FEATURE2020.05.04

Review of the "#Katteni Graduation Exhibition"

GW特集「#かってに卒制展」レビュー #03

「#かってに卒制展」レビュー企画のインタビュー2人目は、山内 颯(はやて)さん。
本企画の#01で紹介した中村美月さんが「#かってに卒制展」を呼びかけた後、山内さんは真っ先に自分の作品を投稿することで、「#かってに卒制展」が広がる流れを生み出した。
広がっていく経緯や、改めて振り返っての感想、また今後のオンライン卒制展の方向性について意見をうかがった。

山内 颯さん

なによりスピード優先で

──自己紹介と、「#かってに卒制展」に参加された経緯から、お願いします。
山内 颯(以下、山内):昨年度までは、日本大学理工学部 海洋建築工学科に所属していました。4月からは、横浜のアトリエ事務所に就職して働いています。
発起人の中村さんとは同じ研究室で、せんだいデザインリーグの中止が決定したときにはみんなと一緒にキャンパスにいました。

わーっとしゃべっているなかで、「かってに卒制展みたいの、やってみたらいいんじゃない」という話をしていて。
中村さんに「じゃあ、ポスターみたいなのをつくってよ。ツイートした瞬間に、俺が最初に作品を出すから」と言いまして。
誰かが最初に出す人がいないと何も始まらないと思ったので、ポスターを上げてくれるんだったら、すぐにやってみようという話で、出しました。

でもそのとき、僕はパソコンをもって来ていなくて、データが何もなかったんですね。スマホで撮った模型写真と、提出用につくった表紙を撮った写真しかなくて。
なので、それっぽく見えそうな写真を選びました。ボードの雰囲気がなんとなく分かるものをとりあえず載せたという感じです。

スピードが大事なのかなと思って。「ほかにも考える人がいるよね」という話も出ていましたから。
せっかくやってみるんだったら、スピード優先でという話になりました。
自分の作品は、後で上げなおしても、気になる人には見てもらえるだろうと思って。

山内さんが最初に投稿したツイート

SNS本来の面白さを実感

──流行るような仕組みについて、考れていましたか?

山内:いや、もう中村さんに全部ふってしまいましたから。Twitterは自分もやっていましたけど、中村さんのほうが「こういう最低限のものがあれば、まあ伝わるんじゃないか」みたいな感覚は分かるだろうと思って。

1時間くらいで中村さんがつくったポスターを見せてもらって、「あ、もうそれでいいんじゃない?」と。僕はその後に作品をアップしただけです。
次の日でしたかね、自分はパソコンに入れていたプレゼンボードのデータを、Twitterで見やすいくらいの画質とか大きさにして、再アップしました。
リプのかたちでダイヤグラムとかを付けて、気になった人がより分かるように、抜粋して入れたんです。

僕が作品で考えたのは、建具のようなレベルの小さなことだったので、図面などを見せても伝わらないかなと思って。
提案を全部伝えようとすると無理だなと思ったので、大きな枠組みで「こういうことをしたんですよ」ということがざっくりと分かるようにしました。

Twitterはツイートするときのファイル容量に制限があるので、データはPDFにして圧縮をかけました。でも、拡大して文字があれないくらいの画質にすることは意識しましたね。

──作品をより広く見てもらうための工夫は何かされましたか?

山内:いや、僕はそういうことを意識してやっていなくて。でも、やっぱり参加してくれた人たちのツイートを積極的にリツイートしていました。
それで、結局は自分に返ってきて見てくれたりしたのかなと思います。

あとは、2回目にアップしたときに、最初のころに見てくれた人がもう1度見てくれてリツイートしてくれたので、そこでまた新しい人たちの目についたのかなと感じます。
こんなにリツイートされたことはなかったので、「バズるというのは、こんなことかなぁ」と感じながら見ていましたね。

あとは、僕は京都の西陣にサイトを設定して作品をつくったので、そこに住んでいる人から反応がありました。
こういうつながり方もできるのだということは、SNSの正しい使い方というか、SNS本来の面白さを感じながら見ていました。

覚えているなかでは、「模型などを直接見てみたい」という反応がありました。
ほかには女性の方で、旦那さんが「なんでも屋さん」のように、街のなかで家具をつくったりしている方らしく、「家の土間の部分を使って、作品の模型やパネルを置いてみたいですね」という話がありました。

また、西陣織会館の人とか、あとは街の行政や自治体みたいなところで西陣織を盛り上げようとしている人の目にも止まったようです。具体的なアクションは全然ないですけれど、広がったのかなということは感じます。

2回目に投稿したツイート

賛否両論の意見も面白い

──卒制展の結果は、どのように見ておられますか?

