2023年1月27日初掲、2月10日会場構成関連画像とテキストを追加
神奈川県・箱根町のポーラ美術館のアトリウム ギャラリーにて、HIRAKU Project Vol.14 丸山直文「水を蹴る—仙石原—」展が開催されます。会期は1月28日から7月2日まで。
会場構成を、作家と親交の深い、建築家の青木 淳氏(AS共同代表)が担当します(企画協力:AS、安東陽子デザイン、岡安泉照明設計事務所)。
「HIRAKU Project(ヒラク プロジェクト)とは、美術の表現と美術館の可能性を「ひらく」ため、ポーラ美術振興財団の助成[*]を受けた作家の活動を紹介する展覧会シリーズで、今回で14回目を数えます。
本展では、国内外で数多くの展覧会を開催し、国内の主要な美術館に作品が収蔵されている、日本を代表する作家の1人、丸山直文氏(1964-)を紹介。箱根・仙石原の豊かな森の取材から生まれた新作も発表されます。
丸山は1990年代の活動初期から一貫して絵画を描き続けています。カンヴァスを立てて描く伝統的な絵画の制作法とは異なり、丸山は、水を含ませた綿布を床に置き水平な状態で作品を描きます。にじみやぼかしを意図的に取り入れた画面の中でかたちの境界は曖昧に揺らぎ、アクリル絵具の鮮やかな発色とともに、判然としない夢のような世界を生み出しています。
今回の展覧会は「水を蹴る―仙石原―」と名付けられました。水たまりを蹴り上げると、水面に映った静寂な世界が崩れてしまうように、私たちの足場がいかに不安定で、見知った世界が一変してしまう可能性と常に隣り合わせであるか。震災、気候変動やパンデミックを経験した私たちは、その事実を改めて目の当たりにしました。本展のタイトルには、世界の、あるいは私たち自身の不確かさに対する丸山の意識が顕れています。
制作の過程においては「水」が極めて重要な役割を担いながら、丸山が水を意図的に絵画に描き始めたのは近年のことです。水面を描いた作品群に加えて、本展ではこの箱根・仙石原の地をテーマに、当館を取り囲む豊かな森の取材から生まれた新作を発表します。赤褐色の美しい幹肌が特徴的なヒメシャラの木々は、湿潤な土壌でしか育ちません。手で触れると、極めて薄い幹皮を通して冷たい水を感じるこのヒメシャラの感触は、さながら表面を薄いヴェールに覆われたかのような丸山の絵画のあり方を想起させます。
展覧会の会場構成は、丸山と親交の深い建築家・青木 淳が担当します。青木は、丸山の絵画からインスピレーションを得て、重ね合わせた布によるモアレを水面に見立てた会場構成を構想しました。
壁一面を覆いつくす半透明の布は、展示空間に水面の反射のような光と、やわらかな揺らぎを生み出し、ギャラリーの内側へと人々を誘い込むかのよう。
仙石原は太古、湖の底にあった土地です。丸山と青木がつくり上げた、輝く薄いヴェールに包まれた展示空間は、水面を歩くような少しの不安とともに、誰も知らない世界へと私たちをいざないます。作家にとって初の試みとなる建築家との協働を通じて、丸山作品の新たな魅力に迫ります。(ポーラ美術館プレスリリースより転載)
丸山直文(まるやま なおふみ)プロフィール
現代美術作家
1964年新潟県生まれ、東京都在住。武蔵野美術大学造形学部油絵学科特任教授。
1990年代以降の日本の重要なペインターの1人として第一線で活躍を続ける。
主な展覧会に「水を蹴る」シュウゴアーツ(東京、2022)、「流」ウソンギャラリー(大邱、2017)、「GROUND2 絵画を語る−⾒⽅を語る」武蔵野美術⼤学美術館図書館 (東京、2016)、「ニイガタ・クリエーション」(新潟、2014)、「浮舟」豊田市美術館 (愛知、2011)、「丸山直文–後ろの正面」目黒区美術館 (東京2008)などがある。2023年元旦には、最新作が日本経済新聞の紙面を飾った。
2008年芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
青木 淳(あおき じゅん)プロフィール
建築家。
1956年神奈川県横浜市生まれ。1982年東京大学大学院を修了。1991年青木淳建築計画事務所(2020年にASに改組)を設立。
1999年〈潟博物館〉の設計で日本建築学会賞(作品)を受賞。2021年には〈京都市美術館(通称:京都市京セラ美術館)〉の設計で2回目の日本建築学会賞(作品)を受賞。そのほかの主な作品に〈青森県立美術館〉(2006)、〈杉並区大宮前体育館〉(2014)、2013年に青木淳建築計画事務所が設計した〈ルイ・ヴィトン 銀座並木通り店〉を建て替え、2021年3月にオープンした同店舗などがある(建築本体および外装・ファサードの設計・監理をASが担当)。
2019年4月より京都市京セラ美術館館長を務める。2019年〜2023年度東京藝術大学大学院教授(美術研究科建築専攻、2024年3月末退官予定)。
出展作家:丸山直文
会場構成:青木 淳
会期:2023年1月28日(土)~7月2日(日)
開館時間:9:00-17:00(入館は16:30まで)
休館⽇:なし・会期中無休 ※悪天候時は臨時休館の場合あり
本展観覧料:無料
※入館料:大人 1,800円、シニア割引(65歳以上)1,600円、大学・高校生 1,300円、中学生以下無料
※障害者手帳の受付時提示で本人および付添者1名まで 1,000円
会場:ポーラ美術館 1Fアトリウム ギャラリー
所在地:神奈川県⾜柄下郡箱根町仙⽯原⼩塚⼭1285(Google Map)
TEL:0460-84-2111
主催:公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
協力:シュウゴアーツ
企画協力:AS、安東陽子デザイン、岡安泉照明設計事務所
展覧会詳細
https://www.polamuseum.or.jp/sp/hiraku-project-14/
ポーラ美術館 公式サイト
https://www.polamuseum.or.jp/
*1.ポーラ美術振興財団「若手芸術家の在外研修に対する助成」事業
日本の若手作家の海外研修を援助するもの。1996年に開始され、今日まで毎年18名程度を採択する、日本を代表する作家助成事業のひとつ。海外でさまざまな研修に取り組むための助成金を給付し、作家が知見を広げ、より充実した創作活動の糧とすることを奨励している。これまでに、丸山直文、やなぎみわ、小金沢健人、曽根裕、村瀬恭子、さわひらき、田中功起、野口里佳、大山エンリコイサム、蓮沼執太ほか、27年間で420名以上の作家が研修に参加しており、本助成を契機に海外に拠点を移した作家も多数。
「HIRAKU Project」はポーラ美術館開館15周年にあたる2017年より開始。同年に新設された、ポーラ美術館「アトリウム ギャラリー」にて開催される。