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久保寛子展「鉄骨のゴッデス」 銀座・ポーラ ミュージアム アネックスにて開催

ブルーシートや鉄、コンクリートなどを用いて創り出される農耕や偶像をテーマにした彫刻作品の数々

東京・銀座1丁目のポーラ ミュージアム アネックスにて、現代美術家の久保寛子氏の展覧会が4月26日より開催されています。

久保氏は、建築関係者には馴染みの深い素材であるブルーシートや防風ネット、ワイヤーメッシュなどの鉄筋、コンクリートなどを用いて、”神像”や”土器”などを創り出すアーティストです。農耕や偶像をテーマに、古来日常にあった祈りのかたちを現代に置き換えた彫刻作品を発表しています。
近年では、「瀬戸内国際芸術祭2016」や「さいたま国際芸術祭2020」などで、その土地に呼応したダイナミックなインスタレーション作品を発表し、注目を集めました。

久保寛子展「鉄骨のゴッデス」

〈泥足〉2015-16年 360×620×790cm 鉄、防風ネット

先史芸術や文化人類学の学説などを着想源に創り出される久保氏の作品は、厳しい自然に耐えながら営みを続ける人びとの心の支えをモチーフに、ポジティブな生のエネルギーを携えています。それは自然災害など「いのち」を考える岐路に立つことが多い昨今、心の拠り所を模索する私たちの”心の用”に応えてくれるようです。

本展では、防風ネットを使った新作〈鉄骨のゴッデス〉を含む、約60点が展示されています(本稿1枚目の作品画像:〈Steel framed Goddess〉2024年制作、180×172×74cm、鉄および防風ネット)。コンクリートで出来たアミュレット(魔除け)やブルーシート製の土器など、数々の立体作品などとともに、ビル1階のウィンドウでも平面作品が展示されています。

久保寛子展「鉄骨のゴッデス」

〈Street Amulets – Hand / ストリートアミュレット 手〉2022年 60×70mm セメント、真鍮

ステートメント

「鉄骨のゴッデス」

2024年の元日、大きな地震が能登半島を襲いました。自然災害を目の当たりにするたび、私たちは自らが築いてきたものや、自ら自身の脆弱性を痛感します。高層ビルや地下鉄、人工衛星などの技術も、先史時代の土器や石像、洞窟壁画と同じく、厳しい自然に対抗し、適応し、祈りながら生きてきた人類の生の証です。

柳宗悦は民藝論を通じて、民衆が生み出す実用品にこそ美が宿ると説きました。すなわち「用の美」です。それに対抗するものは、「用」から離れて「美」のために作られた美術品や、「利」のために生み出された工業品であると言います。

宗教美術や民俗芸術も、人間の精神的な必要性、いわば「心の用」から生まれた民藝です。

私が作家としてこれらを手本とする理由は、現代の合理性では計り知れない、豊かな神話的思考の具現であり、今もなおヒトはこのような思考を必要としていると感じるからです。

神話や民藝を失いつつある現代。効率化された工業製品の中に、ゴッデス(女神)を見出すことは可能でしょうか。

私は身の回りにある素材から道具や偶像を生み出してきた古人に倣い、いま身近にあるもの、例えばブルーシートや軍手やワイヤーメッシュを使って作品を作ります。それらが新しい神話の断片となり、女神像の身体となることを信じて。

2024
久保寛子


作家プロフィール

久保寛子(くぼ ひろこ)
1987年広島県生まれ。テキサスクリスチャン大学美術修士課程修了。先史芸術や民族芸術、文化人類学の学説のリサーチをベースに、身の回りの素材を用いて彫刻作品を制作する。
近年の主な展覧会に「GO FOR KOGEI 物質的想像力と物語の縁起―マテリアル、データ、ファンタジー」(2023年 環水公園、富山県)、「浪漫台 三線藝術季」(2023年 台湾)などがある。
広島文化新人賞(2022年)、六甲ミーツ・アート公募大賞(2017年)受賞。
KAMU KANAZAWA(石川)、おおさか創造千島財団(大阪)、株式会社 IZAK(富山)などに大型作品が収蔵されている。

Hiroko Kubo Website
https://hirokokubo.net/

 

久保寛子展「鉄骨のゴッデス」

久保寛子展「鉄骨のゴッデス」開催概要

会期:2024年4月26日(金)〜6月9日(日) ※会期中無休
開館時間:11:00-19:00 (入場は18:30まで)
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
所在地:東京都中央区銀座1丁目7-7 ポーラ銀座ビル3階(Google Map
入場料:無料
主催:ポーラ・オルビスホールディングス

ポーラ ミュージアム アネックス ウェブサイト
https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/

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