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ポピュラスによるサッカーの聖地〈ウェンブリー・スタジアム〉の再設計、イギリス

無柱空間を生み出す133mの巨大アーチ

ポピュラスによるサッカーの聖地〈ウェンブリー・スタジアム〉の再設計

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世界的にさまざまなスタジアムを設計する建築事務所 ポピュラス(Populous)は、イギリス・ロンドン北西部のブレント自治区に位置する、イングランドが誇る国立競技場〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉の再設計を行いました。

旧スタジアムの象徴「ツインタワー」に代わり、視界を遮る柱を不要にする高さ133mの世界最長のシングルスパン屋根支持構造「アーチ」を最も特徴的な要素として備えています。

注目ポイント

  • 7,000トンに及ぶ屋根を支える世界最長シングルスパン構造「アーチ」
  • 環境と快適性を両立する可動式屋根
  • 旧スタジアムの「記憶」を継承する音響設計
  • 試合日以外にも稼働するホスピタリティ空間の整備

(以下、POPULOUSから提供されたプレスキットのテキストの抄訳)

〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉

©︎ POPULOUS

次世代の施設と”魔法”の継承

イングランドが誇る国立競技場を再設計するにあたっての課題は、次世代の選手、演者、観客に必要な最先端の施設を備える一方で、ウェンブリーを特別な場所にしてきた“魔法”のような魅力を守り、むしろ新たに生み出す必要があった。

世界に名を轟かせた旧スタジアムの伝説

旧ウェンブリー・スタジアムは、世界に名を知られた象徴的な存在であった。1923年以降、FAカップ(1871年に創設されたイングランドで行われるサッカーのカップ戦)の決勝は、その象徴となった”ツインタワー”の下で開催され、1948年にはオリンピックと史上初のパラリンピックが行われた。

1966年には、イングランド男子サッカー代表が初めて、そして唯一となるFIFAワールドカップ優勝を果たし、スタジアムの名はさらに伝説へと昇華していったのである。そして1985年、音楽史に残るライブエイドでは、世界人口の40%以上がテレビを通してそのステージに釘付けとなった。

〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉

©︎ POPULOUS

比類なき歴史の”後継”をデザインする使命

こうした比類なき歴史を背負った聖地の”後継”をデザインするというのは、POPULOUSに課された並大抵ではない使命であった。近代スポーツに求められる世界水準の設備を備えることはもちろん、何より重要であったのは、訪れる人々の心に旧ウェンブリーが刻んできたあの感動や高揚感を、新しいスタジアムにも宿らせることである。

新しいウェンブリーは、単なる代替施設ではなく、過去の記憶を受け継ぎながら、未来に向けて新たな“物語”を紡ぐ場所でなければならなかった。

〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉

©︎ POPULOUS

ツインタワーに替わる新たなアイコン「アーチ」

旧ウェンブリーには、”ツインタワー”という象徴があった。その後継となる新たなアイコンとして設計されたのが、高さ133mに及ぶ世界最長のシングルスパン屋根支持構造である「アーチ」である。しかし、アーチの役割は見た目の象徴性にとどまらない。7,000トンに及ぶ屋根を支え、視界を妨げる柱を不要にしているのである。

屋根は南側が可動式となっており、イベントの合間には開放することで、ピッチにより多くの光と風を届けられるようになっている。一方、試合や公演の際には閉じることで観客を雨風から守ることができる。

スタジアムは一体型のシーティングボウル(観客席)設計で、段階的に広がる客席は9万人を収容する。旧ウェンブリーのロイヤルボックスよりも広い足元スペースが確保されている。さらに、屋根とボウルはともに音響面でも精密に設計されており、あの有名な「ウェンブリーの歓声」を再現し、観客と選手の双方が、特別な高揚感と臨場感を味わえる空間となるように造られている。

〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉

©︎ POPULOUS

多目的ホスピタリティと地域への波及効果

イングランド・フットボールの国内外最大規模の試合が行われるこのスタジアムには、試合前に1万人が食事できるさまざまなホスピタリティ空間が整備されている。これらの施設は試合のない日にも利用でき、カンファレンスやディナー、その他のイベントが年間を通して開催できる多目的な会場として機能している。

新スタジアムの誕生は、ブレント・ロンドン自治区(イギリスのロンドン北西部にあるロンドン自治区)にも活性化をもたらした。試合日の来場者増に対応するために強化された公共交通網は、地域住民や地元企業にも恩恵を広くもたらしている。また、ウェンブリー・スタジアムの有名なツアーを目的に、1日あたり最大1,800人がこのエリアを訪れている。

〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉

©︎ POPULOUS

FIFAワールドカップで3度の優勝を果たした、元ブラジル代表のペレは次のように語る。

「ウェンブリーは、フットボールの大聖堂である。フットボールの首都であり、フットボールの心臓そのものである。」

開業以来、FAカップ決勝はウェンブリーへと戻ってきた。スタジアムではこれまでに2度のUEFAチャンピオンズリーグ決勝を開催し、3回目は2024年に予定されている。また、2020年にはUEFA欧州男子サッカー選手権、2022年のUEFA欧州女子サッカー選手権の決勝戦もすべてここで開催された。

サッカー以外にも、2007年以降続く満員のNFLロンドンゲーム、毎年恒例のラグビーリーグ・チャレンジカップ決勝、そして、フリートウッド・マック、ビヨンセ、ザ・フー、ブラーといった伝説的アーティストのコンサートなど、数々のビッグイベントが開催されている。

〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉〈ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)〉

©︎ POPULOUS

POPULOUS 公式サイト
https://populous.com

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