FEATURE2020.05.07

Review of the "#Katteni Graduation Exhibition"

GW特集「#かってに卒制展」レビュー #05

「#かってに卒制展」レビュー企画の最終回となる今回のインタビューは、半澤 龍さん。
企画したグループとは違う学校に通っていた半澤さんはTwitterで「#かってに卒制展」を目にし、自らの作品を投稿。
自分のTwitterでつながっていた建築系のフォロワーを中心に、幅広い反応を得た。
リアルな卒業制作展との違いについて、見せ方や見る人の反応の様子からうかがった。

半澤 龍さん

「面白いことをやっているな」と反応

──自己紹介と、「#かってに卒制展」に自分の作品を投稿した経緯の説明をお願いします。

半澤:半澤 龍といいます。今年の4月からは横浜国立大学大学院のY-GSAに所属しています。
今はコロナの影響で、自宅でY-GSAの学生とオンラインで読書会をして、授業のために着々と準備しています。

4年生のときは、愛知県の名城大学に所属していました。佐藤布武(のぶたけ)という先生の研究室です。
「#かってに卒制展」のことは、中村美月さん(#02のインタビュー記事を参照)がTwitterでつぶやいたことで、知りました。

中村さんとは学部3年生のときに、大阪で開催された「建築新人戦」で会ったことがありました。
自分は16選、中村さんは8選まで進んだのですけど、彼女とはそのときの懇親会で知り合って、Twitter上でもたまにやりとりをしていて。
「#かってに卒制展」は「何か面白いことをやっているな」と、賛同して参加したという感じです。

──2月28日の呼びかけを見てからTwitterにアップするまでに、どれほどの期間があったんですか?

半澤:ウチの大学では卒業制作の提出時期が、ほかの大学より半月から1カ月くらい遅くて。いろいろと提出がひと段落してからつぶやきました。3月8日ですね。
Twitterで「#かってに卒制展」の作品はいろいろ見させていただいて、よい企画だなと思いました。
制作に精一杯だったので、自分の作品に何か影響を受けたということはありませんが。

半澤さんの投稿

ボードの構成を組み直す

──学校の提出物と「#かってに卒制展」とで、内容は変えましたか?

半澤:学校ではフォーマットなどの制限が特になくて。自分で決めるんです。
学校のほうは4人の後輩が集まってくれて。「みんなで一緒につくろう」と、全長3メートルくらいのドローイングを描いて、模型も20個ほど制作したんです。
つくりすぎた、と後悔しているんですけど。

「NAF(NAGOYA Archi Fes、中部卒業設計展)」にも出展したのですが、学校に提出した後に1週間ほど時間がありました。
自分の作品に決定打がないなと思って、2年生のときにお世話になった先生の事務所に行ってエスキスしてもらうことで、案がドライブして。
そこから模型とプレゼンボードを全部つくり直して、NAFに提出したんです。

そのときにA1サイズ2枚で作成したものを「#かってに卒制展」に投稿したかたちです。
Twitterに載る画像は、横長のレイアウトのままでは順序が分かりにくいなと思って、縦にスクロールして読みやすいように直しました。

──Twitterでの投稿で意識されたことは、ほかにありますか?

半澤:「#かってに卒制展」に投稿した自分のツイートは固定して、プロフィールに飛んだときに訪れた人の目に止まるようにしました。

また、「#かってに卒制展」の投稿では詳しく覚えていないのですが、普段はみんなが見る時間帯にツイートすることが多いですね。
Twitterでは夕飯前とか、夜遅くに起きているとき、あとは朝方に一気に回って見られるので、夜中に出すのがいいかなと考えています。

半澤さんが学校の提出用に作成した全長約3mのドローイングと数多くの模型

Twitterでの反応は両極端

──「#かってに卒制展」では、どんな反応がありましたか。

半澤:自分の作品は、現実世界でもけっこう有効じゃないかと思っているんですけど、法律に絡めた提案をしているんです。
それについて、大人の方から「ちょっとここが違うんじゃないか」という意見もあったのですが、「真摯に向き合っているのがいい」とコメントをもらえたりしたのは、けっこう嬉しかったですね。

あとは、いろんな展覧会に出したりするんですけど、なかなか1位というのは取れないなかで、「この作品が1番好き」と言ってくれる人がいて。そういうのは、すごく励みになりましたね。

──建築家の藤原徹平さんもひとこと、半澤さんの作品にコメントされていましたよね。

半澤:そうですね。今度通うY-GSAにも先生としていらっしゃるのですが、これまで雲の上のような存在というか、自分が藤原さんに意見をもらえるまでに達していないと思っていたので、嬉しかったです。

──Twitterでの展覧会と、リアルな会場での展覧会とで、反応の違いは感じられましたか?

