寺田倉庫が運営する現代アートと建築のミュージアム・WHAT MUSEUMにて、模型の可能性を提示する展覧会「波板と珊瑚礁 ‐ 建築を遠くに投げる八の実践」が開催されています。
本展は、主に2010年以降に活動を始めた8組の建築家が、身近な素材や構造物を手がかりに、広い視野で建築を捉え直そうとするそれぞれの試みを、本展のために制作された模型群を通して紹介するものです。
出展作家(会場ナンバリング順、作家プロフィールはフッター / エディターズピックスの本展概要ページを参照):RUI Architects / DOMINO ARCHITECTS / GROUP / Office Yuasa / 畠山鉄生+吉野太基+アーキペラゴアーキテクツスタジオ / ガラージュ / ALTEMY / 平野利樹

WHAT MUSEUM 1F会場
展示作家:ガラージュ / ALTEMY / 平野利樹
建築模型を保管・展示する建築倉庫もあるWHAT MUSEUMが会場であるだけに、いわゆる「建築の模型展」を想定していくと、戸惑うかもしれません。目にするのは「これが模型?」と問いたくなるような展示ばかり。「波板と珊瑚礁」という建築展らしからぬタイトルも、本展のプレスリリースによれば、『身近で人工的な建築素材と、長い時間をかけて形成される自然の構造物という、性質の異なる2つの存在を示す言葉』からとられたもので、建築家の思考を通してつくられた模型は、ときとして100年・200年先の未来の可能性の1つを表現しうるというメッセージが込められています。
『TECTURE MAG』では、開幕前に行われたプレスビューで会場を取材しました。主催者提供画像を中心に本展をレポートします。

WHAT MUSEUM 2F会場 Photo by TEAM TECTURE MAG
展示作家:RUI Architects / DOMINO ARCHITECTS / GROUP / Office Yuasa / 畠山鉄生+吉野太基+アーキペラゴアーキテクツスタジオ
会場写真
2F
・RUI Architects「Prop」 ▶︎▶︎見る
・DOMINO ARCHITECTS「PULP FICTION (jetway)」 ▶︎▶︎見る
・GROUP「都市と眠り」 ▶︎▶︎見る
・Office Yuasa「闇、遅れた微光」 ▶︎▶︎見る
・畠山鉄生+吉野太基+アーキペラゴアーキテクツスタジオ「What is ○△□ ?」 ▶︎▶︎見る
1F
・ガラージュ「ほどかれた結界」 ▶︎▶︎見る
・ALTEMY「往還する身体」 ▶︎▶︎見る
・平野利樹「東京箱庭計画」 ▶︎▶︎見る
本展企画者 砂山太一氏インタビュー ▶︎▶︎読む
開催概要

RUI Architects「Prop」 Photo by Keizo KIOKU
この作品は、街のなかにあるもの同⼠の配置や関係を⾒つめています。何気なくそこにあるものも、よく⾒ると、まわりのものや場所との関係のなかで置かれ、その場の⾵景の⼀部になっています。そうした⾒⽅は、私たちが⼈間だけでなく、ものや環境とも関係を結びながら共に⽣きていることをあらためて感じさせます。展⽰では、5 枚の模型写真とテキスト、それに対応する5つの模型が並びます。模型はその写真の視点からつくられ、会場ではさまざまな⾓度から⾃由に⾒ることができます。これらのあいだを⾏き来することで、⾒慣れた街の⾵景のなかにある複雑さや、⼩さな要素どうしの関係の⾯⽩さが少しずつ浮かび上がってきます。(RUI Architects|展示室内キャプションより)

