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完全無人のショールーム、設計を山路哲生建築設計事務所が担当

ミラタップ横浜スマートショールーム 3/1オープン

BUSINESS2022.03.01

住宅設備機器と建築資材のインターネット販売などを事業とするミラタップ(本社:大阪府大阪市北区)が、完全無人のスマートショールームを構築、横浜・みなとみらい地区に2022年3月1日にオープンします。

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

ミラタップ横浜スマートショールーム 外観

このショールームには、アドバイザーなどのスタッフが常駐せず、来館者への対応は、店舗内の要所6カ所に設けたモニターを通して行われるのが特筆点です。

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

スマートショールームでの接客イメージ(モニター画面はCG合成)

同社では、「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大以降、非接触での新たな接客サービスが求められる世の流れを受け、2020年からインターネットを使ったオンライン接客サービスを行なっていますが、このスマートショールームでは、これと似て非なる運営となるため、イチからのシステムの構築と空間づくりが必要となりました。

『TECTURE MAG』では、2月21日に現地にて行われたプレスツアーに参加。サービスの流れを確認するとともに、ショールームの設計を担当した建築家の山路哲生氏(山路哲生建築設計事務所)にも話を聞きました。

どのような接客を行い、顧客の満足度を充足させるのか? 今後の展開は?
建築業界だけでなく、注目のスマートショールームについて、レポートをお届けします。

“コア”を中心に、回遊性と快適性を重視したショールーム

完全無人、完全予約制で運営されるミラタップ横浜スマートショールームを利用するには、ミラタップのウェブサイトから、日時指定での予約申し込みが必要です。
入館からの手順を画像で追っていきましょう。

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

スマートショールームへの入館は、予約者に送信されるURLにアクセスし、画面に表示されるの開錠ボタンを押すだけ

入口のドアは施錠されているため、解錠用に、予約完了者にはスマートキーが予め送信されます。当日は、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を使って、来館者自身がドアを開けて入館します。
店舗内に入った後に、応対するスタッフがすぐ脇のモニター画面上に登場。約3分のガイダンス動画の視聴案内からショールーム体験が始まります。

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

画面左奥:入館者が視聴するガイダンス動画を上映するモニターに、女性スタッフが写っている Photo by TEAM TECTURE MAG

ガイダンス動画を見終わったあとは、店舗内を自由に見て回ることができます(コロナ対策のため、手袋の装着が必要)。

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

システムキッチン展示の背面に、後述の”コア”と呼ばれる打合せスペースが位置する

店舗面積は約142m²で、展示されている製品は、コンパクトキッチン、洗面台、タイル、バスタブ、システムバス、洗面ボウル、ミラー、ポストなど約30点。「コア」と呼ばれる打合せルームの周りに配置され、製品をみながらぐるりと1周できる動線となっています。

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

入店して左側の壁に沿って展示されているコンパクトキッチンと洗面台

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

ショールーム最深部からの通り側の眺め

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

ゆったりと配置された商品群

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

バスタブは倉本仁氏によるデザイン

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

画面右側の引き戸の奥が”コア”と呼ばれる打合せスペース

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

ショールームの中心に置かれた打合せスペース

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

店舗内には、カメラが7台、マイクが6台、スピーカーが11台、天井面に、計6台のモニターが壁面に設置されています。これらの機器類を通して、ミラタップ側は来館者の動線を把握、誘導しつつ、商品説明や見積もり作成などを遠隔地から全て行います。

商品説明は、モニターを通しても行われますが、各商品ごとに用意されたQRコードのポップを、来館者が手持ちの端末のカメラで読み取り、アクセスしたウェブ上でも詳細を確認できます。

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

QRコードのポップから詳しい商品情報にアクセスできる

2月21日に実施されたプレスツアーでは、ショールーム内をゆったりと1周し、打合せルームのモニター上で見積りを行う段階までがデモンストレーションされました。来館者役の同社社員は、大声を張り上げることなく、モニター越しのスタッフと会話し、終始スムーズに推移していきました。

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

打合せスペースのモニターを通して見積もり依頼を進める様子(プレスツアー風景) Photo by TEAM TECTURE MAG

#無人ショールーム誕生の背景

横浜スマートショールームのオープンと概要については、2022年2月8日に同社が発表したプレスリリースにて明らかになっています。
このほか、プレスツアーに先立って挨拶したミラタップの山根太郎代表取締役社長と、その後のプレスツアーを担当した同社拠点支援課の樋川氏の説明により、出店理由は次のように要約されます。

「コロナ禍によって、人々の生活が新しい生活様式へとシフトする中で、『お客様との対話を通じてイノベーションを起こし続ける』という当社のビジョンに沿った、新しい接客スタイルを構築するため、今回の横浜出店に至りました。

無人のショールームとした理由は大きく2つあり、1つ目は、弊社社員の働き方改革と生産性の向上、この2つをつなげるためです。2つ目には、運用性を考えてのことです。

このショールームには、スタッフが常駐しません。お客さまへの対応は、ショールーム内の要所に設けたモニターを通して行います。この利点は、シフトが空いているスタッフを接客要員として配置できることです。当面は、南青山にある東京ショールームのスタッフが応対しますが、仙台、名古屋、大阪、福岡にある弊社ショールームの人員を配置することも考えています。

人員配置に関しては、退職した元スタッフのセカンドキャリアの再活用や、新規採用においても、効果が期待できると考えています。
豊富な商品知識を有するものの、産休や育休のために長期的に職場を離れざるを得ない元社員やスタッフに対して、リモートワークによる接客という新たな職場を提供し、キャリアを再び活用してもらうことができます。
また、弊社の本社は大阪にありますが、採用では”地の利”がとても重要です。また、まったく新しい土地にショールームを出店するとなると、現地採用が望ましいものの、弊社には”地の利”がないため、思うような採用が難しいという課題があります。これが、スマートショールームであれば、例えば大阪で面接して採用し、大阪以外のスマートショールームに配属することも可能となります。」(山根太郎代表取締役社長・談)

