Official Posters of the Paris 2024 Games © Ugo Gattoni – Paris 2024
パリ夏季2024オリンピックが目指す3つの「史上初」
2024年の7月26日から8月11日にかけて開催されるパリ夏季2024オリンピックは、1924年の開催以来ちょうど100年ぶりとなるパリオリンピック。これまでにない新しい形のスポーツの祭典として開催される予定で、次の3つの「史上初」を掲げています。
- カーボンニュートラルな史上初の競技大会
- ジェンダー平等の史上初の競技大会
- すべての人が参加できる競技を開催する史上初の競技大会
このようにさまざまな観点からサステナブルな大会を目指すパリオリンピックですが、「カーボンニュートラルな史上初の競技大会」を実現するため、新たな施設の建築は極力抑えつつ、パリの名建築や歴史的な広場も競技会場として利用して開催されます。
パリオリンピックを建築視点から見る特集の第2弾となる今回は、これまでのオリンピックを彩ってきたスタジアムに焦点を当てています。まず、1896年にアテネで開催された初の近代オリンピックといったオリンピックの歴史を当時の写真を通して振り返り、次に1964年の東京オリンピックから2024年のパリオリンピックまで、夏季オリンピックの歴代メインスタジアムをまとめています。
この企画は、IOCオフィシャルフォトエージェンシーを務める「Getty Images*」の膨大なアーカイブ写真から歴代のオリンピックスタジアムをピックアップし、建築視点でオリンピックの歴史を振り返ります。
*「Getty Images」は1896年のアテネオリンピックからオリンピック映像アーカイブを保有し、1992年のバルセロナオリンピック以降、IOCオフィシャルフォトエージェンシーを務める。
Getty Imagesのパリ2024スペシャルサイトはこちら
https://engage.gettyimages.com/paris2024_jpn_lp_home
当時の写真で振り返るオリンピックスタジアムの歴史
（以下、Getty Imagesから提供されたテキストの抄訳）
アテネの〈パナシナイコスタジアム（Panathenaic Stadium）〉は、オリンピック会場の中で最も歴史ある競技場であることは間違いない。
最初の競技場は紀元前330年頃に建設され、紀元前144年に大理石で再建され、「カリマルマロ」（美しい大理石）と呼ばれるようになった。4世紀には廃墟となったが1869年に発掘され、実業家ジョージ・アヴェロフ（George Averoff）の寄付によって改修され、1896年に最初の近代オリンピックが開催された。また、2004年のアテネ・オリンピックでも競技が開催され、オリンピック聖火が開催国に向かう途中、各競技の前にギリシャで最後に訪れる場所でもある。
3093973,Hulton Archive,GettyImages
オリンピックといえば巨大な建設プロジェクトや新しいスタジアムや建物がイメージされがちだが、複数の大会で活用されている会場は多くある。特に、1924年のパリオリンピックのメインスタジアムは、フィールドホッケーの会場として今年も使用される。
パリ郊外に位置する〈スタッド・オリンピック・ド・コロンブ（Stade olympique de Colombes）〉は1907年に建設され、前回のパリ大会の後、1938年のワールドカップ決勝戦や1970年代まで多くの主要スポーツイベントが開催された。この写真は、100年前のパリ大会の開会式でイギリスチームの女性アスリートたちを撮影したものであり、Getty Imagesアーカイブのアナログファイルから最近デジタル化されたオリジナルのガラス板ネガによるものである。
2009537160,Central Press,GettyImages
ミュンヘンの〈オリンピアパーク（Olympiapark）〉は、オリンピックの敷地を地域の都市再開発の足がかりの一部として利用した、最初のオリンピック開発の1つである。
〈ミュンヘン・オリンピアシュタディオン（Olympiastadion München）〉とその周辺の公園は、1972年のミュンヘンオリンピックのためにギュンター・ベーニッシュ（Günther Behnisch）の建築事務所が計画したものであり、敷地の大部分を横断する流れるような張り綱構造も、ベーニッシュとフライ・オットーによって設計された。
この公園は50年以上経った今でも人気のアトラクションであり、オリンピックスタジアムのキャノピーを越えるルーフクライミングも楽しむことができる。
1383944481,Ed Lacey_Popperfoto,GettyImages
1964年から振り返るメインスタジアムの歴史
ここからは、1964年の東京オリンピックから2024年のパリオリンピックまで、夏季オリンピックの歴代メインスタジアムについて、スタジアムの写真とともに設計者や建設年といった基礎的な情報についてまとめました。
（※各スタジアムの現況については、2024年7月20日現在の状況を記載しています。）
1964年 東京オリンピック（日本）
〈国立霞ヶ丘競技場〉
設計：建設省関東地方建設局 角田 栄、片山光生
建設年：1958年
現況：解体（2014年）
3330233,Three Lions,GettyImages
1968年 メキシコシティオリンピック（メキシコ）
〈エスタディオ・オリンピコ・ウニベルシタリオ〉（Estadio Olímpico Universitario）
設計：アウグスト・ペレス・パラシオス（Augusto Pérez Palacios）、ラウル・サリナス・モロ（Raúl Salinas Moro）、ホルヘ・ブラボ・ヒメネス（Jorge Bravo）
建設年：1952年
現況：現存
821236942,Hector Vivas,GettyImages
1972年 ミュンヘンオリンピック（西ドイツ 現：ドイツ）
〈ミュンヘン・オリンピアシュタディオン〉（Olympiastadion München）
設計：ギュンター・ベーニッシュ（Günter Behnisch）
建設年：1972年
現況：現存
1301427,Ian Walton,GettyImages
1976年 モントリオールオリンピック（カナダ）
〈モントリオール・オリンピック・スタジアム〉（Stade Olympique）
設計：ロジェ・タイイベール（Roger Taillibert）
建設年：1976年
現況：現存
