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"時代より先に変われ。"「Under 35 Architects exhibition 2023」

2023年Gold Medal賞はKovaleva Alecsandra+佐藤敬の〈ふるさとの家〉が受賞[会場レポート]

「Under 35 Architects exhibition 2023」開催

これからの活躍が期待される若い世代の建築家に発表の機会を与え、社会に対して建築の可能性を提示するような展示・発表を行うことを目的に開催されている「Under 35 Architects exhibition」が、今年も大阪にて開催されています。主催は、建築家の平沼孝啓氏が代表理事を務める、特定非営利活動法人(NPO)アートアンドアーキテクトフェスタ(Art and Architect Festa: AAF)。

2023年10月20日(金)より10月30日(月)まで、大阪駅前・うめきたシップホールの会場にて、模型などを展示するほか、関係者によるギャラリートークなども行われています。

“時代より先に変われ。”「Under 35 Architects exhibition 2023」-35歳以下の若手建築家による選抜展、大阪にて開催 -(2023年9月20日掲載)

展覧会レポート

大阪駅前・うめきたシップホールの会場にて、出展者による模型などの展示が行われています。21日(土)には、ゲスト審査員も会場を訪れ、模型を前に出展者からプロジェクトの説明を受けながら見学しました。各出展者ともに、実寸大模型や映像、素材実験結果の一覧を並べるなど、趣向を凝らした展示が行われています。

〈ふるさとの家〉展示(photo: Satoshi Shigeta)

〈二重らせんのビル〉展示(photo: Satoshi Shigeta)

〈ハニヤスの家〉展示(photo: TECTURE MAG)

〈Poiesis – 3つの素材と技術-〉展示(photo: TECTURE MAG)

展覧会場の風景(photo: AAF)

〈建築の再演〉展示と展覧会場風景(photo: TECTURE MAG)

審査員の展覧会場見学の様子(photo: AAF)

出展者コメントと作品概要

大島 碧+小松大祐〈二重らせんのビル〉

建築をつくりあげる際に、2人の認識のズレを埋めるためにスタディしたスタディを展示。〈二重らせんのビル〉は東京の狭小な事務所ビルに、人の拠り所となる「小さな風景」をつくろうと試みた。外部環境と呼応し、変化し続ける環境をつくることで、人が能動的に居場所を見つけられる建築をつくりたいと考えている。

大野 宏〈Poiesis -3つの素材と技術-〉

竹・葦・石の「素材」に、伝統的な職人の「技術」と新たなデジタル「技術」を織り交ぜたプロジェクトを展示。studio on_siteは、土地の「もの」と「ひと」で暮らしの中から、地球の一部となる建築をつくろうとしている。現地の「素材」や「技術」を再構成し、人の手によって使い、そして直され、人と共に歳をとる「いきもの」のような建築を目指している。

小田切駿+瀬尾憲司+渡辺瑞帆〈建築の再演〉

バックグラウンドが異なる3人のコラボレーションにより、「建築は日々動き続ける事象の一過程の姿であること」を映像、模型、ダンスを通じて展示。建築を展示する時、ただ形だけを再現するのではなく、意図していた空間性や関係性を、その場に合わせて再構築しながら出現させ、身体性と軌道を持ち込むことによって、遠く離れた土地にも建築を建築を立ち表すことができるのではないだろうかと考え、それを建築の「再演」として試みた。

Aleksandra Kovaleva+佐藤 敬〈ふるさとの家〉(*2023年ゴールドメダル受賞者)

友人の商店併設の改修はイラストで、両親の〈ふるさとの家〉は空間体験できるスケールで模型を展示。〈ふるさとの家〉は、「家」と「里」という近代以降離れ離れになりがちなこの2つの言葉を軸に、住居という極めて初源的な建築の姿を通じて、昨年示した「繕う」という概念を建築として立ち上げた。会場でスタディ、議論またスタディ。その準備としてのスタディを展示している。

佐々木 慧〈非建築をめざして〉

廃棄されてしまう細い丸太を活用し、会期後の活用も視野に入れたプロジェクト展示。「非建築」的な建築はどのようなものか。ヒエラルキーから解放された、枠組みと枠組みの隙間にある関係性そのもののような、自由で寛容ななにか。建築然としない建築、「非建築」を目指して、試行錯誤を繰り返している。

福留 愛〈南城の家〉

建築でたいせつにしたいことを18の項目にまとめ、実践的なスタディとプロジェクトを展示。図面で書いていた柱を事務所の床に実寸で書いただけで、もっと大きくしたい、小さくしたいなど、話し合わずとも寸法を決定できる瞬間がある。今回の展示では、沖縄に計画中の住宅について、実寸の柱とその寸法を展示することで、私たちのからだを通じた実践的なスタディを試みる。

