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What is “NOT A HOTEL”?
- Creating new luxury
【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#02「新しい価値観が拡張されるとき」
FEATURE2021.11.12

#02 When the new sense of values are expanded

【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#02「新しい価値観が拡張されるとき」

前稿【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー #01

FEATURE2021.11.10

#01 What is “NOT A HOTEL”?

【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#01「 NOT A HOTEL とは?」

1棟数億円の物件を、インターネットのオンラインストアの”買い物かご”で売る、この衝撃のビジネスを、濵渦伸次氏が代表を務めるベンチャー企業、NOT A HOTEL株式会社が開始したのは、今から1カ月前のこと。

前稿#01では、高額物件〈NOT A HOTEL〉のフラッグシップモデルの1つ、栃木県・那須で進行中のプロジェクト〈NOT A HOTEL NASU〉が本格始動するまでの経緯を、事業主である濵渦氏と、設計を担当するSUPPOSE DESIGN OFFICE(サポーズ デザイン オフィス)を率いる建築家、谷尻 誠と吉田 愛氏に、鼎談形式のインタビューで話を聞いた。

本稿では、〈NOT A HOTEL NASU〉で3氏がつくろうとしている「新しいラグジュアリー」とはどのようなものか、掘り下げていく。

左から、谷尻 誠、濵渦伸次、吉田 愛の3氏(SUPPOSE DESIGN OFFICEの事務所に併設された社食堂にて)Photo: toha

サポーズが目指す「新しいラグジュアリー」とは?

〈NOT A HOTEL NASU〉の原型とも言える、建築家の谷尻氏の自邸〈HOUSE T〉の室内空間。訪れた人は、誰もが「薄暗い」と感じるという。
設計にあたり、谷尻氏が思い描いた空間は、海外での高級ホテルでの宿泊体験と、そしてもう1つ、プライベートで招かれた知人の家で過ごした際の実体験にも基づいていた。

鼎談形式でのインタビューに応じる谷尻氏 Photo: toha

海外と日本で異なる「ラグジュアリー」の捉え方

「彼らの家は、ラグジュアリーなんだけど、例えば、よく日本のインテリア雑誌に載っているようなラグジュアリーさとは全然、違ったんですね。高級なインテリアを使っているわけでもないのに、趣きがあって、センスがある。素材感があって、重々しく、そして暗い。僕はそれがすごく気に入った。現代の日本の住宅とは真逆にある空間こそが実は、ラグジュアリーというものを生み出すのではないかと考えました。」(谷尻氏談)

谷尻氏の話に耳を傾ける濵渦氏(中央)と吉田氏(右) Photo: toha

「ツルツル、ピカピカだけがラグジュアリーじゃないんだよということを、もっとみんなにも知ってもらいたい」と思った谷尻氏。だが、それはパースや写真ではなかなか他人には理解してもらえない。そこで、自邸〈HOUSE T〉で実験的につくることにした。

実際に、〈NOT A HOTEL NASU〉において、サポーズが提案した「暗やみのデザイン」にGOサインが出る決定打となったのが、谷尻邸で過ごした時間に濵渦氏が心地良さを実感したからである(前稿#01を参照)。

〈HOUSE T〉内観 Photo: Toshiyuki Yano

新しい価値観が拡張されるとき

このように、谷尻氏が〈HOUSE T〉で実践した実験的な空間は、新しい価値観を創出している。那須での提案へとつながり、2022年9月には〈NOT A HOTEL NASU〉となって完成する予定だ。

NOT A HOTEL NASU プロジェクト

〈NOT A HOTEL NASU 〉イメージパース第1稿(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)

人はラグジュアリーさをどこで感じるのか? それは「体験」であると、サポーズの2人は口を揃える。
最近、キャンプにハマっていることでも知られる谷尻氏は、「テントで過ごすキャンプでも、じゅうぶんにラグジュアリーさを感じることができる」と言う。

「日本では、高級=ラグジュアリーという発想になりがちですが、材料に依存してはダメだと僕らは思うんです。建築家として、空間にマッチさせていくことをしないと、ラグジュアリーさはつくれない。濵渦さんは最初からそのことを理解していたから、僕らの提案を信じてもらえた。こうやって、建築として実現することによって初めて、ラグジュアリーの拡張が行われるのです。」(谷尻氏談)