展示について説明する板坂留五氏 Photo by TEAM TECTURE MAG
「今回の展示では、模型を設計のシミュレーションするための道具ではなく、街を観察するための道具として捉えられないかと考えました。WHAT MUSEUMからJR大崎駅辺りにかけて、事務所のメンバー3人がそれぞれ街を歩いて、違和感を感じた場所を模型でトレースしてみることから始めました。私は以前から、まちから見えてくるユニークな情景、そこにいる人々の”手付き”のようなものを纏った風景に興味がありました。展示した大小の模型は、そうなった背景は想像するしかないんだけれども、状況に何かしら誰かの、多くの場合は複数の主体による作為が見られたものです。私たちはふだんクライアントワークが多く、そこでは敷地面積や法規といった定量の制約がまずかかってきますが、そういった数値では捉えきれない、例えば住宅であればそこでの人々の暮らしや居心地というものも等価に扱いたいと考えています。今回、模型を通した街の観察を経て得た街の見方をもとに、テキストとPropをつくりました。今後、この展示会場にあるすべての要素を束ねた本をつくる予定です(ミュージアムショップで販売予定)。」(板坂氏談)

RUI Architects「Prop」展示風景 Photo by TEAM TECTURE MAG
板坂氏が「観察模型」と呼ぶ、違和感のある場所をトレースした模型。降ろされたシャッターの真ん中がカットされてめくり上げられ、ぎゅうぎゅうに詰まった内部のモノが見えている状態だった建物(左端)など

RUI Architects「Prop」展示風景 Photo by TEAM TECTURE MAG
本展の作品タイトルと同名の、展示テキストに添えられた写真のための模型

RUI Architects「Prop」展示風景 Photo by TEAM TECTURE MAG
床の要所に記されたバミリからカメラを構えると、本展展示テキストに添えられた写真の情景を擬似体験できる

DOMINO ARCHITECTS「PULP FICTION (jetway)」Photo by Keizo KIOKU
この作品は、空港で⾶⾏機と建物をつなぐ搭乗橋を4つつなげて、終わりのない回廊のような空間にした模型です。縮尺は10分の1。現実には存在しない、でももしかしたら起こりえる想像上の空間を模型としてかたちにしたものです。
本作は建築家⾃⾝が⻑い時間をかけ、その全てを⼀⼈の⼿で制作しました。そのことが、架空の空間に強い実在感を与えていると思います。存在しない場所であるにもかかわらず、光や質感、重さがとてもリアルで、⾒ているうちに本当にありそうな気配が⽣まれてきます。模型を通して、架空の⾵景が現実味を帯びて⽴ち上がる作品です。(DOMINO ARCHITECTS|展示室内キャプションより)

DOMINO ARCHITECTSを主宰する大野友資氏 Photo by TEAM TECTURE MAG
「以前から、搭乗橋に興味がありました。建築ではない。車輪はついているけどクルマでもない。これを4つつないで、飛行機に乗る前の高揚感、あるいは飛行機から降りて街に出るまでの、ちょっとした気持ちの高まりをずっと感じていられるような、現実には存在しないループ空間を縮尺1/10の模型で制作しました。いつまでも飛行機にも乗れないし、街にも出られません。私たちは普段、実寸のモックアップなどは作ることがあっても、プレゼンテーションのための模型はほとんどつくりません。それもあって今回”模型”というテーマの展示に参加することになり、改めて私たちなりに模型という存在に向き合ういい機会だと考えました。建築の代替としての模型ではなく、それ自体が彫刻的なオブジェクトとして強度がある模型に興味があります。建築の展示には実物がないといわれることがありますが、模型が実物になりえないかと考えました。1/10なのだけど、同時に1/1でもあるような。その興味を検証するために、この模型は最初から最後までひとりの手で長い時間をかけてつくられています。」(大野氏談)

DOMINO ARCHITECTS「PULP FICTION (jetway)」模型作品 Photo by TEAM TECTURE MAG

DOMINO ARCHITECTS「PULP FICTION (jetway)」展示風景 Photo by TEAM TECTURE MAG

DOMINO ARCHITECTS「PULP FICTION (jetway)」写真作品(Photo: Masaki Ogawa) Photo by TEAM TECTURE MAG
写真家の小川真輝氏撮影の写真作品は、模型と同じスチレンボードで額装されている