半澤:学内では、いつも「難解くん」と呼ばれていて。ちょっと何やっているのか分からない、と。
あとは形状の癖が強くて、わざとやっているところがあるんですけど、かたちが強すぎて評価軸に乗ってこないということを言われてきました。

Twitterのほうでは、シンプルなものよりも癖のあるかたちのほうが「いいね」が伸びたり、けっこうウケがいいなと思いました。そこはあまり曲げないでおこうと思います。

Twitterでは反応が軽いかというと、そうでもない気がします。
「いいね」とする方がいる一方で、すごい長文を送ってくれる人がいて、ちょっと困って返せなかったというのも覚えています。どちらかに偏っている、という印象ですね。

半澤さんの投稿に対するリプライ(部分)

オンラインでの見え方の違いを実感

──今後、SNS上で展覧会をする人もいると思います。アドバイスはありますか?

半澤:そんなに自分自身がオンラインは得意じゃないので、もう少し研究してみたいなと思っています。
今年もオンライン卒制展をいくつか見たのですが、リアルで見せるのとオンラインでは、全然違うなと思って。

自分でも「#かってに卒制展」みたいなものを企画できたらいいなと思いますし、立ち上げる方がほかにも現れて、発表する機会は多くなったほうがいいなと思いました。

──これからほかにしていきたいことはありますか?

半澤:学業にひとまず専念するんですけど、そのなかでもコロナがあって、ちょっと建築を考え直さないといけないところで。
自分に何ができるのかということを考えていきたいですね。【】
(2020.05.01 オンラインにて)

オンライン取材で説明する半澤さん

半澤 龍さんの作品〈余白不動産 ―都市計画のバグを利用した不動産の解体―〉

■Twitterアカウント名
HaN

■作品の概要
不動産業やディベロッパーが鎮座する都市空間。そこに私たち個人が介入するのは不可能だ。ならば一般的に扱われない裏の空間=余白不動産に、建築するのはどうだろうか。さらに法律のグレーゾーンを使い、届出不要な個人間のみの取引で都市をハッキングする。

建築的原始人になろう
原始人は雨風をしのぐために、マイホームを自分で建てていた。それは誰もができる術だった。しかし、今では建築と不動産はブラックボックス化し、作る能力と自由が奪われた。
スロバキアでは、各家庭の地下に作業室を持つ地域があり、親から子へ家作りの技術が伝達される。またタイのある村では、集落入口の工場で建築部材をストックし、皆が家を作る。日本の都市にもそんなシステムやスペースがあったら、自分の手で好きな家を建てることが出来るだろう。たとえ津波や災害で家を失っても、仮設住宅以外の選択肢が生まれる。この提案は、その第一歩として、個人が建築できる可能性を追求した。

「これは本物建てないと勝てないヨ」
それは、大物建築家Nに言われた一言だ。…悔しい!この提案は建ててなんぼ、頭でっかちではダメだ! 早速後輩を連れて、建てに行く。単に提案の有効性を確かめるつもりだった。いざやってみると、そこには「建築を作るヨロコビ」があった。自由には難題がつきもの。自分の考えを社会に成り立たせる難しさを知った。だからこそ私は、やり続ける。

[本企画の取材を振り返って]

2020年、「#かってに卒制展」をはじめとして、SNSや独自のサイトで卒業制作を発表する様子が目立った。
「オンライン卒業設計展」は新型コロナウイルスを直接の原因としてはじまったものではあるが、リアルとオンラインにかかわらず「卒業制作展」自体が新たなフェーズに突入したことを告げている。

学校を問わずに発表でき、評価を受けられる卒業制作展が生まれたのは20年ほど前のこと。
それ以来多くの学生に支持され広がって体制が整えられてきたリアルな卒業制作展に比べると、「オンライン卒業設計展」は企画や運営の面で粗削りかもしれないが、新鮮で人を惹きつける魅力にあふれている。

今回インタビューした「#かってに卒制展」の発起人や出展者の話を聞いて強く感じるのは、学生が連帯したときの勢いと波及力、枠にとらわれない自由さである。

また、リアルな会場でなくても「場」が生まれ、かたちづくられていることは興味深い。
そして、これまで卒業制作展に触れていた人とは異なる層にも広がり、届いていることも注目に値する。

場所を問わず開催費用が圧縮されるオンライン卒業制作展は、ギャップやボーダーを超え、さらに広がっていく可能性を秘めている。
時代と状況に応じた柔軟な発想と動きによって「場」がますます発展し、そこから新しい動きが生まれることに大きな期待を寄せている。[jk]

「#かってに卒制展」に関わった学生の多くは、10代の早くからSNSを利用するいわゆる「SNSネイティブ世代」である。
彼らの共通点としては、”発信慣れ”していることだ。普段から呼吸のようにツイートする人もいれば、戦略的にコンテンツを投稿して多くのフォロワーを獲得している人もいる。
SNSを単なる娯楽としてではなく、情報収集やセルフプロデュースの場として利用し、自らの価値を日々高めている。

結果として、「#かってに卒制展」のような場がオンラインで立ち上がった際に、学生たちはスピーディーに行動に移せたのではないか。
SNS上に自分の作品を載せるリスクを顧みず、それによって生まれる連鎖、広がりの可能性にかけた彼らの行動力は、今後さらに重要になるであろう「自発的な実績づくり」の可能性を示してくれた。[DF]