海外を旅したとき、その国・都市で有名なキリスト教会やイスラム教モスクなどを訪れ、ステンドグラス越しの光やモザイクタイルの幾何学が織りなす模様、ドラマチックな宗教画などが放つ美しさに目を奪われた経験がある人は少なくないことでしょう。この書籍は、そのときの感動があざやかに胸によみがえる1冊です。
著者は、ロンドンを拠点に活躍する作家・美術史、キャサリン・マコーマック(Catherine McCormack)。2019年に刊行された書籍『The Art of Looking Up』(2019)の翻訳版となる本書では、天空の神々を崇め、信仰の拠り所となる教会や寺院などの宗教施設、地域の文化や知性を象徴する劇場、図書館、ホールなどの文化施設、王族や権力者の財力の象徴として作られた宮殿や、国家のアイデンティティを可視化する会議場や市庁舎などの建築物が有する、天井画・天井装飾を約40点収録。宗教・文化・権力・政治の4章立てで構成されます。
本書では、作品の全体像だけでなく、肉眼では確認できない天井画の細部がわかる写真も掲載。「システィーナ礼拝堂」などの大規模作品は、観音開きの写真でダイナミックに紹介。建築意匠が確認できる貴重な資料となります。
掲載事例は、マルク・シャガールが描いたことで知られるフランス・パリのオペラ座(パレ・ガルニエ)、ヴァティカン宮殿、トルコ・イスタンブールのトプカプ宮殿、日本からは東京・浅草寺の天井画を収録。そのほかにも、アメリカ・ワシントンの合衆国議会議事堂など、美術書ではこれまであまり登場しなかった施設の天井画も収録。天井画をより楽しめる、各作品の制作背景や作家についても記述されています。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大によるコロナ禍の影響で、渡航や旅行が制限されるなか、その土地の文化が表現した建築による世界観と、海外を旅した気分も、自宅に居ながらにして味わえる一冊です。(en)
著者:Catherine McCormack
監訳:池上英洋
翻訳:大木麻利子、山本真実
仕様:B5変判、240ページ
定価:本体3,600円+税
発売日:2021年2月3日
ISBN:978-4-416-52122-9
版元:誠文堂新光社
【目次】
第1章 宗教
ネオニアーノ洗礼堂、イタリア
血の上の救世主教会(ハリストス復活大聖堂)、ロシア
サグラダ・ファミリア教会(聖家族贖罪教会)、スペイン
イマーム・モスク、イラン
ヴァティカン宮殿、イタリア
トカリ教会(バックル教会)、トルコ
サン・パンタロン教会、イタリア
デブレ・ベルハン・セラシー教会、エチオピア
浅草寺、日本
第2章 文化
オペラ座(パレ・ガルニエ)、フランス
ブルク劇場、オーストリア
ルーヴル美術館、フランス
ダリ劇場美術館、スペイン
ストラホフ修道院内の図書館、チェコ
ストックホルムの地下鉄駅、スウェーデン
コスタリカ国立劇場、コスタリカ
ウフィツィ美術館、イタリア
トルーカ植物園、メキシコ
ベラージオ・ホテル・アンド・カジノ、アメリカ
第3章 権力
バンケティング・ハウス、イギリス
アルハンブラ宮殿、スペイン
テ宮殿、イタリア
バダル・マハル、インド
バルベリーニ宮、イタリア
トプカプ宮殿、トルコ
ブレナム宮殿、イギリス
パラッツォ・キエリカーティ、イタリア
ブリュッセル王宮、ベルギー
中国風宮殿、ロシア
ヴュルツブルクのレジデンツ、ドイツ
第4章 政治
パラッツォ・ファルネーゼ、イタリア
アウクスブルク市庁舎、ドイツ
バルセロナ市庁舎、スペイン
オールド・ロイヤル・ネイバル・カレッジ(旧王立海軍学校)、イギリス
国際連合ジュネーヴ事務所(国際連合欧州本部)、スイス
革命博物館、キューバ
パラッツォ・ドゥカーレ、イタリア
合衆国議会議事堂、アメリカ
参考文献
索引
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