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文化庁国立近現代建築資料館「日本の万国博覧会1970-2005」展

EXPO2025に受け継がれる、EXPO’70、海洋博、つくば科学万博、花博、愛知万博での建築家の挑戦を、貴重な手書き図面などから知る

東京・湯島にある文化庁国立近現代建築資料館にて、「日本の万国博覧会 1970-2005」が3月8日より開催されます。

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博 / EXPO2025)の開幕まで、あと約1カ月。日本国内でこれまでに開催された国際的な博覧会は、1970年日本万国博覧会(大阪 / 通称:大阪万博またはEXPO’70)を皮切りに、1975年沖縄国際海洋博覧会(沖縄 / 通称:海洋博)、1985年国際科学技術博覧会(茨城 / 通称:つくば科学万博)、1990年国際花と緑の博覧会(大阪 / 通称:花博)、2005年の日本国際博覧会(愛知 / 通称:愛・地球博または愛知万博)があり、今春のEXPO2025と同様、建築家が参画して施設の設計などを担当しました。

本展は、この1970年から2005年のあいだに開催された5つの国際博覧会にあらためてスポットをあてるもので、文化庁国立近現代建築資料館が所蔵する図面や企画段階の資料などの展示を通して、5回の国際博覧会それぞれの会場計画、施設で試みられた建築・デザインの創意工夫を紹介するものです。会期の前半と後半で一部の展示(EXPO’70の資料)で入れ替えが行われます。

主催者の文化庁国立近現代建築資料館の発表によれば、万博建築を紹介したこれまでの展覧会は写真展示が多く、本展のような原図の公開は貴重とのこと。館蔵資料約20万点の中から、初公開を含む、日本の万国博覧会に関連する資料が一挙に公開されるのが本展の大きな見どころです。また会期中、関連シンポジウムとガイドツアーも行われます(ともに予約不要、詳細は同館ウェブサイトを参照)。

 

開催の背景

万国博覧会とは、もともとは参加各国の優れた物品を集めて展示する展覧会として19世紀に始まりました(現在では、1928年に成立した国際博覧会条約 / BIE条約に基づいて行わる、複数の国が参加する博覧会を指します。当初は国の維新をかけたものでしたが、今日では、さまざまなイベント、アミューズメントとして人々が楽しめるよう、プレゼンテーションが多様化しています。

万博のために建設されるパビリオンなどの建築物は、用途としては、人々を招き入れ、展示品を陳列する”器”である一方で、その当時の最先端技術を用いた、実験と挑戦の場ともなっていました。例えば、1851年に英国・ロンドンで開催された第1回万国博覧会における代表的な建築物・クリスタル・パレス(水晶宮)は、鉄骨造の外壁全体をガラスで覆うという斬新なデザイン。1889年のパリ万博では、会場のゲートおよび展望台として建設された〈エッフェル塔〉は、当時はまだ珍しかった鉄骨造による巨大建築物でした。当時は不評だったという鉄骨の塔は、今日ではフランス・パリを象徴するランドマークの1つとなっています。

万博会場内の諸施設は、そのほとんどが会期中限定の使用を前提としていたこともあり、その後の建築の進化に影響を与えるようなさまざまなデザインの実験が行われました。本展では、図面など当時の資料をもとに、建築家らによる挑戦の軌跡を紐解いていきます。

(本展プレスリリースをもとに編集部で一部追補)

 

第1部「EXPO’70 技術・デザイン・芸術の融合」

第1部では、過去5回の万博の概要について、とりわけ1970年の大阪万博(EXPO’70)を中心に紹介します。
丹下健三が手がけたことで知られる「大屋根・お祭り広場」など、代表的な施設の図面などを通して、技術・デザイン・芸術の融合に向けた創造的な挑戦と努力の痕跡を確認します。

Section 1.シンボルゾーン
主な展示:

丹下健三 基幹施設計画 大屋根・お祭り広場
菊竹清訓 エキスポタワー
菊竹清訓 南広場
大髙正人 メインゲート

Section 2.パビリオン
主な展示:

前川國男 自動車館
前川國男 鉄鋼館
坂倉準三 電力館
村田 豊 電力館水上劇場
村田 豊 富士グループパビリオン
大谷幸夫 住友童話館

文化庁国立近現代建築資料館 企画展「日本の万国博覧会 1970-2005」

大髙正人〈大阪万博 メインゲート〉平面図(1970年)

文化庁国立近現代建築資料館 企画展「日本の万国博覧会 1970-2005」

菊竹清訓〈大阪万博 エキスポタワー広場 S3棟〉一般図 構造図(1969年)

文化庁国立近現代建築資料館 企画展「日本の万国博覧会 1970-2005」

前川國男〈大阪万博 自動車館 第2パビリオン〉詳細図(1968年)

