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世界112の国と地域から1058作品が集結 「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2026」最優秀賞決定

世界112の国と地域から1058作品が集結

「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2026」最優秀賞決定

若手建築家・クリエイターに創作の機会を提供し、実際の建築として実現されることを特徴とする「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2026」の受賞作品が発表されました。

第二回となる今回の舞台は、屋久島。樹齢数千年の屋久杉や苔むした岩々、白砂の海岸線といった太古の自然環境を背景に、「自宅/別荘 兼 ホテル」として機能する建築の提案が募集され、112の国と地域から1058作品もの応募が寄せられました。NOT A HOTEL ロゴ

若い世代に創作機会を提供する、「建築の実現」を目指した新しいコンペ

「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION」は、40歳未満を対象に、建築の新たな可能性を多様な視点から探ることを目的に、開催されています。本コンペティションの最大の特徴は、選出された最優秀作品が「NOT A HOTEL」の次のプロジェクトとして実際に建築・販売される予定である点。

単なるアイデア募集にとどまらず、設計から実装までを見据えた枠組みとして運営されています。また、応募資格として、建築士資格の有無が問われないという点からも、多様な視点から新たな建築を実現することを目的としている姿勢が示されています。

「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2026」エントリー受付開始! ビャルケ・インゲルス、藤本壮介、片山正通が審査に参加

審査は書類審査と公開審査による2段階方式で実施され、Bjarke Ingels、藤本壮介、片山正通、濵渦伸次の4氏が審査員を務めました。また、今回は、実現・販売を前提としない新たな枠組みとして、25歳未満を対象とした「学生賞(U-25)」が新設され、次世代のクリエイターに向けた発表の機会としての側面も強化されました。

最優秀の1作品を選ぶ2次審査は、昨年に引き続き、国立新美術館の講堂にて公開方式で開催。公開審査会の様子はライブ配信もおこなわれました。当日は、ファイナリスト10組によるプレゼンテーションと審査員との質疑応答が二部制にて行われ、その後、ファイナリストと審査員、全員参加による公開ディスカッションと最終審議を経て、最優秀賞を含めた上位5組が発表されました。

濵渦伸次(NOT A HOTEL株式会社 Co-CEO/Chief Visionary)、片山正通(ワンダーウォール代表 武蔵野美術大学空間演出デザイン学科教授)、藤本壮介(藤本壮介建築設計事務所主宰)、Bjarke Ingels(Founder & Creative Director, Bjarke Ingels Group)

公開審査会の冒頭で挨拶する審査委員(左から、濱渦伸次、片山正通、藤本壮介、Bjarke Ingelsの4氏) Photo: team tecture mag

「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2026」概要

応募期間:2025年9月22日~2026年1月11日
応募総数:2,128組・4,250名(112の国や地域から参加)
提出作品数:1058作品
応募資格:2025年4月1日時点で40歳未満の方、建築士の資格不要
審査方式:2段階方式(1次審査:書類審査、2次審査:公開審査会)
審査員(敬称略):Bjarke Ingels(Founder & Creative Director, Bjarke Ingels Group)、藤本壮介(藤本壮介建築設計事務所主宰)、片山正通(ワンダーウォール代表)、濵渦伸次(NOT A HOTEL株式会社 Co-CEO/Chief Visionary)
最優秀賞(1作品)賞金:1,000万円(税込)+設計料別途
優秀賞(4作品)賞金:各50万円(税込)
佳作(5作品)賞金:各15万円(税込)
学生賞(1作品)100万(税込)※2025年4月1日時点で25歳未満

「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2026」の舞台となった屋久島の敷地

「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2026」の舞台となった屋久島の敷地

屋久島という条件が問う、建築の成立のあり方

今回の舞台となったのは屋久島は、島全体に希少で美しい自然環境が広がる一方で、年間を通じて降雨量が多く、急峻な地形と密度の高い植生を併せ持つ、厳しくも豊かな環境です。このような条件のもと、「自宅/別荘 兼 ホテル」として利用可能な建築をどのように成立させるかが設計課題として提示されました。多くの提案に共通して見られたのは、屋久島の自然を制御する「対象」として扱うのではなく、建築の前提条件として引き受けようとする姿勢です。気候や地形、水や時間といった要素を排除するのではなく、設計の起点として組み込む試みが、多くの提案において見られました。

ファイナリストプレゼンテーションの様子

〈Echo of the Mountain〉プレゼンテーションの様子(優秀賞に入賞)

〈Echo of the Mountain〉プレゼンテーションの様子(優秀賞に入賞) Photo: team tecture mag

〈Between Forests〉プレゼンテーションの様子(優秀賞に入賞)

〈Between Forests〉プレゼンテーションの様子(優秀賞に入賞) Photo: team tecture mag

〈Primitive Retreat〉プレゼンテーションの様子(優秀賞に入賞)