GROUP「都市と眠り」 映像:稲田禎洋 Photo by Keizo KIOKU

「都市と眠り」 映像:稲田禎洋 Photo by Keizo KIOKU
この作品は、「都市のなかで⼈が眠ることができる場所」に着⽬し、「眠り」からわたしたちの⽣活や社会のあり⽅を⾒つめ直しています。映像、3Dプリントによる模型、LEDディスプレイによる図⾯など、さまざまな技術を組み合わせながら、都市と眠りの関わりを描き出します。街を歩いていて急に眠くなることや、誰かが思いがけない場所で眠っていること。そうした⾝近な出来事から、都市が何を受け⼊れ、何を排除しているのかが⾒えてきます。眠りを⼊⼝に、都市のルール、働き⽅、管理の仕組みについて考えさせる作品です。(GROUP|展示室内キャプションより)

展示作品「都市と眠り」について説明するGROUPの井上 岳氏(右端) Photo by TEAM TECTURE MAG
「2つの部屋で大きく3作品を展開しています。1つは、都市では”眠る場所”の1つと僕たちが捉えている、渋谷・センター街にあるマクドナルドのテーブルまわりを、実測と3Dスキャンに基づいて3Dプリントで出力した縮尺1/1模型『ルーム|35.6603977, 139.6983940, 260311』。2つめは、LEDディスプレイに表示させている、渋谷を舞台にした都市計画の縮尺1/1000の平面図『眠らない都市』、そして3つめが奥の部屋にある、”都市と眠り”をテーマにリサーチしたものを3部構成で編集した映像作品と模型によるインスタレーションです。 都市計画は、渋谷のまちを一辺1km・高さ250mのLEDの壁で囲い、その中にいる人々はずっとLEDで照らされているので覚醒し眠ることなく活動できます。奥の部屋の映像は、僕たちが渋谷で”眠り”というテーマでリサーチを行ったもので、第1部が、ドイツのルートヴィヒ・ヒルベルザイマー(1885-1967)に注目し渋谷の100年間と近代都市計画についてリサーチしたもの。第2部が、都市の中で眠ることができる空間の分析とリサーチ。女性ホームレスと宮下公園の変遷に関して研究者たちにインタビューしました。第3部は、先ほど説明した渋谷での架空都市計画の提案を解説した映像です。ベッドに見立てた白い箱の周りに散らした小さな模型は、映像に出てくるオブジェクトなどを3Dプリンタで出力しています。」(GROUP / 井上 岳氏談)

天井面まで再現されている GROUP「ルーム|35.6603977, 139.6983940, 260311」(手前)/ GROUP「眠らない都市」(奥のLEDパネル) Photo by TEAM TECTURE MAG

GROUP「都市と眠り」(一部)Photo by TEAM TECTURE MAG

Office Yuasa 「闇、遅れた微光」 Photo by Keizo KIOKU
この展⽰では、壁、椅⼦、机、本など、空間をつくるさまざまなものに、光をためて暗がりでほのかに光る塗料が塗られています。来場者は、室内で照明をつけ、席について本を開き、しばらくその場で過ごすことができます。そうした⾏為の痕跡は、照明を消したあと、かすかな光として空間に残っていきます。会場は少しずつ表情を変え、⼈がいた時間や気配が静かに積み重なっていきます。ここで⾒えてくるのは、完成した形としての建築ではなく、⼈が関わることで変わり続ける場です。消えそうで消えない光を通して、その場に残る記憶や痕跡のようなものを感じることができます。ぜひ少し時間をとって、この空間の変化を体験してみてください。(Office Yuasa|展示室内キャプションより)

Office Yuasa 「闇、遅れた微光」 Photo by Keizo KIOKU
「来場者の方はぜひ、部屋の入り口に掲示したガイド『灯をつけて / 席について / ページをひらいて / 灯をけして』みてください。テーブルの上に置かれた本には、この展示に関係する言葉が蓄光塗料でスタンプされています。テーブルと椅子、照明、その背面の壁、それらの全てにも蓄光塗料が塗ってあり、本を読むために点灯した電球の灯りを消すと、それらが微(ほのか)に発光します。そこでは、座っていた人のふるまいが影となって浮かび上がってきます。今はそこにいない、数分前にはいた人の存在を時間差で感じ取ることもできます。”時間差”をテーマにしたのは、世界では今、戦争を含めてさまざまなことが繰り返しおこり、情報や経験さえも瞬時に消費されています。それに対して建築は、竣工まで時間を要し建ってからも長い、遅延性という特徴をもっています。それにより現状の反射的な世界への何らかの猶予を与える可能性が見出せるのではないか、時間をかけることで熟考したり、複雑なものを複雑なまま受け入れたり、少しでもよい判断ができるようになる、メディアとしての側面が建築にあるのではないかと考えました。」(Office Yuasa / 湯浅良介氏談)

