CULTURE
[大阪・関西万博]主要・共用施設紹介_物販棟

大成建設一級建築士事務所が設計した〈物販棟〉

[大阪・関西万博]主要・共用施設紹介

CULTURE

DATA

  • 設計
    大成建設株式会社一級建築士事務所
  • エリア
    フューチャーライフゾーン
  • テーマ
    いつか海からごみがなくなることを願って


物販棟の見どころポイント!

  • 海洋プラスチックごみをアップサイクルした外装材「うみクル」
  • ⽔質を浄化する機能をもつ葦を活⽤したファイバー舗装「よしラグ」
  • 単管の接合部を美しく魅せるオリジナルクランプ

自分たちで集めた海洋プラスチックごみをアップサイクルした、仮設感のない建築

大成建設一級建築士事務所が企画、設計した〈物販棟〉は、⼤阪・関⻄万博〈EXPOアリーナ〉に併設する、イベントのグッズ販売を想定した物販施設である。

大成建設_物販棟

会場が海辺にあるごみの埋め⽴地であることに着⽬し、海洋プラスチックごみをアップサイクルした建築を提案。海ごみが美しい表情をもつ建築物に姿を変えて、世界中の人々がやってくる万博の地で、サーキュラーエコノミーの概念を広めることを目的としている。

建物基礎を含め、容易に組立・解体できるように設計しており、会期終了後は移設や家具へリサイクル活⽤を想定している。材料強度、⾵洞実験、暴露試験など、あらゆる試練を乗り越え、プロダクトのように純度が高く、大地と水で構成されている地球を凝縮したような、強いメッセージ性をもつ建築を目指した。

大成建設_物販棟

社員が対馬で拾い集めた海洋プラスチックごみ

〈物販棟〉の外装材はビーチクリーン活動で集めた海洋廃プラスチックを原料とし、社員がゴミを拾うことの意義を感じる体験にも価値を求めた。海からやってクル、風でクルっとまわる、明るい未来がやってクル。「うみクル」と名付けた外装材は100%海洋プラスチックごみから生成しており、全部で5,000枚、ペットボトル30,000本分のプラスチックを使用している。

大成建設_物販棟

魚の群れが青空を泳ぐような群造形が夏場の強い日差しを和らげ、木漏れ日空間を創出する。「うみクル」は、SUSワイヤーで吊るすことで風を受け流す機構とし、風洞実験により風向きに対して安定角を保持する形態を導き出した。風の流れにあわせて表情を変化させる、ゆっくりと呼吸する生き物のような建築である。

大成建設_物販棟

ステンレスを切削加⼯したスタイリッシュなオリジナルのクランプ

色鮮やかな青空と海の景色に調和する外装材を際立たせるために、構造体はリユースを前提にローコストでシンプルな単管を採⽤した。本計画では単管の接合部のディテールが重要なポイントであると捉え、ステンレスを切削加⼯したミニマムでスタイリッシュなオリジナルクランプ(Bクランプ)を開発し、仮設感のない建築を実現。複数のパーツを接合する構成とし、⼿作業で組み⽴て・解体が可能な仕組みとなっている。

大成建設_物販棟

淀川沿いの葦を使用した 葦チップの舗装

床は「よしラグ」と名付けた葦チップの舗装で仕上げた。葦は光合成で酸素を⽣成し、⼟や⽔中に含まれる窒素やリンを吸収して⽔を浄化する機能をもつが、枯れた葦を定期的に刈り取り葦の⾃⽣を促す必要がある。地産地消の取り組みとして、⼤阪の淀川に群⽣する鵜殿のヨシ原から原材料を調達し、舗装への適⽤を研究開発した。葦の⾊鮮やかな暖⾊が建築を引き⽴て、ラグのようにふかふかした感触が来場者に安らぎを与える。

いつか海からゴミがなくなることを願って。

大成建設_物販棟

大成建設_物販棟

大成建設_物販棟

建築DATA

所在地:大阪市此花区夢洲東1丁目
主な用途:物品販売業を営む店舗
敷地面積:706.10m²
建築面積:87.89m²
延床面積:87.89m²

[設計・施工]
設計:大成建設一級建築士事務所(勝又 洋、グエンクアン トゥアン、山田清香、郭 晧陽)
施工:大成建設 関西支店

[協力業者]
「うみクル」:対⾺CAPPA(実態調査・ビーチクリーン協力)、MUKA(海洋プラスチックごみの裁断・粉砕加工協力)、buoy(製作)、浜野製作所(外装下地⾦物製作)

「よしラグ」:⼤成ロテック(実験・施工)、アトリエMay(葦刈協力・材料調達)、日本新聞インキ(材料加工)

「単管クランプ」:浜野製作所(開発・組立協力)

 

テキスト・写真提供:大成建設(撮影:山内紀人)


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