宮城県仙台市に、クリエイティブな体験やビジネス創造の場を提供することを目指した、新たなライフスタイルホテル〈OF HOTEL(オブ ホテル)〉が、2022年7月1日に開業しました。
立地は、仙台駅の北側。築47年の元ビジネスホテルをリノベーション、耐震改修と断熱改修を施し、建物全体で性能向上を図っています[*1]。
耐震改修と断熱改修の設計・監理を、不動産・建築・リノベーションに関するコンサルティングを主な事業とするu.companyのグループ会社、Japan.asset management(Jam)が担当。内装など意匠領域の設計・監理を、/360°が担当しました。
*1.断熱改修:国土交通省補助金事業 令和2年度「既存建築物省エネ化推進事業」に採択
/360°(読み:サンビャクロクジュウド)は、東北・秋田出身で、納谷建築設計事務所を建築家の納谷 学氏を共に率いる、建築家の納谷 新氏が、同事務所のパートナーだった建築家の島田明生子氏とともに今年2月に開設したばかりの設計事務所です。
このほど開業した〈OF HOTEL〉が、/360°として手がけた初のプロジェクトで、茨城県つくば市にて5月にオープンしたリノベーション事例〈co-en〉に次ぐ2番目の竣工となります。
「/360°の名称には、“全方向性で垣根を作らない” という想いを込めました。建築が、建築だけでなく、交わるところに、なにかおもしろいことが生まれるのだと考えています。」
「今回のプロジェクトでは、2階で展開するWOWのデジタルアートなど、東北に根差した地域プレイヤーたちとのコラボレーションが実現しました。それぞれに担当がありましたが、縦割りにせず、キャッチボールを繰り返しながら進めました。素材へのアプローチや、デジタルアートの投影方法など、良い意味で影響しあいながら、共に創り上げることができました。これこそが、私たち/360°が目指すところであり、さまざまな共創の成果を空間の随所に感じることができるのも、〈OF HOTEL〉の見どころのひとつとなっています。」(納谷 新+島田明生子)
〈OF HOTEL〉では、計画段階から東北に根差した地域プレイヤーの参画を募り、共創するかたちでプロジェクトの実現を目指してきました。
納谷、島田の両氏のほか、ホテル開業に参画したプロジェクトチームは以下の通りです。
〈OF HOTEL〉プロジェクトメンバー
運営事業主:大和ライフネクスト
企画・建築プロデュース・プロジェクトマネジメント:u.company
設計・監理(意匠):/360°(納谷 新、島田明生子)
設計・監理(耐震・省エネ設計):Japan. asset management
施工:エコラ、中城建設
ブランディング・アートディレクション:u.company、N’s create.
ホテル運営:COMMONS.、Japan. asset managementインスタレーションデザイン:高橋裕士(WOW 代表取締役)
サウンドデザイン:HUNGER(ハンガー / Jazzy Sport ラップアーティスト)
グラフィックデザイン:松井健太郎(BLMU 代表取締役)
クリエイターマッチング:長内綾子(Survivart 代表、キュレーター)
アートディレクション:関本欣哉(ターンアラウンド 代表)
ショップディレクション:永田宙郷(TIMELESS 代表)
SAKE BAR「水と酒 三花」:渡邊富蔵(ブルー 代表)
CAFE「darestore」:寺澤芳男(デアストア 代表)
ホテルプロモーション:かさまつひろこ
WEBサイト・DTPデザイン:KON+17design
ホテルの意匠設計は、前述のとおり、/360°が客室を含めて担当。「ホテル」という場と空間にありがちな、見た目が派手でデザインを押し付けるようなものではなく、無垢の素材や、リノベーションであらわれた躯体のテクスチャーも活かした、ニュートラルなデザインを意識したとのこと。
客室タイプと室数
・「ダブル」1名-2名利用、スタンダード、クイーン、ワーカーズなど6タイプ・12-18m²・計34室
・「ツイン・バンクベッド」1-2名利用、4タイプ・12-16m²・計14室
・「ラグジュアリールーム」1-2名利用、書斎や独立した打合せスペースを併設した客室、2タイプ・23-28m²・計3室
・「フォース・トリプル」4-6名のグループでの滞在に適した客室、バスタブ付き、2タイプ・23-27m²・計4室
計55室の客室の大半が、1-2名利用を想定した12-18m²という広さに対して、宿泊者にいかにして寛いでもらい、快適さを感じてもらえる空間のしつらえに腐心したとのこと。