〈Primitive Retreat〉プレゼンテーションの様子(優秀賞に入賞) Photo: team tecture mag

〈Deep Transparency〉プレゼンテーションの様子(優秀賞に入賞)

〈Deep Transparency〉プレゼンテーションの様子(優秀賞に入賞) Photo: team tecture mag

〈Aida〉プレゼンテーションの様子(佳作に入賞)

〈Aida〉プレゼンテーションの様子(佳作に入賞) Photo: team tecture mag

もっとも議論が白熱したテーマは「雨」。雨の日の体験が豊かになる設計

公開ディスカッションでは、各審査員が2作品ずつ選び、それらの作品について評価するとともに、審査員同士の間で熱い議論が交わされました。Bjarke氏は、雨をスペクタクルに変えるという点において〈Sound of Rain〉と〈Echo of the Mountain〉を評価し、また、藤本氏は〈Sound of Rain〉のシンプルでダイレクトな表現と〈Deep Transparency〉のガラスレイヤーがもたらす多様な体験の可能性について評価しました。

公開ディスカッションの様子、Bjarke氏

〈Sound of Rain〉について、Bjarke氏は「この提案は、非常に直接的なかたちで“雨”を扱い、いわば傘のような構造によって、水という素材を体験へと変換している」とし、「1960年代的な精神、つまり、日常の要素をスペクタクルへと転換していくという発想が感じられる」とコメント。一方で、藤本氏は、ファイナリスト達の多様なアイデアと方向性に敬意を表した後、〈Sound of Rain〉を選び、「Bjarkeと同じ意見。今までの建築や住宅であまり見たことがない。けれど、とてもシンプルでダイレクトな表現なので、そのイメージや存在感にとても惹かれる」とコメントしました。また、〈Deep Transparency〉については、「屋久島の森の中に、あえてシンプルでリニアな場所を差し込むという感じが素晴らしい。この場所からいろんな経験が生まれそう」とコメントしました。

公開ディスカッションの様子、藤本氏

片山氏は、〈Aida〉のデザイン性と〈Deep Transparency〉の完成度の高さを評価し、〈Deep Transparency〉においては「自分の家にしたいと思えるほど魅力的だった」とコメントしました。濵渦氏は、住むという観点から〈A CRAFTED SHELTER〉の落ち着いた雰囲気を、そして、別荘という非日常性という観点から、〈Living Stones〉の面白さを評価しました。また、選出された作品の制作者へ質疑応答がおこなわれ、設計意図や実現可能性について深掘りすると同時に、プロジェクトの核となる強い意志と、予算に対する柔軟性の大切さが確認されました。

公開ディスカッションの様子、片山氏


最優秀賞〈Sound of Rain〉Steven Chu

〈Sound of Rain〉外観イメージ(Steven Chu / オーストラリア)

〈Sound of Rain〉外観イメージ(Steven Chu / オーストラリア)

作品概要

屋久島では、雨は単なる出来事ではありません。建築は、雨という地盤条件から始まります。雨の音は、この必然性を受け入れることで生まれる建築そのものです。島で初めて雨の音が聞こえた瞬間、天空と大地が出会い、雨によって文化的記憶が形作られ始めたと想像します。
この建築は、雨の中に在ります。雨は、構造、儀礼、体験を定義する協働者となります。建築は、庇護と大気、記憶と居住の境界として存在します。雨の音は、一時的に管理される対象ではなく、空間、儀礼、そして庇護が生まれる条件として受け入れられます。残るのは、風景の中に置かれた物体ではなく、重力、水、時間が静かに人の到来、滞在、記憶のあり方を形作る、調律された居住の状態です。ここで、 雨の音は空間として生きています。

(Steven Chu / 和訳テキスト:NOT A HOTEL公式パンフレットより)

〈Sound of Rain〉外観イメージ(Steven Chu / オーストラリア)

〈Sound of Rain〉外観イメージ(Steven Chu / オーストラリア)

〈Sound of Rain〉スパエリアイメージ(Steven Chu / オーストラリア)

〈Sound of Rain〉スパエリアイメージ(Steven Chu / オーストラリア)

〈Sound of Rain〉主寝室イメージ(Steven Chu / オーストラリア)

〈Sound of Rain〉主寝室イメージ(Steven Chu / オーストラリア)

〈Sound of Rain〉スパエリアイメージ(Steven Chu / オーストラリア)

〈Sound of Rain〉スパエリアイメージ(Steven Chu / オーストラリア)