文化庁国立近現代建築資料館 企画展「日本の万国博覧会 1970-2005」

坂倉準三〈大阪万博 電力館〉南立面図(1968年)

文化庁国立近現代建築資料館 企画展「日本の万国博覧会 1970-2005」

大谷幸夫〈大阪万博 住友童話館〉北側立面図(1970年)

文化庁国立近現代建築資料館 企画展「日本の万国博覧会 1970-2005」

村田 豊〈大阪万博 富士グループパビリオン〉断面透視図(1970年)

第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」

第2部では、上記・大阪万博(EXPO’70)の展示替えを一部で行うほか、ほかの4つの博覧会に関する収蔵図面と資料が展示されます。
EXPO’70でみられたの技術を前面に出した総合テーマから、人間の居住、海や山などの自然、さらに地球の環境への配慮へと総合テーマが変化し、それに伴い、博覧会の会場計画の手法や建築デザインも変化していった経緯などを辿っていきます。

Section 1.1970年「大阪万博 / EXPO’70」
主な展示:第1部展示から入れ替えた資料

Section 2.1975年「沖縄海洋博」
主な展示
菊竹清訓 アクアポリス
村田 豊 芙蓉グループパビリオン
木村俊彦 水族館 構造設計資料(※建築設計:槇 文彦)

文化庁国立近現代建築資料館 企画展「日本の万国博覧会 1970-2005」

村田 豊〈沖縄海洋博 芙蓉グループパビリオン〉断面図(1974年)

Section 3.1985年「つくば科学万博」
主な展示

大髙正人 エキスポホール
大髙正人 外国館
菊竹清訓 外国館
高橋靗一(※ていの字は青偏に光)+第一工房 迎賓館
関連資料:川添 登 会場計画資料

文化庁国立近現代建築資料館 企画展「日本の万国博覧会 1970-2005」

大髙正人〈つくば科学万博 Fブロック〉全体アクソノメトリック図(1985年)

Section 4.1990年「花博」
主な展示:

建築都市ワークショップ旧蔵『13のフォリー』資料

文化庁国立近現代建築資料館 企画展「日本の万国博覧会 1970-2005」

国際花と緑の博覧会 関連資料(建築都市ワークショップ旧蔵)

Section 5.2005年「愛・地球博」
主な展示:

菊竹清訓 グローバルループ
高橋靗一+第一工房 瀬戸愛知県館

文化庁国立近現代建築資料館 企画展「日本の万国博覧会 1970-2005」

高橋靗一+第一工房〈愛・地球博 瀬戸会場愛知県館〉構造概要図(2003年)

「日本の万国博覧会 1970-2005」開催概要

第1部「EXPO’70 技術・デザイン・芸術の融合」
会期:2025年3月8日(土)〜5月25日(日)

2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」
会期:2025年6月14日(土)〜8月31日(日)

休館日:月曜(ただし、月曜が祝日の場合は開館、翌平日休館:5月5日、6日、7月21日、8月11日は開館、7月22日、8月12日休館)5月26日〜6月13日(展示入れ替えのため)
入館料:平日 湯島合同庁舎正門より入館の場合は無料 / 土日曜・祝日は、旧岩崎邸庭園から入館となり同園入園料(一般400円)が必要
開館時間:10:00-16:30
会場:文化庁国立近現代建築資料館
所在地:東京都文京区湯島4-6-15 湯島地方合同庁舎内(Google Map
主催:文化庁
企画:文化庁国立近現代建築資料館
協力:公益財団法人 東京都公園協会

文化庁国立近現代建築資料館ウェブサイト
https://nama.bunka.go.jp


関連プログラム

シンポジウム「EXPO’70(大阪万博)を回想し、再考する」
パネラー
「大阪万博の会場計画」田路貴浩(京都大学大学院工学研究科建築学専攻 教授)
「お祭り広場のデザイン」前田尚武(京都美術工芸大学 特任教授)
「世界の万博建築の系譜」小林克弘(当館主任建築資料調査官・東京都立大学名誉教授)
進行:王 聖美(当館研究補佐員)
日時:2025年3月23日(日)14:00-15:30
会場:文化庁国立近現代建築資料館 2階 展示室前ロビー
定員:30席
参加方法:当日先着順に受付(予約不要。参加者多数の場合、立ち見となる場合あり)

ガイドツアー
ガイド:文化庁国立近現代建築資料館 展示担当職員
日程:2025年4月3日~5月15日の右記・隔週木曜:4月3日(木)、4月17日(木)、5月1日(木)、5月15日(木)
実施時間:14:00-15:00
参加方法:当日先着順に受付、予約不要
定員:15名程度(人数が多い場合は複数班に分けて実施)

文化庁国立近現代建築資料館インスタグラム
https://www.instagram.com/nama.japan/

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