EXPO2025 大阪・関西万博 テーマ事業「いのちを育む」のシグネチャーパビリオン〈いのちめぐる冒険〉は、アニメーション監督、メカニックデザイナー、ビジョンクリエーターの河森正治氏がプロデュース、小野寺匠吾氏(小野寺匠吾建築設計事務所)がデザインを担当しています。海水練りのコンクリートパネルを使ったさまざまな大きさの立方体が積層する間を抜けてめぐるパビリオンです。
Photo: TEAM TECTURE MAG
パビリオンは鉄骨フレームとコンクリートパネルからなる2.4m立方のシンプルな構造体(セル)が集まった構成。1つの立方体を最小単位とする多彩なセル(細胞)が集合していのちが構成される様子を表し、コンクリートパネルは大阪湾の海水で練った新素材マテリアルを活用しています。
Photo: TEAM TECTURE MAG
建築コンセプト「いのちの礁」
多様な “細胞” が作る一連の体験
ランダムに積み上げられた構造体が多くの隙間や空間の連なりを生み出すことで、多様ないのちを育む礁のように、 ダイナミックに生命を刺激し、感性をひらく建築が立ち上がります。
©Shoji Kawamori / Vector Vision / EXPO2025
海水コンクリートパネル:貴重な真水資源の保全
建築かつ展示の空間単位であるセルは、真水を使用した一般的なコンクリートではなく、海水を使用したコンクリートパネルによって構成されています。 緊張材として、鋼線の代わりに炭素繊維ケーブルを使用することで真水ではなく大阪湾の海水を配合することが可能になり、長寿命化等の多くの革新性をもたらしています。リユース・リパーパス:いのちの循環
長寿命化されたコンクリートパネルと、海上輸送コストを抑えられる鉄骨構造ユニットは、会期終了後のリユース、リパーパスの可能性を広げることができ、我々はそれを(いのちの循環)と見立てて計画しています。
Photo: TEAM TECTURE MAG
メインコンテンツ「超時空シアター」では、河森プロデューサーによる「宇宙スケールの食物連鎖」をイマーシブ映像でカメラ付きVRゴーグルを装着した30人が同時体験できます。このシアターのために開発された立体音響などの最先端技術とクリエイティブの融合は、ドバイ万博の日本館も手がけたバスキュール社による展示企画です。
Photo: TEAM TECTURE MAG
プロデューサーが語る「パビリオンの推しポイント」
「いのちめぐる冒険館」では人間だけではなく、多様な生き物のいのちがどんな形でつながり合い、共鳴し合っているのかをテーマに「いのちは合体・変形だ!」というコンセプトでそれを表現しています。
たとえば自分が大阪湾の魚を食べるとしたら、それは魚を食べているとも言えるけれど、人間中心ではなく、いのちの流れを中心に考えると、魚と合体して自分になっている。その魚が大阪湾の海水を飲んでいたとしたら、大阪湾の海水とも自分は合体している。今、この太陽の日差しが暖かいのも、499秒前に太陽を出た光と自分は合体してこの自分を形成している。499秒前、自分の一部はあの太陽にいて、確実にそこで輝いていたのです。
そんなことが実感できるようなパビリオンですが、これは本当に直接体験していただかないと伝わらないものなので、ぜひ来場して体験していただければと思っています。
私が初めて万博を体験したのは「多様性」という言葉をまだ知らない小学5年生でしたが、いろんな民族、いろんなデザインの建物、いろんな食べ物、その多様性に圧倒されました。あのとき万博に行っていなければ、アニメーションの仕事に就いていなかったと思います。今回の万博でも、そんな体験が少しでも多くの人の何かのヒントになればと思います。(完成披露・合同内覧会 会見より)
トップ写真:TEAM TECTURE MAG
※ グレー囲み内のテキストは「シグネチャーパビリオン8館完成披露・合同内覧会」オフィシャル素材より