21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場レポート、会場構成をトネリコが担当 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
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21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場レポート、会場構成をトネリコが担当

21_21 DESIGN SIGHT 企画展「デザインの先生」会場レポート

[Report] 6人の巨匠にデザインの何たるかを学ぶ展覧会、会場構成をトネリコが担当

東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2にて、企画展「デザインの先生」が11月21日より開催されています。

『TECTURE MAG』では、開幕前のプレスカンファレンス(以下、一部でプレカンと略)を取材、本展をレポートします。

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」プレカン開催時の様子 Photo: TEAM TECTURE MAG

Report INDEX

・本展における6人の”先生”の顔ぶれ
・本展の狙い
・トネリコによる会場構成
・デザインがもつ力を改めて感じ取る

本展における6人の”先生”の顔ぶれ

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」フライヤー

本展における6人の”先生(マエストロ)”:ブルーノ・ムナーリ / Bruno Munari(イタリア生まれ、1907–1998年)、マックス・ビル / Max Bill(スイス生まれ、1908–1994年)、アキッレ・カスティリオーニ / Achille Castiglioni(イタリア生まれ、1918–2002年)、オトル・アイヒャー / Otl Aicher(ドイツ生まれ、1922–1991年)、エンツォ・マーリ / Enzo Mari(イタリア生まれ、1932–2020年)、ディーター・ラムス / Dieter Rams(ドイツ生まれ、1932年–)※各氏プロフィールはこちらを参照

本展の狙い

プレカンの冒頭、挨拶に立った21_21 DESIGN SIGHT館長の佐藤 卓氏と同館ディレクターを務める深澤直人氏は、本展の狙いについて次のように説明しています(それぞれ発言内容を『TECTURE MAG』にて要約)。

「21世紀以降、デザインの概念は一気に拡がりました。そして今、いったい何が良いデザインなのかがわかりにくくなってしまっています。そもそもデザインとは何か、デザインが目指すべきものは何か、今いちど、デザインの基本に戻って考えてみようというのが、今回の展覧会の企画趣旨です」(佐藤 卓氏談)

その教えを乞う先生として、主に20世紀に活躍したデザイナーの中から、深澤直人氏が6人を厳選。「情報化が発達している今日でも、絵本作家としても名高いブルーノ・ムナーリを除いては、一般的にはもちろん、デザイン教育の場でもあまり知られていない6人」であると深澤氏は語っています。

「僕はこの6人にはほぼ会っていて、今でも彼らから影響を受け続けています。いま佐藤さんがおっしゃったように、広義となり拡大解釈されることもある昨今のデザインのカオス(混沌)を、オーダー(秩序)あるものに今いちど変換させたいという企図の展覧会でもあります。日本の企業ないし社会を大きく動かす立場にある人たちは、デザインは大切なものと捉えている一方で、勉強するのは難しいと感じている。そんな今だからこそ、ピュアなデザインとはこういうものなんだよと提示し、知らしめたい」(深澤直人氏談)。

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ロビー) 撮影:木奥恵三
バナーの人物(左から):ブルーノ・ムナーリ(1907–1998年)、アキッレ・カスティリオーニ / Achille Castiglioni(1918–2002年)、エンツォ・マーリ / Enzo Mari(1932–2020年)※3氏はいずれもイタリア生まれ

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ロビー) 撮影:木奥恵三
バナーの人物(左から):ディーター・ラムス(ドイツ生まれ、1932年–)、オトル・アイヒャー(ドイツ生まれ、1922–1991年)、マックス・ビル(スイス生まれ、1908–1994年)

トネリコによる会場構成

デザインの大家たる6人のデザイン哲学と仕事ぶりをどのように展示すべきか? 本展の会場構成を担当したトネリコを率いる米谷ひろし氏は「6人の顔と名前をまず大きく見せよう」と考えました。

「6人はデザインの神さまのような存在です。本展ではデザインの王道を見せるという意識のもと、各氏のポートレートを1枚の絵画のように扱っています。今日ではデジタルカメラでいろいろな写真が撮れますが、当時はフィルムで、デザイナーとしてのこだわりをもってポートレートを用意していたと思うのです。お気に入りの1枚もあるでしょう。そういったことにも思いを馳せられるようなビジュアルとなっています」(米谷氏談)

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2) 撮影:木奥恵三

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2)ブルーノ・ムナーリ展示 撮影:木奥恵三

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2) 撮影:木奥恵三

「ストーリーとしては、ロビーでまず6人の情報をインプットしてもらい、ギャラリー1では6人の年表を、同じ空間では没入型のインスタレーションをみせる。ギャラリー2ではそれぞれのゾーニングはゆるやかに、回遊できるようにして、前半はイタリアの3人、後半はドイツとスイスの3人です。貴重な展示の隅々まで見てほしいので。この角では右に曲がってほしいなといった道筋をある程度コントロールした什器の配置となっています。展示品リストはギリギリまでFIXできそうにないことはわかっていたので、展示に必要な壁は立て、舞台のような平台などもそれぞれに用意して、設営である程度は調整できるように考えました」(米谷氏談)

