東京・南青山の会場にて、「DESIGNTIDE TOKYO 2025」が12月6日より開催されています。会期は12月21日まで(途中、展示替えによる休場期間あり)。
「DESIGNTIDE TOKYO」は昨年、12年ぶりに復活し、日本橋三井ホールにて開催されました。今年は、南青山の住宅地にあるビルの1階に会場を移しての開催です。これにより、前回は4日間だった日程が16日間に延び、その間、3つのフェーズ(学生展、メインエキシビジョン、マーケット)がそれぞれに展開されるのが大きな特徴です。3会期ごとに切り替えが必要な会場のデザインを建築・デザインコレクティブのUM(アム)、施工をTANK、さらに会場音楽をnagaladeが担当しています。

「DESIGNTIDE TOKYO 2025」Week2: Main exhibition 会場風景
『TECTURE MAG』では、12月11日に行われたメディア向け内覧会を取材。公募作品からディレクターが選抜したデザイナーらによる合同作品展、Week2: Main exhibition(メインエキシビジョン)をレポートします(特記なき会場写真はすべてTEAM TECTURE MAG撮影)。
「DESIGNTIDE TOKYO 2025」開催概要
開催日程:
Week1「Class of 2025(学生展)」:2025年12月6日(土)、7日(日)
Week2「Main exhibition」:2025年12月12日(金)、13日(土)、14日(日)
Week3「Market」:2025年12月18日(木)、19日(金)、20日(土)、21日(日)
※上記1と2、2と3の間は展示替えのため休場テーマカラーはフェーズごとに青、赤、緑に切り替わる
会場:東京都港区南青山4-18-11 フォレストヒルズ ウエスト 1F(Google Map)
開場時間:10:00-19:00
入場料(無料のWeek1を除く):
Week2「Main exhibition」1日券:2,000円(学生1,500円)
Week2+Week3 通し券:3,000円(学生2,500円)
Week3「Market」1日券:1,500円(学生1,000円)
入場方法:チケット制(下記Peatix特設ページにて取り扱い)
※学生割引使用者は入場時に学生証の提示が必要
https://designtide-tokyo-2025-ticket.peatix.com/主催:DESIGNTIDE TOKYO 2025(デザインタイド トーキョー 2025)実行委員会
ディレクター:秋本裕史(E&Y取締役、ディレクター)、Oli Stratford(英国『Disegno Journal』編集長)、Monica Khemsurov & Jill Singer(『Sight Unseen』共同創刊者)、Yuri Suzuki(アーティスト)
スーパーバイザー:藤本美紗子(inuディレクター)
会場デザイン:UM(大沼雄一郎+高橋孝太+高橋優太+宮下翔多)※プロフィールは後述
施工:TANK
会場音楽:nagaladeディレクターの4氏(左上から時計回り、敬称略):秋本裕史、Oli Stratford、Monica Khemsurov & Jill Singer、Yuri Suzuki
特別協賛:Rinnai Aoyama
協賛:all day place、UDS HOTELS、WIX STUDIO(Wix.com Japan)SSS(スリーエス)、PANECO、BRIDGEHEAD Shimbashi、PICO、KEF、Mezzanine Makers(閣樓釀造)、Mikkeller Kiosk/Bar、SIXINCH ジャパン、BENEX(日本ベネックス)
協力:ATAKA、Information、LICHT Gallery、PAAMA、SKWAT
メディアパートナー dezeen、disegno、Sight Unseen、designwanted、Ilmm

Week2: Main exhibition 会場風景(画像提供:UM)

Week2: Main exhibition 会場風景(画像提供:UM)
今年の「DESIGNTIDE TOKYO」は、プレイベントの「Class of 2025」(2日間、5大学からの学生選抜20名と1組)、メインエキシビジョン(会期3日間、27組)、そしてマーケット(4日間、60組以上)の3展示ごとに会場構成が切り替わります。会場デザインを担当したUMは、住宅のコンクリート基礎を打つ際に使われる鋼製型枠を用いて会場をデザイン。その組み合わせを変えることで、レイアウト変更を容易に。かつ、高さ600mmの型枠パネルによる空間デザインは、入り口側から奥まで会場を見通すことができ、型枠の組み合わせによって来場者が自由に回遊できるような動線計画になっています。

