CULTURE

自然と建築の融合を探る 岩場に掘られた住空間

ポルトガルを流れる小川のほとりに設計された〈ハウス・イン・リベイラ・ドス・モイニョス〉

CULTURE2024.12.17

© João Cepeda Architect / Rendergram

ポルトガルの川辺に建てられた〈ハウス・イン・リベイラ・ドス・モイニョス(House in Ribeira dos Moinhos)〉は、岩場の間を掘削し、地元の花崗岩で構築された住宅です。

自然に溶け込みつつも、そのシンプルで幾何学的な形態により存在感を示す、ポルトガルの建築家 ジョアン・セペダ(João Cepeda)が設計した建築です。

(以下、João Cepeda Architectから提供されたプレスキットのテキストの抄訳)

© João Cepeda Architect / Rendergram

山々の厳しさの中で、小さな小川が存在感を放っている。このパノラマから地元で切り出した花崗岩の大きなブロックが現れ、小さな家屋を形成している。

この家屋は、小川と同様に、自然との「融和」の瞬間を表している。

© João Cepeda Architect / Rendergram

建築の要素として、その「しっとりとした」空間はすべて、安らぎと郷愁の感覚を強調しており、それは地域の(ほとんど失われつつある)暖かな記憶への「哀歌」のようである。

浴室スペースと「岩のパティオ」、その後方にたたずむプライベートな寝室、東に面した広々としたリビングルーム、そして「リベイラ・ドス・モイニョス(ribeira dos Moinhos)」と呼ばれる古い水路がシンプルな住宅プログラムを完成させる。

© João Cepeda Architect / Rendergram

統合されつつも分割可能な空間は、ある意味では匿名で凡庸ではあるが、独自の個性をもつ環境となる。特定の用途に対する的確なデザインの答えであるが、オープンでありつつ漠然としたものである。

これらの前提はすべて「機能に従う形態」という原則ではなく、むしろ使用を可能にするデザイン的解答、そしてそこから解放されることのできるデザイン的解答を求めている。

結局のところ、歴史が示すように、「構成」と「機能性」は予測不可能なアイデンティティであると同時に、密接な関係にある。

© João Cepeda Architect / Rendergram

© João Cepeda Architect / Rendergram

アルヴァロ・シザは「自然は自然であり、建築は幾何学である」と述べ、ウンベルト・エーコは「我々は自然と調和し、それを完成させる形を見つけ出すことを強いられている。そして、自然は常に勝利する。しかし、それは我々の干渉に従属した勝利である」と述べた。ヘルベルト・ヘルダーはかつて、「空間は存在せず、それは時間の隠喩である」と書き記した。

この家はまさにその通りであり、ただの古い石であり、ただ時間によって加工されたものにすぎない。岩の崖に掘られたこの家は、わずかな生命が永遠のものとなり、無限に石化されたものとなる。

© João Cepeda Architect / Rendergram

© João Cepeda Architect / Rendergram

以下、João Cepeda Architectのリリース(英文)です。

Amidst a mountainous severity, a small stream river cuts its presence.
Time and climate – the ultimate artisans.
From this panorama, large blocks of sawn local granite appear, sheltering a small house.
Just like the river, this house represents a (brief) moment of “reconciliation” with Nature.
As a founding essence, all of its ‘humid’ spaces emphasize a feeling of refuge and nostalgia – like an ‘elegy’ to the memory of the region’s (almost lost) thermal theme.
The bathroom spaces and a ‘rocky patio’ complete a simple residential program: a private bedroom secluded to the rear, and a large living room facing east, and the (locally called) “ribeira dos Moinhos”.
The idea of ​​a unified but fragmentable space.
An environment with its own character – although, in a way, anonymous and banal.
A precise design answer for a specific use – albeit ‘open’ and (almost) ambiguous.
All these premises seek, not the (vulgar) principle of the ‘form that follows function’, but rather the design answer that allows for use, and that can (occasionally) be freed from it.
After all, as history shows us, ‘configuration’ and ‘functionality’ are as close a relationship as they are an unpredictable identity.
Álvaro Siza usually says that “Nature is Nature, architecture is geometry”.
As Umberto Eco tells us, “we are condemned to find forms that harmonize with Nature, completing it; and Nature always triumphs – but subjugated to our disturbances.”
This will (always) be the role of architecture.
As Herberto Helder once wrote, “space does not exist, it is a metaphor for time”.
This is (exactly) how this house is, just (old) stone – just crafted by time.
Excavated between the rocky cliffs, a fraction of life becomes perennial – (in)finitely petrified.

 

João Cepeda Architect 公式サイト
https://joaocepeda.com/project/house-in-ribeira-dos-moinhos/

 

【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン TECTURE NEWS LETTER

今すぐ登録!▶

ポルトガル 関連記事

CULTURE2023.01.10

800年の歴史を持つ教会 × ガラスと光の展示フレーム

スペースワーカーズが設計した 壮大な建造物に新たな情報を重ねた博物館〈パンテオ・ドス・アルメイダ〉
CULTURE2024.11.08

まちに開く「病院×庭園」 の医療・福祉センター

一般にも開放された2フロアの庭園を組み込む ポルトガルに設計された〈カルカヴェロス・ヘルス・コンプレックス〉
CULTURE2023.07.21

工場にまとわりつき新たな用途に適応させる屋外廊下

ポルトガルの食品製造施設の細長い空間を阻害することなく回遊性を高めた複合施設〈ファクトリー・リスボン〉
CULTURE2023.03.27

新旧要素で周囲に溶け込む 煙突がそびえる集合住宅

フラグメントスによる建材工場から集合住宅へのコンバージョン〈アントーニオ・グランジョ〉
  • TOP
  • CULTURE
  • ARCHITECTURE
  • ポルトガルを流れる小川のほとりに設計された、岩場に掘られた住空間〈ハウス・イン・リベイラ・ドス・モイニョス〉ジョアン・セペダ
【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン
お問い合わせ