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2)アキッレ・カスティリオーニ展示風景 撮影:木奥恵三
ポートレートを大きくしたことについて、米谷氏の師で日本を代表するデザイナーの内田繁氏(1943-2016)から受けた、過去に手がけた会場構成のデザインへの厳しい評価が反面教師としてあったという

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2)アキッレ・カスティリオーニ展示(手前) 撮影:木奥恵三
カスティリオーニは1962年のフロス社(FLOS)設立にデザイナーとして参画している

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2)エンツォ・マーリ展示(手前) 撮影:木奥恵三
マーリは晩年、良品計画や飛騨産業といった日本企業と協働している

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2) 撮影:木奥恵三
ミュンヘンオリンピック(1972)のポスターやピクトグラムのデザインを担当し、のちにRotis(ローティス)書体をつくったオトル・アイヒャーの展示

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2)オトル・アイヒャー展示 撮影:木奥恵三
アイヒャーが残した仕事を通して、ビジュアルコミュニケーションの重要性を今の時代に問う意図が本展にはある

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2) 撮影:木奥恵三
ウルム造形大学初代校長を務めたマックス・ビルの展示。バウハウスの流れを汲むウルム造形大学は、ビルとアイヒャー、そしてアイヒャーのパートナーのインゲ・ショル(1917-1998)の3人が中心となって設立された。同校に留学し、帰国後はビルと親交があった向井周太郎(1932-2024)の私蔵資料が、氏の遺族の協力を得て展示されている(画面手前)

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2)マックス・ビル展示 撮影:木奥恵三

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2)マックス・ビル展示 撮影:木奥恵三

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー2)ディーター・ラムス展示 撮影:木奥恵三

本展に展示されたプロダクトは、正面だけでなく背面や側面も見られるようになっているのが特徴です。カタログなどの写真資料ではプロダクトの正面しか見ることができないところ、「背面まで手を抜かない、細部まで行き届いたデザインをぜひ見てほしい」という、本展ディレクターの意向を反映したものです。

デザインがもつ力を改めて感じ取る

「この2人の尽力がなければ本展はここまで素晴らしいものにはならなかった」と深澤氏が賛辞を惜しまなかったのが、展覧会ディレクターを務めた川上典李子(21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクター、デザインジャーナリスト)と田代かおる(キュレーター、ライター)の両氏です。巨匠6人とその時代の綿密なリサーチだけでなく、当時のプロダクトや資料の持ち主を探し出し、交渉を重ねて借り受けるまで、本展にはコレクター垂涎の品々が並んでいます。

「6人の先生は、活動時期に重なりはあるものの、同じ潮流に属していたわけではありません。6人6様の仕事を調べていくうちに、共通項がいくつか浮かび上がってきました。大きく3つを挙げると、まず第2次世界大戦の荒廃からの復興にデザイナーとして尽力したこと、2つめは当時から環境問題などデザインをとりまくことにも目を向け、統合的にデザインを捉えていたこと、そして、極めて高いクオリティーのもと美を創造していたことです。そして、戦後の経済成長期を牽引したプロダクトデザインのみならず、時代の創造性をも牽引した彼らの人間性もまた魅力的なものでした。本展では、彼らが残したモノだけでなく、彼らの言説の一部、読んだ者の胸に刺さるような言葉も紹介しています。デザインがもつ力、当時の伝動力がどのようなものだったのかを感じ取ってほしいと願っています」(川上典李子氏、田代かおる氏談)

[了]

Texed by Naoko Endo / TEAM TECTURE MAG

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

会場風景(ギャラリー1)年表の展示 撮影:木奥恵三

企画展「デザインの先生」開催概要

英語表記:Learning from Design Maestros
会期:2025年11月21日(金)〜2026年3月8日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
休館日:火曜、年末年始(12月27日〜1月3日)
開館時間:10:00-19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般1,600円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
※各種割引設定については公式ウェブサイトを参照

主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、経済産業省、港区教育委員会、イタリア大使館、スイス大使館、ドイツ連邦共和国大使館
助成:サカエ・シュトゥンツィ基金
特別協賛:三井不動産
協力:国立工芸館、武蔵野美術大学 美術館・図書館、学校法人多摩美術大学、クワノトレーディング(パージナ)、竹尾、デルフォニックス、フロスジャパン、メトロポリタンギャラリー
展覧会ディレクター:川上典李子、田代かおる
企画協力:向井知子、板東孝明(武蔵野美術大学基礎デザイン学科教授)
企画協力、告知グラフィックデザイン:SPREAD
会場グラフィックデザイン:UMA/design farm
会場構成:TONERICO:INC.
映像制作:菱川勢一(DRAWING AND MANUAL)

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」会場写真

撮影:木奥恵三

本展詳細
https://www.2121designsight.jp/program/design_maestros

 

21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」11/21よりギャラリー1&2にて開催

21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2「デザインの先生」開催概要

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21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」11/21よりギャラリー1&2にて開催

ブルーノ・ムナーリ、マックス・ビル、アキッレ・カスティリオーニ、オトル・アイヒャー、エンツォ・マーリ、ディーター・ラムスの活動の軌跡に学ぶ

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