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[Interview]レム・コールハース率いるOMA参画の「サローネ・コントラクト」も開始 2026年ミラノサローネの現在地

[Interview]レム・コールハース率いるOMA参画の「サローネ・コントラクト」も開始 2026年ミラノサローネの現在地

世界最大の国際家具見本市「ミラノサローネ(Salone del Mobile.Milano)」。近年、この巨大なイベントは「家具の商談の場」を超え、文化・社会・経済を牽引する総合的なデザインプラットフォームへと進化を遂げています。その変革の中心にいるのが、2021年に代表に就任したマリア・ポッロ(Maria Porro)氏。今回は、サローネの事務局に、新体制による変化から「サローネ・ラリタス(Salone Raritas)」「サローネ・コントラクト(Salone Contract)」といった新たな市場開拓、そして若手の登竜門「サローネサテリテ(SaloneSatellite)」がもたらす熱気まで、これからのサローネの魅力と展望について伺いました。


組織の危機から生まれた新体制による変化

ー 2021年の新体制発足以降、サローネの運営体制はどのように変わりましたか?

日本広報担当・山本:コロナ禍の2021年、イタリア家具工業連盟のボードメンバーから新たな代表に任命されたのがマリア・ポッロでした。当時、30代後半という若さの女性がトップに就くこと自体が非常にセンセーショナルでしたが、就任して何より驚かされたのは、彼女の圧倒的なコミュニケーション能力でした。彼女は英語が非常に堪能で、どのような質問に対しても、記者一人ひとりに対し自分の言葉で深く回答します。彼女の真摯な姿勢はメディアから絶大な信頼を得ました。

彼女はブレラ大学で舞台芸術を学び、自らもアーティストとして活動しながら、ソチやロンドンのオリンピック開会式などの大型イベント運営を経験してきた経歴を持ちます。また、彼女はサローネを「一度幕が上がったら後戻りできない舞台」と捉え、その万全の準備で臨む覚悟と人間的な魅力が、組織全体の熱量を引き上げています。さらに今年、ミラノのトリエンナーレデザインミュージアムの副館長にも就任し、文化機関との接続を一段と強化しています。

ー マリア氏が就任初年度から最優先課題として掲げた「サステナビリティ」の取り組みについて教えてください。

日本広報担当・山本:2021年9月の「スーパーサローネ」は感染対策が必要な特殊な環境でしたが、そこで若い建築家のアイデアを採用した「ライブラリー型」展示を導入しました。従来の平米単位ではなく「3メートル幅の壁(最大12メートル)」でスペースを販売し、釘打ちや切削、着色を一切禁止するという厳格な規約を設けたのです。これにより、会期終了後に展示資材をミラノ市内の学校や図書館へ100%再利用・寄贈する仕組みを実現させました。これを皮切りに、サローネは見本市カテゴリーとして業界に先駆けて持続可能なイベント管理規格「ISO 20121」認証を取得しました。この規格は、毎年開催中に審査が入る厳しいものです。現在では、出展規約にもサステナビリティの項目が設けられ、アルペール社をはじめ主要ブランドがブースで独自の環境配慮ポイントを自発的に明示するなど、業界全体に大きな好循環を生んでいます。

ー その他にも、新しい取り組みはありますか?

日本広報担当・山本:ミラノ市や携帯電話会社とタッグを組み、デザインウィーク期間中の来訪者の動きや集積地、年齢層、消費動向などを詳細に分析した、「ミラノ・デザイン・(エコ)システム」という年次レポートを発行しています。例えば、2023年から2024年にかけて宿泊・飲食・ショッピングでの1人当たり平均消費額が約10%増加していることなど、イベントが街にもたらす経済効果を数字として可視化しました。多角的なデータによって、デザインウィーク全体の価値を高める試みが評価され、2024年にはイタリア最高峰のデザイン賞「コンパッソ・ドーロ賞」を受賞しました。

市場と文化を切り拓く「サローネ・ラリタス」と「サローネ・コントラクト」

ー 新セクション「サローネ・ラリタス」と「サローネ・コントラクト」について教えてください。

日本広報担当・山本:2026年に始動した「サローネ・ラリタス」は、収集価値のある一点物や限定品を扱うギャラリーを対象とした新セクションです。背景には、マリア・ポッロ自身のアート界との広いネットワークと、エディトリアルディレクターからキュレーターに抜擢されたアンナリーザ・ロッソのセンスがあります。

イタリアの富裕層の住宅では、量産家具以上に、棚のオブジェや壁の絵画、希少な花瓶などが集まる人々の会話の中心になるため、インテリア空間は、アートや一点物のオブジェが加わることで初めて完成するといえます。初回は世界から28ギャラリーが参加し、出展者からは『質の高いトップギャラリーが多く素晴らしい』と大好評だったそうです。デザインバイヤーとアートギャラリーが出会う、これまでにない熱量の高い市場が生まれています。

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Salone Raritas, Nilufar, Andres Reisinger, 12 Chairs For Meditations ©Photo Alejandro Ramirez Orozco

ー もう一つの大きな柱である「サローネ・コントラクト」には、建築家レム・コールハース率いるOMA(OHMA)が参画します。どのような変化が期待できるでしょうか?

