CULTURE

アマゾン1の高さを誇る木造タワー!

ワラとヤシで葺かれた エコツーリズムへと移行したアマゾンの民族のためのコミュニティ施設〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

CULTURE2023.06.20
〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

エクアドルの国立公園に住むアニャング族のために建てられた〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー(The Napo Wildlife Center Tower)〉は、ゲストのためのダイニング施設を有するコミュニティ施設であり、アマゾンで最も高い木造タワーです。

地元の木材と掘削用パイプをリサイクルした混合構造と、ワラとヤシで葺かれた屋根で構成された、伝統的な知恵と現代的な材料を融合させた「文化融合型」の建築であり、地域の子どもたちに、先祖代々の伝統を失うことなく現代に生きることが可能であることを示しています。

持続可能で環境に優しい建築を追求するエクアドルの建築スタジオ カア・ポーラ・アーキテクチャ(Caá Porá Arquitectura)が、地域の人々とのワークショップを通してつくり上げた建築です。

(以下、Caá Porá Arquitecturaから提供されたプレスキットのテキストの抄訳)

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

農耕・狩猟生活からエコツーリズムへと舵を切った民族「アニャング」

1998年、エクアドルのヤスニ国立公園内に位置するキチュワ・アニャング・コミュニティ(Kichwa Añangu community)は、農耕・狩猟民族としての生活から、エコツーリズムを主体とした生活への移行を決定した。

現在では国際的に有名なアマゾン大陸のロッジ「ナポ・ワイルドライフ・センター」の設立を通じて、アニャング族はこれまでの10年間でさまざまな収入を得ることができ、観光事業の余剰金は、コミュニティにおける教育、生産、社会、文化、組織、保護プロジェクトの資金として活用されている。

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

エコツーリズムへの移行により、アニャング族は伝統的な活動を守りつつ生活の質を向上させ、彼らの土地のユニークな生物多様性を保護することが可能となったのである。

アニャング族は、経済や観光、そして教育計画の策定や近代的で環境に配慮したインフラの建設において、成長を続けるという起業家的ビジョンをもち続けている。そして、より広範な成長計画の一部として〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉の建設など、外部機関からの支援を求めている。

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

伝統を失うことなく現代に適合する「文化融合型」の建築

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉は、新たなダイニング施設と、悪天候でもコミュニティが利用できる高台の展望台が求められたことから生まれた。

ロッジは沼地の中のわずかな固い地盤に位置しているため、地震や地盤の液状化、暴風雨の際には時速100kmを超える強風のような条件が、タワーの設計に影響を与えた。

高さ30mの展望台には、ダイニングルームとカルチャーセンターが併設され、地域の人々との参加型ワークショップで設計が行われた。このワークショップでは、ロッジが世界の観光業の中でより存在感を増すため、国内外の市場調査なども行った。

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

川を使い材料を運ぶなどの建設的な課題を克服するため、伝統的な知恵と現代的な材料を融合させた「文化融合型」の建築を提案した。

このプロセスにより、地元の木材と石油掘削用パイプをリサイクルした混合構造を有する、7階建て、床面積が1,200m²超のタワーが誕生した。複合柱により材料の使用量を大幅に削減することができ、アマゾンで最も高く、国内でも有数の高さを誇る木造タワーとなったのである。

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

リサイクルされた掘削パイプは、地震に強く、強風にも上手く適応する。屋根は20年以上の寿命を有する伝統的なトキヤワラとロイヤルヤシで葺かれており、各階で風景のパノラマビューを楽しむことができる。

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉の建設は、地域社会にとっての1つの成果であり、誇りでもある存在となっている。経済的な収入を得るだけでなく、このプロジェクトによってアニャングの子どもたちは、先祖代々の伝統を失うことなく現代に生きることが可能であることを知ることができたのである。

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

©︎ Torre del Napo

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

Diagram

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

Diagram

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

Map

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

Site Plan

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

Plan

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

Facade

〈ナポ・ワイルドライフ・センター・タワー〉

Section

以下、Caá Porá Arquitecturaのリリース(英文)です。

Architects: Caá Porá Arquitectura, Pinxcel and Kichwa Añangu Community
Engineer: Patricio Cevallos
Construction: Kichwa Añangu Community
Ph: Gabriel Moyer-Perez / Jose Luis Machado

In 1998, the Kichwa Añangu community, located in Yasuní National Park, decided to transition from agriculture and hunting to ecotourism. This transition allowed the community to improve their quality of life while preserving their traditional activities and protecting the unique biodiversity of their territory. Through the creation of the Napo Wildlife Center, an internationally renowned lodge in the continental Amazon, the community has generated various incomes over the last 10 years. The surplus from tourism operations has been used to finance educational, productive, social, cultural, organizational, and conservation projects in the community.

The Añangu community maintains an entrepreneurial vision to continue growing both economically, through tourism, and in the development of education plans and the construction of modern and environmentally responsible infrastructure. To this end, the community has sought the support of external actors for specific projects, such as the construction of the Napo Wildlife Center Tower, which is part of a broader growth plan.

The genesis of the Napo Wildlife Center tower was born out of the necessity for a new dining facility and an elevated observation tower that could be utilized by the community even during inclement weather. As the lodge is situated on a small patch of solid ground within a swamp, seismic activity and soil liquefaction are concerns that must be accounted for. Additionally, the design of the tower was also influenced by the high-velocity winds exceeding 100 km/h that gust through the treetops during storm events.

The new 30-meter-high lookout contains a dining room and a cultural center, which were designed in participatory workshops with all members of the community. During these workshops, a local and international market study was conducted with the aim of increasing the lodge’s presence in the global tourism imaginary. To overcome construction challenges, including transporting materials by river, new forms of construction were proposed based on cultural syncretism, which combined the ancestral knowledge of the community with modern materials. This process resulted in a tower of over 1,200 m2, on 7 floors, with a mixed structure of local wood and recycled oil drilling pipes. The composite columns allowed for a significant reduction in material use, resulting in the tallest wooden tower in the Ecuadorian Amazon and one of the tallest in the country. The recycled drilling pipes are earthquake-resistant and adapt well to strong winds. The roofs were made with traditional toquilla straw and royal palm weaves, which have a lifespan of over 20 years and offer panoramic views of the landscape on each level.

The construction of the Napo Wildlife Center Tower was an achievement and a source of pride for the community. In addition to providing economic income, the project allowed Añangu children to see that it is possible to live in modernity without losing their ancestral traditions.

「Napo Wildlife Center」Caá Porá Arquitectura 公式サイト

https://caaporarq.com/Napo-Wildlife-Center

 

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