横浜市公共建築100周年事業の1つとして、横浜市建築局が主催した「根岸森林公園トイレ設計コンペ」の審査結果が、9月1日に横浜市のホームページにて発表されました。
本設計コンペでは、次世代の設計人材の発掘や育成を目的に、学生を含めた40歳以下の設計者が応募対象となり、4月1日の公示当初から注目を集めました(募集概要はこちら)。
参加の意向を示したのは504組(うち代表者が学生のもの102)、応募者数は267組(うち代表者が学生のもの51)。一次審査で上位15組が選出され、このうちの5組が二次評価を決定する二次評価対象者(ファイナリスト)に選出されています。
この5組に対して、8月22日に横浜市内にて評価委員によるヒアリングが公開で実施され、最終審査を経て、設計業務委託者(最優秀賞)が決定しています(以下、複数名での応募組の氏名表記は主催者発表順)。
最優秀賞に選出されたのは、張 昊と甘粕敦彦の両氏による提案「丘の小道」。
以下、次点の優秀賞(1点)と入賞(3点)に選ばれた二次評価対象者と、提案作品のイメージパースは以下の通りです(4桁の数字は登録番号)。
最優秀賞:0079「丘の小道」 張 昊、甘粕敦彦
優秀賞:0347「樹々を包み込むトイレ」 山川尚哉
入賞:0232「森林レストルーム」 桐 圭佑
入賞:0293「大地とつながる木レンガの風突トイレ」 中倉康介、増田伸也
入賞:0445「木と土のパーゴラ」 小野寺匠吾
※上記は横浜市発表の表記に準じる
0079「丘の小道」 張 昊、甘粕敦彦
評価委員コメントより:
最優秀賞の「丘の小道」は、根岸森林公園の特徴である丘の起伏をなぞるような薄いアーチ状の大屋根と、トイレと公園をつなぐ草花ゾーンが特徴で、大屋根がトイレブースやベンチを緩やかにつなぎ、日射を遮りつつ風通しを確保しています。トイレへの動線は誰もがアクセスしやすいスロープで、使う人の気持ちを考えており、これから長く愛されることが期待できる、優しい印象の作品です。
現時点の案では、個室ブースの大きさや動線に課題があります。また、薄く美しい印象の大屋根は、今後、構造設計を進めていく中で、案のイメージを損なわないための工夫が必要です。課題はありますが、公園のランドスケープと連続した風景として魅力ある提案であること、実現性の高い提案であることが決め手となりました。
0347「樹々を包み込むトイレ」 山川尚哉
評価委員コメントより:
優秀賞の「樹々を包み込むトイレ」は、トイレブースが広く、ブース内などに半屋外空間があり、トイレ内に樹木が植えられた開放的な空間が最大の特徴です。
5作品の中で唯一、トイレブース自体の提案をしており、今後の公園トイレとして斬新な作品でした。
一方で、屋根が無いことによる雨天時の使用や、ブース内に樹木や土があることによるメンテナンス性について、透過性のある屋根や壁の設置など、実現の可能性をめぐり議論を重ねましたが、維持管理上の課題を払拭しきることができず、次点という結果になりました。
0232「森林レストルーム」 桐 圭佑
0293「大地とつながる木レンガの風突トイレ」 中倉康介、増田伸也
0445「木と土のパーゴラ」 小野寺匠吾
審査を担当した、建築家の小泉雅生、曽我部昌史、中川エリカの3氏それぞれの総評と、佳作に選出された10組10作品も、以下・横浜市のホームページにて公表されています。
横浜市公共建築100周年記念 設計コンペ(根岸森林公園トイレ)審査結果発表
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kenchiku/kokyokenchiku/competition2022.html#6C162
※本稿掲載の応募作品の画像およびテキストは、予め主催者の許可を得て、審査結果発表ページに公表されているものを使用しています。
コンペ概要
対象となる根岸森林公園は、日本初の洋式競馬が行われたサイト。かつては東洋一の規模を誇る競馬場がありました。戦後の一時期、米軍に接収され、解除後に、なだらかな地形を生かし、多くの樹木が植わった森林公園として開園しました。
大きな芝生広場が魅力であり、休日には市民がくつろぎ、とりわけ桜の開花時期には多くの人で賑わいます。横浜市では、この芝生広場に面した位置に、誰もが利用しやすく、周辺環境と調和したトイレの建設を計画しています。
利便性を高めると共に、より魅力ある公園となることを目指し、サイトに相応しい設計案を広く募集し、最も優れた設計案を公募により選出するものです。根岸森林公園トイレ新築工事に伴う設計業務委託設計コンペ
対象建築物:根岸森林公園のトイレ
根岸森林公園 ホームページ
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/park/negishi/参加資格:1981年(昭和56)年4月2日以降に生まれた者(40歳以下)で、建築士、または建築士を志す(学生を含む)者
提出物:A1用紙 1枚(横使い)1部、左記のPDFデータ(10MB以内)
評価委員(敬称略)
小泉雅生(建築家/東京都立大学教授)
曽我部昌史(建築家/神奈川大学教授)
中川エリカ(建築家/中川エリカ建築設計事務所代表)
横浜市環境創造局公園緑地部長
横浜市建築局公共建築部長スケジュール
実施要項配布開始:2022年(令和4年)4月1日(金)
参加資格に関する質問受付:5月2日(月)9時~10日(火)17時
参加資格に関する質問回答:5月13日(金)
参加意向申出登録:5月16日(月)9時~27日(金)17時
参加資格確認結果通知:6月3日(金)までに通知
設計条件に関する質問受付:6月6日(月)9時~9日(木)17時
設計条件に関する質問回答:6月17日(金)
設計案受付期間
送付の場合:7月7日(金)~15日(金)17時必着
持参の場合:7月13日(水)~15日(金)各日13時~17時
一次評価結果公表:8月4日(木)(予定)
二次評価(公開ヒアリング):8月22日(月)午後(関内ホール 大ホールにて)
受託候補者の公表:9月上旬(予定)※そのほか、詳細については、横浜市発表の実施要項(以下のURL)を参照
主催:横浜市建築局
事務局:横浜市建築局 公共建築部 営繕企画課コンペ詳細
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kenchiku/kokyokenchiku/competition2022.html横浜市公共建築100周年事業プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000883.000013670.html