日本広報担当・山本:ホテルや空港、レジデンスといったパブリックスペース向けの大口契約は、一度の商談で動く数量や金額、ブランドの認知向上効果が一般向け販売とは桁違いなため、多くの出展者が最も参入を望んでいる領域です。例えば、アンビエンテックのポータブル照明がナポリの五つ星ホテルやパリの高級レストランへ数十灯単位で導入されたり、マルニ木工が、イタリアの競合大手ブランドを抑えてApple本社へ〈広島チェア〉を数千脚納品したりといった事例もあります。

サローネはこの重要なビジネスチャンスをより構造的に支援するため、OMAをコラボレーターに指名しました。2027年からの本格始動に向け、従来の商品を陳列するだけのブースとは全く異なる、会場構成の「パラダイムシフト」となる展示形式を開発中です。

ー 具体的にはどのような会場構成や出展形態になるのでしょうか?

日本広報担当・山本: 会場は、ロー・フィエラミラノの上層階にある16ホールで、5,000平米という広大なスペースを占有して展開されます。この「サローネ・コントラクト」は、大きく「ハウジング&ホスピタリティ」「パブリックプロジェクト」「オフィス」「ナウティカ(船舶)」という4つの主要分野で構成されます。

最大の画期的なポイントは、従来の「出展ブース」を一切排除したことです。会場のコンセプトは、イタリア語で証券取引所を意味する「ボルサ(Borsa)」。人と人が出会い、協働するための活気ある「エコシステム」を目指しています。この「ボルサ」は、フォーラム、出展者ポディウム、プロジェクトプラザ、B2Bアリーナといった要素で構成され、オープンスペースには約50社の参加がほぼ決定している「出展者ポディウム」が配置されます。各ポディウムの頭上にはプロジェクターが設置され、その場で自社の実績やプロジェクトをプレゼンテーションできる仕組みです。

注目すべきは、このポディウム出展者の中に、かつてサローネに出展し、その後フォーリサローネ(Fuorisalone)へ羽ばたいていった元サローネ出展ブランドも含まれている点です。「サローネ・コントラクト」は、これまでの常識を覆す新たなビジネスと対話を生み出す場として機能しようとしています。

若手デザイナーの登竜門、サローネサテリテ(SaloneSatellite)

ー 「サローネサテリテ」において、日本人デザイナーの活躍や評価についてはいかがですか?

日本広報担当・山本:35歳以下を対象とした「サローネサテリテ」は、マルヴァ・グリフィンが創設した若手育成の拠点です。隣接したホールにいる世界的ブランドの社長やCEOがスカウトに訪れる「デザイントレンドの発信源」になっています。ブースに立ち続けることは過酷ですが、会期中に声がかかり一夜にしてキャリアが開ける夢のような場所です。

日本からは毎年多数の応募がある中で、運営からは、「日本の若手は素材の丁寧な扱い方、着眼点の面白さ、完成度の高さが群を抜いており、選定が大変」といった声も届いているようです。第1回サテリテアワードの優勝者である田村奈穂さんが、その後ポッロ(Porro)社から発表した作品〈ORIGATA〉でコンパッソ・ドーロ賞において特別賞を受賞するなど、世界へ羽ばたく最高の登竜門となっています。

SALONESATELLITE-AWARD

SaloneSatellite Award ©︎Salone del Mobile.Milano 2026

紛争下における平和の舞台、そして次なる国際展開へ

ー 最後に、今後の展望について教えてください。

日本広報担当・山本:現在、世界中で戦争や紛争が起きていますが、サローネにはレバノンやイスラエルなど紛争当事国からの来場者も訪れます。社会情勢が不安定な中でも、人々の対話と交流の場として機能する「平和的な舞台」を提供し続けていることは、サローネの大きな価値です。

さらに、サローネは、世界のデザインをつなぐプラットフォームへと活動を広げています。その一環として、2026年9月18日からインドネシア・ジャカルタにて「サローネサテリテ・パーマネントコレクション展」を開催します。香港、大阪・関西万博イタリア館に続く国際ツアーで、コレクション415点の中から厳選された55点が展示されます。マリア・ポッロが体現する「試してみないとわからない」という冒険心が、この巨大な見本市を常に前進させています。進化し続けるミラノサローネの圧倒的な熱量を、ぜひ多くの方に体感していただきたいです。


「サローネサテリテ・パーマネントコレクション展 1998-2026」ジャカルタ開催概要

開催スケジュール・会期
インドネシア・デザインウィーク全体会期:2026年9月18日(金)~ 9月27日(日)
オープニングセレモニー / パーティー:2026年9月18日(金)
展覧会会期:2026年9月18日(金)~ 10月18日(日)

会場
Townhall IDD(インドネシア・デザイン・ディストリクト〈IDD〉PIK2 / ジャカルタ北部)Google Map

キュレーション
マルヴァ・グリフィン・ウィルシャー(サローネサテリテ創設者・キュレーター)

会場デザイン
建築家・リカルド・ベロ・ディアス & ハリアドナ・ピナテ

主催・協賛:IDD(アグン・スダユ・グループのライフスタイル部門Amantaraが運営)、イタリア文化会館協力

 

トップ写真:SaloneSatellite Award Róng Design Award ©︎Salone del Mobile.Milano 2026

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