道や街との多彩なつながり
旧街道の通り沿いに建つ〈佐竹邸〉(設計:工藤浩平建築設計事務所)。
塔状のボリュームをもつ姿は、商業地域でさまざまな種類の建物が並ぶ街の中でランドマーク的な存在となっている。
室内では階ごとに外部への開き方を変え、狭小でありながらそれぞれの場所で街との多彩なつながりが生まれている。
自宅であり1階に自社のワークスペースを備える佐竹雄太氏(アラウンドアーキテクチャー)に建設の背景と暮らし方、また建物を設計した工藤浩平氏(工藤浩平建築設計事務所)に設計の特徴を解説いただいた。
Movie & photographs: toha
〈佐竹邸〉
所在地:東京都練馬区
用途:住宅・事務所
クライアント:個人
竣工:2021年
設計:株式会社工藤浩平建築設計事務所 http://koheykudo.com
担当:工藤浩平、小黒日香理、宮崎侑也
不動産:佐竹雄太(アラウンドアーキテクチャー)
施工:株式会社住建トレーディング
工事種別:新築
構造:鉄骨造
規模:地上3階
建築面積:27m²
延床面積:71m²
工藤浩平 | Kohei Kudo
1984年秋田県生まれ。2005年 国立秋田高専環境都市工学科卒業、2008年 東京電機大学工学部建築学科卒業。2011 東京藝術大学大学院美術研究科修了。SANAA(妹島和世+西沢立衛)を経て、2017年 工藤浩平建築設計事務所設立。2022年 株式会社工藤浩平建築設計事務所 代表取締役。現在、東京電機大学非常勤講師。
Kohei kudo & Associates
http://koheykudo.com
https://www.instagram.com/koheikudo_and_associates/
佐竹雄太 | Yuta Satake
1985年神奈川県生まれ。「建築のまわりで、建築をシコウする」アラウンドアーキテクチャー代表取締役。東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻修了。建築家設計の住宅専門不動産サイト「建築家住宅手帖」編集長。経営学修士、不動産コンサルタント、建築ラッパー カタチトナカミ、建築メディエイターとして多彩に活動中。建築家との家づくりなどのプロジェクトを、企画・ライフプランニングや物件探し・ローンマネジメントなどトータルサポートする。
佐竹雄太 Twitter
https://twitter.com/katachitonakami
AROUND ARCHITECTURE(アラウンドアーキテクチャー)
https://arar.co.jp
AROUND ARCHITECTURE COFFEE(アラウンドアーキテクチャー コーヒー)Instagram
https://www.instagram.com/around_architecture_coffee/
Detail of "Satake House"
1階では建物西側の路地に向けて大きく開く
薄いピンクの外壁はアクリルローラーリシン(エスケー化研)吹き付け。「色は検討を繰り返し、高級感がある紫に近いピンクを選定した。曇りの日でもピンクと認識でき、晴れると明るく浮かび上がる」(工藤氏)。筒状のボリュームの白い外壁は大波の鋼板
筒状のボリュームを挟んで左側が〈AROUND ARCHITECTURE COFFEE〉とワークスペースの出入り口、右側が住居出入り口
鉄工作家の古渡 大氏による造作ベンチ
路地に面した〈AROUND ARCHITECTURE COFFEE〉ではハンドドリップコーヒーやクラフトコーラなどを提供
1階は天井高を抑え、奥のワークスペースでは掘り込んだ場所をつくった
カーテンはサンゲツの生地をクリエーションバウマンに端部処理を依頼し、スッキリとした印象に
住居玄関はモルタル仕上げの土間空間。足元にはスリット状の窓を設置
玄関扉(LIXIL)、宅配ボックス・ポスト(Panasonic)、洗面器(LIXIL)など既製品をまとめて設置。右手はワークスペースとつながる
2階ダイニングからリビングを見る。段差はベンチのようにも使える
ダイニングの床は、学校の教室を彷彿とさせるパーケットの「フローリングブロック」(東京⼯営)。床の目地で方向性が出ることを避けた
キッチンのユニットやフードはtoolboxで選定
2階リビングと階段。リビングの開口は床から天井いっぱいのステンレスサッシで、リビングにいると前面道路の上に浮いているように感じる
螺旋階段と直行階段を合体させたような特注のスチール階段
段板の白い塗装には砂を入れて質感を出すとともに、滑り止めの効果をもたせている
リビング床には「マチコV」(コンポジションビニル床タイル / 東リ)を使用
ダイニング壁に取り付けたアームの細いブラケットライトは工藤氏によるオリジナル
3階サンルームは天井高を1,700〜1,900mmに設定
ステンレスの鏡面サッシとバルコニーのディテール
3階階段室の旧街道側の開口にはアルミサッシを採用
「鉄⾻ラーメン構造の継ぎ⼿が多く出てくる無機質なディテール。生活とどうバランスよく同居させるかを考えた」と工藤氏。鉄骨の梁には強力マグネットを付けてグリーンを吊るすなど住まい⼿が⼯夫している
3階からロフトに至る階段と収納はラワン合板で制作
就寝スペースとしているロフト。トップライトと南側の小窓から明かりを取り入れる