Office Yuasa「闇、遅れた微光」 Photo by Keizo KIOKU

Office Yuasa「闇、遅れた微光」 Photo by Keizo KIOKU

Office Yuasa「闇、遅れた微光」 Photo by Keizo KIOKU
机の上に置かれた5冊の本にはそれぞれ異なる言葉が蓄光塗料でスタンプされており、各机の内容としりとりになっている

Office Yuasa「闇、遅れた微光」 Photo by Keizo KIOKU
来場者が操作する電球の光、遅れて現れる蓄光塗料の弱い光とは別に、1分間に10秒部屋全体を照らす強い光が起こるサイクルがセットされ、蓄光塗料の反応の違いが現れる

畠山鉄生+吉野太基+アーキペラゴアーキテクツスタジオ「What is ○△□ ?」 Photo by Keizo KIOKU
この作品は、円、三⾓、四⾓という、誰もが知っている形を⾒つめ直しながら、物の形とは何かをあらためて考えるものです。美術作家の⼭⽥ 愛、原 健太郎、畠⼭耕治との協働を通して、○△□という基本的な図形が、素材や置かれ⽅、⾒え⽅によって違って⾒えてくるように⽰されています。
ここでは図形は、意味の決まった記号としてではなく、⾒る⼈や状況によって変わるものとして扱われています。それぞれの形はアーキペラゴアーキテクツスタジオの実際の建築作品と関連する⼀⽅、建築模型というより、形をめぐる感覚や解釈のゆらぎそのものをテーマとしています。(畠山鉄生+吉野太基+アーキペラゴアーキテクツスタジオ|展示室内キャプションより)

畠山鉄生+吉野太基+アーキペラゴアーキテクツスタジオ「What is ○△□ ?」 山田 愛「○」 Photo by Keizo KIOKU

畠山鉄生+吉野太基+アーキペラゴアーキテクツスタジオ「What is ○△◻︎ ?」 原 健太郎「△」 Photo by TEAM TECTURE MAG

畠山鉄生+吉野太基+アーキペラゴアーキテクツスタジオ「What is ○△□ ?」 畠山耕治「□」 Photo by Keizo KIOKU
「今回のテーマは『先入観を外してみる』こと。先入観は悪く解釈しがちですが、日々の生活の中でなにか素早い判断を迫られたときなど、自分と世界との関係を結ぼうとするときにはたらく効率的な情報処理です。その一方で、判断が速いがために、対象から距離をおいたり深く考えることをしなかったりする。その『分かったつもりになる前の状態』について考える展示です。僕たち建築家は、先んじて意味を固定してしまう側に立ちやすく、自分たちの先入観を日々疑ってかからないといけない。今回、美術家、版画家、彫刻家の3氏をコラボレーターに招き、僕たちの設計作品のイメージをもとに、誰もが知っている、丸、三角、四角をそれぞれ用いた作品制作を依頼しました。無意識の底にある先入観があぶり出されることで、常に疑惑からスタートすることのきっかけになればと思います。」(アーキペラゴアーキテクツスタジオ / 畠山鉄生氏談)

展示作品「What is ○△◻︎ ?」について説明する畠山鉄生氏(右)と吉野太基氏(左) Photo by TEAM TECTURE MAG

ガラージュ「ほどかれた結界」 Photo by Keizo KIOKU
この作品では、展⽰室のなかに、線や棒によって、ゆるやかに区切られた場がつくられています。完成した形そのものだけではなく、その場がどのようにつくられ、そこに誰がどう関わるかをテーマとしています。ガラージュは、搬⼊期間を含む約1か⽉のあいだ、この展⽰空間そのものを作業の場として使いながら、研究、制作、検証、設営が続いていく状態をつくり出してきました。繰り返される動きや作業、その場で⽣まれるやりとりが積み重なり、展⽰がひとつの出来事のように⽴ち上がっていきます。建築を、完成したものではなく、共同の⾏為のなかで⽣まれ続けるものとして捉えた作品です。(ガラージュ|展示室内キャプションより)