山内:どれくらい反応してもらったかを結果とするなら、3月末で3番目に入ったんですけど、それに対しては大きな感動とかは特になくて。
それは作品のよしあしというよりは、最初に出てきたから勝手に一人歩きしたという感じでしょう。
順序が上とか下とかは正直、特に感想がないというか、「そうだったんだな」というくらいですね。

あとは賛否両論、いろんな意見が出たのが、自分は面白かったかなと。
「こういうのを求めていた!」という人など、反応する人もちゃんといるんだなということが実感できました。
一方で「SNSに自分の作品をポンと上げるようなヤツは、デザインする人間としては失格だ」というような人もいて。
それが僕にはリテラシーがないせいか、なぜかはよく分からないんですけれど。そういう意見もあるのかと興味深く感じました。

ただ、建築家の方がもっとコメントしてくれればいいのにな、とは思いました。
作品に対してというよりは、こうしたオンライン卒制展という流れがあって、それはどういうことなんだろう、ということですね。

実際に今、授業もリモートになって、講評会などもどうしようかという話が出ていると思うんです。
オンラインじゃないといけない状況のときに、学生の作品をどう評価するのかとか、建築家の方々がどう考えているのかを知ってみたいという気持ちはあります。

山内さんの投稿に対するリプライ(一部を抜粋、原文ママ)

目的は少しずつでも明確に

──オンライン卒制展で、今後の課題と、何かほかに感想はありますか?

山内:目的は、やはりちゃんと決めたほうがいいのかな、ということはありますね。
「かってに卒制展」は僕らの「ちょっと見てほしい」という思いで始まったことが大きくて。
順位を付けてほしいとか、そういうことではなかったので、自分たちでは順位を付けたりまとめたりはしていません。

建築をやっていない人にも触れてほしいということは、けっこう成功したと思っているんですけど。
ほかのオンライン卒制展も見ていて、新しいタイプのものだったのかもしれませんが、やっぱり建築のなかにとどまっているような感じがして。

どのようなプロジェクトでも、表に出す・出さないはあるにしろ、目的はやりながらでもちょっとずつ明確にしてやっていくのがいいのかなと。
周りに言われたからやるとというよりは、何で始めたのかという自分たちの気持ちを大事にしたほうがいいと思います。

まあ僕たちは、かってに始めて、かってに広まって、かってに終わってたみたいな。「かってに」というのは、めちゃめちゃ都合のいい言葉なんですけれど(笑)。
余談ですが、最近CMで「“勝手に”お助け!」というのがありますよね。そういうのも同時期に出てきていて、面白いなと思います。

──これからしていきたいことは何でしょうか?

山内:まずは仕事を覚える、というのが1番なんですけれど。
卒業設計を通して、より伝統工芸品の素晴らしさ、面白さに気づくことができたので、全国の工芸品の体験をして発信していきたいと思っています。

また建築単体だけではなくて、建つことで周辺に起こる変化を見越して建築を考えると、どうなるんだろうということに興味があります。
それで、コミュニティマネジメントとかデザインも含めながら、建築を一般の人にどう伝えていくか、どう広めていったらいいんだろうということを考えています。自分でも実践しながら、発信していきたいなと。

あとは最近、noteをはじめました。建築系の学生のなかには、意匠設計がしたくて入学しても、最初の製図がイヤだったり、何が評価されているのか分からなかったり、模型が上手につくれなかったりして設計の道を諦める人もけっこう多いと思うんです。

僕も同じように感じていながらも、なんとか意匠系の研究室に入ったり、できないけれど好きだからなんとか食らいついてきたところがあります。
どうやって設計を楽しくしていけるのかを、自分の体験を交えて備忘録的に書いて、悩んでいる人たちの足しになるようなことができるといいなと思っています。【】
(2020.04.29、オンラインにて)

オンライン取材で展望を語る山内さん

山内 颯さんの作品〈開かれる土間、現れる生活〉

■Twitterアカウント名
ricerice512

■作品の概要
京都府北西部に位置する西陣地区では、550年にわたってつくり続けられる「西陣織」と呼ばれる伝統産業が、町の通りに賑わいをもたらしていた。
しかし、時代が移ろい、産業が衰退するにしたがって、これまでのような町家のウラで職人が物をつくり、オモテで商いをするという形式は限界を迎えている。
本計画は、「ドマ」を町と接続することで、「オモテで職人が物をつくり、ウラで商いをする形式」を提案する。
境界面を操作することで再編集された人と西陣織の関係は、町に現れることのなかった様々な表情を生み出す。
文化を守りたいと願う小さな人々への一助となる提案。