Week2: Main exhibition 会場風景

Week2: Main exhibition 会場風景

鋼製型枠はレンタル品で、終了後は廃棄されずに業者に返却される
デザイナー プロフィール
UMの4氏(左上から時計回りに、敬称略):宮下翔多、高橋孝太、高橋優太、大沼雄一郎(画像提供:主催者)
UM:ベルギー・ブリュッセルを拠点とする大沼雄一郎と、東京拠点の高橋孝太、高橋優太、宮下翔多の計4氏による建築・デザインコレクティブ、2023年設立。
異なるバックグラウンドを持つメンバーが、施主や施工者との対話を通じてアイディアや方法論を変化、拡張し、固定化された建築スタイルに捉われることなくプロジェクトに取り組んでいる。画像提供:主催者
会場デザインコンセプト
我々の会場設計は上記された動詞群のように、単一素材のモジュール式システムで全く要望の異なる3つの会期の全てに柔軟に対応し、会期を通じて絶えず変化する展示空間を提案する。TOUCH IT, BRING IT, PLACE IT, USE IT, WATCH IT, LEAVE IT, STOP — UPDATE IT Touch it, bring it, place it, use it, watch it, leave it, stop — update it Change it, add it, move it, drag it, turn it, check it, quick — unlock it Use it, fill it, load it, view it, touch it, view it, quick — erase it Change it, move it, drag it, turn it, lay it, check it, stop — rename it Use it, fill it, load it, view it, touch it, sell it, now — return it

Week2: Main exhibition 会場風景
会場にて、UMの宮下翔多氏と大沼雄一郎氏に話を聞きました。
「今回の展示のベースとなる与件の異なる3つのフェーズに対して、毎回全く異なるレイアウトを提示するのではなく、一部のパネルを取り外す、あるいは付け足すといった最小限の”手つき”によって、ガラリと会場風景の印象をかえるような計画になっています。会場の荒削りなスケルトン空間の印象とのバランスや、展示作品との関係性を考慮し、パネルの高さは600mm、さらにはレンタル品である性質から鋼製型枠という素材を選びました。手で留め具を外して容易にバラせるので、今回の命題であったフェーズ転換にも対応しています。長さ910mmのパネル、その半分の455mm、内コーナー材、外コーナー材など、種類とサイズが限定される規格品を組み合わせることにより、会場全体を構成しています。具体的にどのような作品が出てくるのかがギリギリまでわからない状況の中、この作家はこういった作品を展示するだろうと予測、さらには、学生展、メイン展、マーケットという3つの異なるフェーズの連動性や、それぞれのフェーズの軸となる要素のもとに、パズルを解くような検討を繰り返して、今回の3つのフェーズでの配置を決定してます」(宮下氏+大沼氏談)

会場・受付カウンター前に置かれたハンドアウトハンドアウトにて、学生展、メインエキシビジョン、マーケット、それぞれのレイアウトを確認できる
学生展(Class of 2025)会場風景
Week1: Class of 2025(学生展)会場風景(画像提供:主催者) Photo: Leo Arimoto
Week1: Class of 2025(学生展)会場風景(画像提供:UM)
Week1: Class of 2025(学生展)会場風景(画像提供:UM)
Week1: Class of 2025(学生展)会場風景(画像提供:UM)

Week2: Main exhibition 会場風景
「次のマーケットでの会場構成では、本展で通路のように使っている部分と展示スペースを反転させます。前回の学生展あるいは今回の展示を見に来てくれた人が、次の展示はどうなるんだろうかとまた足を運んでくれて、その前の展示の痕跡のようなものを感じ取ってくれたら嬉しいです」(両氏談)
なお、次のマーケットでは、前回「DESIGNTIDE TOKYO 2024」の会場空間(デザイン:板坂留五 / RUI Architects)で使用された白い不織布をリサイクルボードへとつくり替え、展示台として活用する予定とのこと。

右側:井手健一郎氏率いる rhythmdesign(リズムデザイン)による作品展示

「Class of 2025」で行われた一般投票で1位に選出された学生、高山芳の氏の展示(作品名:脈拍)

メインエキシビジョンでは唯一の学生作品「脈拍」(高山芳の)