ガラージュ「ほどかれた結界」 Photo by Keizo KIOKU
「私たちガラージュは、建築と映像と演劇という3つの領域のメンバーが集まった事務所です。今回の展示では、触れたり、人のふるまいに反応したりすることでゆらゆらと動く構造体を、居場所をつくりながら配置しています。このような流動的な運動体のようなものが、建築になっていくのではないかと考え、私たちは日々プロジェクトに取り組んでいます。また、これが私たちの身ぶりを規定する制度や慣習、個々人の間の関係性、場の境界のあり方など、さまざまな意味をもつようなものになればと考えています。」(ガラージュ談)

展示作品「ほどかれた結界」について説明する、ガラージュの小田切 駿氏(画面中央のマイクを手にした男性)と渡辺瑞帆氏(右側) Photo by TEAM TECTURE MAG

ガラージュ「ほどかれた結界」展示風景 Photo by TEAM TECTURE MAG

ガラージュ「ほどかれた結界」展示風景 Photo by TEAM TECTURE MAG
建築家の津川恵理氏が代表を務める建築デザインスタジオ・ALTEMYの作品は、コラボレーターに作家の加々美理沙氏を迎え、暗室での展示です。
「私たちは近年、公共性が高い場所でデザインすることが多くなっています。今回の展示では、私たちが普段どういういった目線で公共空間をデザインしていこうと考えているかを表現しました。展示では、3つのシーンが登場します。1つは渋谷センター街・井の頭通りのライブ映像です。2つめはWHAT MUSEUM館内のどこかに設置したカメラからの映像、3つめは暗幕の中の展示空間にあるビデオカメラの映像です。このリアルタイムの映像から、渋谷にいる人々の同じ身体サイズと奥行き感を映像表現として立ち上げています。ドイツと日本で活動され、建築のデジタル技術を用いて作品表現を行っているkagamiさんに共同で制作いただいた、2Dの画像から人を抽出し、奥行き方向を推定するというデジタル技術を用いています。さらに、ほかの2つのカメラに映った人々の身体も同様に立ち上げて、編み直しています。青い輪郭が渋谷、ピンクとオレンジが館内、そして暗幕の中に人が入ると白い輪郭が出てきます。人にはそれぞれ個性があり、そのバラバラな状態こそが豊かさであると私たちは捉えていて、それをいかに建築によってブーストするかを意識してデザインしています。私たちが理想に描く状況だけをピュアに抽出し、空間に立ち上げた作品です。」(ALTEMY / 津川氏談)

ALTEMYの津川恵理氏(左)と小西 隆仁氏、コラボレーターの加々美理沙氏(右) Photo by TEAM TECTURE MAG
この作品では、渋⾕センター街のライブカメラと、WHAT MUSEUMの廊下に設置されたカメラの映像から、⼈びとの姿だけが切り抜かれ、会場内の複数のスクリーンに映し出されます。それらの像は、展⽰室と重なる仮想空間のなかで折り重なり、ときに横切り、瞬間的に現れながら、別の場所にいる⼈たちと⼀緒にひとつの空間を⽴ち上げます。
そこには来場者⾃⾝の姿も映り込み、⾃分の⾝体もまたその環境の⼀部になります。この作品は、⼈をひとまとめにするのではなく、それぞれ異なる⾝体やふるまいをもつ存在として捉えています。建築を、完成した形ではなく、⼈と⼈との関わりから絶えず更新され続ける環境として捉え直す試みです。(ALTEMY|展示室内キャプションより)

