2024年9月24日初掲、9月30日会場写真追加
建築家の坂 茂(ばん しげる)氏が、英国・ロンドンや大分など国内外で開催している企画展「ペーパー・サンクチュアリ -ウクライナ難民の現実と詩-」が、9月20日より東京・豊洲の芝浦工業大学(芝浦工大)豊洲キャンパスに巡回、10月20日まで開催されます。
本展は、避難所で使用することを主たる目的に坂氏が考案・設計した、紙管と布の間仕切りによる仮設パーティションシステム「PPS(Paper Partition System)」が、ポーランド、スロバキア、フランスに避難した人々が仮に住まう場でどのように使用されているのかを、実際に「PPS」を用いて、坂氏が「Paper Sanctuary(ペーパー・サンクチュアリ)」と名付けた建築空間で紹介しています。
会場では、ウクライナ出身の作家らによる写真作品などが展示されているほか、会期終盤には、芝浦工大の学生による作品も展示される予定とのこと。
坂 茂氏 プロフィール
1957年東京生まれ。米国のクーパー・ユニオン(The Cooper Union for the Advancement of Science and Art)建築学部で建築を学んだのち、1985年に坂茂建築設計を設立。現在は東京・パリ・ニューヨークに拠点を構える。1995年災害支援活動団体 ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)を設立。木材による革新的な建築や、紙管を用いた災害時の復興住宅・難民支援システムの設計などで知られる。
主な作品に〈大分県立美術館〉〈静岡県富士山世界遺産センター〉〈ラ・セーヌ・ミュジカル〉などがある。主な受賞に、プリツカー建築賞(2014年)、フランス芸術文化勲章コマンドゥール(2014年)、マザー・テレサ社会正義賞(2017年)、紫綬褒章(2017年)、アストゥリアス皇太子賞平和部門賞(2022年)など多数。慶應義塾大学環境情報学部教授(2001-2008年)、京都芸術大学大学院芸術研究科教授(2011-)、2023年4月より芝浦工業大学特別招聘教授。Shigeru Ban Architects Website
https://shigerubanarchitects.com/ja/
メッセージ
「我々建築家は、歴史的に見ても政治力や財力を持つ特権階級の人々の仕事をすることが多いと言えます。政治力も財力も目に見えないので、建築家にモニュメンタルな建物をつくらせ、それにより自分の力を社会に示す、建築家はそんな存在で、現代でも同じです。
地震では多くの人が亡くなります。でも地震自体で人は亡くなるのではなく、建物が崩れて人は亡くなるのです。つまりそれは、建築家の責任なのです。ところが震災後、街が復興する時、建築家には多くの新たな仕事がきます。しかし街が復興する前に、被災者は避難所や仮設住宅で、悲惨な住環境に置かれます。そのような住環境を改善するのも、建築家の役割と考え、私は1994年のルワンダ難民キャンプのシェルター開発から、今年で30年間世界中の被災地でボランティア活動をしてきました。
本展覧会では、災害時の避難所で家族ごとのプライバシーを守るために考案し、2022年2月24日からのロシアによるウクライナ侵攻により近隣国(ポーランド、スロバキア、フランス)へ避難した難民のために設置した紙の間仕切りシステム・PPS(Paper Partition System)を使い、難民の方々の詩と写真を展示します。彼女たち(老人・子供以外の男性は出国できない)の境遇を知ってもらい、我々日本人は世界を平和にしなければ、日本の平和はないのだ、と言うことを知ってもらいたいと思います。
展示の最後には、本学学生も加わった支援活動を含む世界中の災害支援活動やボランティア活動と両立をして設計する建築作品も展示します。」(坂 茂)
会期:2024年9月20日(金)~10月20日(日) 10:00-17:00(最終入場16:30)
会場:芝浦工業大学 豊洲キャンパス 有元史郎記念校友会館交流プラザ
入場料:無料
主催:芝浦工業大学 建築学部
共催:坂茂建築設計、Voluntary Architects’ Network(VAN)
企画:Clare Farrow Studio
後援:江東区、一般社団法人日本建築学会、一般社団法人東京建築士会、公益社団法人日本建築家協会、日刊工業新聞社、日刊建設通信新聞社、株式会社日刊建設工業新聞社、新建築社、日経クロステック / 日経アーキテクチュア、芝浦工業大学後援会、芝浦工業大学校友会
展覧会詳細
https://www.shibaura-it.ac.jp/headline/detail_event/20240920-7070-001.html
キャンパス内にある坂氏が手がけたカフェ・レストラン