FEATURE
Special Report: Quand la forme parle. Nouveaux courants architecturaux au Japon (1995-2020) at Yokohama BankART Station
「ポストバブルの建築家展」会場レポート:五十嵐太郎監修、35組の建築家の"力強いかたち"の可能性を問う
FEATURE2022.01.31

五十嵐太郎監修「ポストバブルの建築家展」

[Report] 建築家35組の"力強いかたち"の可能性を問う企画展、横浜 BankART Stationにて開催

「ポストバブルの建築家展」概要

COMPETITION & EVENT2022.01.14

「ポストバブルの建築家展 —かたちが語るとき— アジール・フロッタン復活プロジェクト」

1960年以降生まれの建築家35組が出展、フランスでの企画展を再編して横浜に巡回

フランスで開催された展覧会を再編、日本巡回

日本の建築シーンを牽引する、1960年以降生まれの建築家・35組による「ポストバブルの建築家展 —かたちが語るとき— アジール・フロッタン復活プロジェクト」が、横浜のBankART Stationにて、2月19日まで開催されています(主催:一般社団法人日本建築設計学会[*1])。

*1.日本建築設計学会(Architecture Design Association of Nippon: ADAN)
2009年に開始された建築新人戦を運営してきた KASNET(Kansai Architecture School Network)を母体とし、さらなる拡張と活動の充実を目指して、2014年に一般社団法人化、学会組織として設立(組織概要)。会長は竹山 聖。乾 久美子、隈 研吾、倉方俊輔、古谷誠章ほか49名が理事を務める。
ADAN 公式ウェブサイト
http://www.adan.or.jp/

パリ会場との並行開催

本展は、ADAN主催、フランスの現代アート振興団体であるFRAC(FOND Regional D’ Art Comtemporain)との共催で、フランス・オルレアン地方のFrac Centre-Val de Loire(サントル=ヴァル・ド・ロワール)にて開催された展覧会「Quand la forme parle. Nouveaux courants architecturaux au Japon (1995-2020)」を再編したものです。

予定では2020年10月から2021年3月にかけて、サントル=ヴァル・ド・ロワールで開催されるところ、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響で、その後のフランス巡回展および日本での凱旋展も含めてスケジュールが変更となっていました(現在は、フランス・パリ日本文化会館に巡回中、2月19日まで)。

出展者:竹口健太郎・山本麻子|蟻塚 学|芦澤竜一|千葉 学|工藤和美・堀場弘|遠藤克彦|遠藤秀平|畑友 洋|平田晃久|岩元真明・千種成題|乾 久美子|岩瀬涼子|光嶋裕介|久保秀朗・都島有美|前田主介|前田茂樹|みかんぐみ|宮 晶子|宮本佳明|百枝 優|永山祐子|中村拓志|西沢立衛|大西麻貴・百田有希|小原賢一・深川礼子|斎藤隆太郎|島田 陽|栗原健太郎・岩月美穂|菅原大輔|田根 剛|手塚貴晴・手塚由比|宇野 享|山下保博|米澤 隆|吉村真基

横浜会場 展示レイアウト

出展者はフランス展と同じ、1960年以降に生まれた35組の建築家たち。
日本での展覧会では、展示内容は更新され、2021年12月に神戸(会場:兵庫県立美術館)にて開催されたあと、こちらの横浜会場に巡回。この後は京都に巡回する予定です。

『TECTURE MAG』では、五十嵐氏や出展した建築家が出席した1月12日開催のトークイベントを聴講するとともに、許可を得て会場を撮影。写真を中心に、展覧会の概要を伝えます(本稿の写真全点 撮影:TEAM TECTURE MAG)。

横浜巡回展 会場風景

日仏とも五十嵐太郎氏によるキュレーション
建築家にとって形(かたち)とは?