ALTEMY + risa kagami「往還する身体」 Photo by Yo Tomura

ALTEMY + risa kagami「往還する身体」 Photo by Yo Tomura

平野利樹「東京箱庭計画」 Photo by Keizo KIOKU
この作品は、⼩さな箱の中につくられた箱庭から始まっています。その箱庭を3Dスキャンし、さらに⽣成AIによる変換を重ねることで、個⼈的で内⾯的な⾵景が、都市や建築を思わせるイメージへと広がっていきます。ここで⽣成AIは、正しい答えを出すための道具というより、思いがけない⾒え⽅や予想外の⾵景を返してくる存在として使われています。そうしたずれや⾶躍を⼿がかりにしながら、理屈だけでは捉えきれない感覚や欲望を、建築の想像⼒へと結びつけていく作品です。(平野利樹|展示室内キャプションより)

平野利樹「東京箱庭計画」 Photo by Keizo KIOKU
「普段はデジタルテクノロジーを中心に、建築、アート、哲学、工芸など複数の領域が交差するエリアについて研究しています。4年ほど前から、生成AIではどのような新しい建築のあり方が考えられるのかを研究していて、その1つの成果を展示しました。元は膨大なゴミの埋め立て地で現在は公園になっている東京湾の一角を仮のサイトに、AIを介在させた都市計画をやっています。心理療法で用いられる「箱庭療法」に倣い、来場者がプールのストックの中から任意で選んだモノを、箱庭に自由に配置してもらう。その様子を3Dスキャンして生成AIにかけ、都市計画に反映させた映像を奥のスクリーンで流しています。敷地条件や機能といった通常ある与件はすべて取り払って、AIを介在させた人々の無意識というパーソナルなものの集合体が都市を形成していくとどうなるかいう実験です。」(平野利樹談)

「東京箱庭計画」について説明する平野氏 Photo by TEAM TECTURE MAG

平野利樹「東京箱庭計画」展示風景 Photo by TEAM TECTURE MAG
来場者は、このプールの中のものを選び、対面の箱庭に自由に配置できる

平野利樹「東京箱庭計画」 Photo by Keizo KIOKU
模型展としてはかなり異色な本展、どのような企図があったのか? メディアツアー終了後、WHAT MUSEUM 建築倉庫の企画チームとともに本展を企画した砂山太一氏(SUNAKI)に話を聞きました。
——「建築模型」への先入観を覆すような展覧会でした。メディアツアーの見学コースが1F、2Fの順で、前半はインスタレーション、模型が登場したのが後半だったこともあるかもしれませんが。
砂山太一氏
今日は進行の都合でメディアの皆さんには1Fから見てもらいましたが、実際の来場者は建築に馴染みがある方ばかりではないので、8組の展示にナンバリングして、推奨順路を一応設けています。一般的に「模型」と聞いてイメージされるものに近いであろう板坂留五さん率いるRUI Architectsの展示を皮切りに、徐々に「模型」のイメージから離れていくような会場構成となっています。
——ツアー冒頭の主催者挨拶で、建築倉庫ディレクターの近藤以久恵さんが「模型、そして建築の新たな表現と可能性」を追求しようと、砂山さんを招聘し、本展を企画したと説明していました。経緯をいまいちどお聞かせください。
砂山太一氏
近藤さんも説明されていましたが、模型を媒介に今の建築を切り取るよりも、これから先、日本の建築はどうなっていくんだろうかと、少し先の未来へ投げかけるような展示はできないだろうかという相談を受けて、本展を一緒に企画しました。自分自身も実践を通して、建築を単に建物としてではなく、素材、情報、環境、人の振る舞いが交差する場として考えてきました。だからこそ、模型もまた、完成予定の建物を小さく再現するものに限らず、まだかたちになっていない建築的な思考を立ち上げる媒体として捉え直せるのではないかと思いました。現状、世界各地で戦争や気候変動など、建築の外側にあるように見える問題もあります。そのような社会に建築はどのようにアプローチできるかというテーマが、青木 淳さんキュレーションのもとSUNAKIが日本館展示の出展者として参加した、2025年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の全体でも設定されていました。対して日本では、2011年3月に東日本大震災というあまりに大きな自然災害があって、3.11以降の日本の建築界は、目の前の諸問題を解決することがどうしても優先され、架空のプロジェクトの提案やコンセプトの提示は現実感を伴わないものと見なされて相対的に語りにくくなったように感じています。一方で、かつては建築家が、まだ実現していない建築のかたちや都市の未来像を、より積極的に提示していた時期もあったように思います。例えば、磯崎 新さんが1960年代前半に〈孵化過程(Incubation Process)〉を発表するなど、建築家が建築の新しいかたちを社会に向けて発信する土壌がたしかにあった。そうした流れは、その後の世代の建築家たちにも少なからず影響を与えてきたはずです。
——藤本壮介さんは、2015年のTOTOギャラリー・間と2025年の森美術館で、まつぼっくりとかスポンジなどを建築に見立てたインスタレーション「architecture is everywhere」を展開し、これらの模型は活動の原点だと説明していました。
砂山太一氏
藤本さんの「architecture is everywhere」は、身の回りにあるもののスケールや関係性を読み替えながら、建築がどのように見出されるのかを考える試みだったように思います。繰り返しになりますが、近年の日本では、建築に対して、目の前の課題にどう応答するのかが強く問われる場面が増えているように感じます。そのなかで建築模型も、計画内容を説明し、関係者と共有するための実務的な役割がより意識されるようになったのではないでしょうか。ただ、模型にはそれだけではなく、まだ実現していない建築の可能性や、社会、環境、時間といった大きな問題を考える媒体としての力もあるはずです。今回、WHAT MUSEUM 建築倉庫の企画チームから相談をいただいたとき、模型というメディアそのものを拡張することで、これからの建築を問い直す展覧会がつくれるのではないかと考えました。国内外で活動する8組の出展者には、100年、200年といった長い時間のなかで建築を考え、思考そのものを表現するような新しい建築模型を提案してほしいとお願いしました。
——8組8様の展示でした。「波板と珊瑚礁」展の第2弾、第3弾もありそうですね。
砂山太一氏
可能性はあると思います。もちろん、目の前の切実な要望に応えることも建築家の職能としてとても大事なのですが、建築、イコール建物、というイメージが強くなりすぎると、建築が本来持っている想像力や射程が、少し見えにくくなってしまうのではないかとも思います。これまで建築家たちが、それぞれの時代に建築の概念を拡張してきたように、今の世代も、自分たちなりの方法で建築を遠くへ投げ直すことができるのではないか。今回の展覧会が、その1つのきっかけになればと思っています。(2026年4月20日 WHAT MUSEUMにて)
Texed & Photo by Naoko Endo / TEAM TECTURE MAG

