「六本木ヒルズアリーナ」(東京都港区六本木)にて、日本食文化の祭典「CRAFT SAKE WEEK 2025 at ROPPONGI HILLS」が4月18日に開幕。4月29日(火・祝)まで開催されます。
「CRAFT SAKE WEEK」は、オーガナイザーである中田英寿氏が「日本文化の素晴らしさを多くに人に伝えたい」と2016年に開始。全国選りすぐりの日本酒にクローズアップし、日本酒の魅力や日本酒と密接な関係にある食文化を発信しているものです。開催期間中は、一流シェフによる限定のオリジナルメニューや各酒蔵こだわりの日本酒、また日本茶が提供されます。
会場となる六本木ヒルズアリーナでは、毎回異なるテーマで若手建築家が会場デザインを手掛けることでも知られる本イベント。今回は、原田真宏氏と原田麻魚氏が率いる建築事務所「MOUNT FUJI ARCHITECS STUDIO」(マウントフジアーキテクツスタジオ)が担当しました。
原田真宏|Masahiro Harada
1973年静岡県生まれ。芝浦工業大学大学院建設工学専攻修了。隈研吾建築都市設計事務所を経て、文化庁芸術家海外派遣研修員制度を受け、ホセ・アントニオ&エリアス・トレーアーキテクツ。磯崎新アトリエを経て、2004年 原田麻魚とともにMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO設立。現在、芝浦工業大学教授。
原田麻魚|Mao Harada
1976年神奈川県生まれ。象設計集団、建築都市ワークショップを経て、2004年 原田真宏とともにMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO設立。現在、名古屋工業大学 非常勤講師、東京大学 非常勤講師。
マウントフジアーキテクツスタジオ|MOUNT FUJI ARCHTECS SUTUDIO
「風景でつくり、風景でつくる」建築設計事務所。その土地の素材にこだわり、知恵や技術をもつ人と繋がることで、その場所特有の風景の一部となり、さらには高める建築を目指している。多くの人々の共感を得るとともに、国内外で数多くの賞を受賞するなど、高い評価を得ている。数々の賞を受けた〈道の駅ましこ〉ほか、近作に〈なぎっ子こども園〉〈STROOG〉〈ROVAL〉〈Entô〉〈FLAPS〉〈hotel Siro〉など。
今回のテーマは「棟上ゲ」。会場中央に、アリーナにかかる屋根に届くほどの巨大な木の構造体がそびえています。ただ、その姿は軽やかで、通常の木組みの工法ではありません。これは、テンセグリティ構造によるもの。バックミンスター・フラーによって提唱された圧縮材と張力材のバランスによって成立する構造システムで、少数の材料でも安定した立体が成立し、圧縮材が互いに接することなく宙に浮いたような格好となります。
プレスビューで、原田真宏氏と原田麻魚氏は今回のテーマと会場構成について、次のように説明しました。
コンセプトを説明する原田真宏氏と原田麻魚氏
原田真宏:
「上棟の瞬間は日本酒のイベントとマッチするのではないかと思い、棟上げをテーマに考えました。棟上げのときは、一升瓶がいつも隣にあるんです。そして、清酒を注ぎ合って乾杯する。その祝祭的な雰囲気をここでつくれたらと思いました。
木造の建築も日本酒も、日本の自然と風土の恵みを、職人さんが手を加えることで作品になっている。そうした自然や風土、伝統、職人さんへのリスペクトがこの木造の骨組みと日本酒で共通していて、共鳴するのではないでしょうか。木造と日本酒のマリアージュがうまくいったのではないかと思います」。
原田麻魚:
「通常は木造の建物をつくるときに柱と梁を強く結びつけて接合するのですが、この不思議な構造体はテンセグリティ構造といって、木材と木材が触れ合っていません。すごく少ない材料で、約11.5mという高さの構造をつくることができる。日本酒も、米と麹と水だけというシンプルな原料で多様な味が生まれてくることが、木造の建築と似ていると思います。
上棟式のときは大工さんや施主が屋根や柱の上に登り、近所の人は集まってきてみんなで見上げて喜ぶ。そんなイメージもあるので、ぜひ皆さんもこの構造体とともにお酒を楽しんでいただければと思います」。
「CRAFT SAKE WEEK 2025」オープン日は偶然にも、棟上げの日として選ばれることの多い「大安」。2人には設計や施工のプロセスについて、さらに聞きました。
── 工事はどのようにしたのでしょう?
「テンセグリティ構造では精度が求められるため、パーツごとに工場で組み立ててから現場に搬入し、つなぎ合わせています。工事はパーツをクレーン車で吊り上げ、1日で組みました。構造設計は佐藤 淳さんに依頼し、施工はイベント設営の範囲を超えた規模のため、前田建設工業に協力をお願いしました」。
テンセグリティ構造は分割したパーツを工場で制作して現場に搬入し、梁同士と柱同士をつなぎ合わせながら下から順番に組み上げていった。風力を受けて転倒しないように下端は合板に緊結したうえ重りが載せられている
── 設計はどのように進めましたか?
「時間が本当に限られていたので、話を受けてからすぐに考えたデザイン案について、構造設計者、施工会社、設営会社、クライアントが一同に介してテーブルにつき、すべてを一気に決めていきました。マウントフジの最近の仕事はプロジェクトが大きくなってきていて、考えてから竣工するまでに長い年月がかかるのですね。それに対して今回は、デザインの“コール&レスポンス”が早く、立ち上がってみんなが喜ぶまでの期間が短いプロジェクトで、とても楽しいものでした」。
日本酒のディスプレイ棚や縁台のような広いベンチもデザイン
今回の木材は、静岡県富士市のブランド材「富士ヒノキ」の協賛提供を受けて使用。ヤング率150(!)という高い性能の材も見受けられる
棟札はマウントフジアーキテクツのお手製だとか。ワーロン紙で制作、お多福の大きな面を中央に取り付けた
特別席のスペースもヒノキ材で組んだ。紅白幕をイメージしたパーティションのパターンはマウントフジアーキテクツで考案
日本酒を片手に「棟上ゲ」を見上げ、晴れやかな気分を共有すれば、明るい未来を語り合う時間を過ごせるに違いありません。
なお、CRAFT SAKE WEEKでは毎年異なるテーマを設定し、日本を代表する若手建築家に会場デザインを依頼し、日本酒や日本文化の魅力を体験できる空間を演出してきました。これまでの建築家とテーマは以下のとおりです。
「CRAFT SAKE WEEK 2025 at ROPPONGI HILLS」開催概要
日時:2025年4月18日(金)~29日(火・祝)/ 平日 15:00〜22:00(LO21:30)、土日祝 12:00〜21:00(LO20:30)※ 平日の営業時間が昨年より変更
場所:六本木ヒルズアリーナ(東京都港区六本木6-9-1)
参加蔵数:各日10蔵 計120蔵(予定)
レストラン数:15店(予定)
料金:スターターセット ¥4,200(オリジナル酒器グラス+飲食用コイン12枚)
追加コイン10枚 /¥1,600 25枚 /¥3,900 40枚 /¥6,000 100枚 /¥15,000
事前販売:「CRAFT SAKE WEEK」公式HP(https://craftsakeweek.com/)にて販売中
主催:株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANY
特別協力:六本木ヒルズ
協賛:株式会社ロッテ
後援:J-WAVE 81.3FM
ウェブサイト:https://craftsakeweek.com/
公式アプリ:Sakenomy https://www.sakenomy.jp/
Text & photo: Jun Kato