展覧会のキュレーションは、日仏の両会場とも、建築評論家で建築史家の五十嵐太郎氏(東北大学大学院教授)が担当しています。

「ポストバブルの建築家展 —かたちが語るとき—」横浜巡回展

会場入口に掲げられた五十嵐太郎氏による序文

五十嵐氏は今回、改めて日本の現代建築における「かたちの可能性」を問うことを展覧会の主題としており、これを反映して、紹介される35のプロジェクトの展示台では、添えられたテキストの出だしは必ず「形は」から始まっています。

〈豊島美術館〉のスタディ模型を出展した西沢立衛氏の展示台(テキスト部分)

例えば、豊島美術館のスタディ模型を出展した西沢立衛氏の展示台には「形は環境だ。」とあり、現在、東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間で開催中の企画展におけるテーマがここでも端的に表れています。

手前の模型:光嶋裕介〈桃沢野外活動センター〉模型、奥:平田晃久〈Tree-ness House〉の模型

35組それぞれが用意した回答はそれぞれで異なり、同じテキストはありません。展示品は、乾久美子氏を除いてほとんどが建築模型で、模型のスタディや作り込み、冒頭で触れた「形は〜」を含むテキストの読解、さらには場内数箇所で上映中の映像資料など、会場を何度も周回するような会場構成となっています。

「アジール・フロッタン(Asile flottant)」復活プロジェクトの展示も

なお、本展は、日本建築設計学会が関わっている「アジール・フロッタン(Asile flottant)」復活プロジェクトの一環として開催されています。
「アジール・フロッタン」とは、ル・コルビュジエと前川國男らの設計により、セーヌに”浮かぶ避難所”として1929年に改修された船で、1995年まで使用されていましたが、老朽化が進み、2018年には水没の危機に瀕しました。水没する前に、本展の原型として、フランス国内で日本人建築家を紹介する展覧会の企画が持ち上がっており、この段階では、アジール・フロッタンの船内が会場として企画されていました。

「アジール・フロッタン(Asile flottant)」復活プロジェクトの展示
前川國男がコルビュジエ事務所勤務時代に関わった「アジール・フロッタン(Asile flottant)」図面

神戸、横浜の日本巡回展会場に見られる、白い発泡スチロールの円柱は、アジール・フロッタンの船内をイメージしたインスタレーションとなっています(空間デザイン:竹口健太郎+山本麻子 / アルファヴィル)。
会場の中央部には、アジール・フロッタンの図面をはじめ、復活プロジェクトに関する展示も見ることができます。

会場風景

「ポストバブルの建築家展 —かたちが語るとき—」開催概要

会期:2022年1月12日(水)〜2月19日(土)
開場時間:11:00-19:00
会場:BankART Station
住所:横浜市西区みなとみらい5-1新高島駅B1F(Google Map
入場料:700円
※会場ではCOVID-19対策を実施

キュレーション:五十嵐太郎
プロデュース:遠藤秀平
会場空間デザイン:竹口健太郎・山本麻子(アルファヴィル)
グラフィックデザイン:フジワキデザイン
コーディネーション:石坂美樹
協力:神奈川大学 曽我部昌史研究室
主催:一般社国法人日本建設計学会
共催:BankART 1929

[BankART Station] エントランス(みなとみらい線 新高島駅に直結した会場)

関連イベント

シンポジウム ※終了
日時:2022年1月8日(土)23:00-25:00(フランス時間15:00-17:00)

トークイベント
開催日:2022年1月16日(日)、2月19日(土)予定(時間・登壇者など詳細が決定次第、ADANのウェブサイトほかにて発表)
会場:BankART Station併設カフェ
定員:30名(当日先着順に受付)
※展覧会入場料700円が必要

1月16日(日)16:00開始 ※終了
登壇者:五十嵐太郎、岩瀬諒子、遠藤秀平、久保秀朗、曽我部昌史

2月19日(土)16:00開始
登壇者:五十嵐太郎、遠藤秀平、大西麻貴、岩月美穂、吉村真基

日本建築設計学会(ADAN)公式ウェブサイト
http://www.adan.or.jp/news/event/3483

「ポストバブルの建築家展」概要

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