MASTERPIECE棟 外観イメージ、自然と調和するコールテン鋼の外装(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)

住宅とホテルの間のような場所を

濵渦氏が、那須および宮崎で第一弾を展開する〈NOT A HOTEL〉でつくろうとしているのは、住宅とホテルの間のような場所だ。住みたくなるようなホテル。計画当初から一貫した全体の枠組みである。
その目指すところは、奇しくも、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)流行下のニーズと近接してきている。
「旅に出ても、人々は周辺観光をしなくなっている。宿から一歩も出ないという旅先での過ごし方が増えてきた。」と、濵渦氏は市場を分析する。

NOT A HOTEL NASU プロジェクト

Photo: toha

「〈NOT A HOTEL NASU〉は緑豊かな土地。そこへ出て行って自然を満喫するのもいいけど、建物の中で一日中、過ごすのもいい。サポーズがつくる空間は、此処でしか味わえないラグジュアリー体験ができるでしょう。」(濵渦氏談話)

〈NOT A HOTEL NASU 〉メインとなる棟、MASTERPIECEイメージパース(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)
自然の中に建築を彫刻作品のように置いたイメージでデザインされている

NOT A HOTEL NASU MASTERPIECE 物件概要

物件所在地:栃木県大田原市狭原1291-7(地番)
都市計画地域:都市計画区域外
総開発面積:7,856m²
敷地面積:1,353.82m²(確認申請対象面積)
屋内面積:286.09m² 他、機械室18.27m²
総面積(テラス等屋外含む):519.24m²
構造:RC造
規模:地上2階
間取り:4LDK
建物竣工予定:2022年9月30日
オーナー利用開始予定:2022年11月1日

設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE
造園・植栽計画:齊藤太一 / DAISHIZEN(SOLSO)
事業主・売主:NOT A HOTEL
運営会社:NOT A HOTEL MANAGEMENT

母家と離れを有する読了の家・THINK棟 イメージパース(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)
THINK棟 リビング イメージ、テラス+プール付き(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)
THINK棟 プールのほか、サウナ・水風呂・温泉設備を備えたテラス イメージ(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)
THINK棟 サウナ イメージ(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)
地上3階建ての独立した THINK棟の「離れ」外観イメージ(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)
空間の奥行きが5m以上あるTHINK棟 書斎イメージ(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)
THINK棟「離れ」屋上露天風呂 イメージ(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE)

NOT A HOTEL NASU THINK 物件概要

物件所在地:栃木県大田原市狭原1291-7(地番)
都市計画地域:都市計画区域外
総開発面積:7,856m²
敷地面積:2,680.6m²(確認申請対象面積)
屋内面積:母屋 242.70m² 離れ 34.02m²
総面積(テラス等屋外含む):母屋 408.93m² 離れ 51.72m²
構造:母屋 RC造 離れ RC造
規模:母屋 地上2階、離れ 地上3階
間取り:1LDK (離れ付き)
竣工予定:2022年9月30日
オーナー利用開始予定:2022年11月1日

設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE
造園・植栽計画:齊藤太一 / DAISHIZEN(SOLSO)
事業主・売主:NOT A HOTEL
運営会社:NOT A HOTEL MANAGEMENT

「少しずつ体験が異なる場をつくる作業は楽しかった」と語る吉田 愛氏 Photo: toha

次稿は「起業家」がキーワード

次稿でも引き続き、3氏に話を聞く。
谷尻氏が建築設計やデザインの業以外に、起業家を名乗り、さまざまに活動する理由や、NOT A HOTELと、私たちTECTUREとの接点も次第に浮かび上がってくる。

谷尻氏(左)と濵渦氏 Photo: toha

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FEATURE2021.11.15

#03 The power to drive projects

【特集】NOT A HOTELが建築家と創出する新しいラグジュアリー#03「プロジェクトをドライブさせる力」
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#04 “NOT A HOTEL” expands the DX and future of architecture

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