[Interview]TECTURE AWARD なぜ「開かれたアワード」をミッションにアワードを開催するのか? - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
FEATURE

なぜ「開かれたアワード」をミッションにアワードを開催するのか?

TECTURE AWARDエントリー開始!

建築・インテリアの作品を対象とした空間デザインアワード「TECTURE AWARD」の第1回が開催されることが発表され、特設サイトにてエントリーの受付を開始しました。

(リリース記事)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000055207.html

どのような想いをもってTECTURE AWARDを開催するに至ったのか、また「開かれたアワード」をどう実現するのか。tecture代表の山根脩平氏に、詳しく聞きました。

TECTURE AWARDを企画し開催する 山根脩平氏

空間デザインの面白さをもっと世の中に知ってもらいたい

── TECTURE AWARDを立ち上げた背景を教えてください。

山根:アワードを通じて、世の中の人に建築やインテリアの面白さをもっと知ってもらいたいと思っています。国内外で権威のある素晴らしい空間デザインアワードはすでにたくさんあります。僕らが同じことをやっても、すでにある枠組みに1つ増えるだけになりますよね。同時に、業界内の盛り上がりが一般の人に届いてないんじゃないか? という課題も感じています。

そこで、世の中に建築やインテリアの面白さをもっと知ってもらえる枠組みをつくることができないか? という問いから、今回のアワードを立ち上げることにしました。

大前提としてTECTUREの役割は、世の中の空間事例が集まる、誰でもアクセス可能なオープンなプラットフォームをつくることです。TECTUREは世の中のプロジェクトが集まっているプラットフォーム、TECTURE MAGは編集の目が入ったメディア。そんなTECTUREならではの考え方をアワードでも踏襲しています。

そしてTECTURE AWARDは「開かれたアワード」として、現在あるアワードとはまったく逆の方法の仕組みを設計しています。

「開かれたアワード」での3つの挑戦

── 「開かれたアワード」というのは、具体的にどのようなことでしょうか?

山根:「開かれたアワード」を実現するために、3つのことに挑戦しようと決めています。一般投票とアンバサダー制度、そしてTECTUREの活用です。

一般投票は、世の中の人を巻き込んで、設計者の多くの作品を知ってもらうきっかけをつくろうというミッションを実現するために必要なものとして、誰でも応援できる状態にしようと出てきたアイデアです。

イメージしたのは、先の東京都知事選挙でも見られた、候補者による能動的な情報発信です。自分の考えを自ら発信して、一般の有権者の方々を巻き込んでいく。今どきの選挙ではSNSやYouTubeなど、多様な方法を使って関心を持ってもらうことで、若手でもチャンスが生まれている状況ができていると思っています。このような仕組みは設計者にも大事で有益なことだと思うのですが、1人で大勢を巻き込むのは難しい。

TECTURE AWARDという枠組みを利用して、より多くの人を巻き込めるのではないかと考えました。

2つ目は、アンバサダー制度です。オープンで民主的なプロセスにチャレンジしていく中でのトレードオフとして、審査員がいない状態になります。ただ、一般の方が直感的に見るのもいいのですが、建築やインテリアの空間について「こういう見方をしたら面白い」とか「こんな観点で評価されるんだ」という視点があるほうが、より深く作品を理解してもらうことができるし、投票を楽しめるのではないかと思います。そこで、専門家の方々にアワードに参加していただき、気になった作品に対してのコメントを公表します。

アンバサダーは、建築家やインテリアデザイナーのほか、業界の周辺の方々にも声がけしています。例えば最近では、空間の力を信じて事業をされている方が増えています。空間のプロフェッショナルだけではなく、クライアントサイドならではの視点が得られるのではないかと期待しています。また、企業のインハウスデザイナーであったり、さまざまな領域の専門家に入っていただき、総勢30名ほどになる予定です。

3つ目は、TECTUREのプロジェクト登録の仕組みを活用することで、応募作品すべてが公開されている状態をつくるということです。 一般的なアワードでは、最終審査に残った一部の作品が公開されるとしても、残りの作品に関してはオープンではありません。それを、すべてオープンにすることで、エントリーしたその瞬間から世の中へ発信している状況をつくることが今回のチャレンジです。

