CULTURE

外壁がバルコニーに変形!? 開口部が展開する森の中のアトリエ

トーマス・ランドール・ペイジが彫刻家の父のために設計したアートスペース〈アートバーン〉

CULTURE2023.03.22
〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

イギリスの田園地帯に建つ農業用の納屋を改修した〈アートバーン(Art Barn)〉は、トーマス・ランドール・ペイジ(Thomas Randall-Page)が、父である彫刻家ペーター・ランドール・ペイジ(Peter Randall-Page)のために設計したアートスペースです。

既存の納屋の閉ざされた外観を保ちつつ、大開口のシャッターが開くことで空間があらわとなり、空間を進むごとにレベルや開口部が展開します。9年という年月をかけ、贅沢に時間を使って計画された建築です。

外壁が折り畳まれバルコニーとなるユニークな開口部や、石の段差に設けられたスチール階段、木の柱と石の接合部といった異素材同士の出会い方についてもじっくりと考え込まれたディテールで構成されています。

(以下、Thomas Randall-Pageから提供されたプレスキットのテキストの抄訳)

Thomas Randall-Page: Art Barn from Stephenson& on Vimeo.

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

2011年、ピーターはイギリスの南西部デボンの田園地帯に建つ、何の変哲もないモダンな納屋を購入し、自身の作品のアーカイブ兼店舗とすることを息子であるトーマス・ランドール・ペイジに依頼した。

9年の歳月をかけて完成したこのプロジェクトは、じっくりと時間をかけて建築することがいかに有益であるかを示している。

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

杉板に包まれた控えめな外観の中に挿入された杉板と亜鉛メッキ鋼の工業用シャッターが折りたたまれたりスライドすることにより、複雑で多層的な空間を出現させる。

内部には自然光が差し込む広大なギャラリーや、建物の中に入れ子状に作成された「冬のスタジオ」と呼ばれるダークコルクに包まれた部屋がある。この部屋はプロジェクトの中心的な存在であり、部屋の下に設置された薪ストーブにより暖をとることができる。

また、部屋に設置されたドアの向こうにはバルコニーが出現し、樹冠の間から広がる渓谷の眺めを楽しむことができる。外出時には、このバルコニーは平らに折り畳まれ、壁の一部となる。

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン〉は、デボンのなだらかな野原と、ダートムーア国立公園の森林に覆われた渓谷との境界線上に位置している。

250m²の面積を誇る〈アートバーン〉は、太陽光発電を活用したオフグリッドの建物であり、ドローイングスタジオ、彫刻作品の保管庫、アーカイブ、臨時ギャラリーとして機能し、最終的にはピーターの作品のための恒久的な住まいとなる。

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

設計者であるトーマス・ランドール・ペイジは次のように語る。

「木材や石材、亜鉛メッキ鋼板など、素材や技術はシンプルでローカルなものを使用した。私たちは、話し、考え、描くことに対し、贅沢に時間を費やしたのである。」

「クライアントであるピーターの信頼、熱意、忍耐は、ゼロからソリューションを考案し、ある素材が他の素材とどのように出会うかを真剣に考え、動く要素をもった遊び心のあるユニークな空間を与えてくれた。」

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

クライアントであるペーター・ランドール・ペイジは次のように語る。

「私はまず、建物の外観を閉ざされたように見せることで、農業を起源とする既存の納屋の特徴を残すことを求めた。到着し、空間を移動するにつれてレベルや開口部が展開し、ゆっくりと明らかになる体験をつくりたいと考えたのである。」

「トーマスや私の信頼する職人たちとの共同作業は、建物というより彫刻の制作プロセスに近く、従来のクライアント・建築家・施工業者という関係を曖昧にすることができたのである。」

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

©︎ Jim Stephenson

〈アートバーン(Art Barn)〉

既存の納屋 ©︎ Thomas Randall-Page

〈アートバーン(Art Barn)〉

既存の納屋 ©︎ Thomas Randall-Page

〈アートバーン(Art Barn)〉

既存の納屋 ©︎ Thomas Randall-Page

以下、Thomas Randall-Pageのリリース(英文)です。

Art Barn – Press Release – Embargo April 1st.

Thomas Randall-Page slides open a muted agricultural building to reveal an elegant new art space for his father, the sculptor Peter Randall-Page RA.

In 2011 Peter bought a nondescript, modern cow barn deep in the Devon countryside. He commissioned his son to convert it into an archive and store for his work. After 9 years of designing and crafting, the project is complete, and clear evidence of how architecture can benefit from being done slowly.

A series of industrial scale shutters in cedar and galvanised steel playfully fold and slide, revealing a complex, multi-layered space within a mute and unassuming exterior. Inside the vast day-lit gallery, a freestanding ‘creature’ stands on stone hooves. Known as the ‘Winter Studio’ this room-within-a-room is the project’s nerve centre. It is wrapped in a dark cork and warmed by a wood-burning stove. Beyond its door, a balcony offers long views out through the tree canopy and across the valley. As the building is re-shuttered on departure, the balcony folds back flat, effortlessly becoming part of the wall again.

The Art Barn sits on the boundary between Devon’s rolling field-scape and the steep and wooded Teign Valley in Dartmoor National Park. This 250m2 solar-powered, off-grid building will function as a drawing studio, sculpture store, archive, occasional gallery, and ultimately a permanent home for Peter’s work.

“Wood, stone, galvanised steel: the materials and technologies are simple, local and agricultural. The luxury is the time we spent talking, thinking and drawing.”
Thomas Randall-Page

“My brief stipulated that the building’s exterior should appear hermetically sealed, retaining the character of its agricultural origins. I wanted the experience of arrival to be a slow reveal with levels and apertures unfolding as one moves around the space.”
Peter Randall-Page RA

“Working with Thomas and my team of trusted artisans, the ‘in-house’ process was more akin to the making of a sculpture than a building, blurring conventional client–architect–contractor relationships.”
Peter Randall-Page RA

“Peter’s trust, enthusiasm and patience as a client gave me a unique space to invent solutions from scratch, really consider how one material meets another, and be playful with the moving elements.”
Thomas Randall-Page

「Art Barn」Thomas Randall-Page 公式サイト

https://www.thomasrandallpage.com/Art-Barn

 

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