ウェスティン都ホテル京都は、創業130周年を迎えるにあたっての大規模なリニューアルの一環として、村野藤吾(1891-1984)が設計し、1959年(昭和34)に建設された数寄屋風別館〈佳水園〉を改修。設計監修を、NAP建築設計事務所(代表 中村拓志)が担当。2020年7月17日(金)にリニューアルオープンします(プレスリリース)。
ウェスティン都ホテル京都の歴史は、1890年(明治23)に京都の豪商西村仁兵衛らが、現在の地に遊園「吉水園」を開いたことに始まります。1900年に客室や食堂などを増築して〈都ホテル〉として開業。1926年の昭和天皇即位の儀典では、参列する各国施設の宿にもなりました。同年に、七代目小川治兵衛(1860-1933)による庭園と、茶亭〈可楽庵〉を新たに設け、村野藤吾設計による客室棟〈佳水園〉も竣工しています(営業開始は1960年1月)。ウェスティン都ホテル京都となった今日まで、洋の本館と対をなす和の数寄屋風の別館として、名園とともに受け継がれてきました。
同ホテルは、約5万5千m²の敷地内に、京都市文化財(名勝)に登録されている回遊式庭園「葵殿庭園」、自然岩盤を主体とした佳水園庭園「植治の庭」、白砂敷きの佳水園「白砂の中庭」など複数の庭園を有しています。
このうち、「白砂の中庭」は、国の特別名勝である醍醐寺三宝院の庭を模したもの。造園を七代目小川治兵衛の長男・白楊氏が手がけ、自然の岩盤を利用した滝の流れを生かし、盃に酒を注ぐさまに見立てた意匠が特徴です(*小川白楊氏の作庭部分は1994年京都市文化財[名勝]に登録)。
村野藤吾が設計した〈佳水園〉は、華頂山に続く高低差を生かした棟配置となっています。
今回のリニューアルでは、村野の美しくリズミカルな動線と外観、渡り廊下・ロビーなどのパブリックスペースのデザインなども承継しつつ、2室を1室に拡げ、平均客室面積を約40m²から約70m²へと拡大しています。ベッドルームをリビングルームと分けて設けて居住性の向上を図り、風呂には天然温泉を引き込みました。
〈佳水園〉リニューアルについて 中村拓志氏(NAP建築設計事務所代表)コメント:
佳水園は幾重もの庇による浮遊感が印象的な、日本の近代建築を代表する傑作です。
今回のリニューアルでは、村野氏の空間や庭の美しさを引き立てるような、控えめで慎ましい設計が相応しいと考えました。そこで伝統的な数寄屋の手法でありながらも現代生活との親和性をはかり、最新の建築技術や素材を積極的に導入した「村野数寄」の精神を踏襲しました。
床座に不慣れなお客さまでも寛いでもらえる和のローソファやベッド、スチール棒で編んだ繊細な下地窓、そして三次元和紙によって小さくモダンにリモデルした村野ブラケット照明や七宝編みのナイトランプなど、「村野数寄」の繊細な空間に現代技巧が調和した、未来につながる現代数寄を目指しました。
〈佳水園〉ロビーには、村野や京都の文化に関連する書籍を揃えた宿泊客専用の「ライブラリー」を新設。また〈佳水園〉専属の女将(おかみ)を置くなど、細部まで心のこもったサービスとあわせて、ぜいたくなくつろぎの時間と空間を提供します。宿泊予約は6月2日(火)より受付中。(en)
ウェスティン都ホテル京都(The Westin Miyako Kyoto)
https://www.marriott.com/hotels/travel/ukywi-the-westin-miyako-kyoto/