東京を舞台に、デザイン・アート・インテリア・ファッションが交差する日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2025」が開催されます。9回目となる今年は「Brave ~本能美の追求~」をテーマに、世界各地から集まったデザイナーやアーティストが、時代の転換期に求められる創造のかたちを提示します。
今年の注目は、渋谷の新拠点「MEDIA DEPARTMENT TOKYO」で開催される公式エキシビション「DESIGNART GALLERY」。総面積1,145㎡の会場を舞台に、香港を拠点とする建築設計事務所 COLLECTIVEが日本初となる空間演出を手がけます。3フロアを活用し、各展示に合わせたスケールの大きなインスタレーションが展開されます。
1階の見どころは、2023年に分譲マンションブランド「ライオンズマンション」のリブランドを行い、同年の「DESIGNART TOKYO 2023」でもローンチ展示を行った大京が、コラボレーターに建築家の永山祐子氏を迎えての企画展示と、LIXILによる床・壁・天井の3つのテーマで構成される展示「無為に斑 – 空間構成要素の再構築 -」です。このほか、世界的パルクールアスリート・ZENによる日本初公開の写真展「Urban Equivalence―都市等価論」も注目です。今年のキービジュアルを含む、建築と身体の関係を写し取る18点が並びます。
2階では、Original Kolor Design × オーケー化成「+STORIES」や、三菱電機統合デザイン研究所による金属3Dプリンタ作品、革新的な立体造形技術をコアに持つデザインブランド「130(ワンサーティ)」による企画展示など、素材やテクノロジーの可能性を探る実験的展示が展開されます。
3階では、アンスティチュ・フランセの支援により実現した特別展示「French Design Focus at Designart Tokyo」や、we+(ウィープラス)と平和合金とのプロジェクト「Unseen Objects」など、国際的なコラボレーションが織りなす多彩な表現も見どころです。
右からベティ・ング、チ・ヤン・チャン、フアン・ミンゲス ©Kevin Mak
COLLECTIVE
2015年設立。香港を拠点に建築・インテリアデザイン・エキシビションデザインを専門に国際的に活躍する建築設計事務所。創設者のベティ・ングに加え、プリツカー賞を受賞したレム・コールハース/OMAとヘルツォーク&ド・ムーロンで上級職を務めた経歴を持つディレクター等に迎え、また、ロンドン、マドリード、パースにもチームメンバーを擁します。アジアに深く根ざしながらも、多様なチームメンバーの国際的な経験やグローバルな視点、異なる分野のパートナーとの協業を通じて、常識に挑み革新を追求することで、各プロジェクトは厳格なプロセスを経て、従来のスタイルを超越した空間を創造しています。

「French Design Focus at Designart Tokyo」
アンスティチュ・フランセの支援により開催される特別展示。現代フランスデザインの創造性と多様性に焦点を当て、素材の感覚的質を探るマチルド・ブレティヨ、種を内包した折り紙が、生命を宿し有機的な造形を示すガラ・エスペル、民主主義を象徴する577脚の椅子を提示するクレール・ルナールとジャン=セバスチャン・ブランが参加。

「Unseen Objects」
富山県高岡市の鋳物会社・平和合金とデザインスタジオwe+によるコラボレーション。鋳造に使われる治具や素材の偶発的な造形に着目し、見過ごされてきた舞台裏の美を作品化。伝統と実験の融合によって、工芸と工業の境界を問い直す。パリやミラノで発表された花器シリーズに加え、新作家具も展示予定。
「DESIGNART GALLERY」
会場:MEDIA DEPARTMENT TOKYO
所在地:東京都渋谷区宇田川町19-3
開場時間:10:00~19:00(初日10月31日|12:00~17:00/最終日11月9日|16時クローズ予定 最終入場15時)開催エリアの表参道、六本木、銀座、東京方面へ回遊する最初の起点としてインフォメーションセンターも設置予定。
毎年高い注目を集める30歳以下の若手クリエイター支援プログラム「UNDER 30」では、国内外から選出された5組の才能が登場。Nomadic、閃(セン)、Kaining He、金森由晃、TORQ DESIGNといったクリエイターが、それぞれ独自の素材観や手法をもとに新しい表現を提示します。

注.展示会場は表参道 TIERS GALLERY by arakawagrip
Kaining He
中国・杭州出身のデザイナー、Kaining Heによる《時間の贈り物(The Present of Time)》は、「お香」が灰へと変わる過程をデザインとして捉えた作品です。素材の物質性を観察しながら、春の梅や秋の紅葉を思わせる燃焼の姿を造形に重ねています。「今という瞬間」を“時間からの贈り物”と捉え、禅の思想と結びついた静かな体験を生み出しています。