桝永絵理子〈ハニヤスの家〉

さまざま土に釉薬をかけた色味の実験試みた結果とともに、土壁の模型を展示。陶芸家の両親が住む鎌倉の家に建築家の娘夫婦が移住する計画。陶芸の技術を用いた新しい景色を持つ土壁の居室を母屋に増築することで構造的に支えつつ、母屋はスケルトンにして共有の作業場とすることで、生活と創作が渾然一体となった原初の住処を目指す。

U-35 記念シンポジウム

10月21日(土)に行われた記念シンポジウムでは、出展者から5分間のプレゼンテーションと10分間の質疑応答がそれぞれ行われました。プレゼンテーションが終了したのちに、ゲスト審査員と出展者たちとのディスカッションが行われました。

記念シンポジウムの様子(photo: AAF)

各審査員からそれぞれの出展者へ質問が投げかけられ、白熱した意見が交換が行われました。

五十嵐淳氏からは、「コンセプトやアプローチはわかるが、できたものを見ると、いつかどこかで見たようなものになっている気がする。情報や教育・育成が充実してしまった今の時代にありがちになっているのかもしれない」と厳しい意見がでた一方で、永山祐子氏からは、「一度つかんだものを手放さない。実現できなかったので”ダメだった”とあきらめたり、評価をされなかったということで積み上げてきたものやアイディアを捨てることはない。持ち続けていれば、いつかそれが形になる。自身の感覚を大切にして、つかんだものを昇華させることを私も大切にしているし、みなさんも心掛けてほしい」と今後の設計活動を行う上でエールが贈られました。藤本壮介氏からは「現在は産業革命以来の大きな時代の転換点にきている。設計をしていて、その輪郭は見えそうでも、実態をつかめきれていない。その混沌としたもがきのような、エネルギーをみなさんのプレゼンからも感じた」とコメントがありました。

そして最後は今年の審査委員長である平沼孝啓氏により、「Under 35 Architects exhibition 2023Gold Medal 賞 」が選出され、「作品もプレゼンテーションも秀逸であり、また初めて展示会場を活用したスケールを体感できる展示を試みた。建築の展示でも工夫をした点も評価しました。」コメントとともに、Aleksandra Kovaleva+佐藤敬〈ふるさとの家〉へGold Medal賞が授与されました。

2023年Gold Medal賞受賞者のAleksandra Kovaleva+佐藤敬(photo: AAF)

Aleksandra Kovaleva+佐藤敬は、「昨年は悔しい思いをしながら、その想いを胸に建築に向き合ってきました。今回、他の出展者と展示会の準備前に行った座談会もとても刺激になった。」というコメントともに、受賞の喜びが語られました。

ゲスト審査員の集合写真(photo: AAF)

ゲスト審査員の建築家・建築史家

建築史家:五十嵐太郎、倉方俊輔
建築家:芦澤竜一、五十嵐淳、谷尻 誠、永山祐子、平田晃久、平沼孝啓(2023年審査委員長)、藤本壮介、吉村靖孝
(※50音順 敬称略)

 

(Top Photo: Satoshi Shigeta)


「Under 35 Architects exhibition 2023」概要

会期:2023年10月20日(金)~10月30日(月)※期間中無休
会場:うめきたシップホール
所在地:大阪府大阪市北区大深町4-1 グランフロント大阪 うめきたシップ 2Fうめきた広場(Google Map
開場時間:12:00-20:00(※最終入場は各日とも閉場30分前まで、最終日のみ17:00閉場)
入場料金:1,000円

AAF「U-35 2022」会場MAP

会場マップ

主催:特定非営利活動法人アートアンドアーキテクトフェスタ(AAF)
共催:一般社団法人グランフロント大阪TMO、一般社団法人ナレッジキャピタル
特別後援:文化庁、大阪府、大阪市|EXPO2025、大阪市観光局、毎日新聞社
助成:公益財団法人朝日新聞文化財団、公益財団法人大阪コミュニティ財団、独立行政法人日本芸術文化振興会
連携協力:西日本旅客鉄道、阪急電鉄、Osaka Metro
展示協力:インターオフィス、カッシーナ・イクスシー、観察の樹、キヤノン、ソフトバンク、パシフィックハウステクスタイル、目黒工芸
協力:アジア太平洋トレードセンター、リビングデザインセンターOZONE、財団法人大阪デザインセンター、公益財団法人大阪市産業局
後援:一般社団法人日本建築学会、一般社団法人日本建築士事務所協会連合会、公益財団法人日本建築士会連合会、公益財団法人日本建築家協会、一般社団法人日本建築協会
特別協賛:ユニオン、ダイキン工業、シェルター、SANEI、ケイミュー、山下PMC
連携協賛:オカムラ、積水ハウス、パナソニック
協賛:丹青社、乃村工藝社

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