なお、スマートショールーム1号店の出店地として選ばれた横浜は、これまでの売り上げ実績などからサービスが行き届いていないと判断されたエリアの1つ。同様の”空白地”への進出を計画中のミラタップにとって、今回の横浜出店は重要な試金石となります。今後はスマートショールーム専用の部門編成も視野に入れているとのこと。

店舗設計は建築家の山路哲生氏が担当

これらの動線を含め、横浜スマートショールームの設計は、建築家の山路哲生氏が担当しました。山路氏は、南青山に昨年6月に移転・リニューアルオープンした、ミラタップ東京ショールームの設計・空間デザインも手がけています。

約142m²というコンパクトな空間で、山路氏が第一に優先したのは、展示の物量ではなく「自宅のリビングにいるような快適さ」でした。
展示点数を30点まで絞り込んだのは、自宅にいるような空間の快適性を求めた、山路氏のコンセプトが反映されています(検討段階では今よりも多かったところ、厳選)。来館者がゆったりと過ごせるよう、ソファなどの家具も用意しています(プレスツアー開催後の納品)。

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

プレスツアー開始前に挨拶する山路哲生氏 Photo by TEAM TECTURE MAG

山路哲生氏による設計コンセプト
「ショールームが従来担ってきたような、できるだけ多くのサンプルを展示・体験する場所ではなく、訪れた人にとって、また来たくなるような快適な居場所であることが重要だと考えました。建材を購入しようとする住まい手の多くは、ドアやタイルといった建材そのものが欲しい訳ではなく、それらが構成する快適なくらしが欲しいと望んでいます。押し付けがましい説明書をできるだけ取り除き、安心して滞在できる、行き止まりの無い大らかな構成にしています。
142m²の無人ショールームは、その小ささゆえに、住宅や広いホテルの1室のようなプライベート空間に近い場所性を帯びています。モニターに向かって自分から話しかけなければ、誰にも邪魔されずにその場所を独占することもできるVIPルームです。
ミラタップの商品で生活を彩りたいと感じてもらえるようなショールームとなっています。」(2月8日プレスリリースより)

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

プレスツアー風景(画面左側のモニター画面に写っている女性スタッフは、東京ショールームからの応対を実演) Photo by TEAM TECTURE MAG

今回のスマートショールーム設計について、山路氏に現地にて詳しい話を聞きました。
課題としては大きく2つあり、1つは「音の問題」。もう1つは、今後の全国展開を見据えた「汎用性」だったとのこと。

「スタッフと来館者のやるとりをスムーズに行うためには、互いの音声がクリアーであることが前提となります。この空間で人の声がどのように反響するのかは、専門の施設で事前に確認することができたので、聞き取りやすく拾いやすい位置にスピーカーやマイクを配置しています。機器類では、ガイダンスを流すモニターは大きめに、そのほかは小さいサイズで存在感を抑えました。そのほか、来館者はもちろんモニターを通して接客するスタッフにも不安を与えないよう、死角となる空間をなくし、見通し良く、ゆったりと回遊できる、快適な空間づくりを目指しました。」(山路氏談)

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

天井見上げ(スピーカー、集音マイク、カメラなどが適所に配置されている) Photo by TEAM TECTURE MAG

店舗内での「音の問題」を確認する前段階として、スマートショールームの全国展開を踏まえた「汎用性」を確保している、山路氏の注力した空間デザインがあります。

「このショールームの特徴は、打合せルームを”コア”として真ん中に据えて、そのまわりに商品を配置したこと。これを基本形とすれば、全国展開もしやすいと考えました。どこへでも持っていける。たとえば、古民家の中にこのコアをポンと置くといったことも可能でしょう。ショールーム空間の新たな可能性につながると考えています。」(山路氏談)

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

画面中央の”四角い空間”が打合せスペースとして使われ、スマートショールームの角となる”コア”

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

画面左奥に設置しているユニットバスの踏み込み高さの解消と、回遊のアクセントとして唯一、段差がある一角 Photo by TEAM TECTURE MAG

ゆとりある空間づくりが可能となった理由の1つに、大型店舗である東京ショールームの存在があります。来館者が更なる商品群の確認を希望した場合には、誘導も視野に入れています。その導入部として、サテライト的な店舗運営が可能な好立地が横浜でした。

今のところ、予約受付は1日3組まで。見学のみの利用も可能です。
2022年2月8日より受付を開始、2月21日の時点で、オープン後の約1カ月の予約はほぼ埋まっている状態です。

同社の調べによれば、キッチン・水回り商品を扱う企業によるスマートショールームの開設は業界初とのこと。今後の運用と展開に注目が集まります。

サンワカンパニー横浜スマートショールーム

ミラタップ横浜スマートショールーム 夜間外観(注.店舗の夜間営業はありません)

ミラタップ横浜スマートショールーム 店舗概要

所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい5-1-1 横浜グランゲート1F
営業時間:10:00-17:00
予約受付時間:10:00 / 13:00 / 15:30(各回最大利用時間:90分)
利用方法:完全予約制・専用ページより日時指定要

詳細・予約専用ページ
https://www.miratap.co.jp/shop/app/contents/showroom_detail/yokohama/

ミラタップ公式ウェブサイト
https://www.miratap.co.jp/



Reported by Naoko Endo
特記ありの写真を除き、画像はミラタップ提供

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