956542204,Jean-Marc ZAORSKI,GettyImages
1980年 モスクワオリンピック（ソビエト連邦 現：ロシア連邦）
〈ルジニキ・スタジアム〉（Luzhniki Stadium）
設計：アレクサンドル・ヴラソフ（Alexander Vlasov）、イゴール・ロジン（Igor Rozhin）、ニコライ・ウラス（Nikolay Ullas）、アレクサンドル・フリャコフ（Aleksander Khryakov）
建設年：1956年
現況：現存
994894946,Matthias Hangst,GettyImages
1984年 ロサンゼルスオリンピック（アメリカ）
〈ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム〉（Los Angeles Memorial Coliseum）
設計：ジョン・アンド・ドナルド・パーキンソン（John and Donald Parkinson）
建設年：1923年
現況：現存
備考：1932年ロサンゼルスオリンピックのメインスタジアムであった競技場。2028年ロサンゼルスオリンピックでもメインスタジアムとなると予定されており、実現すれば世界で初めて夏季オリンピックのメインスタジアムを3度経験したスタジアムとなる。
1363314198,Meg Oliphant,GettyImages
1988年 ソウルオリンピック（韓国）
〈ソウルオリンピック主競技場〉（Seoul Olympic Main Stadium）
設計：キム・スグン（金壽根）
建設年：1984年
現況：現存
1268738,_Inpho Photography,GettyImages
1992年 バルセロナオリンピック（スペイン）
〈エスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニス〉（Estadi Olímpic Lluís Companys）
設計：ペレ・ドメネク・イ・ロウラ（Pere Domènech i Roura）
建設年：1929年
現況：現存
備考：1929年のバルセロナ万国博覧会のために建設。1992年バルセロナオリンピックのため1989年に改修。
576820968,Wally McNamee,GettyImages
1996年 アトランタオリンピック（アメリカ）
〈センテニアル・オリンピックスタジアム〉（Centennial Olympic Stadium）
設計：アトランタスタジアムデザインチーム（Heery International、Rosser International、Williams-Russell and Johnson、Ellerbe Becketの合弁会社）
建設年：1996年
現況：現存
備考：1997年、設計当初より予定されていた通り野球場〈ターナー・フィールド（Turner Field）〉へ改修。2017年にジョージア州立大学へ譲渡され、フットボール球技場〈GSUスタジアム（Georgia State University or GSU Stadium）〉へ改修。
542408930,John van Hasselt – Corbis,GettyImages
2000年 シドニーオリンピック（オーストラリア）
〈スタジアム・オーストラリア〉（Stadium Australia）
設計：Bligh Lobb Sports Architects（現POPULOUS）
建設年：1999年
現況：現存
備考：アコーホテルズが命名権を取得していることから、〈アコー・スタジアム（Accor Stadium）〉と呼ばれる
1509748,Jim Pozarik,GettyImages
2004年 アテネオリンピック（ギリシャ）
〈アテネ・オリンピックスタジアム〉（Olympic Stadium of Athens）
設計：ワイドルプラン（Weidleplan）
建設年：1982年
現況：現存
備考：1996年にサンティアゴ・カラトラバの設計により大規模改修
541331733,DEA _ S. LOMBARDI VALLAURI,GettyImages
2008年 北京オリンピック（中国）
〈北京国家体育場〉
設計：ヘルツォーク&ド・ムーロン（Herzog & de Meuron）、ArupSport、中国建築設計研究院
建設年：2008年
現況：現存
備考：2008年北京オリンピックだけでなく、2022年北京冬季オリンピックでも開会式と閉会式を開催
1368595565,Clive Rose,GettyImages
2012年 ロンドンオリンピック（イギリス）
〈ロンドン・スタジアム〉（London Stadium）
設計：POPULOUS
建設年：2011年
現況：現存
976087818,Construction Photography_Avalon,GettyImages
2016年 リオデジャネイロオリンピック（ブラジル）
〈マラカナン・スタジアム〉（Maracanã Stadium）
設計：ミゲル・フェルドマン（Miguel Feldman）、ワルディル・ラモス（Waldir Ramos）、ラファエル・ガルバン（Raphael Galvão）、オスカー・バルデタロ（Raphael Galvão）、オーランド・アゼベド（Orlando Azevedo）、ペドロ・パウロ・ベルナルデス・バストス（Pedro Paulo Bernardes Bastos）、アントニオ・ディアス・カルネイロ（Antônio Dias Carneiro）
建設年：1950年
現況：現存
備考：ブラジルにて1950年に開催されたFIFAワールドカップのために建設
464334240,Mario Tama,GettyImages
2020年 東京オリンピック（日本）
〈国立競技場〉
設計：隈研吾建築都市設計事務所
建設年：2019年
現況：現存
1234494744,SOPA Images,GettyImages
2024年 パリオリンピック（フランス）
〈スタッド・ド・フランス〉（Stade de France）
設計：ミシェル・マカリー（Michel Macary）、アイメリック・ズブレナ（Aymeric Zublena）、クロード・コスタンティーニ（Claude Costantini）、ミシェル・レゲンバル（Michel Regembal）
建設年：1998年
現況：現存
備考：フランスにて1998年に開催されたFIFAワールドカップのために建設
1240952192,NurPhoto,GettyImages