アワード開催中でもエントリーしたその時点で広く世の中に知ってもらえる機会をつくる。TECTUREはもともとオープンなプラットフォームなので、ここでもTECTUREだからできるアワードを意識して設計しています。

一般的なアワードでは、応募フォームを開いて写真などを投稿していく形式ですが、TECTUREではプロジェクトを登録いただいて、最後に「アワードにエントリーする」というボタンを押せばエントリーできます。アワードのために特別なことをしなくてよい、というのが大きなポイントです。

投票から受賞への流れ

── カテゴリーは幅広く設定されていますね。投票はどのように行われるのでしょう?

山根:さまざまなタイプの建築やインテリア空間を多くの人に見てもらいたいということと、それぞれ専門のアンバサダーの方々にコメントをいただきたいと思い、14のカテゴリーを設けました。作品エントリーのときに、14のカテゴリーから1つを選んでいただきます。住宅建築だけどインテリアにすごく力を入れたということであれば、インテリアのカテゴリーでエントリーすることもできます。

一般投票は、ファーストラウンドとファイナルラウンドの2回に分けて行います。ファーストラウンドでは、1人が何票でも投票できる仕組みになっています。そこで各カテゴリーで最も得票数が多い14作品に加え、続く上位12作品の合計26作品がファイナルラウンドに進出します。ファイナルラウンドの投票では1人1票として、得票数の順位で受賞作品が決まります。

── エントリーは無償なのに、受賞者にはTECTURE賞1位100万円をはじめとした賞金が出るのですね?

山根:海外のメディアアワードでは、エントリー自体が有料でハードルが高い状態です。自分たちは、面白い作品を世の中に届けるというミッションがあるので、エントリーにお金をいただくのではなく、幅広く作品をエントリーしてもらえる状況を意識しています。

そして投票結果に対して賞金が出る仕組みについては、そのほうが参加者もワクワクすると思ったからです。みんなでワクワクできる状況をつくりたい、と常々思っています。

TECTUREはプロジェクトを登録するときに、建材メーカーなどの製品を紐づける仕様になっています。その特徴を生かして、TECTURE賞のほかにスポンサー賞を準備しています。応募作品にスポンサーメーカーの製品を紐づけてエントリーしていただければ、自動的にスポンサー賞にもエントリーされる仕組みとなっています。ゴールドスポンサーは、各企業の視点で作品を選定して賞を授与することができます。応募作品は、最大でTECTURE賞とカテゴリー賞、スポンサー賞という3つの同時受賞があり得るということですね。

エントリーする方々とアワードを一緒に盛り上げたい

── 主催者として、エントリーする建築家やインテリアデザイナーへのメッセージをお願いします。

山根:なにしろ初回のアワードなので、オープンにして何が起こるかワクワクしています。TECTURE AWARDにエントリーいただいた作品について、さまざまなところに露出する機会を最大化させることは僕たちが今最も大事にしているところです。今回参加いただくスポンサー企業の繋がりを通しても、エントリー作品と設計者のことを知ってもらう機会は増えるでしょう。

今回のアワードでは、エントリーすると応募作品一覧のページにリアルタイムで表示されます。早くエントリーすればするほど露出する期間は長くなり、多くの方々の目に触れるので、ぜひ早めにエントリーください。

そしてエントリーする方々も一緒に、アワードを盛り上げていただきたいですね。エントリーした方々がSNSなどで呼びかけてくれるだけで、届く範囲が広がります。みんなで一緒に、世の中の人を巻き込んでいければと思っています。

今の時代、建築家やインテリアデザイナーにも自ら世の中に情報を届けていく活動は必要だし、評価されるべきだと思っています。コルビュジエはメディアを最大限に活用して、世の中に自分の作品や思想を伝えようとしましたよね。そうした意味で、TECTURE AWARDの選考過程も露出や発信の機会にしていただき、うまく利用していただければ嬉しいです。

(2024.10.25 tectureにて)

Interview & text: Jun Kato
Photo: TECTURE MAG

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