綿織物の町として栄えた山形県山辺町に本社を置く、1935年(昭和10)創業の絨毯(じゅうたん)製造の老舗、オリエンタルカーペット。
同社を代表する「山形緞通(やまがただんつう)」は、皇居新宮殿「春秋の間」、歌舞伎座のメインロビーなどに納品実績があり、2013年(平成25)からは個人ユース向けに立ち上げたブランド名にもなっています。
これまでに、デザイナーの小林幹也、日本画家の千住 博、クリエイティブディレクターの佐藤可士和、工業デザイナーの奥山清行、建築家の隈 研吾の各氏とのコラボレーションによって、それぞれに独創的なアーティスティックな「じゅうたん」を世に送り出してきました。
このほど「山形緞通」の新たなコレクションとして、建築家の鈴野浩一と禿 真哉の両氏が主宰するトラフ建築設計事務所と共同開発した「MANYO」が発表されました。2020年10月27日より発売を開始しています。
「MANYO」の名は「万葉集」から。古の歌集に詠まれた伝統色に着想を得て、12の歌と色を抽出。オリエンタルカーペットとトラフ建築設計事務所が共同で開発し、初の実用化となる「糸マーセライズ」の技術を生かした商品です。
マーセライズとは、綿糸(コットン)を絹(シルク)のような光沢糸に変化させる加工で、シルケット加工とも呼ばれます。「山形緞通」を展開するオリエンタルカーペットでは、1950年にウール素材のじゅうたんのためのマーセライズ加工法を開発。加工を施した製品には、絹のような光沢とくすんだ独特の表情と、やわらかな肌触りが生まれます。
「MANYO」は、オリエンタルカーペットが「とびきりの無地のじゅうたんをつくりたい」とトラフ建築設計事務所に持ちかけたところから開発がスタート。同社の職人の手によって生み出されたコレクションでは、マーセライズならではの触り心地と、あたかも永い時間を経て深みを増したような風合いを実現しています。
オリエンタルカーペットとトラフ建築設計事務所は、同事務所がリノベーションを手がけ、2019年にリニューアルした大阪の〈リーガロイヤルホテル〉のメインロビーの改修でも仕事を共にしています。吉田五十八(1894-1974)が設計した当初の紅葉の柄の緞通を共同で開発、現代に蘇らせました(※〈リーガロイヤルホテル〉改修については、【TECTURE MAG】に掲載したインタビュー記事「Interview with Koichi Suzuno #01」の鈴野氏の談が詳しいのでここでは割愛します)。
新コレクション「MANYO」の発売を開始した10月27日、オリエンタルカーペットおよび「山形緞通」として待望の東京ショールームがオープン。場所は、東京・東神田1丁目。昨年、六本木に移転するまで、現代アートの画廊「TARO NASU Gallery」が入っていた、2008年に青木淳建築計画事務所(2020年「AS」に改称)が改修を手がけた建物を、トラフの二人がショールームへとリノベーションしました。
「ファサードにはショーウィンドウを設け、フレーミングされたじゅうたんが道行く人の目を引く。」(トラフ建築設計事務所「WORKS」より)
「中央にはじゅうたんを敷いて、スタイリング出来るフローリング張りのステージを設けた。来客が縁側のように腰掛け、使用状況に近い環境でじゅうたんをじっくり検討することができる。」(トラフ建築設計事務所「WORKS」より)
「大型のじゅうたんを壁に掛けても余白のある空間で、一枚一枚を丁寧に見せることができる」(トラフ建築設計事務所)
オープンに合わせて、今回の新作コレクション「MANYO」の発表を兼ねた「山形緞通展」が10月27日(火)から始まっています。会期は11月7日(土)まで、日曜、祝日定休。東京ショールームでは、新作を含めた「山形緞通」のすべてのラインナップが展示されます。
所在地:東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビル(Google Map)
TEL:03-5829-3887
営業時間:月~金曜 10:00-17:00、土曜 10:00-15:00(定休日:日曜、祝日)
グランドオープン:2020年10月27日(火)
内装設計:トラフ建築設計事務所
http://torafu.com/
山形緞通 東京ショールームオープン記念展示「山形緞通展」
会期:2020年10月27日(火)~11月7日(土)
※営業時間、定休日は上記参照
※予約者を優先する場合あり(入場案内)
「山形緞通」MANYO 特設サイト
https://yamagatadantsu-manyo.jp/
オリエンタルカーペット「山形緞通」公式ウェブサイト
https://yamagatadantsu.co.jp/
【TECTURE MAG】
トラフ建築設計事務所インタビュー記事(2020/09/12)
※オリエンタルカーペット「山形緞通」との仕事について語っています
Interview with Koichi Suzuno
#01 現場の感覚を次のプロセスに転換する
https://mag.tecture.jp/feature/20200912-interview-with-koichi-suzuno-01/