出展作家8組 フォトセッション Photo by TEAM TECTURE MAG
参加建築家(アイウエオ順):ALTEMY / Office Yuasa / ガラージュ / GROUP / DOMINO ARCHITECTS / 畠山鉄生+吉野太基+アーキペラゴアーキテクツスタジオ / 平野利樹 / RUI Architects
会期:2026年4月21日(火)~9月13日(日)
会場:WHAT MUSEUM(ワットミュージアム)
所在地:東京都品川区東品川 2-6-10 寺田倉庫G号(Google Map)
開館時間:11:00-18:00(最終入館17:00)
休館日:月曜
入場料:一般 1,500円、大学生・専門学生 800円、高校生以下無料
※日時指定のオンラインチケットは200円引き、他の割引との併用不可
主催:WHAT MUSEUM
企画:WHAT MUSEUM 建築倉庫、SUNAKI
後援:品川区、品川区教育委員会
本展詳細
https://what.warehouseofart.org/exhibitions/corrugatedcoral/
予告ムービー
https://youtube.com/shorts/WIOoSFA-wKo?si=KpBes_TWFmO5sGIa

日時:2026年6月13日(土)15:00-18:30
登壇者(敬称略):陣内秀信、南後由和、ALTEMY、GROUP、RUI Architects
参加費:一般 2,500円、大学生・専門学生 1,800円
※「波板と珊瑚礁 ‐ 建築を遠くに投げる八の実践」、建築倉庫の鑑賞チケット付き
定員:150名
参加方法:事前申込制(先着順に受付、定員に達し次第締切)
会場:WHAT CAFE
所在地:東京都品川区東品川2-1-11(Google Map)
主催:WHAT MUSEUM
企画:WHAT MUSEUM、KNOTTER
詳細
https://what.warehouseofart.org/events/corrugatedcoral_0613