スタジオ・NOUを主宰する狩野佑真氏の展示

HONOKA(ホノカ)による、繊維端材の可能性を3段階で提示した作品群「String_Surface_Solid」

テキスタイルデザイナーの鈴木マサル氏も公募審査を経ての出展(画像提供:鈴木マサル氏)
2023年夏にKarimoku Commons Tokyoで開催された企画展「テキスタイルの表と裏 -Looking through the overlays」でもみられた(会場レポートはこちら)、大判のテキスタイルによる「表と裏」をテーマにした展示。「僕はこれまで、筆で絵を描いて、テキスタイルをデザインしてきたのですが、絵描きと何が違うのか、そもそも柄とはなんだろうかと考えはじめ、その試みとしてつくったものです。4枚のうち3枚は、構成としては表と裏の両方の柄を組みあわせると無地になり、表面から切り取ったり、ズラした”残り”の部分が裏の柄です。これら3枚のテキスタイルの柄をすべてあわせたものが1点。無地から柄に移行する瞬間を封じ込めた、そんなテキスタイルです。」(鈴木氏談)

Week2「Main exhibition」会場風景(画像提供:主催者) Photo: Leo Arimoto
会場では、「DESIGNTIDE TOKYO 2025」のディレクターのひとり、秋本裕史氏にも話を聞きました。
「現在は”DESIGNTIDE TOKYO”と称しているこのイベントは、東京デザイナーズブロックの流れを汲み、2006年には原宿の解体予定の廃ビルや、代々木競技場の1室、さらに2008年からは東京ミッドタウンのホールで連続開催されました。当時の若手建築家が会場デザインを担当し、そちらも注目されました(例えば、2008年と09年は谷尻 誠氏と吉田 愛氏が率いるSUPPOSE DESIGN OFFICE、2010年は中村竜治建築設計事務所が担当)。そして2020年にコロナ禍があり、集客イベントの開催そのものができなくなりました。再開した昨年の会場は、以前と同じく不特定多数の人の目に触れやすい立地の良さや、照明など各種設備に恵まれた大ホールならではの良さがある一方で、出展者の側に立ったときに、はたして彼らが出展したいと思うようなイベントになっているのかと、考えてきました。そして今年は大きなホールを出て、運良く巡り会えたスケルトン空間で、”原点回帰”ともいえる展示となっています」

「DESIGNTIDE TOKYO 2025」展示風景
学生とプロのクリエイターの展示を前後で分け、最後にマーケットという物販イベントを行うという流れも、意図されたものです。
「昨年は、クリエイターのプロダクト展はホールで、そこに入場する途中のスペースで学生展とマーケットを行いました。1つ屋根の下という利便性はあるものの、3つが分離した感を否めなかった。今回、この展示空間のなかにその3つを配置しようと思えばできなくはなかったのですが、デザインを学ぶ若い世代(学生)、実績を積んだプロのクリエイター、対価が支払われるプロダクトによるマーケットという時系列で展示を行いたかった。デザイナーズブロックの時代から、DESIGNTIDE TOKYOは、プロダクトデザインの未来を見据え、その可能性を提示することを目的としたイベントですから」(秋本氏談)
この時系列の展示には、学生たちへのメッセージが込められています。
「僕たちが若い頃は、学生でも、自作品を人々に見てもらえるイベントが当たり前のようにありました。ですが、とくにコロナ禍以降、そういった機会が失われています。これは学生諸君にとって大きな体験の喪失だと思うのです。将来、プロのデザイナーや作家となり、他人が買いたい・欲しいと思わせるプロダクトをつくる。自分のアイデアをきちんとかたちにして、人の手に渡るまでの時系列をイメージしにくくなってしまった。今年はとくにそのグラデーションをつくることを強く意識しています。出展した学生、そして会場運営に携わった学生諸君にも、ここでの体験を糧にして学んでいってほしいと願っています」(秋本氏談)

「DESIGNTIDE TOKYO 2025」受付まわり

ハンドアウトの裏面は、サテライト参加のマップとなっている

南青山 フォレストヒルズ ウエスト エントランス
「DESIGNTIDE TOKYO」公式ウェブサイト
https://designtide.tokyo/
「DESIGNTIDE TOKYO」インスタグラム:@designtide_tokyo/
https://www.instagram.com/designtide_tokyo/