Steven Chu氏による〈Sound of Rain〉プレゼンテーションの様子 Photo: team tecture mag

Steven Chu氏による〈Sound of Rain〉プレゼンテーションの様子 Photo: team tecture mag

Bjarke Ingels氏コメント

「本日の10案、そして優秀賞4案からも分かる通り、選考はかなり厳しいものでした」と前置きをした上で、「その中で最終的に審査員全員が感じたのは、あなたの提案が、非常に明快なかたちで、この場所での体験そのものを、一種の“儀式的なもの”へと昇華させているという点でした。山の中の雨の森で過ごす体験。水によって覆われた建築、そしてこの水のカーテンの下で体験する、パビリオンや寺院のような空間。家族を中心に引き寄せる中央空間と、周囲の自然へと開かれた構成。それらすべてが、この場所に固有の個性と魅力を生み出しており、訪れる人々にとって、単なるホテルを超えた目的地となり得るものだと感じました。」

(Bjarke Ingels氏のコメントを『TECTURE MAG』編集部にて翻訳、要約)

濵渦 伸次氏コメント

「最終的に本案に投票しました。決め手は、最終選考の場で「どの案を選ぶか」ではなく、「この屋根をどう実現するか」という議論が自然と生まれていたことです。ドリームチームが具体的な実現方法を模索し始めたことで、このプロジェクトが現実へと向かい始めていると感じ、確信に変わりました。初めて資料を目にしたときは、その独自性に強く惹かれる一方で、中央のクリアな部分の実現性には懸念もありました。しかし、審査の過程でどのような問いにも妥協せず向き合う姿勢に触れ、その不安は払拭されていきました。全10作品の中でも、ひときわ力強くユニークな提案で、一見不可能にも思える水の屋根、あるいは水盤そのものが屋根となる構想は、NOT A HOTELらしさを象徴するものだと感じています。このリビングで、どのような雨の体験が生まれるのか。完成を楽しみにしています。」

(濵渦 伸次氏のコメントを『TECTURE MAG』編集部にて要約)

各賞の詳細や公開審査の様子は、特設サイトにて公開されています。

Bjarke Ingels氏からトロフィーを授与されるSteven Chu氏

Bjarke Ingels氏からトロフィーを授与されるSteven Chu氏

最優秀賞 受賞者コメント

「最初に、私を支えてくれたパートナーに感謝したいと思います。そして、審査員の皆さまにも感謝申し上げます。プレゼンテーションの後、最初のコメントで、私の提案がどこかサーリネンを想起させるというお話がありました。それは何気ない一言だったかもしれませんが、私にとってはとても心に響くものでした。なぜなら、12年前に亡くなった恩師が、実はサーリネンのもとで学んでいた人物だったからです。その後、彼はポストモダニズムへと進んでいきましたが、こうした影響というのは世代を飛び越えて受け継がれることもあるのだと思います。もしかすると、サーリネンの何かが、雨というかたちを通して、自分の中に現れているのかもしれません。

最後に、この素晴らしいコンペティションを開催してくださったNOT A HOTELの皆さまに、心より感謝申し上げます。これまで参加してきた中でも、最も素晴らしいコンペのひとつでした。今回の結果はもちろん大変光栄ですが、それ以上に、このプロセスそのものを心から楽しむことができました。そして、今後もNOT A HOTELとともにこのプロジェクトに関わり続けられる機会をいただけたことに、深く感謝しています。ありがとうございました。」

(Steven Chu氏、受賞後のコメントを『TECTURE MAG』編集部にて翻訳、要約)


審査結果(各賞以下、エントリーナンバー順)

最優秀賞(1作品)

Title:Sound of Rain
Members:Steven Chu
Countries and Regions:Australia

優秀賞(4作品)

Title:Deep Transparency
Members:Georgina Baronian, Sam Clovis
Countries and Regions:United States

Title:Between Forests
Members:Yunji Chung
Countries and Regions:South Korea

Title:Primitive Retreat
Members:Youseok Cho, Oliver Chiu,Hanchan Ryu
Countries and Regions:South Korea

Title:Echo of the Mountain
Members:Zhen Tong,Haochen Yu,Sherry Wen,Xiaoji Zhou
Countries and Regions:United States

佳作(5作品)

Title:Living Stones
Members:San Yoon, Thakan Navapakpilai
Countries and Regions:United States

Title:A CRAFTED SHELTER
Members:Daniel Villanueva, Sergio Colchado, Karina Ortega, Sergio Coxca
Countries and Regions:Mexico

Title:Life could be just
Member:Rui Taveira, José Taveira, Sofia Oliveira
Countries and Regions:Portugal

Title:THE DRAGON’S BREEZE
Members:Kemal Bal, Erol Kalmaz, Nil Bicak, Busra Yavuz
Countries and Regions:Turkey

Title:Aida
Members:Airat Zaidullin, Dina Kiyamova
Countries and Regions:Russia

学生賞(1作品)

Title:IN-BETWEEN
Members:Manuel Woelfl,Mariachiara Bolis, Martina Maria Martin, Benedetta Pellegrini, Camilla Truffelli, Matilde Silva, Erseda Skenderaj
Countries and Regions:Italy

閉会後の記念写真


「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2026」特設ページ
https://notahotel.com/design-competition/2026/winners

Photo:特記なき画像は全てNOT A HOTEL 提供

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