建設系廃棄物から再生したリサイクル資材を建材などに用いた完全循環型バイオトイレ〈トイレトワ〉[*1]が、埼玉県入間郡三芳町にあるサステナブルフィールド・三富今昔村(さんとめこんじゃくむら)[*2]に建設されました。9月より園内にて供用を開始しています。
同県三芳町に本社を置く石坂産業が発表したもので、設計は遠野未来建築事務所、施工を寺島工務店が担当しています。
建物の本体は木造軸組構法で、壁の仕上げは土壁。版築で突き固めています。
この土壁の材は、石坂産業が建設系廃棄物から再生したリサイクル資材NS-10[*3]を80%以上と消石灰のみを使用しており、突き崩せば、廃棄せずに自然に還すことも可能です。
便器と洗面器には、フィンランド・ヘルシンキに拠点を構えるWoodio社の製品を採用。防水性能を有する木製複合材料100%による衛生器具で、石坂産業のプレスリリースによれば、日本国内では今回が初の採用事例とのこと。
また、トイレの間仕切りとカウンターには古材を使っています。
完全循環型バイオトイレ〈トイレトワ〉は、汚水処理についても考えられています。
日本発のバイオテクノロジーである複合発酵技術[*4]を用いて、微生物の力で安全に発酵、分解、合成します。これは、環境再生力のある酵素を含む処理水を生み出す技術で、汚水が100%再生利用できる水となります。
またこの処理水には、土壌を健やかにし、植物の成長を促進する効果が認められているとのこと。今後は、トイレの洗浄水としての循環利用に加えて、管理敷地内の雑木林で環境調査が行われる予定です。
さらに、トイレの周辺は、世界農業遺産にも認定されている武蔵野の落ち葉堆肥と、サステナブルフィールド・三富今昔村が知見として有する、資源を活用した大地の再生が行われ、土中の空気や水の流れを改善して里山を再生させるランドスケープデザインとなっています[*5]。
〈トイレトワ〉は、江戸時代から続く循環を現代に蘇らせたい、土づくりに欠かせない微生物の大切さを伝えたいという思いから、水を一切無駄にしない、建材も可能な限り再生できる完全循環型バイオトイレとして企画され、誕生しました。国際土壌回復企業コンソーシアム・JINOWA[*6]の監修による、バイオアーキテクトとバイオ技術のインテグレーションによって実現しています。
石坂産業では今後、このバイオトイレを起点に、従来にない体験プログラムを展開していく計画です。
企画・事業主:石坂産業
設計:遠野未来建築事務所
施工:寺島工務店
ランドスケープデザイン技術指導:WAKUWORKS[*5]
複合発酵技術提供:高嶋開発工学総合研究所[*4]
ネーミング:TSDO Inc.[*1]
[*1] 「トイレトワ」ネーミング:グラフィックデザイナーの佐藤 卓氏が主宰するデザイン会社・TSDO Inc.による
[*2] 三富今昔村:”Zero Waste Design”を企業ビジョンとして掲げる石坂産業が、不法投棄のゴミの山から再生、保全した里山を活用した環境教育フィールド。東京ドーム約4.5個分の広さを有する。古くは三富新田と呼ばれた地域の文化や伝統を伝えながら、持続可能な地球を実現する資源循環の重要性を周知するため、一般にも開放して運営。季節ごとにさまざまな環境教育の体験プログラムも実施している。
https://santome-community.com/
[*3] リサイクル資材NS-10:建設廃棄物に含まれる土砂を再利用した盛土材、技術保有会社は石坂産業とアイエスエンジニアリング(詳細:建設技術審査証明 / 建設技術審査証明協議会ウェブサイト記載)
[*4] 複合発酵技術提供:高嶋開発工学総合研究所
[*5] ランドスケープデザイン技術指導:WAKUWORKS
[*6] 国際土壌回復企業コンソーシアム・JINOWA:日本とイタリア両国に拠点を持つGEN Japanの呼びかけで、日本・ドイツ・イタリアの地球規模の環境・生態系の回復に取り組む企業が参画するコンソーシアムとして、2021年5月1日にイタリアにて設立
プレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000035540.html