例えば、靴を脱いで寛げる小上がり、住宅のように靴を脱いで寛ぐ床の間、“にじり口”など、床座の姿勢へと導く仕掛けを施したタイプの客室を用意するなど、“所作”から寛ぎが始まるデザインに。
靴を脱いだ先の床の材は岩手産栗材の無垢フローリング。そのほかのインテリアでは、東北各地にみられる伝統的なテキスタイル「裂き織り」でつくられたクッションや、デスク照明に地元・宮城県産の白石和紙が使われています。
さらに、宿泊者を迎えるエントランスホールの床は、地元産の秋保石(あきういし)や宮城県産の玄昌石のほか、秋田県産の十和田石を採用。共用部に置かれた家具には、山形県天童市で創業・本社を構える天童木工のヴィンテージ家具などを選定しています。
スケルトン・インフィルのリノベーションとしてはスタンダードな”躯体あらわし”で、削ぎ落としたデザインをベースとしながら、人々の快適な居場所を創出するために、居心地のよい素材やインテリアによる“足し算”と、そこにときには“引き算”も使って、ホテル空間をしつらえました。1階や2階では、床の一部を“減築”。閉塞感をなくし、地階では豊かな地下空間となっているとのこと。
その地下1階フロアには、仙台市内に飲食店[十肴とみぞう]と姉妹店[鈴な鈴しろ]を営む、ブルー(BLUE Inc.)の3店舗目となる[水と酒 三花(ミケ)]がオープン。東北の選りすぐりの日本酒や東北の天然水、ナチュールワインなど、地元に根ざしたメニューを提供します。
2階フロアには、カフェ・ラウンジが置かれ、カフェでは、朝食を含めたメニューを、仙台で人気の自家焙煎カフェ「darestore(デアストア)」が担当します。
さらに今後は、仙台から次の目的地へ忙しく移動するワーカー向けに、新幹線の車内などで味わえるテイクアウトメニューを充実させていく予定とのこと。
1階のエントランスホールでは、東京、仙台、ロンドン、サンフランシスコに拠点を構えるビジュアルデザインスタジオ・WOW(ワウ)が制作した、オリジナルのデジタルアートによる空間演出が行われるのも特筆点です。
「TEIEN」と名付けられた映像作品は、丸石で構成されたエントランス空間を、内(うち)と外(そと)をつなぐ庭園に見立て、東北の風景や自然をモチーフにした映像作品が映し出されるインスタレーションです(時間:15:00-24:00 ※混雑状況により、入場を制限する場合あり)。
そのほか、仙台で活動するディレクターとエンジニアのユニット・KON(コン)と、福岡のデザイン事務所・17design(イナデザイン)がデザインを手がけたホテルの公式ウェブサイトでは、地域プレイヤーの言葉を通じて、ホテルの楽しみ方や、東北・地域の魅力を発信。東北の魅力ある地域プレイヤーが集う場や、スキルなどを共有し、新たな出会いと発見の機会を提供していく予定です。
館内には、〈OF HOTEL〉直営のセレクトショップもオープン。東北の新旧のものづくりや、これからの新しい働き方を支える道具、インポートブランド、土産品、宿泊者向けの雑貨や食品なども取り扱います(営業時間 7:00-22:00予定、定休日:施設営業日に準じる)。
名称:OF HOTEL(読み:オブ ホテル)
所在地:宮城県仙台市青葉区花京院1丁目4-14(Google Map)
新築竣工:1975年10月
リノベーション竣工:2022年5月
開業日(宿泊開始):2022年7月1日
構造:RC造
階数:地下1階+地上10階
客室数:55室
付帯施設(テナント):
セレクトショップ(SHOP of HOTEL)
B1階:SAKE BAR(水と酒 三花)/ 18席
2階:カフェ(CAFE of HOTEL)/ 7席+スタンディング席
※飲食店の営業時間・定休日はホテル公式ウェブサイトを参照
〈OF HOTEL〉名称の由来(プレスリリースより)
東北地方の面積は日本の約2割。日本の魅力の1/5が東北に詰まっているといえる。 OF HOTEL の「OF」は、「one-fifth」の頭文字であり、「of」は「〜(が原因)で」という接頭辞であり、その語源は「off」が弱まったかたちとされる。日常から少しだけ離れて、OFFの状態ではなく、〈OF HOTEL〉をきっかけに、さまざまな「OF」を体験してほしいという想いが込められている。ホテル名称〈OF HOTEL〉は、多様な体験価値を提供する、さまざまな機能を備えていることを表現した。
ホテル公式ウェブサイト
https://of-hotel.com/
SNS
https://note.com/of_hotel
https://www.instagram.com/of_hotel/
https://twitter.com/of_hotel_
https://www.facebook.com/ofhotelsendai