注.展示会場は青山 リノベる B2Fスペース b1.
Nomadic
2023年に結成されたデザイナーコレクティブ。閉じた完成品をつくらず、文脈や環境に応じて形を変える創造のメソッドを探求しています。「開かれたモメンタム」では、揺らぎと余白をもつ構造を通じて、外部と切り離せない「生きた」デザインを提示します。場所や領域を周遊しながら変化を続ける姿を、物質的・空間的に体現しています。

注.展示会場は東京ミッドタウン ガレリア 2F・3F
閃 / SEN
福井県越前市を拠点に活動する若手チーム。デザイナーや家具職人など異なる分野の4人が協働し、地域素材を新たな解釈で再構築します。作品〈within the neighborhood〉では、地元の越前和紙に焦点を当て、職人との対話と手仕事を通じて素材の素直な価値を探ります。「産地」ではなく「近所」として土地を捉えることで、軽やかで深い視点を提示しています。

(左)Photo by 酒井優衣 注.展示会場はJR銭瓶橋高架下B
金森由晃
東京藝術大学大学院修了。日常の中に潜む現象を丁寧に再構築する作品で知られます。クリエイティブユニット「Oku Project」としても活動し、社会と個人の関係をテーマに探求を続けています。本展では《情景 -scene (or memory)-》を発表。画一化された量産品や日常の風景の中から個々の記憶を呼び覚まし、そこに生きる人それぞれの物語を映し出します。

©studio same 注.展示会場はJR銭瓶橋高架下B
TORQ DESIGN
神戸を拠点に活動する3人組デザインスタジオ。3Dプリント技術と手作業を融合させた《Pyro PLA Project》では、出力物の表面を直火で焼き、積層の軌跡を溶かして新たな質感を生み出す取り組みです。データと手仕事を往復しながら、樹脂を陶芸のように扱う試みで、使い手が創造性を発揮できる“余白のあるデザイン”を追求しています。
渋谷を中心に、表参道、六本木、銀座など都内各所でも多彩な展示が行われます。各エリアを回遊しながら、素材・光・造形の表現を多角的に体感できます。
【六本木|AXISビル】
長年にわたりデザイン文化を発信してきたAXISビルでは、注目の展示が集結します。
地下の展示空間に、GRANDIR+小阪雄造、田中悠史、市川善幾、萩谷綾香、佐藤洋美による、茶室の精神を現代に翻訳した空間インスタレーションがしつらえられます。LGSを素材に、構えと映しによって人の感性を触発する。形式よりも“関係性”に重きを置き、思想と技術の交差から“生き方としてのサステナビリティ”を提示。伝統と現代を結ぶ、詩的かつ建築的な実験空間です。その向かいの特設スペース(B121)では、siroに集う14人の作家による、回転をめぐる企画展「siro exhibition 02 / は、回る」を開催。

AXISビル B1F 特設スペースB111「時構の間|SEN-AN」
2F Ambientec Gallery Tokyoでの「Synesthesia ― New Collection “Barcarolle” ―」では、デザイナーの松山祥樹による新作ポータブルランプ〈Barcarolle〉の世界観を、光・香り・音で演出。パフュームブランドFUEGUIAや作曲家Felix Röschともコラボレーションし、五感に響く体験空間を構成します。
また、4FのJIDAデザインミュージアムでは、建築・アート・プロダクトを横断するVERCE(安藤寿孝・塩月卓也)が、端材や廃素材を再構成したVERCE「Discarded, Discovered」を展示。素材に潜む偶然の形や時間の痕跡をすくい取り、「再利用」ではなく“再解釈”としての美を提示します。

(左)Ambientec Barcarolle / © Shunsuke Watanabe(uranographia)(右)VERCE / ©Takuya Shiotsuki
【渋谷|西武渋谷店 A館 B館】
開館以来、渋谷のカルチャーシーンを牽引してきた西武渋谷店では、金網を用いた共和鋼業+落合守征「金網の茶室」や、CYUON+落合守征「Chromatic Symphony of Landscapes」など、素材の工業的側面を芸術的に昇華させた展示が並びます。
また、アートプロジェクトKewai「Sense of Spring collection」では、桜の花びらを手作業で構成した“気配”をテーマにした繊細なインスタレーションが展開されます。

