christelle Kocher「Paris meets Kyoto」(2020/11/03)
https://youtu.be/aOuGKNAIw8k

クリステル・コーシェ(Christelle Kocher)氏
セント・マーチン美術大学を卒業後、ボッテガヴェネタやドリスヴァンノッテン、クロエなどでキャリアを積み、2015年に自身のブランド「コーシェ(KOCHÉ)」を始める傍ら、シャネル傘下のクチュールアトリエであるルマリエのアーティスティック ディレクターも兼任。2019年には、業界で最も権威あるデザイナー賞として知られるANDAM fashion awardのグランプリを受賞。


デザイン:ロク・ファン/ rokh
コンセプト:「自然と本能 ~森を織る~」
綴織 使用織機:緞帳用大機

「有機的な自然の世界そのものをファブリックで表現する」というロク氏の意図の実現に辿り着くためには、ファブリックに対する新しい価値観が必要でした。通常は平面で美しさを表現していく綴織という手法を、立体的に再構築していくため、何度も試行錯誤を繰り返されました。また、自然への敬意の表現には、サステナブルという概念に基づき、カーテン生地の生産時に生じる端材などをはじめ、これまで使わなかった素材も選りすぐって使われています。
「日々の喧騒から離れ、静寂さや穏やかさを慈しむ、自然の中にある心地よさ」そのものを生み出す、という難題に挑戦したファブリックは、その見た目に限らず、椅子自体がまるで森の木々や苔そのものような触り心地となっています。

ロク・ファン氏コメント:今回の川島織物とのプロジェクトで、織物の伝統技術とはどういうものかということを深いところで理解することができたし、その技術によってコンセプトが違ったレベルにまで高められていく過程にとても興奮を覚えました。川島織物の技術の達成力は素晴らしく、織物自体にアートや他のコンテクストを表現していくことは100%可能だと確信していました。そして実際、2Dの織物を3Dに進化成しえるということに成功し、同時に織物においての「触覚」ということにも新しい境地を開いたと思います。このプロジェクトによって、アートの形だけではなく、優れた職人、デザイナー、取り巻く人々、カスタマーなどが同じ感覚を共有する、といったことが実現できたと思っています。

YouTube 限定公開 プロジェクトムービー Rok Hwang「森を織る / Comfort」(2020/11/03)
https://youtu.be/fUQI6_mUvR8

ロク・ファン(Rok Hwang)氏 セントラル・セント・マーチンズを卒業後、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)のもと「セリーヌ(CELINE)」でデザイナーとして経験を積み、2016年に自身のブランド「ロク」を設立。2018年にはLVMHプライズの特別賞を受賞し、2019年秋冬シーズンにパリファッションウィークの公式スケジュールで初のランウェイショーを開催。

今回のコラボレーションで誕生したチェアも、昨年と同様に、北青山のフリッツ・ハンセン青山本店にて開催される展示会にて、12日間の期間限定で披露されます。関連イベントとして、オンラインでのトークイベントと勉強会も展示期間中に開催されます。(en)

2020年コラボレーションチェア

「織物屋の試み展 其の二 ― ファッションデザイナー編 ―」

展示期間:2020年11月18日(水)~29日(日)
営業時間:12:00-18:00
会場:フリッツ・ハンセン青山本店(東京都港区北青山3-10-11 1F・B1F / Google Map
張り地デザイン:三原康裕(Maison MIHARA YASUHIRO)、クリステル・コーシェ(KOCHÉ)、ロク・ファン(rokh)
協力:フリッツ・ハンセン
※COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策を実施(マスクの着用、混雑時の入場制限など

関連イベント

オンライントークイベント1
登壇者:三原康裕氏、クリステル・コーシェ氏、ロク・ファン氏、相澤真諭子氏(フリッツ・ハンセン日本支社)
日時:2020年11月19日(木)19:00-21:00
予定内容:今回の「織物屋の試み 展」やファブリックデザインについて4氏が語る


オンライントークイベント2

登壇者:三原康裕氏(ファッションデザイナー)、石上純也氏(建築家)、佐藤 修(川島織物セルコン)
日時:2020年11月25日(水)19:00-21:00
予定内容:ファブリックや建築を通じた、伝統の継承と革新について、3氏が語る

Web勉強会「これからの建築 / デザインを考える Vol.5」
登壇者:南馬越一義氏(BEAMS創造研究所 シニアクリエイティブディレクター)、川島織物セルコン社員(「織物屋の試み 展」担当)
日時:2020年11月20日(金)19:00-21:00
予定内容:「織物屋の試み 展」のデザイナーコーディネートを行った南馬越氏と、川島織物セルコンの担当者が、プロジェクト誕生の経緯や、デザイナーとの制作秘話を通して、これからの建築やデザインについて語る

各回共通:
会場:オンライン
定員:500人
視聴方法:各回とも要予約制、下記特設サイトにて申し込みを受付

「織物屋の試み 展 其の二」特設サイトhttps://www.kawashimaselkon.co.jp/event/kokoromi2020/

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