(左)CYUON+落合守征「Chromatic Symphony of Landscapes」(右)Kewai「Sense of Spring collection」
【南青山|COSENTINO JAPAN】
スペインの建材メーカー・CosentinoとデザイナーJames Kaoru Buryによる展示「PIECE OF REST」を開催。建築現場で生じる石材廃材を再構築し、異素材との融合によって新たな美を生み出す試みを紹介します。廃材を「失われゆく素材」ではなく「再生する造形」として捉え直す、詩的なインスタレーションです。

Cosentino x James Kaoru Bury「PIECE OF REST」
【表参道|hide k 1896表参道旗艦店】
環境配慮型素材「TRANSWOOD®」を用いた「les trois collection」を展示。間伐材の木粉とバイオマス樹脂を組み合わせた素材によって、木の温もりとサステナビリティを両立。建築家・隈 研吾が手掛けたシグネチャーデザインも紹介されます。
【表参道|TIERS GALLERY】
UNDER 30選出含む、4組の若手クリエイター(Kaining He、TOG/春江紗綾+林 海人、HaKU Design Studio、庄司竜郎)の作品展示。
【表参道|TOYOTA】
表参道のギャラリー・seeenにて、TOYOTAが2年連続の出展、社内の構造デザインスタジオ主宰・大學孝一を中心に取り組む、環境負荷低減と資源の完全循環へ向けた活動「Geological Design(ジオロジカルデザイン)」の一環として、企画展示「クルマの記憶Ⅱ:素材の変容と情景」を11月3日までの期間限定で開催します。吉泉 聡率いるTAKT PROJECTが会場デザインで協力。

TOYOTA 構造デザインスタジオ「クルマの記憶II:素材の変容と情景」 ※展示は11月3日まで
【銀座|NIESSING GINZA】
モダンジュエラー・ニーシング(NIESSING)は、建築家・中村竜治とのコラボレーション展示「ジュエリーとホース」を実施。内部に樹脂を流し込んだホースを造形的に固定し、その偶然の曲線を空間に取り込みます。日常とアート、機能と装飾、偶然と必然といった相反する概念を一室に共存させる試みです。

NIESSING × RYUJI NAKAMURA「ジュエリーとホース」
【日比谷OKUROJI|tempo】
重力とバランスの新しいカタチを探求するモビールブランド・tempoが新作を披露。DRILL DESIGNによる新作「cloud」と、ロンドンで建築を学び国内外で活躍するYANG HEN CHENによる初のモビール「wave motion」を発表します。

new mobile collection / tempo
【東京〜神田|JR銭瓶橋高架下A・B】
JR銭瓶橋高架下A・Bでは、アップサイクルや地域性をテーマにした実験的な作品群が並びます。A会場では、gekitetz Inc.が広島で採取した環境音を可視化した「void reconstruct (ykgw);」を展示。音から都市の情緒を再構築しています。また、B会場では、TORQ DESIGNが3Dプリント素材を直火で焼成して積層跡を溶かした新しい質感の造形「Pyro PLA Project」を発表をします。

(左)hide k 1896 「TRANSWOOD|les trois collection」(中)TORQ DESIGN「Pyro PLA Project」(右)gekitetz Inc.「void reconstruct (ykgw); 」
多様な文化を横断する、東京発のデザインフェスティバル「DESIGNART TOKYO」は、表参道や渋谷、六本木、銀座など都心を横断する複数のエリアを舞台に、街全体をミュージアムと変える試みとして毎年開催されてきました。2024年からは、イベント会場が東京エリアまで広がり、訪れる人は東京の街を回遊しながら多様な作品と出会うことができます。
世界屈指のミックスカルチャー都市・東京を背景に、デザイン、アート、インテリア、ファッションといった幅広い領域を横断し、国内外から多くのクリエイターが集います。東京の街が“デザインとアートの都”へ変貌する10日間、必見です。
「DESIGNART TOKYO 2025」開催概要
会期:2025年10月31日(金)~ 11月9日(日)※会期が異なる会場あり
エリア:表参道・外苑前・原宿・渋谷・六本木・銀座・東京主催:DESIGNART TOKYO 実行委員会
発起人:青木昭夫(MIRU DESIGN)、川上シュン(artless)、小池博史(NON-GRID)、永田宙郷(TIMELESS)、アストリッド・クライン(Klein Dytham architecture: KDa)、マーク・ダイサム(Klein Dytham architecture: KDa)公式ウェブサイト:https://www.designart.jp/designarttokyo2025/
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